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チョビさんのレビュー一覧

投稿者:チョビ

24 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本永遠の出口

2004/10/27 19:48

過去があって、現在がある。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人は何故「戻れるとしたら何歳に戻りたい?」という質問が好きなのだろうか。「子どもの頃に戻りたい」とか「青春時代に」とか希望は人それぞれなようだが、私の答えは「戻らなくていい」だ。94歳になる祖母の「戦争でつらい思いをしたから若かった頃に戻ってみたい」という答えには納得するとしても、昔に戻りたいと考える人の方が圧倒的に多いのが私にとっては不思議だ。みんなそんなに楽しい日々を過ごしたのか? それとも、つらさのあまりもう一度人生をやり直したいと切望するためだろうか?
私の場合、夫と3人の息子たちのいる現在がしあわせだ、という理由はもちろんある。しかし、それよりも大きな理由は、何度人生をやり直したとしても結局自分は同じようにしか生きられないような気がするからだ。それだったら、引っ込み思案でうじうじしていた子ども時代や、自意識過剰で周りに心を開けなかった少女時代に戻るのなどごめんである。人と接するのがもはや苦ではない、大人になってからの自分がいちばんいい。
…と考えていた自分であったが、この本を読んでそうそう過去を否定的にばかり捉えなくてもいいかと思い直した。「永遠の出口」はひとりの少女の成長物語である。森絵都さんと私は1歳違いだが、子ども時代や少女時代の気持ちというものをよくこんなに鮮明に記憶しておられるなあと感心させられる。言われてみれば「そうそう、こんな風に思った!」と思い出せるのである。でも自分でその感覚を思い起こし、さらに書き表すとなると、それはもうまったく別の話だ。
そう、子どもの頃や10代の頃はたいへんなこともあったけど、楽しいこともたくさんあったのだ。戻りたい、とは今でも思わない。でも、思い出というものは振り返ればきらきらと光を放って、かつて少年少女だった私たちの心を温めてくれる…「永遠の出口」という小説によって、素直にそう思えるようになった。
私が選ぶ“児童文学出身三人娘”は梨木香歩・佐藤多佳子・森絵都。最もニュートラルなのが佐藤さん。生真面目なのが梨木さんで、森さんはその対極の少々不良寄り。そのちょっとつっぱった感じが、この小説においては絶妙なスパイスとなって効いていると思った。

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紙の本点子ちゃんとアントン

2004/10/18 16:20

私の初恋の人

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「点子ちゃんとアントン」は、私が物心ついたときすでに傍らにあった本だった。当時手元にあったのは(この「ケストナー少年文学全集」ではなく)少年少女向けに簡単な文章に書き直されたものだったとはいえ、幼稚園児が読むには難しめの内容(質量とも)だったと思う。それでも飽きることなく読んだ記憶がある。それほどに私の心はこの物語を求めてやまなかったということだろう。
裕福な家の娘点子ちゃん(本名ルイーゼ。3歳くらいまでおちびさんだったから、という理由でついたあだ名だ)と、貧しい母子家庭の子アントン。境遇は違えど、ほんとうの意味で美しい心を持つ2人は固い友情で結ばれている。点子ちゃんが自宅の居間で物乞いの真似をしているところから話は始まる…。笑いあり、涙あり、ミステリー的要素まで盛り込まれた一冊だ。
今回この本を再び手に取ったのは、矢作俊彦「ららら科學学の子」を読んだことがきっかけだった。再読して、「点子ちゃんとアントン」をご自分の作品に登場させた矢作さんの目の確かさに感銘を受けた次第である。
そして、自分が昔何故あんなにもこの本を好んだのかがわかった。アントンはケストナーの描く少年少女の多くがそうであるように、思いやりにあふれ、勇敢で、純粋な心の持ち主だ。私はきっとアントンに恋心を感じていたのだろう。
幼い頃にこの本と出会い、そして大人になった現在もう一度めぐり会えたことを心からよかったと思う。子どもの頃読んだ方も、そうでない方も、ぜひページをめくってみてください。子どものものだけにしておくには惜しい傑作ですよ、ほんとに。

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紙の本ハゴロモ

2004/10/05 09:09

“ハゴロモ”とは何だろう?

