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  3. はなこちゃんさんのレビュー一覧

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    3月のライオン(1)

    3月のライオン(1)

    羽海野 チカ(著),先崎 学 (将棋監修)

    5つ星のうち 4.5 レビュー詳細を見る

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    はらぺこあおむし 改訂

    はらぺこあおむし 改訂

    エリック=カール (さく),もり ひさし (やく)

    5つ星のうち 4.5 レビュー詳細を見る

はなこちゃんさんのレビュー一覧

投稿者:はなこちゃん

15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本模倣犯 1

2006/01/29 09:15

最後の最後まで読んで、タイトルの意味がようやく判りますよ。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

宮部みゆきの「模倣犯」の文庫版がとうとう5冊出揃ったというので、早速読んでみた。

この作品は何年か前に中井正広主演で映画化され話題になった作品だったが、あまりに頁数が多く分厚いため、今まで少し読むのに怯んでいたのだった。

けれども一度読み始めると、その内容にすぐ飲み込まれていき、分厚さも気にならなくなった。
それどころか、最後の5巻にたどり着いた時には、本当にあと1冊でこの作品が完結するのか疑問に思ったほどだ。

このミステリーで描かれている事件は、若い女性の連続誘拐殺人事件である。若い男性と思われる犯人は、ボイスレコーダーを使ってマスコミや被害者の家族に電話をかけ、被害者家族や警察、事件に慄く社会そのものをあざ笑う。
だがしかし、事件はある時点から思わぬ展開を見せていく・・・。

私自身が20代の女性であることも影響するが、ここで描かれている犯罪は、本当に背筋が寒くなるほどにおぞましい。そして更に、現代の病んだ社会では、いつ実際に起きてもおかしくないようなリアリティのある犯罪なのである。
あまりに怖くて、読んでいる間に何回か夢にまで出てきてうなされたほどだ。

その犯罪そのもののリアルな恐ろしさもさることながら、この小説で秀逸なのは、主軸となる登場人物が多数出てくるにもかかわらず、その全員がきっちりと描ききられているところだろう。
主人公が何人もいるといってもいい。
そしてその全員が、この小説中では欠かすことの出来ない役割を果たしている。

最初はバラバラに思えていた「ピース」たちが、最後にはきちんと自分の場所を見つけてそこにピタリと収まっていく。
練り上げられたミステリーとは、この小説のような作品を言うのだと実感する。

実に頁数を超える読み応えのある小説だった。

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絶対音感

2005/06/18 10:05

音楽の深みを覗くための手引書

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

現在、クラシック音楽が静かなブームになってきている。
クラシック音楽を扱ったまんが「のだめカンタービレ」が累計400万部を売り上げ、有名曲を集めたCDがベストセラーになった。つまり、今までクラシック音楽に縁のなかった多くの人たちが、クラシックに興味を持ち始めたということだ。
私を含めた、そんな音楽に疎い人間たちにとっての驚異の才能が「絶対音感」である。

絶対音感とは、聞こえてきた音の音名(ドレミ)を即座に言い当てることの出来る感覚で、それは楽器の音色だけでなく、例えば救急車のサイレンやコップを叩いたときの音でさえも楽譜の上に表現できるといったものだ。過去の偉大な音楽家のベートーベンやモーツァルトにはあったとされる。
先にあげた「のだめカンタービレ」の主人公たちも当然のようにその持ち主であり、作品の中には彼女たちがその才能を音楽に生かしていくシーンが数多くある。「耳がよい」ということは、音楽で才覚を表していくための必要条件であるかのようだ。

しかし1998年に出版されたこの本では、数多くの音楽家たちや脳科学者などに対する綿密な取材を重ねることにより、一般人には未知の世界であった「絶対音感」の世界を解き明かそうということがなされている。そしてこの本の中では、絶対音感があるが故の問題点、その才能がけっして万能ではないことなど、私たちが抱いていた絶対音感に対する神話が、筆者の熱意を感じさせる文章によりひとつひとつ裏切られていく。その力強い分析に、読み手はただただ感心させられるばかりだ。

