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先月(2017年8月)

よしさんのレビュー一覧

投稿者:よし

63 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本その日のまえに

2007/05/15 23:28

永遠なんてどこにもない。死を題材に生を問う。落涙必至の傑作

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何気ない日常から、ある日突然、愛する人を失う人たちはどうするか。誰でも訪れる死、その日をあなたはどう迎えますか?
こんなに泣いた本はいつ以来だろう。しかも号泣でした。
とめどなく流れる涙。それでも読み続けなければいけない。それは重松作品を読む義務というものだろう。とっておきのラストがあるわけでもない。しかし、読んだ後、生きることや人生ってこういうものなんだなーと考えてしまうのが重松作品であると思います。
この作品も例外ではない。誰もが避けて通りたい「死」をテーマに暗く、重く、辛い作品ばかりです。
ここに収められた作品は、どの主人公たちも死を受け止めていくんですよね。自分がその日を迎えるまでどう過ごしていくのだろうか。
愛する人を亡くした人が読むと、「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」が情景のように、出てきて。その死を思い出しがながら、自分と重なり合いながら読んでしまうので、わたしはグチャグチャに泣いてしまいました。
わたしたちが敬遠する、「死」とはどういうことなんだろうか。それは「生」を思うことなんですね。
ちゃんと重松さんは答えを作品の中で用意しています。それは「考える」ことなんですね。昔を考える、今を考える、そして「その日」を考える。なくなった人たちも、残された人たちも。
永遠なんてない、いつか迎える「その日」を、わたしたちはどう迎えるのでしょうか。それも考えつつ、今をもっと、一日一日を大切なものとして受け止めていかなくてはと思います。とっても辛く、重い作品集です。一つひとつの作品が単独に泣けます。
しかし、重松さんは、ちゃんと最後に繋がるようにしています。
本当にうまい。ストーリーも文章も。流れるような文体と、美しい情景描写。会話の妙。
まさに名人級のこの作品集をぜひ手にとってもらいたいと思います。

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紙の本椿山課長の七日間

2007/03/27 21:55

これぞ、一級のエンターティメント

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

予期せぬ突然の死に見舞われた椿山課長。あの世で彼は「邪淫の罪」に問われている。その嫌疑を晴らすため、美女の肉体を借りて4日間の現世行きを許される。全うなヤクザの親分、現世に未練を残す男の子も絡み、彼は現世で過去を調べることに。

久しぶりに、本当に偶然、手に取ったこの作品。これが大当たりでした。もっとも浅田次郎さんは泣かせの名手。一筋縄ではいかない作家さんだとは思ってましたが、見事にはまってしまいました。泣かせる歴史小説「蒼穹の昴」、数珠の短編集「鉄道員」、そして現代を舞台にしたこの作品でもやっぱり泣きました。浅田さん上手すぎです。
設定が実に可笑しい。人は死んで七日間は魂はとどまっていると聞きます。この作品ではこれを現代的に、一括集中の管理センターが行っているという設定。そしてそれぞれ調べ上げられ、教習を受けて天国と地獄、あるいは再教習して天国に行けるというもの。
あろうことか椿山に下った裁定は「邪淫の罪」。すんなりとは天国にはいけない。その罪はデパートに勤めた頃からの同期生をだまし、快楽の道具にしたというもの。その真相を調べるために不服を持った椿山は美女の肉体を借り、現世へ。あと4日しかないというのに、その美女の肉体を触りまくるんですよ、この椿山。これがなんとも可笑しい。
そして、愛する妻と子どもに会いに出かけるが、そこで知ることになる真実。そして同期生で気心知った仲、かって付き合っていた彼女と、飲み明かす時に知る真実に涙、涙。
ああ、なんて現実は無情なんだろう。いっそ天国の方がいいと思ってしまいます。これだけではありません。さまざまな仕掛けがあって、同じく現世での調査を許されたもの同士がつながっていきます。最後には椿山の父までからみ、とってもとっても気持ちのいい小説に仕上がっています。
なんてうまいんでしょう。笑って、泣いて、優しい気持ちになるこの小説。一級のエンターテイメント小説だとわたしは思います。
ぜひぜひ味わっていただきたいな。

