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先月(2017年6月)

読み人さんのレビュー一覧

投稿者:読み人

573 件中 1 件~ 15 件を表示

辞世の句まで改変。

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日米ともに多大なる死傷者をだした壮絶なる戦い、硫黄島の戦い。
 米軍から最も恐れられた日本軍の指揮官栗林忠道に迫ったノンフィクションです。

 硫黄島での戦闘そのものに迫るというよりは、
女性の書き手らしく、栗林個人、人間としての栗林に焦点をあてて書いてあります。
 指揮官としては、あくまで旧軍の特徴である精神力を重んじるのでなく、
あくまでも合理主義を貫き、軍中央が推奨する水際殲滅戦の無効を見抜き、
ゲリラ戦を徹底し太平洋戦争上、米軍にもっとも大きな被害を与えました。
 しかし、本書の要諦はこの戦術面ではなく、家庭人、人間としての栗林に尽きます。
絵手紙を送り、家の隙間風を心配し、お風呂の水垢を除去の方法を色々思案し、
そして、戦場に置いて水や食糧の配給を兵と同じ分量にとどめ、
あくまでも、無私で公平で清廉潔白な生き様を貫きました。
 
 さらに、本書についてもっと突っ込んで書くならば、
栗林の残した、辞世の句についてふれなければ、なりません。
 本当は、栗林の採用した作戦が実は、戦術上は合理的なれど
兵にとっては、塗炭の苦しみを強いる作戦だということを書こうと思っていたのですが、
 そういうことすら吹き飛んでしまいます。
タイトルにもなっている散るぞ悲しきですが、これは、栗林の残した残した辞世の句のもっともラストになる言葉です。
 しかし、当時の大本営は、新聞にこの句を載せるに際し、
この最後の部分を散るぞ口惜しと改変しました。

 この愚行たるや、なんでしょう。

 組織としては、重大な戦局を鑑み良かれと思いやったことでしょうが、
充分な人員と私財も送らず、本土防空の絶対防衛線だと配置し
で、死ねば、辞世の句まで適さないと変更する。
 もし、絶対防衛線なら、人も私財もどんどん送るべきです。
本当に、怒りすら通り越してあきれてしまいます。

 日本人による、戦記や旧軍人を対象とした本は、
なんか、情念ばかり空回りしている本が多数ありますが、
 本書は、清廉潔白な栗林の生き様もあり大変よい出来です。
女性の書き手ということもあり、たくさんの女性にも読んで欲しい一冊です。

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紙の本私の男

2010/04/17 00:31

父と娘の近親愛。

14人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 第138直木賞受賞作です。

 一部のファンには兎も角、1回直木賞を候補になるも落選したのも兎も角
世間的には、本書で桜庭さんは、一大ブレイクしたのだと思います。
 そんなに熱心なファンではなかったけど、もう一流作家の世界にいっちゃった感じです。
 北上次郎さんも、本書あたりから、桜庭さんを大プッシュしだしていました。
(しかし、私的には、そんなに化けたって感じもしないのですが、、、)

 震災で家族を失った、花とその養父となった腐野淳悟との近親愛を描いています。
 お互い、欠損家族だと認め合い、お互いをもっとも必要としている二人。
世間からどう思われようと、絆も強く、求め合っています。
 だが、第三者として、いや、感情移入しながら、
2.何人か称で読んでいる読者にとって
なにか、釈然とせず、どこかおぞましい感じさえする二人の愛。
 本書は、時間が逆行するように構成されていて、淳悟の若いときが徐々に描かれていくのですが、ストーカーのように花がおさないときから追いかけていたことも判り、余計にそれを感じます。 
 二人が求め合い、合致すればするほど、違和感を感じていきます。

 どんな親子でも、母親と息子と関係もそうですが、父親と娘の関係もどこか例えようのない
恋愛とはちがう絆というか、愛情の間柄をもっています。
 それが、小説として作品として描かれることによって、なんともいえない雰囲気とともに表現されているように思いました。
 これは、実は、桜庭さんの得意技なんですね、、。
しっかりした純粋な想いなんだけど、異常性、狂気みたいなものを含んでいる
家族いや、関係を変だということを全面に出さず、
読者にはしっかり違和感を持たせながら伝える。

 一大メジャーになった桜庭さんですが、
文壇の稼ぎ頭の中心選手として物凄く変わったんだろうなぁ、と思って読んでみて
意外と変わっていなかったのでちょっぴり安心したかもです。

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紙の本幼年期の終わり

2008/09/13 23:56

クラーク追悼。

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いやぁ、SFをこの光文社の古典新訳文庫で読めるとは、、、。
もうクラークも古典なんですね、、。