クラシック音楽の深みをただ味わうだけでなく、もっと多角的に覗き込んでみたいなら、是非一読することをお勧めする。

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紙の本家守綺譚

2005/06/05 22:49

不思議との共同生活

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作者の梨木香歩さんは、どこかにありそうで決して見つけられないだろう不思議の世界を作り出す名人である。この作品は、そんな不思議の名人がわざわざ「綺譚」と銘打って書き出した作品であり、作者の得意とするわざとらしくないノスタルジーの溢れる和製ファンタジー小説となっている。
舞台は(おそらく)明治時代の日本。売れない物書きである主人公が、湖の底に消えた友人の家の管理人となって、その家でたくさんの不思議と出会う話である。
この小説では、不思議な世界が当たり前に存在するものであるかのように、登場人物の生活の中に紛れ込んでくるため、よみてはまるでこの時代の人々は本当にそんな不思議との共同生活を行なっていたのではないかという錯覚に陥る。家の掛け軸からいなくなった友人がひょっこり顔を出したり、知り合いの寺へ行く道には狸や狐や、竹の精やらがやたらと顔を出す。庭の池には河童がひょっこりやってくるし、雨の夜にはサルスベリが家へ入れてくれとせがむ。
どれもこれもありえない、嘘・ファンタジーの世界であるが、読み手はすんなりとその世界に迎え入れられ、すんなりとその共同生活を共にすることが出来る。そこには「うそばなし」を嘘にしない、本当の真実が隠されているのではないかという気にもなってくる。本当はこういった世界こそが、私たちの本当に属する世界であって、今の現実の方が虚構なのではないかと。
現実的過ぎる現実世界に疲れたときに、ちょっとほっとして、すっきりできる、そんな心の休憩所みたいな、そんな小説だった。

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しあわせってどこにあるんだろう。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作者の西原理恵子は、今放送中の朝のNHK連続テレビ小説ファイトの最後に出てくる、あのなんともいえないやさしい絵を描くヒトである。
この漫画は、その西原理恵子の伝説的作品だ。
舞台はどこかの海辺の小さな町。
登場人物は、そこで暮らす貧しいひとびと。
私たちは、「貧しい」ということを言葉でしか知らない。
それゆえに「清貧」だとか「貧しくとも心は豊か」とか、そんなふうに「貧しさ」を肯定してしまいがちになる。
日本は豊かな国になったけれど、、、と。
けれども、この漫画に出てくる人びとの貧しさは、そんな生半可なものではない。
貧しくて、明日食べるものさえ知れない人びとだ。
金を稼ぐために、女は体を売り、男は人を騙す。
生きていくために、親は子を捨て、子は親を捨てる。
そんな日々がやりきれないから、薬や博打や先のない恋に走る。
けれども、人びとはそんな自分たちがふしあわせだとは思っていないだろう。
そして、彼らは、笑うのだ。生きていくために。
言葉にすれば強烈過ぎるその世界を、西原理恵子はあの単純な絵で見事に描きだしている。
絵のかわいらしさゆえに、読み手にはあの恐ろしい世界に対する不快感が沸いてこない。
ただ、読み終えたあとに、ぐっと心に残るものがある。
ものすごく哀しい話なのに、どこかすがすがしささえ伴う感情だ。
そして私たちは、私たちの生活がどれほどしあわせかを気づかされる。
しあわせを探して道に迷っている人、どうかこの本を読んで、あなたのそばにあるしあわせに気がついてほしい。

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紙の本ナラタージュ

2005/12/10 13:19

ナラタージュ〜

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 久しぶりに読んだあと、何日も胸の痛みが繰り返す本に出逢った。

作者はまだ20代前半。高校在学中に書いた作品が認められ、すでに2回の芥川賞候補となっている。同世代で、同じ文章を書く(全くその質は違うが)人間としては、うらやましいばかりの経歴の持ち主だ。

だが、そんな嫉妬の混じった気持ちも、この本をしばらく読み進めるうちに、軽く吹き飛んでしまった。
昨今の「行間を読ませる」タイプの小説とは違い、まるで映画の一場面をそのままっきりとってきたかのような、緻密で美しい情景描写を背景に、主人公の抑えきれない想いがあふれ出すように綴られる、正統派の恋愛小説。書いても書いても書き表しきれないように、作者の瑞々しい感性が文章となって迸り、読み手を一気に飲み込んでしまう。
少女から大人の女性へ変化していく、そんな20歳という不安定で直向な時期の、切ない切ない恋の話。読み手は主人公と同化し、自分も身を切られるかのようなやるせなさに包まれながら、この小説の世界に溶け込んでいくことができる。

文字の詰まった373ページを一気に読み終えた後、私はなかなかこの小説の世界から抜け出ることができなかった。読み終えて何日た経った今もなお、小説の場面場面がふとした弾みにフラッシュバックし、思わず本を手に取りその場面を読み返してしまう。

読む本読む本全てがこうだととても疲れるだろうが、たまにはこんな本との出逢いもいいものだと思う。

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優しい音楽

2005/07/27 20:23

やさしい、やさしい、恋のお話をしましょ。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いちばん最近、すきな人にちゃんと「すき」って言ったのはいつだったかなぁ。
瀬尾まいこの、このかわいい3つの恋の話を読んで最初に思ったのは、そんなことだった。

この本にのっている3つの恋の話は、どれもとても心地いい話だ。どの恋もいわゆる「正統派」って感じの恋ではないけれど、それぞれの話に出てくる恋人たちの「すき」って気持ちは、みんなとてもオーソドックスで素直で等身大の、まっすぐな気持ちだ。始め方や続いていくかたちはいろいろでも、「すき」っていう気持ちさえ素直に持っていられれば恋ってとても綺麗なものなんだ、って教えてくれるような、そんなお話たち。

たしかに恋はいつも優しいだけじゃなくて、辛いことも悲しいことも、嫌なところもたくさんあるものだ。だけどそういうものも全てひっくるめて、恋って素敵なものだよね、って再確認させてくれる。たぶん、わたしたちの周りにも、素敵な恋はごろごろしてるんだろうけど、普段はやっぱり、照れたりかっこつけたりして、なんだか素直に私たちもその心地よさを忘れがちになっているのだ。だから、こうやってほかの人の優しい恋のお話を読むと、改めてそれを思い出してこんなにいい気分になるんだろう。

今度すきな人に会ったら、素直に「あなたがすきです」って言ってみよう。
そう思いながら、本を閉じた。

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紙の本博士の愛した数式

2005/03/21 12:36

小川洋子の透明な世界

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

小川洋子の作品を読むと、いつも私は、作品の世界と自分との間に透明なフィルターがあるのを感じる。
彼女の作品の登場人物による語りはいつも淡々と進められる。どこか頭の芯を冷やして、彼女(もしくは彼)の存在する、「普通」とは異なる世界を淡々と語っているのだ。そして読み手は、透明なフィルターのむこうから、その世界を覗き見る。
彼女の作品にはけっしてダイナミックな筆致だの、作品世界を浮かび上がらせるようなリアルな描写だのはない。けれども、そうやって冷静かつ客観的に描かれた虚構の世界に、読み手は安らぎと、そして不思議な現実感を——この世界がどこか現実にひっそりと存在していそうな、そんな感覚を覚えさせられるのだ。
この作品は、そんな彼女の描いた、不思議な世界の物語のひとつである。
この本を読んで、そしてこの現実世界のどこかにひっそりとこの不思議な世界があることを、どうか願ってほしい。