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紙の本永遠の出口

2006/07/01 22:53

こんなに胸が痛くなる小説はめったにない

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

主人公紀子の小学校から高校までの幼年期から青春期、大人へ移行するまでの生活が描かれている。仲間はずれにした友達のこと。中学を前に分かれて行った友達のこと。自分がいじめに合い、はずれていったこと。崩壊する家族のひととき。そして、大人へと成長すること。永遠とは何なのか。永遠の出口、それは大人になってわかる事なのだ。
こんなに各章がそれぞれに味わい深い短編を読むように、切なく痛い、そして胸がキュンとする小説は少ないと思います。
この小説は最初に書いたように、成長とともに出会う、ひとコマや別れの情景や外れていった自分の感情や、初恋とも呼べる人との出会いと別れ、家族旅行、そして方向を決定付ける高校3年から卒業式の1日など、どれも粒揃いで涙し、胸が痛くなる小説です。
かといって、決してじめじめしたものではありません。青春とともに忘れ去っていった自分の姿とだぶって紀子という主人公を観ているからだと思います。
本当にダブるんですよね。仲間はずれにしたことやされたこと。仲間から外れていく過程など。誰もがどこかで見た光景なのです。そんな情景を森さんは見事に作品に出してくれました。
永遠はどこにもない。太陽だって命の限りがある。そのことを知った紀子は永遠という言葉の嘘に気付くのです。そう、それは大人になるっていうことなのですよね。
いつまでもこのままでいたい、いて欲しい。そう願いたいけど永遠はない。
だからこそ、大人になって、辛いことがあっても、限りある日々を大切に生きなくてはと、主人公はいっているような気がします。
「永遠の出口」とは大人への入り口なのですね。
作者は児童文学出身。そう意味では中学生ぐらいから大人まで幅広く読んでみてもらいたい作品です。
もう一度いいます。こんなに胸が痛くなる小説はめったにありません。

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その名にちなんで

2010/02/08 21:44

名前はIDだけど、決してそれだけではない。数奇な名前を持つ男と家族の物語。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

紛れもない傑作だとわたしは思います。
冒頭から、ただならぬ気配。父アショケは、22歳のとき、祖父を訪ねて列車に乗る。その列車が、大脱線事故に遭い、アショケも巻き込まれてしまう。この時、手に持っていた1冊の本が、アショケを救うことになる。この本こそ、ロシアの作家ゴーゴリの「外套」。
物語全体がこの冒頭の父親の事故が影響しているので、敢えてネタバレして書いてしまいます。やがて、結婚しアメリカに渡り、子どもをが生まれます。名付け親になってもらおうと、依頼していた祖母からの便りが、なぜか届かない。父はゴーゴリという名を、この子どもにつけることにする。

そこから、息子ゴーゴリの人生が語られていきます。しかし、事件があるわけでもなく、ただ淡々と幼少時からの家のこと、学校のことなどが綴られていきます。成長したゴーゴリは自分の名前にコンプレックスを感じ、改名してしまいます。ゴーゴリと家族、そして出会っていく女性との生活など、丹念に丹念に書書かれています。

人生の中でゴーゴリは、さまざまな死と別れを経験していきます。父と母とのエピソード。名前に隠された秘密なども徐々に分かってきます。自立をしていくゴーゴリ。そして、離れ離れになる家族。静かに静かに、感動が押し寄せます。そして、ラスト。あー、だめだと思いつつ、泣いてしまいました。

名前にコンプレックスを持っていたのではなく、自分を形作っている、故国インドでの生活習慣やその生い立ちにコンプレックスを持っていたのですね。その代表が、名前だったんです。そんなゴーゴリの半生も30歳までしか、書かれません。もう少し読んでみたかったなー。この家族の続きを読んでみたい。この作者がうまいのは、ここで敢えて終えていることなんですね。

ゴーゴリはいろんな経験をして、人生を生きていくんでしょう。名前は自分を表すIDだけれど、決して名前だけがすべてではないということが、しっかり分かってきているんですね。アメリカに行けば、自由を得られる。名前までも変えることができると喜ぶ、ゴーゴリ。何と皮肉な書き方なんでしょう。
故郷を忘れられない両親と、故郷を知らない子どもたち。その姿がまた滑稽でもあります。しみじみと胸にしみ込む、これは傑作でしょう。

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紙の本アヒルと鴨のコインロッカー

2007/11/10 18:03

善意とは?悪意とは?伊坂幸太郎の最高傑作。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この作品は全てが明らかになる過程が実に秀逸で、早く先を読み進めたいような、しかし怖いような。そこまで読ませる作品はめったにないと思えた作品です。

大学に入学したばかりの椎名の下に、隣人の河崎から持ちかけられた「一緒に本屋を襲わないか」という持ちかけに、椎名は不信感を持ちながら同意してしまう。これが現代。そして2年前の頻発するペット虐待事件。琴美はその犯人と遭遇することに。椎名と琴美の視点から語られる物語は、驚愕と感動のラストへ収斂してゆく。

久しぶりにドキドキして読んだのでした。
特に過去のパートはちょっとつらい。現代のパートから結末がわかってからは特に。

登場人物は個性的で実にいい。ブータン人のドルジ、ペットショップの麗子。そして女好きの河崎。そして、琴美。
2年前の事件から現代につながる悲劇。そして、謎。
なんて上手い展開なのでしょう。伊坂さんは、何て小説を知り尽くしているんでしょう。

ボブ・ディラン「風に吹かれて」は神様の声。それも貴重なこの作品のアイテム。涙、涙なのです。作品のタイトルの意味がわかったとき、泣いている自分がいました。読者をあっと言わせることも忘れていません。
「なるほど」と思わせるのですが、それがわかったとき本当に悲しい。

伊坂さんの、主題は人間の悪意と善意。これに宗教とは何たるかを絡ませて読者に突きつけます。だから、ショッキングなシーンもあります。展開に胸が痛くもなります。

ともかく、現代と過去が繋がるときに見える真実の悲しさに涙してください。相変わらず、いろんなところで伏線がばら撒かれ、読み返しました。
そしてもう一つ、「シッポサキマルマリ」という猫も貴重なアイテム。伊坂さんは優しい作家なのですねー。

面白い、本当にこれは、伊坂幸太郎という作家の全てが詰まった最高傑作だとわたしは思います。

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紙の本クライマーズ・ハイ

2006/06/23 22:03

読み終えた瞬間こそ、クライマーズ・ハイの境地

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1985年新聞記者悠木は、友人安西と谷川岳登山を約束するが、おりしも日航ジャンボ機墜落という世界最大の航空機の悲劇に遭遇することになる。このスクープに忙殺されることに。一緒に登れなかったことを悔やむが、安西も谷川岳には行くことなく病院に運ばれていた。時はたち念願の谷川岳登山の果てに見たものは…。
もっとこの墜落という衝撃の中で日航関係者や被害者のことを書いているのかと思いました。
予想に反して、事故のことは舞台が新聞社だけに淡々と書かれていますが、新聞社ゆえのことです。この事故への怒りや、見てきたものにしかわからない現場の雰囲気が伝わってきます。
また横山さんの持ち味、「組織の中の個人の葛藤」がこの新聞社の中で、いかんなく描かれています。新聞は売れればいいのか?新聞社のモラルとは?スクープとは?真実とは?次から次にと読者に投げかけられてきます。
日本中が悲劇に哀しみ、生存者に涙し、日本航空への怒りが渦巻いた、暑い、熱い1週間の新聞社の内部をノンフィクションと間違うぐらいに熱く語られています。
そして、横糸がジャンボ機墜落なら、縦糸は友人安西の死。
「なぜ山に登るのか」「下りるために上るのさ」
この会話が最後まで投げかけられています。そう意味ではれっきとしたミステリー小説。
それぞれの人物が過去を持ち、過去を乗り越えるため、山を越えていく。人生には山を越えるときがある。
そして、上り切ったら、まさにクライマーズ・ハイ。極限状態を通り越して陶酔の境地になるという。そして次の高みへ。
主人公の行いについて、賛否が分かれると思います。
「組織の中でどうなのか」
わたしはそれでも主人公の一途といっていいわがままを支持します。過去から未来へ前を向くための手段だったのです。
お薦めします。違う側面から日航ジャンボ機墜落を扱ったこの小説。読みきったときまさにクライマーズ・ハイの境地。まれに見る傑作です。

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紙の本三たびの海峡

2010/03/01 22:11

生者が死者の遺志に思いを馳せている限り、歴史は歪まない。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