 早川版も東京創元社版も読んでいないので、
今回、私、本書は、初読みとなります。
というのも、三部構成の第一部をクラークは1990年にリライトしており
このリライトされたバージョンは、この日本では光文社版だけだとか。
東西の冷戦について言及されていたのを、ここだけは、クラーク書き直したそうです。

 今回は、古典ということで、若干ネタバレの感じで書きますが、
ストーリーとしては、所謂地球人と宇宙人が出会うファースト・コンタクト物
とだけ書いておけば、いいでしょう。
 しかし、これはっきり言ってファースト・コンタクトものではないですね。
 憎悪と恐怖の対象である悪魔の姿をした異星人オーバーロードたちが、人類の進化を見守っていて
さらにオーバーロードの上の存在までいるというのが、本書のネタですが
人類の進化、人類の未来を描いた小説です。
ここまで敷衍して普遍性をもって描くことで純文学まで影響を与えたといわれる
作品になったとまで思えます。
 今回一番思ったのが、クラークってハードSFの権化みたいに思っていたのですが、
 割と、オカルトチックなアプローチも持っているんだなぁということと
(前書きでもちらっと書かれていていますが)
すべてにおいて、物理法則と科学技術が作者の思惑さえぶちこわす
ハードSFの書き手クラークをもってしても
キーになる異星人の姿に悪魔を持ってくることでやっぱりキリスト教的枠組みは
持っているんだなぁということ、。
(ただ、何処の文化でも悪の存在は、角がはえていたり強そうだったりで
 似た感じのビジョンですが、、)
2001年のキューブリックのやりかた、異星人やその絶対的上級者の存在はイメージを具体的に
見せないほうが、文芸上も知的なアプローチでないかとさえ思いました。
 第三部の主人公ジャンが密航してオーバーロードの星へ行くのも
ここは、逆にSFの書き手として異星人のビジョンを書き読者に見せたいクラークが出た感じで、それこそめちゃめちゃ賢くて一般SF読者には、オーバーロードのような存在だったクラークの作家として人間としての限界と書くと書きすぎですが、作家として揺れ惑う気持ちを垣間見た気もしました。

それと、古典新訳の主旨に真っ向からぶつかるようですが、
オーバーロードは、上帝と訳すほうが、文学的だと思います。
なんか否定的なことばかり書きましたが、
でも、まぁ、長年語られてきた凄い作品であることは確かです。
こういう形でも、読めてよかったです。

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紙の本キングの死

2008/10/07 23:45

めちゃ面白!!、北上次郎さんが褒めていただけのことはある.

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アメリカのリーガル・サスペンスの中には、
リーガル・サスペンスという体裁をとっているだけで実は、心理描写、情景描写、内面描写
リーダビリティどれをとっても、普通の中間小説を軽く凌駕している作家たちがいます。
それは、最近は、少し勢いがなくなってきたとは、いえ、
スコット・トゥローに、リチャード・ノース・パタースン。
(本当はネオ・リーガルサスペンスと呼びたい。
 実は、彼らの前から、リーガルサスペンスは存在したので)
え、グリシャムは入らないの?と思われるかもしれませんが、
 グリシャムは、ノンストップな、ページターナーの中に入れたいから。
(心理描写、なんかは、上記の二人に比べる少し落ちます)
その、スコット・トゥローの再来と思われるのが、本書の著者ジョン・ハートです。
処女作で、このレベルを書き上げるとは、恐るべき新人です。

 そして、もう一つ、
どうしてこのレベルの作品が、「このミス」も、文春系のランクにも上位に入っていないんだ!!。
それぐらい、面白い!!。
この疑問にも、答えがわかっています。
本書、奥付けを見ると12月発売。12月には、もうミステリのランキング本は出ているので
前年度と来年度に票が割れたのでしょう、多分。

 プロットですが、
失踪中だった法曹界の大物弁護士エズラが、射殺死体で発見されます。
彼は、法曹界の大物(キング)だっただけでなく同じく弁護士であるワーク(主人公)の父親でもありました。
 そして、彼は、家でも正に支配者、キングでした。
ワークの妹は家出をしており、エズラが、失踪するきっかけも家族内の問題が、、、。
果たして、エズラの死の真相は!?。

最初は、上記した二人のリーガル・サスペンスみたいな、
心理描写たっぷりの内省的なリーガル・サスペンスかと思っていましたが、
ちょっと違いました。
 リーガル・サスペンスと書きましたが、それは、帯の惹句でトゥローと比較されているだけで、
読み終った率直な感想は、実は、あまりリーガルではありません。
ある意味、否が応でも、愛憎が深まる家族関係を描いた家族内の物語りでもあり、
トマス・H・クックのようなミステリ仕立ての家族小説でもあります。
そして、なんといっても、緊張感を保ったまま、ノンストップ。
 新人作家の面白い小説をものにするための気負いで、なにもかも詰め込みすぎて、終盤は"やりすぎ"の観もありますが、
 まぁ、いいでしょう。
ミステリとしては、本当に凄いです。

