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先月(2017年6月)

佐原 さばさんのレビュー一覧

投稿者:佐原 さば

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本グッドラック

2004/07/20 11:25

幸運と成功。それはふたつの似て非なるもの。

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 「しあわせ」とはなにか。
 表紙に浮く四つ葉のクローバーから連想する〃しあわせ〃を思ってみよう。その連想するものによって、この本の価値は雲泥の差となるかもしれない。
 アーサー王ゆかりの魔法使いをからめることで、この本はファンタジー的寓話の体裁をとっているものの、ここで語られているのは「こころ」のしあわせではなく、社会的な成功への道だ。そういう意味では、まったくのビジネス指南書なのである。

 だからこそ、この本は新鮮にうつったのかもしれない。他の自己啓発本が「癒し」系に傾いている今、努力して懸命に働きなさいと、バブルを知らない世代、そしてバブルを懐かしむ世代、堅実な世代と、どの世代の価値観にもふれるものがあるのだろう。とすれば、日本もアグレッシブな風潮がやっと求められるようになってきたのだろうか。この本のヒットの一因は、出版界ではめずらしい予算をかけたパブリシティにあるだろうが、バブル崩壊以降、自己憐憫にひたっていた日本人もようやく前を向き始めた、そのきざしであるのかもしれない。
そういう意味では、皮肉ながら「文学的」な命題をもつきつけてくる本だ。物質と精神。どちらが満たされれば人は幸福か。現代社会で生きる我々にとって、永遠の命題のひとつだ。

しかしながら、四つ葉のクローバーに人間として生きる、ささやかな「しあわせ」に満ち足りた「幸福」をイメージした人には、ちょっとおすすめできない。
自分では懸命に仕事をしながらも、いまひとつ成功できない人。同じようにやっている同僚がどんどんよい仕事をして「成功」しているのに、自分はうだつがあがらないと思っている人、そんな人は一度目を通し、自分に欠けているものはなんなのか、視点を変えてみるきっかけになるだろう。
我が道をいく人には、もちろん、不用の書である。

蛇足ながら、こういった自己啓発本というのは、占い本とよく似ていないだろうか。ごくあたりまえのことがらが書かれているため、誰にでもあてはまる。だから、読み手にまるで自分のために書かれたのではないかという錯覚におちいっていく。
実のところ、この本を児童書の出版社が出したということに一番驚いている。

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