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紙の本アジアンタムブルー

2005/09/16 10:29

大人による大人のためのセカチュー

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「世界の中心で愛を叫ぶ」は、映画化やドラマ化もされ、空前のヒットとなった。だけど、私には、あの作品は嘘くさく、ただ死を現実味を伴わない綺麗でセンチメンタルなものとして描いただけのものに思えて、どうもしっくりこなかった。たくさんの本を読んできたせいで、あのストーリー展開がすっかり読めてしまったせいだろうか。それともやはり、普段医療の現場にいて、もっと生々しい人の生き死にを目の当たりにしていたせいだろうか。
しかし大崎善雄さんのこの作品は、主題こそ「セカチュー」と同じであり、さらにそのセンチメンタルさもそのままに、かの作品よりも子供だましでなく、いままで多くの本を読んできた大人でもじっくりと読める作品になっている。

主人公やその周辺人物、パイロットフィッシュの主人公とおそらく同一人物であろうが、作品としてははっきりとその続編にはなっていない。設定と世界観が引き継がれただけの形になっている。作品の内容も、前回とは違って、もっと大きなところまで昇華された恋愛がテーマとなっている。***

ストーリーはセカチューと大差はないだろう。しかし、登場人物が30代でより大人であったこと、その分生きる世界が現実味を帯びていること、その2点で、ここまで読み手に与える印象が変わってくるのかと思える。***

セカチューに感動した人も、セカチューを受け入れられなかった人も、どちらの人にもぜひ読んでほしい作品である。

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単なる闘病記ではありません。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本の著者は、現在山梨県で日本で唯一の「開業ST(言語聴覚士)」として在宅言語聴覚療法に取り組まれている方である。
いままで失語症の患者さんにお会いしたことは何度かあったが、この本を読むまで、恥ずかしいことながら「ことばを失う」ということの苦しみがいかなるものか、思いをめぐらせたことはなかった。この本の前半には、若くして事故により失語症となった著者が、だんだんとことばを取り戻していくまでの困難が、分かりやすく平易なことばを用いて、しかしまざまざと描かれている。その内容だけでも心を打たれるのだが、後半、著者が言語聴覚士となり、様々な患者と出会ってより患者の立場に立った言語療法を求めていき、在宅言語療法にたどりつく、そこまでの物語もすばらしい。「失語症になったけれど、がんばってよかった。」という著者の書いたこの本には、単なる闘病記以上の、深い深い思いがこめられているに違いない。

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紙の本図書室の海

2005/12/23 09:36

想像のための鍵

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「図書室の海」は、今度映画化される「夜のピクニック」や、「六番目の小夜子」など、恩田陸さんの有名長編の予告編のような短編を集めたアンソロジーだ。
そういう訳で、この本の正しい読み方は、もちろん本編を読んだヒトがanother storyを求めて読む、または本編を読む前にコレを読んで、その後本編を楽しむ、といった読み方なんだろう。

しかし私は、それを知っていてあえて、本編抜きにこのアンソロジーを楽しむやり方をお勧めしたい。

この短編集は、予告編が多い、ということもあって、なかなか読者の想像を掻き立てさせる作品がたくさんだ。一癖ありそうな登場人物たちと、すでになにか大きく出来上がっていそうな作品背景を匂わせる設定。本編を読もうと思えば、もうすでに出版されているのだからすぐ読めるのではあるが、その前にこの作品たちには、読者独自の作品を描く鍵がたくさんあふれている。

読書、というものは、完全に受身に徹して行うことも出来る。
だけどそればかりじゃあ面白くない。
こちらの想像力もフルで使って、その作品世界から喚起される読み手自身が創造主となる世界を作り上げることが、読書の楽しみの一つだと思う。

そうやってこの本1冊を味わい尽くしたら、それから恩田陸さんの作った世界に足を踏み入れて、自分の想像との相違点を楽しんでもいい。
一度出た本はなかなか逃げはしない。ゆっくりと出会いまでの時間を楽しめばいいのだ。