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紙の本風が強く吹いている

2008/09/14 23:56

箱根駅伝を目指す

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これ、おもしろいって聞いていましたけど、
噂どうりめちゃめちゃ面白かったです!!。
ストーリーは極簡単。
 竹青荘に住む無名大学生が箱根駅伝を目指すというだけのもの。
たったこれだけです。

 読む前は思いました。
スポーツ推薦なんかで、タレントをリクルートしている大学でも
予選会を経て出場するのが、大変なのに、、。
ホームルームでやる気満々の若手教師にクラスでなにかに取り組もうと
言われた直後の生徒たちのように思いました。
「そんなの出来るわけないじゃん!!」
勿論、劇中の登場人物たちも、リーダー格の灰ニ以外は
最初はこの心境です。 

それが、、、。

読んでいるうちに、、どんどん灰ニに感化され
そして走るということに魅せられ、、勿論三浦しをんさんの作家としてのマジックに嵌り
 ラスト近くでは、彼らを純粋に応援している(読者)自分が居るではないですか!。
不平を言いながらも懸命に取り組む練習中(練習というより特訓)もいいのですが、なんといっても、読みどころは、ラストの場面です。
 走るという行為は、勿論競争相手が居て競い合いながら走ることには、違いないのですが、
長距離の場合、取り分け、自分に語りかけながら、又、このペースでいでけるか、自分に相談しながら
又、自分の今までしてきた練習、または、人生といってもいい過去を思い出しながら走る行為なんですね、、。
たすきをかけて走る彼ら一人一人の苦しいまでに熱い思いがきちっと描かれていて本当に感動しました。
 この思いに嵌りすぎたのか、実際に紙幅がそうだったのか、
あまりにも入り込みすぎて確認できなかったのですが、
一番の登場人物である、灰ニと走の走っているシーンが短かったような気さえしてもっと読ませて!!と、、。
 走るとは、こんなに素晴らしい行為なのかとさえ思いました。
 
 兎に角、面白い傑作です。
読むことを皆様にオススメします。

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紙の本マイナス・ゼロ 改訂新版

2010/09/22 01:10

日本タイムトラベルSFの名作

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書、日本のタイムトラベルものの金字塔だそうで、二年前に
新装復刊となりました。
 戦時中、空襲の中、主人公の浜田少年は、お隣の科学者らしき先生から、
18年後のこの日に、この場所に来て欲しいとたのまれてしまいます。
 18年後に浜田青年(時代が経て青年になっている)がみたものは、タイムマシンでした。
 そして、突然現れた女性を助け、
浜田青年自身も昭和初期の過去へとタイムトラベルするのですが、、、。
 
 タイムトラベルだから、どうの、タイム・パラドックスだからどうの
というのを置いておいても、充分楽しめる、リーダビリティの高さでして、
 一種異様なストーリーテリングで、するするさくさく読めてしまいます。
浜田青年のパートでも、今からすると、充分ノスタルジックあふれているのですが、
 その後、描写される昭和初期の東京も中々味わいが深いです。
タイムトラベル後助けてもらう、大将の一家も、いい味だしてます。
 これ、著者の広瀬正さんの性格上そうなったそうですが、
小説内にいやな敵役が全く登場しません。
みんな、ほんわかしたいい人ばっかり。
 対決構造が全くないのに、この面白さはなに!?。
しいて対決構造といえば、終盤に整合を強いられるタイムパラドックスか!?。
 他の作品は、知りませんが、敵役がいないのに、これだけ語れるのは、
SFとしてより、小説としてのストーリーテリングがすごいからだと思います。
 まぁ、タイムトラベルの要素を省いて紹介すると、3部から4部構成になった、
昭和を舞台にした男の年代記ともとれるので、私は、SFとしてより、
このリーダビリティの高さに感服しました。

 最後に、私、タイムパラドックスとか、全く気にせず読む性質なので、
(つまり、小説として面白ければ、OK)
 あんまり真剣にとってないんですが、訳者でありながら、SF書評の大森御大が、
タイムパラドックスをどう処理しているかでその作家の頭のよさが判るとか、
言っていましたが、
 よっぽど強引な展開以外、気にすることないですね、、。
だって、タイムマシンの存在、タイムトラベルすることが、パラドックスなんですから、、。
(多分。間違ってますか?あんまりつめて考えていないの、お気楽書評なので)

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紙の本手紙

2009/04/13 23:36

この本は、ほんと凄い!!感動の一冊です。

11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書、誰もが、感動し、薦める話題の一冊なのですが、
東野さんが上手いのは、知っているよ、ぐらいの軽い気持ちで 
読んでみたら、本当に凄い。正に、感動の一冊です。
 
