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先月(2017年6月)

朔ノ輔さんのレビュー一覧

投稿者:朔ノ輔

3 件中 1 件~ 3 件を表示

結晶言語学って何さ?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ただひとつ約束してほしいのは、ぜったいにわたくしを見てはならないということです」と、シャルビューク夫人は売れっ子肖像画家のピアンボに命じます。
とんでもない額の報酬が約束された奇妙な依頼とは、「私が屏風越しに語る私の人生の物語だけで肖像画を描いてくれ」というもの。ほかの仕事を打っちゃって引き受けてしまう画家。果たして、肖像画は完成するのか? っていうのがあらすじで、その謎解きに引っ張られてズンズン読み進めるのですが、まず夫人の人生そのものが謎だらけ。
夫人が空から降ってくる雪の結晶を“解読”して未来を占う父の才能と技量を受け継いだ、世界レベルの占い師だった、なんて話を信じられます? 屏風から伸びてきた夫人の手が毛むくじゃらで猿としか思えなかったり? 舞台になる19世紀末のニューヨークの“現実”の世界では、若い女性が目から血を流して死んでいく奇病が流行。死別したはずの夫人の夫が画家を脅迫しはじめて……
肖像画を極める芸術小説とも読めますし、ミステリー、幻想文学、ホラーの要素もたっぷり。ジャンルを軽がると超越する作者の企みに堪能させられる、今年一番の海外小説でした。翻訳文も雰囲気をよく伝えていてぴったり!!

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紙の本白い花と鳥たちの祈り

2010/03/16 15:35

あの日、あの時のわたしたちの居場所。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「あさぎはいつも人の話聞くだけで、自分は意見とか言わないでしょ。そういうのって、なんだかずるいっていうか、何考えてるのかよくわかんないし。あさぎって、一緒にいても、つまんないんだよね」

 どきっ、いや、ビリッと来ませんか? 冒頭に近いところで、主人公の中学1年の女子・あさぎは、自分が友だちだと思っていた同級生の千夏からこう宣告されます。あさぎは幼い頃、両親が離婚し、祖母と母親と暮らしてきましたが、昨年、母は年下の「冬木さん」と再婚、来年には弟も出産予定。母と新しい父との三人の暮らし、私立女子中での学校生活のスタートで、心が揺れる。そんなあさぎのおよそ一年間の成長が綴られています。
 息が詰まるような日々で、唯一、あさぎがほっとするのは近所の郵便局。青年局員の「中村さん」(名札で覚えた)は仕事でミスばかりしていて、あさぎが見てもはらはらするほど。でも、中村さんは、あさぎにだけは微笑みかけてくれる(ように、あさぎには見える)。中村さんはあさぎの視線に気づき、ひそかに「幼ごころの君」(エンデ!)と名づけて見守っていたのです。ガール・ミーツ・ボーイ――おたがい名前しか知らず、会話さえほとんど交わさない二人の恋は、恋心は、どうなっていくのでしょう……この小説は中盤の「事件」発生後、二人の感情の高まりを渦巻きのように織り込みながら、ぐんぐん加速してゆきます。

 幾人かのキーパーソンと、幾つかのキーワードを拾うことができます。筆頭はあさぎの実父で、元大手商社マンの「木田」です。今はパワーストーンや鉱物の輸入業務に携わって世界中を飛び回り、あさぎはなかなか会うことができません。大好きなお父さんは何故、家を出ていったの? 木田は娘に長い長い手紙とローズクォーツ(ピンク色の水晶)を託します。
 あさぎにはお父さんがいますが、親でさえもてあましている、二十歳過ぎの中村さんは一人ぼっちです。どうやらごく短期の記憶に障害があるらしく、民営化を控えた郵便局での激務に、中村さんのストレスは募ってゆきます。誰が中村さんを救うのでしょう?

 繊細で、それ故に葛藤を抱えざるをえない登場人物たちに作家は寄り添って、とても丁寧に、祈りを込めるよう描いています。新人とは思えない、落ち着いた筆致です。サブキャラクター陣の造形が秀逸で、図書館登校女子の「溝呂木先輩」(とてつもない読書家!)が私のお気に入りです。

 中学生も、会社員も、先生も、セラピストも、皆、生きづらさ、息苦しさを感じ、居場所を探していますし、その居場所が永遠に存在しないこともわかっています。あの日、あの時の「私」に出会ったような気にさせる、真摯な作品です。次作も読みます。

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知的パンチラ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ショッキングに目を惹く真っ赤な表紙に、影のある女性の写真。作家ご自身でいらっしゃるのでしょうか? 小説のなかみは、或る意味、この装幀をまったく裏切らないのですが、「おもしろいか?」と訊ねれれれば、黙ってしまいます。
 前作『AMEBIC』では、タイトルどおりアメーバ状の“錯文”=文体が話題になりましたが、今回もタイトルはズバリそのもの。作中、編集者の「品川」が、主人公である女性作家の「高原」に長篇の原稿を依頼する箇所で、「オートフィクション」の意図が解説されます。「一言で言えば、自伝的創作ですね。つまり、これは著者の自伝なんじゃないか、と読者に思わせるような小説です」(中略)「ええ、高原さんの自伝風に、小説を書いてもらえないかと」

 ポイントは「風」にあります。自伝を「装う」、つまりニセモノを堂々と宣言して本作は進みます。芥川賞を受賞したデビュー作『蛇とピアス』以来、たいへん頭の良い書き手だと思って読んできましたが、この装いも実に賢いやり方です。派手で赤裸々な過去が明かされても、あくまで「風」ですし、作家本人に重ねられる主人公の書く文章や妄想が恐ろしくひどいものでも、あくまで「風」。「風」とすることで、あらゆる批判から逃れることができるのですから、あら不思議。
 全体は「22nd winter」「18th summer」「16th summer」「15th winter」の四章で構成されています。明示はありませんが、年齢のことを恐らく指していて、現在時では作家になった女性の過去がだんだん明らかになっていく、という流れです。
 冒頭は新婚旅行の帰途の機上での挿話で始まります。これが絵に描いたような“バカップル”。新婦はスチュワーデス(原文ママ)が新郎に色目を使い、新郎もそれに応じて機内のトイレで浮気をはじめてしまった、と妄想一直線。「ああもう彼の性器はあの女のマンコに擦れているのかもしれない。ああもう死ね。破滅だ死ね」。サービス精神旺盛です。この知的パンチラが彼女の持ち味です。そして、「なんて素敵なだんなさん。私の可愛いだんなさん。もう離れられない死んじゃう」という文章で締めくくられる挿話が、後に「小説内小説」だと読者に知らされます……。 あとは、この半ば気のふれたような女性作家の過去へ過去へと、比較的にスムーズに話が進んでいきますが、やはり金原さんのこと、彼女がそうなった根本的なトラウマとかが明らかにされるわけではありません。謎は解決せず、ぐるぐる周りの堂々巡り。どこかのインタビューで、金原さんは、主人公の名前「リン」は、輪廻転生にちなんで名付けたと語っていました。
 手の平を返すような結論ですが、この賢さとパンチラを彼女は早急に捨てる必要があるように思いました。このままでは、幾ら書いても小説の沃野は見えてこないでしょう。柳美里のように、私生活をさらすことをいささかも恥じずに、つまり「風」でなく堂々と書いていくか、『AMEBIC』のような文体をとことんつきつめていくか、どちらかにしか道はないと思います。若さだけでついた読者はすぐに消えていってしまいますから。

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