河時根は第2次大戦中、朝鮮から強制連行され、九州の炭鉱に送られ、過酷な労働を強いられます。それは、想像に絶する非人間的なものだった。暴力と辱めを受けながら、食料もまともに与えられず、賃金もピンはねされる。そして、逃げれば監視の目とすさまじい暴力。働けば炭鉱事故の恐怖。こんな状態で彼らは、祖国に帰ることだけを希望として働いています。

連行された者は、改善を求めて、ストライキを決行します。そこで主人公が唄う、ただひとつの歌が‥。ここで泣いてしまうんです。
次から次に苦難が襲います。しかし、これは事実、日本が行ってきたことなんです。いや、もっとひどいことをしてきたのだと思います。
だから、この事実を決して忘れないため、作者はこの作品を残したとも。決して消し去らない歴史の事実。

「私たちは未来から学ぶことはできない。学ぶ材料は過去の歴史のなかにしかない。…自分に都合の良いように、粉飾した改変を加えた歴史からは、束の間のつじつま合わせしか生まれて来ない」
まさにそのとおりだと思います。

形はミステリーなので、これ以上は語ることができませんが、主人公を動かしているのは日本という国に対しての恨(ハン)。海峡を三たび渡る主人公。隣国との歴史的な考察からの関係や、戦争の本質、現在の日本を考える格好の作品です。
涙なくしては読めない傑作ですが、泣いてばかりはいられない事実がこの作品にはあります。

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紙の本火車

2008/07/26 15:44

ミステリーの金字塔。オールタイムの大傑作。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

傑作というか、現代ミステリーの金字塔と言っても過言ではないでしょう。今回、再読してみましたが、とても16年前の作品とは思えないほど、ミステリーの仕上がり、経済、社会小説の融合。そして、人間ドラマの完璧さ。どれをとっても凄い。
とりわけ、犯人に迫る迫力は筆舌に尽くしがたいものです。そして、何より犯人の正体が分からない怖さ。やっぱりどれをとっても完璧な作品です。

遠い親戚から失踪した女性の捜索を頼まれる、休職中の刑事。捜査が進めば進むほど、とんでもない事件の匂いに巻き込まれる。そして、カード社会の被害者と現代社会における弱者に対する冷酷な仕打ち。被害者と加害者の境目などどこにもなく、被害者も加害者も自分なのだと思えてくる。
16年前とそんなに変わっていないですね。むしろ、ひどくなっているのでは…。そういう意味では、この小説は今の社会を冷静に見つめなおすためには必読なのでは。

そして、随所に宮部さんらしい優しさがにじみ出ています。
智や保に救われたような気がします。
いやー、凄い。再読してわかりました。これは、オールタイムのミステリーです。宮部みゆきの渾身の大傑作という思いは変わりません。

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紙の本

2007/03/05 22:15

想像を絶する過酷な自然、標高7000mからの生還

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ギャチュンカン北壁、それは世界的なクライマー山野井泰史、妙子夫妻にとって、一つの通過点にすぎなかった。登るべくして登る山だった。たった二人だけの登頂に雪崩が襲う。不測の事態に二人はどうやって生還したのか。壮絶に過酷な山から生還する夫婦を描く、ノンフィクション。
凄い作品でした。これがノンフィクションだけに、余計にその描写、特に山で雪崩にあう場面から緊張感が押し寄せてきます。た。
雪崩に遭い、滑落。二人を支えていたロープ(?)に宙吊りになったときに妙子が迷いなく行った決断。度重なる雪崩に、10cmの棚にまたはブランコ状態の中、ビバークせざる終えない状況に陥った二人。決してあきらめることなく、生きるため、生還するため、その経験から最善の方法を見つけ出していきます。
幾多の山を経験している夫婦にとっても、このギャチュンカンは過酷なものだったのです。今や7千mの登山では、酸素ボンベは使わないんですね。そうした条件がさらに二人を追い込んでいきます。
生還後、妙子は凍傷により、足も手の指も失われている。泰史も、幾らかの指を残して失ってしまう。クライマーとしてはもはや絶望的ですよね。生活すらも難しく、絶望でしかなくなります。しかし、妙子さんはそんなことは関係ないというように、前向きに今までの生活と変わりなく、やりとげていきます。「たかが指じゃないの」「何とかなる」。この前向きな気持ちが、泰史にとってものすごい財産であり、勇気なんですね。
二人はこの遭難により、重症を負いますが、再びギャチュンカンに向かいます。今度は登頂ではありません。忘れたものを取りにいくんです。
夫婦の支えが再び二人を山に向かわせます。今も二人は登頂しています。
「人生は山、登って、下りて、また登る」
そんなことを教えてもらいました。夫婦の絆も感動します。
いやー、凄い作品です。