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紙の本泣かない女はいない

2005/06/26 17:47

泣けない女のきもち

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「泣かない女はいない」
たしかに、私たちはあらゆる時に泣いている。生きていく上での、いろんな場面で、女は泣く。悲しいとき、嬉しいとき、気持ちをどうしようにもないとき、私たちは泣く。
ただ、それは、実際に涙をこぼす、というのとはちがう。
私たちは、心のなかで泣いている。そして、ときにそれに気づくことすらない。

泣くことの出来ない女も、たくさんいる。
この作品の主人公も、そんな女のひとりだ。
女には厳しい時代、女としての性を、涙を武器として使いたくないと思うほど、女は泣けなくなった。だけど、それは泣かずに済むようになったということではけっしてない。それどころか、泣きたくなるようなどうしようにもない場面はますます増えている。それはつまり、私たちが心の中だけで流す涙の量が増えたということだ。私たちも気づかぬ間に。

すぐ泣く女は嫌い。だから泣けない。でも、本当は泣いているんだってことをわかってほしい。そんな主人公の、主人公ですら気づいていない気持ちが、「NO WOMAN、 NO CRY.」を当然のように「泣かない女はいない」と訳した男性に惹かれていくことに繋がっていく。きっかけはあるようでない。そんな恋の流れて行く先。

自分の気持ちの表現方法にひどく不器用な主人公の、ピュアで淡々とした恋の話。とくに気分の盛り上がるようなラブストーリーではないけれど、こんな本を読んで、泣けない女のきもちにしっとりと寄り添う時間を過ごすのもなかなかいいものだと思った。

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最後の願い

2005/06/06 11:23

こんなミステリーもいいな★

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

世の中にはいろんなミステリーがあって、いろんな探偵役がいる。刑事だったり、本当の探偵だったり、変わったところでは芸能人や女子高生、専業主婦なんてのも読んだことがある。
今回のミステリーの探偵役は、小劇団の役者だ。
事件(というものかどうか。。。)の解決法は、アガサクリスティの描いたミス・マープル式。つまり現場には出ずに、話を聞いてその中で推理するというもの。だけど、その推理の仕方が一風変わっている。劇団の役者のくせ(と彼らはいう)であるところの「登場人物になりきって、当事者の行動の意味を探る」というものだ。彼らはそのようにして、出来事の背景に隠された秘密を明らかにし、そしてその当事者たちの秘めざるを得なかった気持ちを解放していくのだ。
さまざまなミステリーを読んでいくと、推理によって犯人たちを追い詰めるのは楽しいが、その事件がおこった事情を知ると、犯人の気持ちが伝わってきてしまって辛いということがある。登場人物の気持ちを生き生きと描いたいい作品ほど、そういった傾向がある。
しかしこの作品では、秘密を暴かれるほうにも誰かに本当はわかってほしいという切ない気持ちがある。それを暴いていくミステリーなのだから、読み手にも嫌な気分が残らずすっきりと読める。

