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ミサオさんのレビュー一覧

投稿者:ミサオ

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あなたに似た人

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 架空の町「しあわせの谷」。ここに住んでいるのは「私たちの身近にいる誰か」に似た動物たちばかり。やたらにプライドばかり高い頑固者、噂好きのおばさん、正直だけど気弱な青年、そそっかしいけれど好奇心と行動力に溢れた少女…。それぞれに短所はあるけれど、どこか憎めない。
 そんな町にやってきたポワロック氏が出会うのは、3つの奇妙な事件。ホテルのロビーで一瞬のうちに何者かによって差し替えられた絵画。次々に荒らされる町の特産物「はじけタマネギ」の畑。途切れた線路の果てをさまよう幽霊列車…。それらは、ワトスンが語るシャーロック・ホームズ物語のように、助手の手記として、この世界独特の慣わしや特産物、料理などを紹介しながら語られていく。その古典的風味が心地よい。そして、さりげなく張られた伏線が、後半でクロスワードパズルのように結びついていく快感。そこには、本格推理の楽しさが溢れている。児童ミステリといっても、あなどれない。

 冒頭に登場する「しあわせの谷」に古くから伝わることわざが面白い。
「トンガリ山に雨降れば、馬の床屋が大はやり」
 要するに「風が吹けば桶屋が儲かる」というような意味のことわざなのだけれど、これが、この物語全体のテーマにもなっている。
 どんな町でも、そこに住む人たちそれぞれの生活が微妙にかかわり合って、それらが積み重なりながら成り立っている。人知れず、町の片隅で起こっていることでも、時には、巡り巡って自分自身にふりかかってきたりすることもある。何十年も昔の小さな出来事が、今の自分の生活に結びついていることだってあるかも知れない。普段、私たちはそんなことを意識せずにいるけれど、ちょっとした事件が、その「見えない糸」に気づかせてくれることもある。

 ポワロック氏の推理は、いくつかの奇妙な事件をきっかけにして、この町に住む者たちや、その生活を結んでいる「見えない糸」をたぐっていく。町の人々から忘れ去られた小さな歴史、何気なく見過ごしていた日常の風景…それらの中に秘められた手がかりによって、事件の謎が解きあかされるとともに、その真相は、住人たちに「自分たちの町」を再発見させることになる。

 ほのぼのとしたユーモアに彩られたファンタジーでありながら、ここで描かれているのは、私たちの町かも知れない。ポワロック氏の視線は、そのまま作者が現実の社会に向けたものでもあるのだろう。その視線は、とても温かい。

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