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先月(2017年8月)

志村建世さんのレビュー一覧

投稿者:志村建世

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本平成経済20年史

2011/08/29 21:11

目からうろこの経済史

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ネット上の感想文で「怒りに体が震えた」と書いている人がいましたが、そのような本でした。
 この本は「平成20年史」ですから、記述は年代順に進みます。平成元年(昭和64年)は、まさに日本の絶頂期でした。この年末に、東証の平均株価は3万8915円の史上最高値をつけました。しかし翌年の初めから株価は値下がりに転じ、1年遅れて地価の下落も始まりました。いわゆるバブルの崩壊です。
 バブルは、はじけて当然の悪いものだったと一般には信じられているでしょう。しかしこの本で少し認識を改めました。山は、つぎの谷が深ければ高い山だったことになる。もっとソフトなランディングを心がければ、日本経済の傷は深くならずに済んだというのです。いずれにしても、これが平成経済の悲劇の始まりでした。
 バブルへの対応について、日銀も大蔵省も、致命的な失敗をしました。日銀の利上げも財務当局の「総量規制」も、景気が上り坂のときに発動して、好景気が長くゆるやかに続くよう誘導すべきなのにタイミングを遅らせ、始まった崩壊を深刻化させる方向に舵を切ったからです。「日銀、大蔵省という経済政策の両エンジンが、ともに逆噴射したのだから、日本経済が墜落したのは、当然の結果だった。」と著者は書いています。日本の経済は、この墜落以来、一度も本格的には回復することなく今に至っているのです。
 バブル崩壊は、株価・地価の下落に止まらず、金融機関の相次ぐ破綻となって長く尾を引きました。著者の見地からすると、これはバブル是正の不徹底ではなく、行き過ぎた崩壊に起因する当然の成り行きなのでした。正常な経済回復政策なしに不良債権処理を先行させれば、不良債権は逆に、連鎖的に増加することになります。
 こうしてバブル崩壊から10年たっても景気が回復しない異常な時代となりました。著者の言葉を借りれば「資産が減って嬉しい人はいない。気持ちは暗くなるし、将来は不安だし、物を買う気がしなくなる」デフレ時代の到来です。村山内閣のときにも小渕内閣のときにも、経済回復のきざしは何度かありましたが、いずれもあと一歩のところで本格化には至りませんでした。「日本の政策当局は、あと少しの我慢ができない。日銀は、金利を上げたがり、大蔵省は、財政健全化を急ぎすぎる。」と著者は書いています。
 閉塞状態になった日本の経済社会は、なんとか打開してくれる救世主を待望するムードを醸成していました。そこへ絶妙のタイミングで登場したのが「小泉構造改革」だったのです。そこでは、いくつかのスローガンが呪文のように繰り返されました。「郵政民営化は改革の本丸」「痛みに耐えて構造改革」「よく働いた者が報われる」「金融ビッグバン」などなど。これらの内容を、国民はどこまで理解していたでしょうか。それらはグローバル・スタンダードに遅れないためであるとも説明されました。しかし、それを待望し最大の利益をあげるのが誰であるかは、まだ一般には知られていませんでした。
 小泉元首相が、なぜあれほど郵政民営化に情熱を傾けたのか、合理的な説明は不可能で、選挙で敵対した特定郵便局長会への私怨だという説まであるそうです。郵政職員の給与は事業収益から出ていたので公務員削減のメリットはなく、全国均一のサービスで国民の信頼を得ていた郵便、郵貯、簡保の仕事を民営にしなければならない理由はありませんでした。言われていた「財政投融資の資金源を断つ」というのも、金の流し方の問題であって、まず入口を閉ざすというのは理論の飛躍でした。
 小泉改革の方向性は、アメリカからの年次要望書で迫られていた構造改革と、ぴったり一致しました。それはフリー(自由)、フェア(公正)、グローバルの3原則でした。首相のお墨つきを得た財務官僚は、公的資金を注入して再建した金融機関を外資に買い取らせるなど、アメリカ資本待望のグローバル化を推進して行きました。
 このあたりの著者の記述は、「筆誅を加える」域にまで怒りを高めています。私もしばらく本を閉じて考えました。日本の官僚が、給料の支払い主である日本政府よりも、アメリカ資本の利益を優先して精励努力するなどということが、あり得るのでしようか。それを自覚的に行ったとは信じたくないのです。このままではいけない、グローバル化で生き残るための不可避の選択だと信じ込まされたのではないか。だとすれば、そのような「空気」を作ったものこそが、「小泉構造改革」の呪文だったのではないでしようか。
 呪文に惑わされたのは、国民も大同小異でした。参議院で法案が否決されたから衆議院を解散するという、誰が考えても筋の通らない「郵政選挙」に喝采を送り、小泉自民党を大勝させてしまったのですから、それ相応の報いを受けても文句は言えないのかもしれません。また、当時は日本の経済が景気拡大を続けているという宣伝も行われていました。それは「実感なき好景気」と呼ばれていましたが、選挙には好都合に働いたのでしょう。しかしその実体は経済再建とは無縁のものでした。
 小泉政権下で「史上最長の経済拡大」と宣伝されたものの実体は何だったのでしょうか。それは世界にも例のない長期デフレの中で起こりました。経済は停滞していたのだが、それ以上に物価が下がったので、実質経済成長率はプラスだというものでした。通常の経済成長は物価の上昇を伴うので、物価上昇率を差し引いたものを実質成長と考える、その計算方法を無理やり適用して、文字通りに「マイナスのマイナスはプラスだ」と開き直ったのです。
 絶対量の経済は縮小する中で、いろいろ不思議なことが起こりました。大企業は軒並みに史上最高の利益を上げているにもかかわらず、社員の給与は一向に改善されず、正社員の削減と、派遣、パートなどへの非正規化が一挙に拡大しました。その裏で正社員雇用を前提としていた雇用保険などのセーフティーネットが破綻した事実は放置されました。規制緩和を最優先で実施した結果は、富の集中つまり格差と貧困の拡大でしかなかったのです。
 危ういバランスを保っていた日本経済も、世界的不況の波を受けて弱点を露呈しました。小泉構造改革のあとに残されたものは、国民生活の貧困化と不安定化でした。それだけの痛みを伴ったにもかかわらず、デフレは記録的な長期にわたって改善せず、従って資産も貯蓄も増えることはありませんでした。成長しない経済の下で社会的弱者が増えていた、そこへ大震災の打撃が加わったのが現状です。
 日本には日本の基準があっていいのです。国民生活の安心と向上を第一として、そこから新しい需要を喚起する。その文脈の中では、貧困の解消も震災からの復興も放射能対策さえも、新しい成長の糧になるに違いありません。