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紙の本いつかパラソルの下で

2006/12/09 12:00

向き合うことを教えてくれる傑作。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

20才を機に家を飛び出した柏原野々。厳格な父親の死が家族に波紋を投げかける。父親とはどういう人物だったのか。家族とは何かを綴るとても温かいストーリー。

この作品の良さをどう書けばいいのだろう。自分探しの物語でもなく、家族の愛を確かめる話でもなく、恋人との話でもない。言えてるのは気持ちも場所も離ればなれになっていた兄妹が、父親の死をきっかけにまた家に帰っていくというところが大きなツボなんでしょうね。
父親のルーツを探る佐渡への旅は、兄妹3人にとって家族ということを感じさせてくれる旅になる。温かい人たちとのふれあい。従姉妹の愛ちゃんとの出会いと別れ。
そんな中で主人公野々は恋人との間もギクシャクしてある結論を抱えて佐渡を後にすることになる。
父親はなぜ子ども達に厳格に育てる必要があったのか。それに反発して家を飛び出した、兄春日と野々。兄妹の中でもっとも可愛がられたのは末っ子の花だけだった。そんな花にも押し付けられ、母の面倒を見ているという不満が鬱積している。兄妹で今まで話したこともないこと。父が残したものは、家族を引き裂くものと思われたが、逆に結束させるものだったのですよねー。父はそこまで考えて死んだわけではないのだが…。
家族の血とはにこだわり続けながらも最終的には新しい家族についても書かれ、とっても読後感はいいです。恋人との関係も、そして何より仕事のことも恋のことも生活のことも、全て父親のせいにして逃げていた自分に気付き向き合うことを決意する主人公にはっとさせられるのです。どこかで言い訳を用意して生きていないかということを。
とっても前向きにさせられる小説です。
しかし、森さんは上手い。この作品はわたしは傑作だと思います。それだけ心に残ります。
いやー、それにしても佐渡の「イカイカ祭り」に行って見たいなー。そしてとっても美しい風景も目にしたい。そんなことを思わせてくれる作品でした

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紙の本図書館の神様

2008/01/12 22:56

本読みの気持ちをくすぐる、究極の癒し本。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

清は高校の時、バレーボールに情熱を捧げていたが、仲間が自殺してしまう
。自分のせいではないとわかっていながら、それから投げやりに。なんとなく高校の講師になり、今は不倫中。興味がないのに文芸部顧問。部員はなんと一人だけ。そんな一年を弟の拓実も挟みながら淡々と描いていく。

真面目な清の性格に前半はつらかった。部の仲間が自殺して、それから全て投げやりになって。この気持ちが痛いんです。ずっと、これを引きずって、地元にもいられなくて逃げて、温かさが欲しくて不倫して。
そんな時、文芸部の顧問になって、垣内君と出会って、何かが変わり始めるんです。お互い運動が好きなのに本を読んでいる。これもまたいい。

最後の発表で垣内君がいいます。
「文学を通せば、何年も前に生きた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分のなかなかのものを切り出してくることだってできる…のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る…僕は本を開いてそれをする」

なんと的確に本読みの気持ちを言ってくれるのでしょう。現実逃避とかいわれようが、わたしは旅したいのです。いつでもどこでも。
そんな垣内君との出会いと弟君のふれあいの中で不倫にけりをつけます。そして高校教師を目指していくんです。そして、地元に帰る決心をするのです。

この癒される気持ちはいったい何なのでしょう。
ラストも泣きました。
本読みの気持ちをくすぐる名作、「図書館の神様」
「はだしのゲン」中沢啓二、「さぶ」山本周五郎、「夢十夜」夏目漱石などもでてきて、文学論も披露されています。これはすごい。究極の癒し本であると思います。

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紙の本だいこん

2007/11/17 20:56

一家を背負う、つばきちゃんは、えらい!苦難から立ち上がる姿が感動を呼ぶ。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

