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サトルさんのレビュー一覧

投稿者:サトル

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紙の本居酒屋の流儀

2005/02/04 04:58

大人のための、カジュアルの作法

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書では、たとえば焼酎の味がこのように語られる。
「いわば頑固親父にこっぴどく叱られたけれど、後になりそれが本当の温かな親心であったと気づくような感じ」
 本当に酒が好きなのだな、と思う。飲まない者にとっては全く無意味でどうでもいい細部に着目し、顕微鏡的に観察し拡大解釈し、最後には飲酒というごく日常的な行為から百万光年も飛躍した人生論にまで到達する発想の飛躍、いや「深読み」。だが深読みとは要するに「愛」ではないのか。本書には、たった1人で居酒屋にいるときのあの孤独で、自由で、幸福な時間への愛が、レトリックを駆使して存分に表現されている。
 それが最もよくあらわれているのは、第二章「居酒屋に入る」だ。目次を見ただけでも「居酒屋の外まわり」「のれんを分けて中へ」「酒、肴を注文する」「店内を見る」「主人との話し方」「手酌」と、これはもうほとんど仮想体験の世界。店を選び、入って飲み、出るまでを、完璧に想像させてくれる。著者の提唱する居酒屋三原則(いい酒、いい人、いい肴)をクリアした理想の居酒屋像が、文章によって丹念に姿を現してくる。しかしそうした描写の中からやがて、居酒屋の「居」とは何なのかに焦点が絞られていく部分こそ、本書最大の読みどころだ。
 居酒屋は確かに気楽な空間であるべきだろう。しかし、手軽で安直で適当であれば気楽になれるというものでは、断じてない。きちんとした気楽な「居」心地をつくれるのは、きちんとした「大人」だけではないのか。気楽さとだらしなさをはき違え、年齢だけ重ねたコドモ大人が増える世の中で、筋の一本ピシッと通った本当の大人が集うからこそ実現する、そんな居心地の良さがあって良いのではないか。
 日本ローカルの、酒飲み限定の話をしているようでいながら、本書が訴えかけているのは実はそれをはるかに超えた、グローバル・スタンダードな大人のカジュアルの作法だ。

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