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著者からのコメント

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

孫のために、「これくらいのことは知っておいてほしい」、あるいは「これくらいのことを知っていれば大丈夫」と思えることを書いて置こうと思いました。孫が中学か高校生になったころに読んでくれることを想定して書いたので、わかりやすく、読みやすいものになるよう心がけたつもりです。
最大の特徴は、すべての内容を見開き1200字ごとにタイトルをつけてまとめたことです。短い時間でも読める一つごとの話を、10から12話つなげて一つの章を構成するようにしました。中学・高校の副読本として使っていただくのにも適していると思います。
内容は、最初の3章が自分史の部分で、「私が育った時代」「私の戦後精神史」「私のしごと」から成っています。戦争体験の証言から始まり、その時代の混乱の中から自己を確立する過程と、結婚し家庭と職業を作り上げるまでを語ります。若い人たちに、自分の年齢と重ね合わせながら「生き方さがし」の参考にしていただきたいと思います。
つづいて「戦争の世紀」で、戦争と敗戦に象徴される日本の歴史の問題点を解説します。次の世代にぜひ引き継いでほしい歴史認識を、私のジャーナリストとしての良心をかけて提示します。さらに「人間とは何か」「宗教とは何か」によって、人が生きるということの根源的な意味を、私の体験を通して、具体的にご案内します。
「社会思想と労働組合」「男女平等への道」「科学技術と人間」「漢字と日本語・英語と世界語」の4章は、それぞれの分野について私の考察を述べたものですが、いずれも、単なる知識ではなく、人間の幸せのために役立てるという視点で、将来の方向を提言しています。
この本の全体を通して私が読者に伝えたいのは、よく学び、よ考えることで、幸せな人生を全うしてほしいという願いです。

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