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レビューアーランキング
先月(2017年1月)

くおんさんのレビュー一覧

投稿者:くおん

8 件中 1 件~ 8 件を表示

紙の本こうちゃん

2004/12/11 02:14

言葉の美しさ、もの悲しさ。ぜひ、声に出して読んでみてください。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

須賀敦子が残した、ただ一つのちいさな物語。

私は須賀さんのエッセイは何冊か読んでいて好きで、彼女が自分の文章を書き始めたのが遅いことや未完の長編小説があったことは知っていたけれど、こんなに素敵な文章を早くから書いていたことは全く知りませんでした。だから、本屋の絵本コーナーで表紙の酒井駒子さんの絵が目に止まった後、その横に「須賀敦子・文」と書かれているのを読んだ時は本当に驚きました。中をたしかめることもせずにレジに持っていきました。こういう幸福な出会いはそうあるものではありません。

この物語から受けるものは… 子ども時代にあったはかなさの美しさ、のようなもの…でしょうか。理不尽さを受け入れて、それに慣れて、大人になった気がしているけれど、世界はもっと単純だったはずだ、もっと生きていて気持ちよかったはずだ、って思うことがあります。そんな時に味わう悲しさと似ていました。

声に出して読むと言葉のきれいさがよくわかります。音読するうちに、もの悲しくて何度も声を詰まらせました。

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猫の愛着

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人間と暮らした一匹の猫の物語。
猫のダルシー(あたし)にとって、飼主(あたしの人間)はしもべ。ダルシーは彼女の女主人。飼主は、猫のご機嫌をとり、やさしく抱きあげ、食事を用意したりするものだから、猫の立場からしたらこれは当然の考え方かもしれません。
この物語が、人間と猫の愛の物語であることに疑いの余地はないのですが、「愛」の中でも、これは強い「愛着」の物語だ、という考えが私にはぴったりきました。心理学用語として「愛着(attachment)」には「人間(動物)が、特定の個体に対してもつ情愛的きずな(affectional tie)」という定義があります。幼い子どもが母親へ求めるきずながわかりやすいですが、愛着は動物に対してだって物に対してだってもつことができます。ダルシーと飼主は、きっとお互いにそんな関係じゃなかったのかなぁ。
毅然としていて、人間に惜しみなく愛を与え、愛を求めた、ダルシーの一生に胸を打たれました。

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紙の本ぼくはレース場の持主だ!

2005/01/28 21:13

現実はどこまで現実か?

