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先月(2017年2月)

杉江松恋さんのレビュー一覧

投稿者:杉江松恋

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紙の本風の歌、星の口笛

2004/06/04 22:28

スローバラードを口ずさもう(「本の旅人」2004年6月号書評より/前編)

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「静かな湖畔」って、知ってますよね。
 小学生のころにみんな歌ったことがあるはずだ。もう起きちゃいかがとカッコウが鳴く、あれである。カッコー、カッコーと輪唱する、あれ。村崎友の第二十四回横溝正史ミステリ大賞受賞作『風の歌、星の口笛』の特徴を一言で説明すると、つまりあれなのである。「静かな湖畔」。小説が三つのパートに分かれていて、個々に独立したプロットを持っている。それぞれのパートが追いかけっこをするようにストーリーラインの上を滑っていき、最後でぴたっと終わるのだ。さすがに、カッコーとは言いませんけどね。
 なんだか、おもしろそうでしょう? 各パートが、てんでばらばらなのも興味をそそる。開巻一番に参上するのはトッド・マルーンという私立探偵だ。マルーンのいる世界では、〈マム〉と呼ばれる中央管制システムによって住民の生活が管理されている。ところがそこでありえないことが起こった。絶対に死なないようプログラミングされているペット玩具が、次々に動きを止めたのである。すなわち〈死んで〉しまったのだ。依頼人の少女に泣きつかれ、マルーンはこの不可解な出来事を調べ始める。
 次に登場するのは、地球から遥か二十五光年先にあるプシュケという名の星を探索するために外宇宙探索船〈クピド〉に乗ってやって来た、ジョーとクレインという二人の科学者である。彼らは二百五十年の眠りから醒めてプシュケに降り立つのだが、そこで予想外の事態に遭遇する。繁栄しているはずの文明が跡形もなく滅びていたのだ。
 最後はマツザキという青年が語り手を務める。交通事故の昏睡状態から覚醒した彼は、恋人のスウに結婚を申し込もうと決意した。ところが記憶していた住所からスウは姿を消し、それどころか家族や知人が口をそろえてスウなんて女性は知らないと言い張るのである。記憶が間違っているのか、それとも何かの陰謀か。マツザキは、単身謎を調べ始める。
 読者は三つの謎を並行して追うことになるが、もっとも大きな謎は「なぜ三つの物語が並行して書かれているのか」である。最初の二つの物語がSFタッチであるのに対し、マツザキの物語が都市伝説か怪談のようで、異彩を放っているのも謎の一つだ。ちなみにジョーとクレインの物語では、密室殺人としか思われない謎も登場する。彼らは、惑星プシュケに降り立って最初に発見した建物で異常なものを目撃する。一切の出入り口がない室内で、天井に張り付いて死亡しているミイラである。いったいどうすればこんな死に方ができるのか。二人は惑星滅亡の謎と同時にこの不可解な死の謎も追うことになる。
 最初に「輪唱」と書いた。まったく異なる旋律がてんでばらばらに演奏されていたら、それは輪唱とは呼ばないよね。この作品の三つの物語はまったく外見が異なるが、実は基底音を共有している。「喪失」というテーマである。失われた恋人を捜し求めるマツザキのパートや、滅亡したプシュケ文明の謎を追うジョーたちのパートが「喪失」についての物語であることは明らかだろう。マルーンの物語は一見別物に見えるが、その中でも何かが永遠に失われる。

→後編はこちら

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