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先月(2017年1月)

古谷嘉章さんのレビュー一覧

投稿者:古谷嘉章

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著者コメント

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「ブラジルのアマゾン地方のアフリカ系の憑依宗教」などと言うと、それだけで好事家だけが関心をもつ奇妙で風変わりな宗教という印象を与えるかもしれません。しかし実際には、アフリカ系の憑依宗教というのは、ブラジル中で日常的に見聞きすることのできる、ありふれた存在なのです。リオやサンパウロのような都会なら、そこここの街角に儀礼用品店があり、憑依霊像や薬草などが売られています。音楽・文学・美術などの面でも、アフロブラジリアン宗教がブラジルの文化に及ぼしている影響は広く厚く深いものです。それとの交渉の歴史こそがブラジル文化を形作ってきたとさえ言えるかもしれません。
そんなアフリカ系の憑依宗教のなかでも、アマゾン地方のそれは、黒人奴隷とともに大西洋を渡ってきたアフリカの憑依宗教の伝統に、アマゾンの先住民族のシャーマニズムも流れ込んで、新旧両大陸の多種多様な憑依霊たちの出会いの場の様相を呈しています。太鼓と歌と踊りの喧騒のなかで憑依し、人々と交歓する陽気な憑依霊たち。深夜の静寂のなかで、静かなマラカスの音に呼びされて治療のために川底や密林の奥からやってくる憑依霊たち。そんな憑依霊たちとの濃密な付き合いの中で人生を送っている人々。本書は、彼らの生きる豊穣な世界を、「語りの共同体」という視角からとらえ、「語られるものとしての憑依」、「憑依宗教の語るもの」の重層的な語りに照準して、「アフロアマゾニアン宗教の憑依文化」を描き出した民族誌です。
他の人々に対する誤解は、しばしば想像力の欠如の結果です。私たちにとって一見奇妙に見える営みを、こちらの慣れ親しんだ理解の枠組みへと押し込めて一方的に消化してしまうのではなく、その「奇妙さ」による居心地の悪さを安易に解消しようとせずに、他の人々にとって意味あるものとして成立している「世界」を想像すること。そうした試みのために、本書がなにがしかの貢献ができるとしたら、旧知の陽気な憑依霊たちも、きっと喜んでくれるに違いないと思います。

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