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先月(2017年8月)

Pちゃんさんのレビュー一覧

投稿者:Pちゃん

1 件中 1 件~ 1 件を表示

因果鑑定

2005/03/16 07:59

とってもリアルな精神鑑定ミステリー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

精神科医や心理学者の出てくるミステリー小説とかサスペンス映画は嫌いじゃない。ただ気に食わないのは、たいていは幼児期のトラウマがどうのこうのというもっともらしい精神分析ネタに落ちをつけてしまうところだ。新しぶってもそんなこと、かの巨匠ヒッチコックが「白い恐怖」や「サイコ」でやり尽くしたじゃん。だいたい「夢は性的願望の空想的充足である」というフロイトのご託宣を金科玉条の如く恭しく奉って何十年も、かつ恐ろしいことに何派にも分かれながら生き延びている業界があることすら信じがたい。もともと「夢」という言葉には、『寝ている時に生理的現象として見る幻覚』『実現は難しそうだが、ああなりたいこうしたい』と憧れる大きな悩み、という二通りの意味がある。英語のdreamだって全く同じことでしょう。フロイトが偉そうなこと言う前から、言葉が形作られた古の時代から、人々はそういうことにとっくに気づいて同じ語を当てていた。そんなことを世紀の大発見と崇め奉って……まあ愚痴はこの辺にして、いつかは本物を読みたいと思っていたが、現役のしかも精神鑑定で専門書まで出している精神科医に拠る「リアルな精神鑑定ミステリー(著者自称)」に出遭えるとは、まさに夢がかなうとはこのことですね。精神病院内で殺人事件が起こり、被疑者の精神鑑定を謝金目当てで引き受けた女性精神科医が主人公。志の高いとはいえない彼女だが、ふとしたはずみで正義感を小出ししてしまい、法廷に二度三度と引きずり出されるはめになる。精神鑑定を巡る証言台での論争場面は圧巻だ。具体的証拠や客観的事実を争っているわけでもないのに、どうしてこうも興奮させられるのか、精神という曖昧なものにとにもかくにも目鼻をつけ論証可能な形に整えてミステリーに仕上げる著者の心憎いばかりの筆力には舌を巻く。新ジャンル誕生を予感させる新人の力作である。

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