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“ハゴロモ”とは何だろう?と思いながら、この本を手に取った。答えはもちろん本の中にあった。実際にお読みになって確かめていただきたい。それは、よしもとさんらしい表現で語られた、心を温めるようなものだったということだけ付け加えておくことにする。
正直言ってよしもとさんの小説については、「今回はものすごく波長が合う!」と思うときと、「今回はいまいちのれない…」と思うときとある。「ハゴロモ」は前者。愛人との別れの痛手から故郷の町に戻った主人公ほたる。冷たく澄んだ冬の空気の中で、ほたるは自分の家族や、父の昔の恋人の娘るみや、そしてこれから新たに恋心を育んでいくに違いないみつると出会い、生き生きとした心を取り戻していく。全編優しさに満ちた、いやな感じと思うところのない小説だった。
よしもとさんの文章には、それが「いまいちのれない」場合であっても、常に心のいちばん純粋な部分にダイレクトに響いてくるものがある。作者の内面と小説の内容をすぐに結びつけて考えるのは短絡的な行為ではあるが、よしもと作品の美しさは彼女自身の心根の美しさに起因するものだと思えてならない。そして、彼女の作品が広く愛され多くの人々に読まれているのは、そこに理由があるのだと思えてならない。そう、よしもとばななという作家の中にあるもの、それもまた“羽衣”なのだ。

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リアル 4

2004/11/24 15:00

強くあれ。

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運動神経がいいわけでも、バスケットボールに詳しいわけでもなかった自分が、10年前あるマンガにはまった。いまや伝説となった感のある「SLUM DUNK」だ。改めて言葉にすると気恥ずかしいが、友情、信頼、向上心…といったものに彩られた、まぶしいほどの青春がそこにあった。
それがあのような形で完結してしまったとき、私たちはどれほど途方に暮れたことだろう(作者や出版社がどのような回答を用意していたとしても、読者にとって「SLUM DUNK」最終回は“唐突”以外の何物でもなかったと思う)。しかし、いまわかった。もし「リアル」という作品が生み出されるためにどうしても必要なことだったとするならば、私はあの結末を受け入れよう。
「リアル」の主要人物は3人、戸川清春・野宮朋美・高橋久信。清春はもと陸上選手。非凡な才能を持つ短距離選手だったが、骨肉腫に冒され右足を切断。陸上への道を断たれ、失意の日々を送る。野宮は元バスケ部。町でナンパした少女夏美を乗せ、バイクで二人乗りしていて交通事故に遭う。夏美だけが車いす生活を余儀なくされるようになり、自責の念に苛まれる。高橋も元バスケ部員で、野宮と同じ部に籍を置いていた。キャプテンとして、それでも気楽な高校生活を送っていたが、交通事故がきっかけで下半身が麻痺。絶望の中、自分を見失いかけてゆく。それぞれに挫折感を抱えた彼らが、車椅子バスケットと出会う…。
4巻は清春を中心に物語が展開する。もともと清ちゃんファンなのだが、自分でもどうかと思うほどの涙であった。涙腺が完全にイカレた。巻末に載っていた次巻予告によれば、5巻は「2005年秋、発売予定」。ぐああ、来年まで待たなければならないなんて!狂おしいほど先の話に思える。でも待つ、待つよ。だからイノタケ、今度は絶対に絶対に突然この話を終わらせないで。

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紙の本オーデュボンの祈り

2004/09/26 02:45

残酷さと優しさの共存

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伊坂幸太郎という作家は、いろんな意味で不思議な存在だ。伊坂作品を読んだ人とであれば1時間でも2時間でも語り合える気がするのに、未読の相手に対しては「こうだからいいんだ」と説得するための言葉を思いつかない。「とにかく読んで」と熱意によって相手の心を動かすしかないのだ。この小説のあらすじを伝えるにしても、ものすごく長い説明になるか、さもなければ「カカシが死ぬ話だ」と一言で済ませるかのどちらかしかないような気がするし。
「オーデュボンの祈り」はデビュー作。作家はデビュー作を超える作品を書けないとはよく言われることだが、伊坂さんは一作ごとに前作をしのぐものを書かれている稀な作家の一人ではないだろうか。それでもあえて、この小説が特に優れている点を挙げるとすれば、出てくるのが脇役に至るまですべて(悪役を含めて)印象的なキャラクターばかりだということかと思う。伊坂さんの人物造形の素晴らしさはいまさら言うまでもないのだが、どの登場人物も忘れ得ぬ印象を残す。ひとりとして“端役”と感じられないくらいだ。
伊坂作品においては、悪役はもうほんとうに感じが悪く、理不尽な暴力が描かれることも多い。それでも読み終えて心に残るのは、その作品に存在する限りない優しさである。「とにかく読んで」いただければと思う。

