若井孝太さんのレビュー一覧
投稿者:若井孝太
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本ダンテ・クラブ
2004/07/30 18:32
編集者コメント
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本書は昨年、アメリカ人作家パールの処女作として、本国のランダムハウス社より刊行された“The Dante Club”の全訳です。著者は1997年にハーヴァード大学英米文学科を最優等で卒業し、イェールの法科大学院に進みました。その間、ダンテ研究の実績を評価され、アメリカ・ダンテ協会賞を授与されています。
彼はハーヴァード在学中に、指導教授からダンテ研究の成果を小説の形で残すことを勧められ、本書の構想を練り始めました。約3年にわたる執筆と改稿を経て世に問うたそのデビュー作は世界中で大きな反響をもたらし、本国でベスト10入りを果たすとともに、30になんなんとする国で出版されることになりました。
“ダンテ・クラブ”は実在した文学集団です。中心人物は物語詩『エヴァンジェリン』で一躍アメリカ文壇にその名を知らしめたヘンリー・ワズワース・ロングフェロー。彼はその後、ダンテの『神曲』初のアメリカ版翻訳に挑戦します。本書の舞台は1865年のボストン。彼はクラブのメンバーであるオリヴァー・ウェンデル・ホームズ、ジェームズ・ラッセル・ローウェルといったボストン文壇の重鎮たちのサポート
を得て、この名作の訳了に近づいていました。
そんな折に続発した猟奇殺人。手口は『地獄篇』に描かれた劫罰に酷似していました。クラブのメンバーたちは、自分たち以外知るはずもないその犯行内容に慄然とします。ダンテの文学を「カトリックがもたらした害悪」と断ずるハーヴァード保守派の圧力、生々しい南北戦争の傷痕——時代がもたらす苦境にめげず、クラブの同志たちは犯人との知の対決に臨むことを決意します。
“緻密なプロット、古典というテーマ、博学なキャラクター——夢中にならずにいられるものか”。『ダ・ヴィンチ・コード』の著者ダン・ブラウンから贈られたこの言葉が本書の魅力を的確に表わしています。必ずやご期待にそえるものと確信しております。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |