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先月(2017年8月)

著者 樽見 茂さんのレビュー一覧

投稿者:著者 樽見 茂

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篠崎屋・樽見茂の成功哲学

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父親から包丁を投げつけられたことがあるだろうか。俺はある。

二十代のとき、世界で初めて「天然にがり絹ごし豆富」というものを作った。その開発中のことだ。うちの親父は根っからの豆富職人で、職人ってものは頑固で気が荒い。俺が豆乳を無駄使いしすぎるってんで包丁をぶん投げてきた。包丁ですよ包丁。息子を殺す気か!

こんなきびしい両親の下で、俺はベンチャー企業を立ち上げた。篠崎屋という豆富メーカーだ。命の危険にさらされながら開発した天然にがり豆富だが、この製法を確立したおかげで篠崎屋は豆富業界の革命児となった。豆富のうまさが好評を博し、スーパーマーケットを通じて爆発的に売り上げを伸ばした。同業他社からは技術指導に招かれ、経営の傾いた豆富メーカー12社を再建した。そして平成15年、業界で初めて東証マザーズに上場した。

一口に株式公開と言うけど、しがない豆富屋にとってどれほど大変なことか。豆富屋ってのは販売面をスーパーマーケットに依存している。生殺与奪権を握られているから価格交渉力がない。バイヤー様から原価同然に買い叩かれるのが当たり前で、どうしたって利益を生み出せない構造になってる。この構造から脱却しないかぎり上場は不可能と言える。たとえ上場しても投資家は魅力を感じてくれない。

起業して以来、スーパーにはたびたび煮え湯を飲まされてきた。商売とはそういうもんだと思って、気の短い俺が我慢に我慢を重ねた。しかし、ある事件をきっかけに堪忍袋の緒が切れ、とうとうスーパー卸から撤退しちまった。業界の常識では考えられないことだ。「正気の沙汰じゃない」と言われた。売り上げのほとんどを自分で捨て、倒産の噂さえ流れた。しかし俺には勝算があった。独自販路の開拓によって生き残ろうと思ったんだ。

無人店舗で直売を開始し、さらに豆富料理店も始めた。ノウハウなんかねえから無手勝流だ。老舗料理屋の厨房を勝手に覗いたり、居酒屋チェーン店にスパイ(バイトだが)を送り込んだりと、ずいぶんいろいろやった。あのときはごめんなさい。おかげで飲食事業は軌道に乗りました。やがて小売りと飲食はフランチャイズチェーンとして全国展開し、豆富の出荷を支えてくれる強力な販売網となった。俺の提唱する「ジジババストア」方式によって、スーパーに頼らなくても経営が成り立つ仕組みが完成した。

この本では、スーパーマーケットを切って自立を実現するまでのプロセスと、それにまつわる俺の経営理念について記した。俺のビジネス手法は回り道だと言われる。たしかに、手っ取り早く儲ける方法はいくらでもあった。濡れ手に粟のぼろ儲けを確信したことも一度や二度ではない。天然にがり製法にしても、あのとき特許を取得していれば今ごろは寝て暮らせたかもしれない。そうしなかったのはなぜか。茨の道をあえて選んだのはなぜか。そのあたりの思いを本書から読み取っていただけると嬉しい。

在学中から豆富屋の修行を始め、脇目もふらずにうまい豆富を作り続けてきた。大豆の品種改良や独特の生産ラインに利益を注ぎ込み、豆富のうまさを追求し続けてきた。これによって他社とは比べ物にならない商品力がつき、今では酒屋さんやお米屋さんまでも篠崎屋の豆富を取り扱ってくれる。自分だけ儲かればいいなんて考え方は大嫌いだ。そのため業界では馬鹿にされ、お人好しの性格につけ込まれたりもしたが、自分の考えを捨てることはなかった。回り道でもいい。利用されてもいい。俺は俺のやり方で仕事をする。この頑固さは親父譲りなんだろうな。でも子供に包丁を投げつけたりはしないよ。

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