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紙の本火怨 北の燿星アテルイ 上

2004/12/08 15:23

小説における戦い

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8世紀、陸奥の民蝦夷と朝廷の戦い。もしかしたら日本史の授業で習ったのかもしれないが、今日まで私の意識には残っていなかった。微妙な均衡を保っていた両者の関係に亀裂が入ったのは、陸奥から大量の黄金が発見されたことが発端である。蝦夷の願いはただ、同じ人間としての扱いを受けることだったのに…。
戦という混沌の中から生まれた英雄、その名は阿弖流為(アテルイ)。軍師母礼(モレ)、腹心の部下飛良手(ヒラテ)たちを得て、阿弖流為は若きリーダーとなっていく。
高橋克彦という名前を知ったのは、もう20年近くも前のことだ。いくつか短編を読んだことがある。古い洋館が舞台だったりする、ぞくっとするようなホラーがかったショートショート(この名称懐かしい)で、怖い話があまり得意ではない私はそれ以来ずっと敬遠していた作家だった。まさかこんなに素晴らしい歴史小説を書かれるようになっていたとは!自らの不明を恥じる。
上下巻合わせて1000ページを超える大作であるが、巻措く能わざる一冊(上下巻だが)。どうしたって、下巻を読まずにはいられますまい。

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簡単に断れない。

2004/10/01 13:53

土屋賢二は裏切らない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ツチケン先生のエッセイを読むのは久しぶりだったが、相変わらずの土屋ワールドが展開されていた。悪い意味ではない。この移ろいゆく世に、変わらないものがそうそうあるだろうか。紀貫之も「人の心は元通りであるかわからないけれども、昔なじみのこの地の花は昔のように美しく咲き香っていることだよ」と歌っているではないか。そう、土屋先生の文章は我々の心にいつも咲いている花なのだ(話が大げさになってきた)。
「この人なら間違いない」というひいきの作家がいることは、我々の読書生活に計り知れない幸福をもたらす。スティーブン・キングに恐怖させられ、舞城王太郎に翻弄されるのも素敵かと思うが、土屋賢二は裏切らない。
土屋先生がんばれ! 奥様や助手さんやほぼすべての周囲の人々に負けないで!

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Treasures

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この本は、三浦しをんさんの作品が目当てで読み始めたのだが、他にもいくつか心動かされる短編があった。特に感心したのは、狗飼恭子さんと中山可穂さんの作品。どちらも主人公の女性の哀しみがきめ細やかに描かれているが、最後にやってくる救いが清々しい。ああ、こういう宝ものが存在するから私たちは生きていこうと思えるのだな、としみじみとした余韻の残る短編だ。実はおふたりの作品を読むのは初めてだったのだが、他の作品も読んでみようという気になった。
他に気になったのは、中上紀さんの作品。さすが中上健次の娘!と思わされた一編(こういう言われ方をご本人は好まないかもしれないが、むろんいい意味で)。
そして、三浦しをんさんだ。いつも通りの期待を裏切らない素晴らしさだった。プラトニックでありながら(いや、プラトニックだからこそか)、密やかに燃え続ける恋情。恋に対して不器用な主人公朱鷺子の、自分の内で堂々巡りする思いがひしひしと伝わってくる。ほんと巧いですね。
さて、こういった形のアンソロジーの場合、どうしても好きなものと合わないもの(あるいは上手下手という場合も)が分かれてしまいますね。この本にももちろんありました(ここではどれが、とは申しません)。みなさんもお読みになって、好きな作家の世界を堪能したり、新しい才能を発見したり、自分の好みの偏りを再認識したりされてはいかがでしょうか。

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紙の本オドオドの頃を過ぎても

2004/11/12 20:41

麗しのアガワさま

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阿川佐和子という人を知ったのは、いつの頃だっただろう。もしかしたら現在は佐和子さんとお父上の知名度は逆転しているのかもしれないが、祖母が愛読者であり、自分自身も「きかんしゃやえもん」を何度も読んでいたことから、「ああ、阿川弘之の娘なんだ」と思った覚えがある。
この本を読んで驚いたのは、佐和子さんがご自身について読書家ではなかったとたびたび書かれていることだ。あんなにおもしろい文章を書かれるというのに(しかもあれほどの美貌にも恵まれているのに。不公平だ)! 結局文章の上手下手は才能によるものなのか? いやいや、きっと謙譲の美徳を発揮しておられるのに違いない。本について書かれたエッセイ群は、選んでおられる本も素敵で読書のセンスありと思うし、文章もやはりおもしろい。
そして、この本を読んでうらやましかったのは、遠藤周作先生との対談だった。異論も多いと思うが、遠藤先生は「マイ・ベスト・イケメン日本人作家(故人部門)」である。とても楽しい対談で、もちろん「阿川弘之の娘」が相手というのは同じ作家で友人でもある遠藤先生にとっても格別の気安さを感じるところだったと思うが、佐和子さんご本人が話し上手かつ聞き上手であったことは大きい。くー、文才があって、美人で、おまけにトークも立つか。その才能が余すところなく発揮される檀ふみさんとの往復エッセイ、鶴首してお待ち申し上げます。

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紙の本半眼訥訥

2004/10/20 15:30

高村薫という生き方

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正直に言って、私は高村作品の正しい読者ではないと思う。延々と続く工場や機械の描写などは活字を目で追ってはいても頭に入ってこないし、そもそもごつごつした硬質な感じの文章を(決して嫌いなわけではないのだが)なかなかリズムに乗って読み進められないのだ。
にもかかわらず、私は彼女の小説を求める。それは何故かと考えてみるに、高村薫という個人の存在に強力に引きつけられるからだと気づいた。私にとって、聡明な人物といえばそれは高村薫のことであり、ミステリアスな女性といえば(ローレン・バコールや黒木瞳ではなく)高村薫であり、美しい人といえば(エリザベス・テイラーや松嶋菜々子ではなく)それもまた高村薫なのだ。
この本はエッセイ集である。通読してつくづくと感じるのは彼女の持つ感覚の真っ当さだ。凶悪事件や住宅事情などの昨今の時事ネタについて書かれた文章が新鮮に思われるのはしかし、高村さんのように冷静に考えることのできる人々の少なさを物語るのだろうか。明晰な思考力による聡明さ、どこからあのような骨太な物語を組み立てるのだろうかという謎に満ちた才能、厚化粧などで損なわれることのない心根の美しさ(付け加えるならば、見た目も好みです)…。思っていた通りのお人柄がにじみ出る文章であった。
高村ファンにはうれしいトリビアをひとつ。高村さんは「ポケットモンスター」をご覧になることがある!素敵だ…。

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紙の本乙女なげやり

2004/07/03 00:26

乙女、なげやられました!

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最新刊「私が語りはじめた彼は」も絶賛発売中の三浦しをんさんだ。いよいよ大ブレイクの予感。「間違いない」で最近人気の芸人長井秀和氏をデビュー当時から見守ってきたファンの方とか、同様の思いを噛みしめていることと思う。
さてこの「乙女なげやり」は、ウェブマガジンで連載中のエッセイ「しをんのしおり」を収録したものである。週一の更新を待ちわびる日曜深夜(から月曜にかけて)だ。
このエッセイ集のおもしろさをどうやって伝えたらよいのか。こんな駄文を書き連ねてまでこの本をお薦めしようと思う私でさえ、「万人受けする内容ではないかもな…」と若干の躊躇を払拭できない。
しかしながら、もしあなたがまだ三浦さんの本を読まれたことがないなら、「どうかこの老いぼれの最後の頼みを聞いてやってくだされ」的私の薦めに耳を傾けていただきたい。そして、もしこの本を読んであなたのハートが打ち抜かれたとしたら、以前に書かれた小説やエッセイも読んでみてほしい。いまなら全著作合わせても10冊程度で済みますぞ!これから赤川次郎や西村京太郎を追っかけ始めるのとはわけが違う。
え? すでに三浦さんのエッセイを読んだことのある人への推薦の言葉? 私が何も言わずとも読むでしょー。読む気がないという人とは、たぶん言葉が通じない。

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紙の本ミステリ十二か月

2004/12/13 15:34

愛とミステリと北村薫

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本のガイドブック的なものが好きだ。もしかしたら実際に作品を読む以上に好きかもしれない、と思うほど。だから年末のこの時期、「文春」や「このミス」など各雑誌のベストテンの類いを心待ちに過ごしている。
いろんな人の投票などによる選出というのももちろん興味深いが、ひとりの人によってじっくり選ばれたリストというのも捨てがたい味わいがある。ましてその選者が北村薫となれば。膨大な読書量と知識に圧倒されるが、それ以上に胸を打たれるのが北村さんのミステリへの愛情の深さだ。それが最も顕著に現れているのが有栖川有栖氏との対談。もうおふたりとも別のステージへ行っちゃってるように思えるほど、ミステリへの思い入れが熱く語られる。両氏のおすすめ本が微妙に違っているのも読みどころ。
大野隆司氏による版画もいい。いくつかの版画に秘められた謎は、ミステリファンを(そして猫好きをも)唸らせること間違いなし。大野さんはご自分のことを“ミステリ初心者”と謙遜しておられるが、なかなかどうして、相当の強者とお見受けしましたぞ!

