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先月(2017年2月)

望月 新三郎さんのレビュー一覧

投稿者:望月 新三郎

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本えすがた あねさま

2000/07/09 16:07

見とれてしまう絵の中の姉さま、惚れてしまう色づかい。

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 これは素敵な絵だ。

 つい、見とれてしまう絵本がある。この本も、そのひとつだ。

 画家・梅田俊作と、ある春の日、柴又から矢切の渡しに出かけたときのことだ。道端や、土手に、うっかりすると見落としてしまう小さな花を梅田俊作は、かがみ込んで、しみじみと「きれいだ。ほれ見てよこの色のあざやかなこと。」と、歓声をあげていたのを、いまも、強く印象に残っている。きれいな色に惚れることは、きれいな色も出せるのだなあと、改めて絵本をみて思う。この本の扉絵の姉さまと兄さんの可愛いこと、次の頁にいく前にくぎづけになってしまう。兄さんのところに、姉さんが訪ねてきた場面もいい。

 「なに、なくたっていいです。とめてたもれ。」というなり、あにさんが、おとしたくわをひろいあげ、ぼっくりさっくりたがやしはじめた。

 はじめっから、貧乏な百姓の嫁になりきろうとする姉さまに仕上げていく大川悦生の文体も、美しさを引きたてている。

 姉さまが、兄さんの嫁になってから、機織りをはじめると、兄さんは畑にいかないで、機織り部屋の隅っこに座って、ちょこんと首を傾け、姉さまにみとれてばかりいるわけだが、このポーズが何ともいい。これには姉さまも困りはてて、自ら腕をふるってそっくりの似顔絵を描いて兄さんに渡した。さあそれから、兄さんは、似顔絵を見ながら畑仕事をするのだが、6通りに描きわけた兄さんの姿、しゃがみ込んだり、転んだりして動きが生き生きして楽しい。

さて、それから舞台は大きく変る。ある日、大風に吹きとばされた姉さまの似顔絵は野をこえ、山こえ町から城の庭に・・。

さて、さて、この殿さま、絵姿をみると、姉さまを自分のものにしたくなって、家来に探させると、無理やりに奪ってこさせる。兄さん、つらいつらい三年が過ぎた秋の日、くりを拾って城までくりうりにいく。ひときわ大きな声をはり上げてしかも面白く節をつけて、

 おらがやんまの くりこ くりこ
 しばの木山の しばくこぉ
 ぶなの木山の つぶくりこぉー

この声を聞いて、城の中で、今まで一度も笑わなかった姉さまが笑った。ここが大事よ。
いくら美人だって、笑わないということは本人もそばの人もつらいものだ。それが、くり売りが、おかしいと、姉さまがわらいこけたのだから、殿さまも大喜び。ここまではよかったが、殿さま、くり売りの兄さんの衣装を借りて城の外にでていったのが運のつき逆転、兄さんが殿さまになったものな。お話も絵もゆかいな楽しい絵本だ。

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