この小説の最後は小劇団の初日だ。舞台の幕が開くまでの、面白く暖かいミステリー劇をしっかりと堪能させてもらった。

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紙の本漢方小説

2005/06/11 16:13

プチ負け犬入門小説

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

芥川賞を惜しくも取れなかった作品。
主人公は31歳のシナリオライター、恋人なし、お金もなし。いま定義上の「負け犬」が「30歳以上、未婚、子なし」だから、彼女は負け犬にということになるんだろうが、お金の入る仕事をきっちり持って、人生を(一見)謳歌している「負け犬」たちと比べて、主人公はまだまだその入口に立っているといっていい段階である。
そんな彼女が、昔の恋人の結婚を知り、体調を崩して、数々の病院をたらい回しにされた末に、漢方と出会うところから小説は始まる。
この小説の弱点は、あまりにも等身大過ぎることだ。私はまだ23歳で負け犬になるには早すぎる歳だが、医大卒業を来年に控え、負け犬の世界の一歩手前にいる。そんな状況の私が、この小説にはびんびんに共感してしまうのだ。「あさっての方向を向いている精神状態」で決して女には甘くない世界を、それでも精一杯突っ張って生きていく。精神と身体のバランスを、細い一本の綱の上で必死に取りながら生きていかねばならない、そんな中で出会った綱渡りの棒である漢方(それは人によって、例えば簡単手芸キットにも抗うつ薬にもなりうる)にのめりこんで行く。普段は意識することを避けてきた、私たちの立っている地面の不安定さを、この小説はまざまざと描いてしまった。
しかしこの作品は、私たちにそんな現実を直視させながら、それでもなんとか生きていけるんだよ、とささやいてくれてもいる。みんなそうなんだから、それなりにやっていくしかないのだから、と。

また、この小説では、漢方に対する正確な知識も得ることができる。正確で科学的に見える西洋医学に比し、漢方は一見いんちき臭いが、2000年の臨床治験に支えられた、きちんとしたエビデンスのある治療法なのである。また、先に書いた綱渡りの棒の話ではないが、漢方医療は身体のバランスを整えることによってからだをいい状態にしようという治療法でもある。

綱渡りの棒は、漢方でも手芸キットでもいいが、小説でもいい。こういった小説によって精神と身体のバランスを取るのも、なかなかのおすすめである。

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紙の本パイロットフィッシュ

2005/08/23 09:26

人生は水槽の中だけで終わるものではないから。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作者の大崎善生さんは、かつて将棋専門誌の編集長をされていたかたで、そんな作者自身を投影しているかのような主人公が出てくる作品をたくさん書いている。その多くは、主人公の青春をたくさんの人々との出会いを通じて描いたもので、はかなく美しい世界を作り上げている。
この作品は、そんな作者の代表作であり、第23回吉川英治文学新人賞を受賞した作品である。

パイロットフィッシュとは、飼うのが難しい熱帯魚を飼う水槽を作るときに、その水槽の中の生態系を整えるため、あらかじめ入れられる魚のことだ。その魚は、生態系が完成し目的の熱帯魚が入れられると、そのまま捨てられたり、大きな魚の餌食になったりする。おそらくこの作品で作者は、人生を水槽に、過去に出会って別れた人々をパイロットフィッシュに重ねているのだと思う。人生という大きな水槽を作り上げるために、そこを通り過ぎてゆく魚たち。全ての出会いと別れが、一つの無駄もなく、人生を造り上げていくのだ。

けれども、人生は水槽の中だけでは終わるものではない、というのが、この作品のミソであろう。そこには予想外の作用が働く。人生には、理屈だけでは説明のしようもない、そんな要素が、しばしば加わってくる。そんなメッセージも、この小説には描き出されている気もする。

とりあえず、難しい小理屈はおいておいて、この小説のはかなく美しい世界を、先に堪能してみることをお勧めする。

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紙の本アキハバラ@DEEP

2005/05/31 13:00

マンガのような映画のような小説

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

世界の電気街、秋葉原を舞台とした、
石田衣良らしさ満点の作品。
とにかく、それぞれのキャラクターが光っている。
どこかしら致命的なコミュニケーション障害を抱えたアキバ系天才たちと、
戦闘服に身を包んだ美少女。
そいつらが悪の大王のようなIT社長(どこかの有名社長をすぐ思い出したけど)と戦う話。
それだけでワクワクしてくるじゃないの。
いつもどおりくるくる回転の良い場面転換と、
ひとつひとつかっこいいせりふ回しは、
そのままマンガや映画にしてしまいたいほど。
ただ、もう少しいうなら、
せっかくの個々の際立ったキャラが生かしきれなかった。
あれだけのキャラが1冊に6人は多すぎたかもしれない。
それぞれのエピソードがもっと読みたいような、
これだけで終わるのはもったいない小説だった。

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