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紙の本火怨 北の燿星アテルイ 下

2004/12/08 16:01

現実における戦争

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身分を隠した阿弖流為たちが、支援者である天鈴とともに京に上るところから下巻は始まる。宿敵(であり、不思議な信頼関係を保ってもいる朝廷側の貴族)田村麻呂との出会いが深く印象に残る。それぞれ違った星のもとに生まれていたら必ずや固い友情で結ばれていたであろう2人は、否応なく敵味方に分かれ戦いを続ける。そして常勝の阿弖流為が最後に仕掛けた戦とは…。
上巻の書評で、エンターテインメントとしてのこの小説の素晴らしさについて書かせていただいた。もしも実話に基づくものでなかったなら、どんなによかっただろうと思う。阿弖流為たちも田村麻呂も戦いを避けたいと思いながら、しかし避けることはできなかった。フィクションであれば、それもしかたのないことと思いつつ冷静に読むこともできよう。しかし、この戦いは実際に行われたものであり、多くの人々の命が失われたのだ。
阿弖流為は“蝦夷を救うため、未来を担う子どもたちが何もわからぬまま戦に巻き込まれるのを避けるため”最後の戦いを決意した。いまさら歴史上の事件を変えることなどできないと知りつつも、最後の戦いを含め、和解の道はなかったのかと胸が痛む。この小説の戦いの根底にあったいちばん大きな原因は、朝廷の蝦夷に対する差別意識だったと思う。もしも自分が何か次の世代のためにできることがあるとしたら、他者への偏見や差別の芽を植え付けないことしかない。それが実現できれば、いつの日にか誰も戦争などしないですむ世の中になるかもしれないと夢を見ている。理想論と言われても、夢は持ち続けなければ現実にならない。阿弖流為たちの神々しいまでの戦いぶりに、かえって戦いの空しさを強く思った。

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紙の本真夜中の五分前 Side‐B

2004/11/27 12:41

私は「ゆかり」。

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Side-Aから2年後の物語である。普通の上下巻ともまたちょっと趣が違って、A、Bとも独立して読めないことはない気もするのだが、どちらかしか読まないのでは読んだ意味はほとんどないと言っていいだろう。
相思相愛という幸福な結末を迎えたかに思われた「僕」とかすみだったが、最初の数ページでかすみはもうこの世にいないことがわかる。双子の妹であるゆかりと行った旅行先のスペインで、列車事故に遭ったのだ。しかし「僕」は、ゆかりの夫である尾崎から「生き残った女はほんとうに自分の妻なのか?」という疑問を払拭できないのだと打ち明けられる。
Side-Bは、「僕」と水穂の父親の再会といった2、3の心温まる場面を除いて、全編謎に満ちたスリリングな展開である。生き残った女は果たして誰なのか。彼女を含めた3人ともが疑念に捕われ身動きできない。ぎりぎりまで追いつめられた彼らがたどり着いた答えは…。
関係ない話ではあるが、私の本名は「ゆかり」という。珍しい名前なわけではないのに、あまり小説などの登場人物には使われないため、つい「ゆかり」さんには肩入れしてしまう。ゆかり/かすみさんが、自分のアイデンティティを求めて苦しむ姿は読んでいて切ないものがあった。

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紙の本真夜中の五分前 Side‐A

2004/11/27 12:03

私は「かすみ」。

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本多孝好という作家の小説を読んだのは、これが初めてである。もともとは村上春樹的な世界観もしくは小説作法に影響を受けているのではないかと思うのだが、本多さんや伊坂幸太郎さんといった若手作家が「ナイーヴ系」と称されたりしているようだ。まさにこの作品もナイーヴの王道を行く小説。作者名を知らずに読んだら、村上さんの作品と言われても信じてしまいそうだ。
もちろん本多さんならではと思われる特長は随所にみられると思う。いちばん感心させられたのは、主人公「僕」の会社員としての苦悩や周囲の人間との軋轢といったものが丁寧に書かれていることだ。上司や同僚たちとのやりとりはたいへん興味深く読ませてもらった。「僕」のような繊細な人間にとって、この社会は生きづらいことと思う。それから、女性に対する「僕」のストイックな姿勢も新鮮だった。恋人だった水穂が亡くなって6年、「僕」は何人かの女性とつきあうが、その誰とも深い関係にはならない。
水穂の不在をどう捉えたらいいのかわからずもがき続ける「僕」は、双子(というモチースはやはり村上春樹的だ)の片割れであるかすみと出会い、恋に落ちていく。再び人生を自分たちの手に取り戻せるかと思われた2人だったが…。

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