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中学生のころ、架空の土地や物件を売買する「モノポリー」というボードゲームに熱中したことがあった。売買の交渉が醍醐味のゲームであり、世界大会まであるという。ゲームとはいえ、進行するにつれて資産が膨れ上がる勝者と破産に追い込まれる敗者がはっきりとわかれるので、大抵はいい思いができず、だいぶ苦々しい思いをしたことを覚えている。
 『ぼくはレース場の持主だ!』に登場する少年たちも、街の公共建築物を想像上で、頭の中だけでそれぞれ買い占めたり、交換したりして遊んでいる。例えば、「八千だすなら公共図書館売ってやってもいいぜ。」という具合に。その少年たちの中で、アンディ・ホデルだけはこの遊びのことをうまく理解することができなかった。そのため、彼の家の近くにあるレース場で瓶拾いをしていた老人から、このレース場を3ドルで売ってやると言われたことを真に受けて、自分が本当のレース場の持主だと強く思い込んでしまうのだった。
 通常は気づかないことだが、私たちはいとも簡単に空想の世界と現実の世界を行き来している。ゲームの世界を満喫したり、冗談で笑ったりできるのはこの能力のおかげだ。(ただし、現実世界に根を下ろしての行き来でないといけない。ファンタジーの世界に迷い込むことは時に危険をもたらす。)アンディはこの世界の行き来がうまくできない少年と言えるだろう。作品の冒頭には、アンディが今では他の少年と違う学校に通っていること、そしてアンディを含むみんなが、アンディはみんなと違ってしまったことを知っていることが書かれている。
 この作品には、アンディを助ける心強い仲間と、彼らを見守る大人たちが登場する。少年たちは、アンディの思い込みは誤りだと、なんとかして理解させようと苦心する。一方、大人たちはアンディをレース場の「ボス」として扱ってくれるために、彼が傷つくことやパニックに陥ることはないが問題の根本的な解決には至らない。少年たちと大人たちのそれぞれの善意には心あたたまるのだが、だんだんと見ていられない状況になってくる。これがどう解決されるのかは読んでのお楽しみだが、「お見事!」という結末なのでご安心を。
 作中には「障害」の文字やアンディの状態を表す病名・診断などは一切出てこない。だから、子どもがこの本を読めば、アンディはちょっと頭がわるい、まぬけな男の子と思うだけかもしれない。でも、私はどうしても障害(作品に書かれていることだけから想像すると「精神遅滞」)を持った子どもを主人公とした物語として読んでしまう。ただそれは、物語のおもしろさを味わうことを否定するものではない。
 近年、障害者・障害児の生活世界がどのようなものかをできるだけありのままに伝えてくれる自伝や専門書が増えてきた。(私は、『そだちの科学』において滝川一廣氏がこの作品を取り上げていたのを読んで、自分も読んでみようと思った。そうでなければ、ずっと見過ごしていた作品かもしれない。)これらは、障害の特徴記述的な説明だけではつかみきれない生の世界を伝えてくれるため、障害の理解に大変役立つ。そして、リアリティに富んだ物語ほど読みものとして面白いものだ。
 訳者あとがきに「ライトソンは、『現実とはどれほど現実的でありうるのか?』という問題を主題として扱ったのがこの作品であるといっています」とある。この主題だけを見れば極めて哲学的だ。『ぼくはレース場の持主だ!』は、あまりに自明なために埋没している人の精神の不思議を子ども向けの本で意図的に扱いながらも、知的な遅れを持つ子どもの生活をいきいきと描くことに成功した稀有な作品と言えるだろう。このような作品を1968年に書いたパトリシア・ライトソンには敬意を払うし、この作家が1986年の国際アンデルセン賞受賞という形で評価されていることに、世界の児童文学の頼もしさを感じる。

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紙の本体の贈り物

2004/12/11 02:04

私もあなたと生きている、という距離感

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エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手とした連作短篇集です。「〜の贈り物」というタイトル形式に統一された各短篇では、いく人かの患者の日常生活の様子やワーカーの仕事ぶりなどが淡々と書かれています。
この作品のよさは、患者と生活を共にしながらもある意味「他人」であるワーカーの目を通すことで可能になる、人間味がありながら主観に溺れない的確な描写にあると思いました。通常、このような距離を保って患者と接したり、患者のことを考えたりすることはなかなか難しいと思うのです。弱者に対して無関心でもなく、同情心だけでもなく、ともに生きていくための適切なスタンスを持っていたいというのは私自身の願いでもあります。
生活の中のささいなこと(例えば、食べること)が一つ一つできなくなっていく過程を目の当たりにすることで、生きていることのすばらしさや失うことの悲しさ、また、それらを分けあう人がいるということの豊かさを感じられる静かな感動の一冊でした。

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専門的ではあるが、すべての大人が知っておくべきことかもしれない。

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虐待など子どもが関わる事件が報道される際、「児童相談所」という言葉を以前よりも多く耳にするようになってきたと感じる。しかし、この児童相談所ではどんな活動を行なっているのかを具体的にイメージできる人はあまり多くないのではないだろうか。
この本ではタイトルの通り、その援助活動の実際について、現場を経験している方々が詳細に執筆されている。執筆者は神奈川県の職員が中心ということで地域特有の事業なども紹介されているが、活動の概要は共通のものであると考えることができる。
児童相談所においての相談の受付から処遇の決定〜終結までの流れがわかるように配慮して記述されており、その中で、相談援助、一時保護、里親制度など柱となる内容に章が割かれている。
虐待、育児不安、障害など相談種別ごとの記述もあり、それぞれの専門的な対応のありかたなどについては記述に物足りなさを感じたが、その内容の多様さを知ることはできるだろう。ところどころに事例が紹介されているのだが、記述の仕方が中途半端だと感じた。本書の性格を考えると、専門家内でのケース検討ではないのだから、相談の受付から処遇までに各職員や関係機関がどのように関わって事例が進行していくのか、という部分に重点を置いて説明してもらえるとわかりやすかった。また、相談種別ごとにさらに勉強したい人のためのブックガイドなどもあれば最高だったのだが。
巻頭の編者の言葉を読むと、社会福祉の仕事に関わる人や学生を対象にすることを念頭においているようではあるが、子どもを守るための社会的資源について知っておくという意味ですべての人にお勧めできる。初めの5章だけでも目を通せば児童相談所の概要をイメージできるようになるだろう。