浅草の一膳飯屋「だいこん」を15歳で興したつばき。そのひらめきは幼い頃からの経験によるものだった。飯を炊くことが誰よりも上手かったつばき。そのつばきが「だいこん」を切り盛りする中から生まれる、アイデア。決して苦難にひるむことなく、立ち向かってゆく。

つばきは幼い頃から、父の姿を見て育ち、父を教訓として一人で「だいこん」を立ち上げます。
人を見る目やものの考え方は、父に教わりながら。

次々といろんな困難がつばきにふりかかります。そうした時につばきのアイデアが窮地を救います。こうした困難に遭遇したときの対処の仕方を教わったような気がします。
つばきのように強くありたいなー。

前半はつばきの幼い頃の父の姿が丁寧に書かれています。これは、先にも書いたように幼い頃の経験が強くだいこんに反映されていくからです。酒と博打が好きで借金を返すことができない父と家族の姿は涙ものです。しかし、物見番の賄いとして通ううち自分の才能に目覚めていきます。

いい本というのはいつも思うのですが、中盤からぐっと加速させるものを持っていると思います。この「だいこん」もそう。
店をもつことを決意したつばきのりりしさに感動し、入り込んでいきました。父安治のだらしなさって、それはもう、最悪。しかし、どんなにだらしなくても父の優しさが大好きなんです。こういうところが山本一力さんなのですよね。
家族はどんな境遇であろうと温かいものなんです。

後半に向かうにつれ、だいこんをますます繁栄させていくつばきが書かれます。経営って難しいんですよね。
つばきの姿を読み、読者がどういう風に思うのか。これも山本さんの計算なんです。繁栄している現在に居座らず、さらに上をめざすつばきの姿にやっぱり元気をもらいました。
最後に言います。恋を成就させてあげてください。続編にも当然、期待します。

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紙の本翼はいつまでも

2006/11/19 11:42

ビートルズの名曲とともに、彼らの翼は広がっていく

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

60年代、中学3年の神山少年は深夜、ビートルズの曲「プリーズ・プリーズ・ミー」を聞く。何をやっても思い切れなかった神山の心にこの曲がすっと入り込み、勇気を与えてくれるのだった。夏休みの十和田湖の体験が神山少年を成長させることに。

第1章「お願い.お願い・わたし」での胸をときめかすビートルズとの出会い。そして、野球部を舞台にした教師と大人の矛盾への反発。この章だけでもぐっと胸に迫ってくるものがありますが、何といっても第2章「十和田湖」が素晴らしい。第1章は序章に過ぎなかったのです。
文庫本も出ていますが、単行本のデザインが十和田湖の美しさと内容をとてもよく表しています。まさにマッチしているのです。表紙だけ見て作品を思い出す本はそうそうありません。それだけ美しい。
ビートルズの歌が彼を変え、「プリーズ・プリーズ・ミー」を「お願い・お願い・わたし」と訳すところなど、自分の中学生時代を思い出し、何でもかんでも直訳していた頃があったよなと笑うとともに妙に懐かしい気がします。いまやおやじとなっているわたしにとって、この60年代の何と懐かしいこと。
女性に対する憧れが十和田湖の冒険旅行になり、そこで同級生に恋をする。そして表紙のこの場所での楽しかった夏の別れの会話が実にいい。
ぼくたちはもうすぐ別れなければならなかった。
「楽しかったね……」
穏やかなほほえみを浮かべて彼女がいい、
「うん……」
とぼくがいったきり、二人ともしゃべるのをやめてしまった。
幼い二人のどきどき感が伝わってくるのです。言葉ではなく伝わるものそれが恋。神山少年のとっておきの恋なのです。しかし、彼女は秘密があった。
そして2章のラストはただただ涙。短い夏の恋とやがて来る別れ。そして少年から大人になっていくのです。彼らの翼はいつまでも広げられています。ビートルズの歌と共に。
青春、成長、恋愛、懐かしさなどこの小説をどう形容していいのだろう。どれをとっても素晴らしい。こんなにいい小説にはめったに出会えません。出会えたことに感謝します。おすすめします。

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紙の本ナラタージュ

2006/07/29 08:46

わたしを壊して。あなたにはそうする義務がある。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高校卒業から1年。「母校の演劇を手伝って欲しい」と葉山先生から頼まれる。葉山先生こそ泉にとってかけがえのない男性だった。しかし、葉山の気持ちを知り、別れる決心をする。そうした時、演劇を手伝ったことが縁で、小池という大学生と付き合うことになるが泉の気持ちは葉山先生から離れられない。
心が痛く、切ない。こんなにこれでもかと攻めて来る小説にめったに出会えません。あきらめかけてはまた芽生えてしまう恋心。そうした泉の気持ちと行動に涙します。
浴室で葉山の髪を切るシーンでは息苦しいようなドキドキ感と切なさ。別れの駅のシーンで泉が再び帰ってきて、号泣する場面。そして、年を経て偶然であった葉山の知人との話のラスト。
お互いの気持ちが分かり合えたときの泉の狂おしいばかりの言葉。これで最後だからもう会えないからと切ない気持ちが一気に噴出します。「わたしを壊して。あなたにはそうする義務がある」
小池とのつかの間の恋。葉山に気持ちが行っている小池は泉を引き止めるため、強引になってきます。最初の方のとってもいい人だった小池は泉との恋でだんだん性格が悪くなるんです。これも若さを描いています。
もう一人のダメ男、葉山。基本的に優しさがある人なのでしょうけど、自分の気持ちとは裏腹に、ある事件が理由により妻への思いを断ち切れない。だったら、泉に電話なんかしなければいいのにと思いますがこれも恋のなせる技。泉が必要なんですね。ずるい男ですが、なんとなくわかってしまう自分もいたりして。
恋をし焦がれる思い、待つ思い、そして別れの悲しさの中で、それでもあの人しかいないと思う泉の気持ちにもうやめておけともいいたくなるほど切ない。
恋の本質を切なく書ききった、島本さんはとんでもない才能をもった作家です。
さすが芥川賞候補になるだけの実力がある。
この作品は現代小説と恋愛小説をかね合わせた作品です。
恋をしている人、これから恋をする人、恋をしていた人、恋をしたい人、そう全ての大人に読んでいただきたいなー。この作品の中にきっとあなたもどこかにいると思います。

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紙の本幸福な食卓

2006/10/17 22:44

家族の幸せは、形ではない

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今回はどんな家族の形なんだろうと興味津々でしたが、この作品も心にジーンときました。家族の形はいろいろあれど、幸せとは形ではないんですよね。

「父さんは今日で父さんをやめようと思う」父さんはいった。母さんは家出中。兄、直は元天才。主人公佐和子を取り巻くこんなちょっと変わった家族と、ボーイフレンド大浦君との出会いからの中学から高校までを切なく描く。
形は連作短編なんだろうけど、結果、長編だろうと思う作品です。
冒頭でも書きました、父さんの言葉で始まる印象的なこの作品は、家族がある事件によって、離れ離れになるかならないかというような中、それぞれの思いが詰まって、かといって今の関係を決して壊そうとせず分かり合っていく、家族の物語です。
何といっても兄、直との関係がいいです。元、天才ですが今は農業。趣味はギター。彼と妹佐和子の関係が温かい。佐和子と母も。そして、父も。
あの出来事が無かったら、普通の楽しい温かな家族だった。それをわかりながら、暮らしている家族。その関係が読者に妙に安心感を与える。
しかし、それだけの話に納まらせないのが瀬尾さんの技量。あつかましい大浦君と佐和子の出会いの中で育まれる恋がどんどん大きくなっていき、いつしか主題になっていきます。
そして最終話は誰もが涙する話だと思います。そんな佐和子をそれぞれの家族がそれぞれの形で見守ります。父へ投げつけた一言が胸に染みます。しかし、誰も言い返さない。
何て胸に染みるんだろう。家族の幸せは形ではないんだよなー。と思わせてくれる作品です。あっ、そうそう直のガールフレンド(恋人?)小林ヨシコがいいんですよね。手作りシュークリームも泣かせるんです。
すべての方に読んでいただきたいそんな作品です。 カバーには「大きなものをなくしても、まだあった、大切なもの。」 まさにその通り、あなたにとって大切なものとは一体何ですか?そう問いかけて来ます。題名の通り、食卓がまた美味しそうなんです(母の料理も直の料理もいいんです)。
語ればネタバレになるし、語りたい衝動に突き動かされるそんな作品。とってもいいです。

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