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    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

アルカンジョさんのレビュー一覧

投稿者:アルカンジョ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本妖都

2008/04/30 01:29

両性具有の美

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この作品は、文句なし、問答無用、両手放しで、大絶賛の言葉を掲げたい。
実は、この書評を書き直している時点で、この本を読み終わって数年がたっているのだが、いまだにあの震える読後感を忘れられないでいる。

津原泰水という名前を、今の文学界に浸透たらしめるに至った、衝撃的な一冊である。

物語は、現代の東京から始まる。
超人気バンドの退廃的な美貌のボーカル、そのボーカルの双子の妹を中心に個性的な登場人物たちが織り成す、幻想的なゴシックホラー小説である。

この小説のキーワードは、両性具有。
その言葉の意味するところのすべてが、この小説には含まれている。
文章は癖がなく読みやすいのに、読者への恐怖感をまざまざと煽り立てるその手腕は、素晴らしいものがある。
また、本作はホラー一辺倒ではなく美的なものも極まりすぎると恐怖に変わるということを、教えてくれる。
ただ、ホラーなのではなくミステリの要素も兼ね備え、津原のこれ以後の作風の予見をもさせてくれる一冊だ。

キャラクター同士の物語がリンクしあい、一番最後に物語の結末を知る時に、読者は混沌と賞賛と恐怖の渦にさらされるであろう。
活字を読むということ、その酩酊感を何よりも楽しみたい一冊である。

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霧のロンドンに行こう!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

舞台は1888年、ロンドンである。
ロンドンは「霧のロンドン」と称されるように、その特異な地形により大変に霧の発生しやすい地域だ。ロンドンの霧の深さたるや、日本ではなかなか体験することのできない、霧である。
そんなロンドンの霧が、まさに鼻先まで香ってきそうな小説である。
主人公は、明治の日本より来る医学生・柏木薫。そして忘れてはならないのが薫のパートナー、日本の貴族階級そして欧米人も目を見張る美貌の鷹原惟光だ。
この二人を中心に物語りは進行し、19世紀ロンドンで実際に起きた有名過ぎるあの連続殺人「切り裂きジャック」の事件が起きる。
史実と虚実が入り混じり、主人公・薫は混乱し、誘惑され、苦悩する。
作品中にはやや女性向けな表現も見られるが、男性読者でも抵抗なく読める程度だ。
この作品からは、19世紀ロンドンの匂いがはっきりと、香ってくる。貧民階級・貴族・見世物小屋・差別と偏見・・・・。
あの時代のロンドンに立ち、まさに薫や鷹原と一緒にあの街を歩き回っているような気分にひたれることだろう。
文体も、読みにくい文体ではない。ミステリ然とした、秩序正しい文章である。
そして、切り裂きジャックについては史実が8割程で当時を再現しつつも、作者のレトリックがきいた作品に仕上がっている。残りの2割は作者のでっちあげ(最後のオチがうまくつきすぎてるので)であり、この作品が単なる「切り裂きジャック」事件再考察書ではないのを感じさせてくれる。
本書の主人公はおどおどした医学生・柏木薫であるが、2002年に同作者より発刊された「一八八八切り裂きジャック」では薫のパートナー、鷹原惟光が主人公となっているようだ。
薫と鷹原は、性格も立場も境遇も真逆といっていいほど違う。別々の主人公の視点から見た、切り裂きジャックの殺人事件。
ジャックに踊らされるのは殺された娼婦か、薫か、それとも鷹原なのか。
霧に沈むロンドンの町だけが知っている。
あと、作者もね。

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