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「シェフ、アドマン!」

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純粋で刹那的でありながら永遠の恋愛を描いた小説。
『サヨナライツカ』に感情移入できなかった人でも、この作品はいいと思えるかもしれない。

はじめはフランス料理やフランスの料理界についての記述が目立って気にもなるが、それらの背景描写があるからこそ厳しい日常を精一杯生きるハナやジェロームの姿が眼前にいきいきと浮かんでくる。
特にハナがとても魅力的な女性として描かれていて、こんな女性が身近にいたら
誰もが幸福に毎日を送れるだろうなぁ、と素直に思ってしまう。
堅物なジェロームに好かれようと「シェフ、アドゥマン(また明日)!」と毎日声をかけてから帰る彼女の姿は最後まで心に残った。
それだけに彼女を襲う病魔の残酷さには胸が裂かれる気持ちになり、普段は気づかない私たちの「人間性」のすばらしさにも思い至る。

「音」「香り」など、人間の五感をテーマしていくつか小説を描いている辻仁成だが、この作品はその集大成とも言えるのではないだろうか。

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紙の本東京タワー

2004/12/21 00:02

映像化には向いているかもしれないが、心理描写はいまいち?

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映画化されるということを知って読み返してみた。というのも以前読んだ時にはこれといった感想を持つことがなく、あらすじもほとんど忘れていたからだ。
今回の感想もあまりはっきりしたものはなかった。
主人公の少年二人は今時の大学生の姿をとらえてはいるのだろうが、(私がただ田舎者だからかもしれないが)こんなやつらそうそういないだろうなぁと少し冷めた目で見てしまう。
それでもそれなりに痛々しいほどの恋愛を読ませてはくれる。しかし、タイプの違う透と耕二を登場させただけに、そのどちらも書ききれてないと思えてしまう。また、この少年二人の視点を中心に書いているにもかかわらず作者の気持ちはむしろ女たちにあるのだろうと思えてしまって中途半端な印象を受けた。
あとがきに「読みながら、あらまあ、と思っていただけたら嬉しいです。」とある。たしかに「あらまあ」ぐらいなら思えるので作者の意図したことは達成されたと言えるできなのかもしれない。しかし、一歩引いて「あらまあ」と感想を持ってしまう恋愛小説よりも、もっと読者を惹き込んでしまう恋愛小説を書いてくれることを江國香織には期待する。

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紙の本とるにたらないものもの

2004/12/11 12:31

小さな物語を作るまなざし

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私は江國香織の小説が好きだが、エッセイはもっと好きだ。

身近なものについて感想をさらりと書いているようで、「これなら私にでも書ける」とも思ってしまうが、とるにたらないものについて「うーむ」とうなって文章をひねりだしたのでは、こんなにみずみずしい文章になるはずがない。
つまり、江國香織は、普段からとるにたらないものにも誠実に向き合い、何かしらの感想を持ったり、判断したりして生きているのだと思う。
それは、とてもささやかなことではあるが、日常を幸福に生きるためにはとても大切なことなのかもしれない。
また、誰しも子どもの頃には小さなこだわりが人生を左右するかのような重大なことであり、そのはかなさやなつかしさと、大人になり自分が変わっていくことの頼もしさや残酷さが表現されているので、普遍的な体験として共感が得られるのだと思う。
(これらはエッセイ『泣かない子供』『泣く大人』や他の小説にも如実に現れている江國香織の特徴だ。)

私たちは、とるにたらないものものに囲まれて生きている。
それらは「日常」を形づくる大切な要素だ。
とるにたらない一つ一つのものに誠実に目を向ければ、そこには個々人ごとの物語が浮かび上がってくる。
日常を小さな物語で満ちさせるようなまなざしを持つ生き方を、私は断然支持する。

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