坊津うふさんのレビュー一覧
投稿者:坊津うふ
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本いっぺこっぺCANADA 薩摩おごじょの「体当たり」一代
2004/06/25 03:15
編集者コメント
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
『いっぺこっぺCANADA』は、鹿児島からカナダに移住し、農園を営む夫婦の「家族物語」、『大草原の小さな家』のカナダ版! です。人生に真正面から立ち向かう勇気をかき立て、読者が「ジワッと元気が出てくる」本です。
1967年、渡加した田代町出身の青年。彼を追って太平洋を越えた、市内川上町出身の著者。結婚した二人は素寒貧でスタートし、精根尽きるまで働いて土地を手にし、子供が生まれ、家を建て……その間、いくつもの困難を家族力を合わせて乗り越えてきた、37年間のひたむきな歩み。読み進めながら、目頭が熱くなりました。一方で、持ち前のユーモアに、何度も吹き出しました。挿入された薩摩狂句(郷句)もいい味でした。文章の底にあるのは、お天道様に向かって「ありがとう」と素直に言う心、ヒマワリのような向日性です。いっぺこっぺ(精いっぱい)励めば、いつか報われると、あくまでも前向きに明日を信じ、人生そのものを信じる明るさです。
古い鹿児島弁が保たれているのと重なるように、日本人が失いかけている「いっだまし(魂)」が、カナダの地で輝きを放っているのです。その光は、私たちの「今」を照らし出し、自分の足元がしっかり見えてくるような気がします。長女の病と、その回復の過程は「命」「家族の絆」について深く考えさせます。また、異なる言葉・文化の中での日暮らしの様子は、最近さかんに言われる「国際化」ということの本当の意味を考えさせます。土と植物、そして天候が相手の農業、パンや味噌・納豆を手作りする日々——本物のグリーンライフ、スローライフがここにあります。
*
きっかけは、鹿児島県の地元新聞のホームページ・掲示板への書き込みでした。忘れかけていた、古い、正調鹿児島弁と、いかにも薩摩人らしい、切れのいい機知とユーモア。すっかりファンになりました。やがて、21歳で脳卒中で倒れた長女が、闘病の末に社会復帰し、今では福祉関係の仕事で活躍しているというエピソードが書き込まれました。たっぷり流した涙の河を越えたからこそ生まれるユーモアだったのだと感じさせる、いい文章でした。「いっぺこっぺ(精いっぱい)の歩みを文章にしてみませんか?」とeメールを送ってみました。そうして始まった本づくり。なんと原稿は一ヶ月余りで書き上げられました。原稿はすべてeメールでのやり取りでした。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |