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越川芳明さんのレビュー一覧

投稿者:越川芳明

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本昏き目の暗殺者

2002/12/20 15:52

ヤケにステキにねじれたパルプフィクション

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 アトウッドは、どうしてこうした複雑な語り形式を取らなければならなかったのか。
 複雑な形式というのは、つぎの4種類の語りを混ぜこぜにしているからだ。(1)老女(83歳)アイリスの語るチェイス家一代記 (2)地方新聞の記事、ゴシップ誌の切り抜き (3)アイリスの妹ローラの作とされる不倫小説『昏き目の暗殺者』 (4)(3)の小説の主人公の男が語る猟奇的SFファンタジー。
 物語として断然面白いのは、パルプ的感性豊かなジャンクフィクションの(4)だ。舞台は、どこか中東地帯を髣髴とさせるサキエル・ノーン。そこの住民ザイクロン人の打ち立てた都市は、「この世の理想郷」とされるが、実は、貴族と奴隷に別れたきびしい階級社会であり、奴隷少年たちは織り目の細かい絨毯作りを強制され、8歳か9歳でみな失明の憂き目にあう。<昏き目の暗殺者>とは、絨毯作りで失明した子供たちの中で、雇われの刺客になる者のことらしい。
 ところで、“パルプフィクション”とは1930年代、40年代に大流行した安っぽく俗悪なジャンル本(SF、ミステリ)のことだが、(4)で語られるSF的なパルプ物語も、舌を抜かれた処女を生贄にしたり凌辱したりといったように、暴力とセックス、裏切りと復讐をめぐるアクションが次々と出てきて、読者を飽きさせない。と同時に、“出口のない楽園は地獄だ”といった不思議な逆説に満ちた世界でもある。
 一方、そうしたパルプフィクションが流行った時代の、カナダの都会トロントとその周辺の田舎を舞台にした愛と裏切りの物語(1)の語りは、退屈とはいわないまでも、冗漫だ。もっとも、(1)の語り手アイリスはプロの書き手ではないし、もっというならば、19世紀に成り上がったブルジョワ一家の甘やかされた娘でもある。
 作者アトウッドとしてはそうした時代の衣食住にわたる細部を書くことは必要だったのかもしれない。というのも、(2)の新聞や雑誌の記事と共に(1)のアイリスの物語から浮かびあがってくるのが、大恐慌の時代において、渦中にある者が移民や難民や労働者を“アカ”といって排斥するだけでなく、ヒットラーの台頭を讃美しさえし、時代思潮の波に盲目的に呑み込まれてしまう姿だからだ。
 そんなわけで、アトウッドの頭の中には、後に“戦争の世紀”と呼ばれる20世紀のカナダ史の暗い側面を、ブルジョワ貴族娘とプロレタリアート青年との不倫物語(3)を通して語るという壮大な企図があったのではないか。そう考えるとき、(4)を含むこの小説は、はデイヴィッド・リンチの映画みたいに、俗悪だけど、ヤケにステキにねじれたパルプフィクションだな、と思えてくるのである。(bk1ブックナビゲーター:越川芳明/ノマド翻訳家)

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