 貧しい家庭で兄弟で支えあって生きてきた、兄剛志と弟の直貴。
兄剛志が、強盗殺人を犯し、服役します。
しかも、犯行の動機には、弟直貴の学費を助けるためと
いう目的すらあったのです。
 その後、直貴には、獄中の兄からは手紙が届きます。
兄にとって、支え、人とのつながりといえるものは、
弟の存在しかなかったのです。
 直貴は、兄が服役囚であることを隠して生きていきますが
完全に隠して生きることは出来ません。
彼を待っているのは、犯罪者の弟というレッテルと社会的差別。
いつしか、直貴は兄に返事すら出さなくなるのですが、、、。

 東野圭吾作品で、エンタメに徹した作品だともっと面白いのは、
他にも、たくさんあるでしょう。
 しかし、安易に感動という言葉を使いたくないのですが、
感動する小説、人間を描いた、その人間が生きる社会を描いたという意味では、
東野作品でも、最高の作品ではないでしょうか。
 しかも、エンタメ小説としても最高にリーダビリティが高く、ノンストップです。
 ミステリで安易に描かれる"犯罪"というものを加害者サイドから、こんなに深刻に又、ディープに捉えた作品はないでしょう、しかも、それを
東野圭吾という大成功しているミステリ作家の一人が書いたことに意義があるかもしれません。
 作中に登場し、直貴に差別とは、人間社会とはと語る、直樹の勤める会社の社長の存在も凄い。
差別をどう捉えればいいのか。又、人間はなぜ差別するのか、。
これらに対する東野圭吾の考えが十二分にこのキャラに投影されているといってもいいでしょう。
 
 直貴が重大な決意をした後に、訪れるラストもまた凄い。
直気の終盤での決意こそ容易に予想できましたが、
 このラストの2ページいや、最後の1ページはほんと、凄いの一言。
是非、皆さん、一人でも多くの方に読んで欲しいです。

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紙の本ロング・グッドバイ

2008/12/23 23:50

都市文学としてのチャンドラー、今ここに

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いやぁ、出てから、ずいぶん時間が経ってしまいましたが、
今ごろ村上春樹訳のロング・グッドバイ読みました。
ちなみに、清水訳の文庫版のほうは、読めていません。
 一番、いいのは、清水版、村上版、原文を見ながら、一文づつ
味わっていく読み方。(そうされた方もおられると思いますが)
 HB系には、少し疎いほうの読み手である私でも、
それぐらいしなくちゃと思わせる正に、レジェンド的作品であります。
   
 この本のことを知って、最初に思ったのは、
こりゃ、チャンドラーを村上春樹に訳させるという企画を思いついた人の
(編集サイドか、村上サイドか、はたまた大物出版プロデューサーか知りませんが)勝利ですね。
もうこれだけで、アメリカのヒット映画のプロデューサーじゃないですが、
これだけで、充分でしょう。

 プロットは今回は、有名作品と言うことで、意図的に書きません。

 最初は、村上春樹文体、春樹文体って意識しながら読んでいたのですが、
(それほど、文体を意識するほどでもありませんでしたが)
HBの名作中の名作なので、やっぱり気がついたら話のほうにのめりこんでいて、 
(それぐらい、面白い)
村上春樹訳なんてすぐに忘れちゃいます。
地の文は兎も角、台詞回しで若干感じられる程度でしょうか?
(村上春樹のヘビー・リーダーでもないので、この辺も、、、)

 しかし、まぁ主観であるフィリップ・マーロウのクールなこと、クールなこと。
こういった主観を廃し行動面のみを記述するのは、タフさが売り物のアメリカ系文学の一つの完成形というか、典型なのですが、
 ここまでくると、ある種、一人称の文体でどこまで主体の感情を廃し物語りを構築できるか試した文学実験か、とさえ思えてきます。、
 殴られようが、ショックを受けようが、マーロウの感情というものが描かれません。
 主人公の昂ぶる気持ちとともに文体まで昂ぶるシミタツさんの正反対の極致みたいです。
これが、総じて、作品全体のクールさへと繋がっていくわけです。
 それと、マーロウの感情が語られないことの反比例にチャンドラーという人の基本的な、文章の上手さは際立ちます。
 的確に、それこそ描き手とその描きたいものとを最短距離でザクザク描写していきます。
この辺は、地の文になるわけですが、清水訳でも村上訳でも不変であると思われます。
よくアメリカ系のハードボイルドで文体をどんどん省略していって、
ここら辺読み手に正確に伝わらなくても、いいんだ、みたいなのが、ありますが、
それとは、一線を画していて全然違います。
 巻末の解説で村上さんも紹介していましたが、女性のブロンドに対するチャンドラーの描写は、私もニヤリとさせられました。
 又、本編内に登場するアル中の作家もチャンドラー自身と重なり大変興味深かったです。

後、私にとっては、衝撃だったのですが、
 最初に本を見たときから、なんとなく思ったのですが、
清水訳の文庫に比べると、ハードカバーの本書、分量としてなにやらページが多そう。
(そういうのって本読みさんは、敏感なのです)
解説が長いのかなぁとも思っていたのですが、解説を摘んで見ても
むむ、、と。
 なんと、清水版では、カットされているところがあるとか、、。
これは、どう受け取れば、いいんでしょうね、、。
これで、全訳が読めたからいいと言えば、いいのですが、、、。少しひっかかります。
真相がききたいです。

 現代都市文学としてどうなのかは、私にもよく判りませんが、
少なくとも、HBの系譜というか、フォーマットの確立はこうなのだ。
というのは、とてもよく判りました。

 本書巻末には、村上さんの大変よく出来た解説がついているので必読です。

 最後にですが、やっぱり名作と呼ばれるものは、どこかなにかが違います。

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紙の本戦闘技術の歴史 1 古代編

2009/06/26 01:57

古代の軍隊の戦い方

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大型書店に行くといつも、世界史関連のコーナーは、必ずcheckいれます。
 で、本書は、数日前UPした「決戦の世界史」と同日期に新刊で並んでいた一冊で
こんなに読みたい本が連チャンで出て、大変だよう!!。
と嬉しい悲鳴をあげていました。

 古代、ギリシア、ローマを中心に古代の軍隊の兵制、戦いかた、その戦術、
又、実際の戦いも紹介した一冊です。
こちらも、「決戦の世界史」と同様、総天然色(死語)
カラー版でして、またもや、お高い本となっております。

 このころの戦場での一番のプライオリティというか、
戦い方の中心は、ファランクスです。槍を持った軍隊が密集体型を作り
こちらの最も攻撃したいアタッキングポイントに一点集中して迫ってきます。
勿論、相手の集団の行動を束縛、包囲殲滅するために両翼からの包囲も大事なのですが、
(これのティピカルなのが、ハンニバルのカンネの戦い)
兎に角、一糸乱れず、いかにみっちりこのファランクスを作るかに
すべてがかかってきます。
 ここで、ちょっと昔の戦いに詳しい人は、あれ、騎兵突撃は?とお思いになるでしょうが、
このころ、騎兵は偵察ぐらいにしか使えなかったのです。
というのも、鐙(あぶみ)が開発されておらず、
馬の上で武器を使用するのが、大変難しかったからです。
(勿論、猛者は、馬を足の力でがしっと止め、武器を使用していましたが、)
この鐙(というより、鐙の存在意義)を教えてくれたのが、
もうずーっと前ですが、塩野七海さん。
 この鐙の存在は、軍事史上恐らく、銃の開発に匹敵する一大エポックメイキングなのです。
本書でも、騎兵について(というか、鐙)の記述はありまして、
なんと、古代では、騎乗するに際し両膝を馬の背中の上に上げて
(アラビアのロレンスのらくだに乗るときの感じ)
いた時期もあったそうです。
 ついでに、この軍事上での歩兵の密集体型から、騎馬突撃に優先度が移り変わった
戦いを紹介しておきますと本書では、時期がずれているので、紹介されていませんが、
「決戦の世界史」では、大きく扱われていました。
アドリアノープルの戦いといいます。ローマ軍が、マジャール軍の騎馬突撃に壊滅した戦いです。
勿論、鐙をつけた騎馬軍団が突撃したわけですが、
 騎馬突撃には、柵を作って防げばいいじゃないか?という指摘には、
ごにょごにょと誤魔化しておきます。

 本書を読んで知識を得てさらによく判らなくなってしまったのが
ローマ軍です。
本書でも、かなりの紙幅を使って紹介されているのですが、
ローマは、軍事に限らず、文明、文化の技術うえでのシステムは
ローマは、ギリシアを支配するも、ギリシアの奴隷といわれたぐらい
かなりの割合で、そっくりうけついでいます。
 で、ローマ軍もファランクスだと思っていたのが、
本書では、違うと明言されています。
で、個々兵士一人一人の剣裁きがギリシアに勝った例をあげてかかれています。
うーん。
まぁ、ファランクスの上に、短剣での格闘をも付け加えた、アップデートバージョンだと
理解しておきます。

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紙の本大鴉の啼く冬

2008/04/29 17:47

舞台は、シェットランド諸島、、地味ながら好作品です。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 英国より過酷な気候なのが、その北部に位置するスコットランド。
で、そのさらに北に位置し北海に浮かぶ島こそ、シェットランド・アイランド。
その殺伐とした天気たるや、想造するに難しくありません。
しかも、本作で扱われるのは、その冬。

 本作は、そのシェットランド島を舞台したミステリ。
一人の寂しい知的障害を持つ独居老人の家を女子高校生二人が興味本位に訪れます。
その後、そのうちの一人の女子高校生の死体が発見。
 その近隣では、数年前にも、少女の行方不明事件があったのですが、、、。

 著者のアン・クリーヴスが描くのは、この殺人事件のトリックなどでは、ありません。
彼女が描くのは、このシェットランドアイランドに暮らす人々とその地域共同体。
 だれもが、顔見知りでありながら、みんな他人に言えない秘密を抱えて生きている。
他人のことなど、関係ないなどと思いながらも、他人の行動や考えに束縛されながら生きている。
そしてお互いに干渉しあうように暮らさざるをえない。
そんな人間模様が、しっかりと描き出されています。
正に人間関係の縮図です。
 著者の筆力も確かで、読後感は、謎解きミステリを読んだというより
味わい深いいい小説を読んだなぁと、いう感じです。
(数年前の少女行方不明事件は兎も角)
本作内のリアルタイムの事件の犯人の設定は、ちょっと反則っぽいですが、正に本格推理です。
翻訳ミステリで本格派というと、
トリック重視の国内のミステリと違い、このような、中間小説っぽい作品をいいます。
派手さはないけど、質実剛健のしっかりした作品です。

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紙の本英仏百年戦争

2006/11/21 16:55

個人的にですが、めちゃめちゃ面白かったです。

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本、ずーっと読むの楽しみにしていました。
フランスの歴史小説を中心に書いてきた佐藤賢一さんが、
新書で百年戦争を書いたとあれば、読まずにいられません。
(註、本書は新説英仏百年戦争という連載されていたものを、纏め加筆したもので、
 書き下ろし新書では、ありません)
欧州史は、ほんとうに、ややこしい。とりわ人の名前が、
受験や試験勉強中でも、そうでしたが、名前のバリエーションが少なすぎです。
で何世とか、いって区別するのですが、
(今回、本書を読んで初めて気付いたのですが、王位に即位すると、何世ってつくみたいです)
最初は、区別できているのですが、同じ名前が、に三度出てくるうちに、
段々、区別できなくなってしまいます。
今回も、どうにか、一生懸命頑張り、キャッチアップしながら、読みました。
(巻末に、系統図なんかも、ついていて、本当に良書です)
 先ず、本書は、百年戦争と自書銘打っておきながら、
この一連の歴史的戦いを百年戦争と区切るのには、はなはだ、問題があるのでないか?と疑問を呈するところから、始まり、
 最初は、英国史の一頭はじめから、始まります。
というのも、英国の支配王朝が、実は、フランスの分家ぐらいの貴族が
英国をどちらかというと、植民地感覚で支配していたのが、そもそも
英国の王朝の起源だ。ということを、読者の頭に叩き込むためです。
 そして、プランタジネット朝でフランスの北西と英国にまたがる
一大帝国が建設されるのですが、(アキテーヌ大帝国と、呼ぶ最近の学説もあるそうです)
 本書の百年戦争とは、この英国の欧州大陸進出の戦いというより、
フランスの貴族による、欧州大陸の失地回復戦争が、そもそもの理念だと
理解するための、新書なのです。
 この失地回復の戦いは、実は、百年戦争前から小競り合い程度は、
始まっていて、百年戦争が始まった時も、同時代人は、
また、はじまったかぐらいだったのでは、ないか、と佐藤さんは書いてます。
 でみなさん、ご存知の百年戦争について、どわーっと書いてあります。
(それは、読んでください。)
これは、実は、佐藤賢一さんの今までの著作をなぞるというか、
佐藤ワールドの各著作の歴史的位置付けを再認識するのにも、最適の本であります。
主に、含まれるのは、 「傭兵ピエール」とベルトラン・ドゥ・ゲクランを描いた「双頭の鷲」ですが、どういう経緯でこの二冊を書いたのかも、なんとなく窺えます。
 私、佐藤賢一さんの独特の文体を表現するすべを今まで
もっていなかったのですが、北上次郎さんが、本の雑誌で書いていた
佐藤賢一さんを評する言葉でするっと理解できました。
 これって、講談調なんですね、、。
よく、「はん!」というセリフが、佐藤賢一さんの小説には、出てきますが、
これって、どこからくる何の影響なんだろうと、いつも思っていましたが、
 講談調なのです。
で、本書も、新書。それもどちらかというと、折り目正しい世界史を扱った教養新書でありながら、どこか、講談調の文体で書かれています。
それが、読みやすさかもしれませんね。

 この百年戦争、実は、先ほど、フランスの貴族の失地回復戦争だったと、書きましたが、本書でも書かれているもう一つの側面は、
今まで、領主、領家、家というものが、中心だった、共同体のコンセンサスに国家というコンセンサスが、どかーんと根付いた、戦いでした。
戦争を継続するために、国家が大きな帰属意識の共同体として
現れたのかもしれません。
 そして、佐藤さんは、最後に、EUという国家を超えた、共同体の
出現を提示して、国史を超えた、新しい歴史的区分がやってくるかもしれない、と述べ、この本を書き終えています。
 本書は、地図も豊富で、かつ年表から、系統図と
本当に盛りだくさんの、良書です。

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紙の本サクリファイス

2010/08/04 01:36

大傑作です。

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本、このミスでも確か1位だったし私がいまさらピーチク、パーチク
口さがなく言うことでもないのですが、すごいです!!。
 正に大傑作。長い作品でもないのですが、一気読みでしたよ!。

 元々、あんまり詳しくないけど、自転車レース(特にロードレース)が、
戦略性にとみ面白いことは知っていました。
 ちょっと時代背景は違うけど、「銀輪の覇者」っていう作品もあったし
(これも傑作に入れていいと思う)
高坂希太郎が監督した、「茄子 アンダルシアの夏」もあったし、、、、。
(これも、黒田硫黄の原作を読んだ時から、すごいって思ってたもん)

 モップシリーズは、知っていたけど、近藤さんが自転車レースを書くなんて
意外だったのと、ミステリのランキングで国内で1位って聞いても
正直、自転車レースって難しいのにうまく書けてんの?ぐらいにしか思ってなかったのですが、
 いやぁ、、正に脱帽!!。完敗です。本書傑作です。
 まだ読んでない方は、至福の時間が待っている幸せ者です。

 主人公は、陸上競技から転向した、プロの自転車ロードレーサー。
彼が、見る、チーム内での葛藤とその秘められた謎とは、、、。

 題名が示しているとおり、自転車レースって残酷な競技です。
 自転車が出す速度って丁度空気抵抗が効果を発揮する速度域でして
先頭を走ると恐ろしくその影響を受けます、そのため、チームでは、エースを勝たせる為
そのほかの選手は、そのまさに風除けとなりサポートするわけです。
 正に、エースが勝つ為のサクリファイス。
 この辺のチームとしての実情。
 それと、レース他チームも参加する大きな目で俯瞰した場合、
集団で走るときも交代で先頭を走り、消耗を避けます。
 が、一般的によくあるレース展開ですが、集団から抜け出て単独で仕掛けた場合、
その飛び出た、選手は、こちらも数人で先頭を交代で走るのですが、
集団で走り選手たちより先頭走る頻度が多く、消耗します。
 で、ゴール前では大きな集団に飲み込まれることがよくあります。
また、集団から飛び出した選手がたいしたことないと思われると、それを押さえる為に
有力チームから選手が出なかったりと、(本書ないにもあるエピソード)
本当にどっちかというとマラソンに似た、
非情に戦略性の高いスポーツなんです。
 前半はこの競技そのものの面白さがよく描かれていて、
尚且つ、後半は、ミステリ仕立てで怒涛の展開と成ります。このミステリ仕立てにしなくても、
十二分に面白いのに、どんでん返しの連続!。

 兎に角、傑作です。
みなさんに読んで欲しい。

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平和主義者で、賢いけど、ちょっと怠け者の将軍。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 タイトルがなにやら、面白げだったので読んでみました。
それに、こんな人今まで聞いたこともなかったので、、。

 副題から、当時体制派だったナチスと丁丁発止のやりとりをしながら戦った将軍
みたいなものを想像していましたが、全然違いました。
 一人の将軍の評伝というよりは、この子沢山の将軍一家の物語という感じです。

 この方、ドイツの典型的な軍人貴族の一人でして、
さるやんごとなき際というか、貴族です。
 で、ドイツ陸軍最高司令官まで上りつめます。この辺から、ナチと戦うのかなぁと
思っていると、ヒンデンブルクの組閣でヒトラーが指名されるときに、
あっという間に、最高司令官の職から辞任。
 自分の辞任と引き換えにもうちょっと組閣人事で取引をすることもできたみたいですが、
そんな権力のパワーゲームには、まったく興じません。
 全然戦っていないじゃんと、言いたいのですが、(肩透かし)
この人、ナチは嫌いだけど、国を二分してまでというか、
陸軍を二分してまで戦う気はなかったみたいです。
 この人、職業軍人なんだけど、いい意味でも貴族というか、頭はすごいいいんだけど、怠け者。
そして愛すべき趣味人でして戦争より狩りが好き。この引退後は、趣味の"狩り"に没頭。
 ただ、この人のおうちは、反ナチス派の軍人の会合場所にはずーっとなっていたみたいですが。
で、ハマーシュタインご本人は、ロシアとのつながりを周囲から指摘されながらも
(戦争後半でドイツとロシアは、敵対国にな壮絶な東部戦線から創造し難いですが
 戦争開始前まで同盟国でした)
この後、幸せに亡くなられます。(また、肩透かし)

 で、この後は、このハマーシュタインの子供たちの話になり、
ある意味、こっちの方々の方が、武闘派といいますか、強烈。
ハマーシュタインは、自由を愛する戦争嫌いだったように、子供たちにも完全な放任主義でして、
娘さん二人は、ロシアの工作員とみっちり関係していたし、息子さんは、
戦争後半のヒトラー暗殺に親父さんより直接的に加担していきます。
(逆の意味での肩透かし)
 いい意味での外されっぱなしの一冊でした。
  
 本書、評伝というか、完全なノンフィクションなのですが、
死者とのインタビューというコーナーがありまして、
著者と対象者がインタビューしています。
そう完全なフィクション。この部分もなにやら微笑ましいというか、面白かったです。
 
 それと、これも解説にも書いてあったのですが、この本、悲惨な時代を生きた評伝にしては、
どこか明るいというか、希望に満ちた一冊でして。
 人生というものを不可解なものと捉えながらも、どうしてロシアの工作員とつながりがったのか、
とか、娘さんに問うても人生なんて私ごときに完全な答えがみつかるわけがないと
答えさせ、そのまま放置しています。
 そう、生きていることこそに意味があり、それが人生だと言わんばかり。
 
 妙に読後感の明るい一冊でした。 

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紙の本陰日向に咲く

2009/08/25 22:46

小説として普通に面白い。

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 面白い、面白いって聞いていましたが、
(確か、帯を恩田さんが書いていたでしょ?)
どんなもんかなぁって感じで読んだのですが、、、。
 これ、小説として普通に面白いじゃないですか!!。

 芸人さんって、実は表現する人としての演者の部分が強調されていますが、
芸人の中でもネタを書いている人って実は、モロ創造者としての作家さんなんですね。
 又、フリートークなんかでも、
面白くなる部分を再構成して話すということは、やっぱり作家としての
構成、ある程度の誇張、能力も要求されているわけです。
 で、やっぱり創作の能力もあるわけです。

 劇団ひとりは、テレビで出ているのを見る程度にしか知りませんが、
これで、ちょっとコントというか、ネタの部分も見てみたい気になりました。

 本書、作品としては、独立した短編内で、キャラが共有されている部分を
よく言われていますが、
 所謂、社会の底辺で生きる、ちょっといけてない人々を描いた短編集です。
 まぁ中間小説の王道と言えば、王道なんだけれど、
 兎に角、筋運び、人間描写、ともに、高レベルです。
 ギャンブル好きの男が語る、勝ち組み負け組みの理論なんて
ほんと共感してしまいました。

 普通に、みなさんにオススメできます。
ただ、恩田さんが、書き続けて欲しいと
半分、挑戦的に帯に書いたのもちょっと頷けます。
 大沢さんも、文学賞の獲り逃げは許さないなんて言っていましたが、
書き続けるのが、プロなんですね、、。
まぁ、読み手は、面白い作品を"はしご"するだけで満足なんですが。
多分、本業の方が、忙しくて、書けないでしょうが、
これだけ好作品だと恩田さんが書いた帯を肯定的にとって
(なんか、職業作家が、腰掛のバイト作家に言った嫌味にもとれる)
書き続けて欲しいです。

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紙の本聖餐城

2008/08/07 01:25

堂々たる西洋歴史小説

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 皆川博子さんについても西洋史っぽいものをたくさん書かれていると
耳にはしていたのですが、これほどとは、、、。
 
 読む前は、お城を舞台にした、ゴシック・ミステリかなぁ?なんて思っていましたが、
全然違いました。 

 旧教、新教に分かれ、又、外国からの干渉軍まで引き入れて
凄惨な戦いが30年も続きその後の、ドイツの発展を遅らせた原因にまでなったといわれる
ドイツ30年戦争。
 馬の腹から生まれたといわれる孤児アディ、ユダヤの金貸しの一家コーヘン家、
傭兵隊長ながら、一国の領主まで昇りつめた、ワレンシュタイン、
傭兵にありながら、清く生きる、フロリアン兄弟などを、巧みに配置し
この30年戦争をリーダビリティが少しも落ちることなく、最後まで描ききっています。

 当時の傭兵が主体となった、凄惨な戦争の様子もさることながら
又、敵味方が入り乱れ権力の奪い合いの歴史絵巻として、
又登場人物たちの生き様も含めて、群像劇としても圧倒されました。

傭兵隊長ピエールでも描かれていましたが、当時の軍隊というか、傭兵は、
戦争が乾期になるとそのまま無法者の野盗集団に変わります。
 又、その傭兵集団にぞろぞろとついて回る輜重部隊とは、名ばかりの
娼婦と軍隊の御用足し商人の群れ、
登場人物の一人アディは、この輜重部隊で育ちました。
この辺の様子も、大変リアルに描かれています。
 正に、30年戦争を庶民それも、もっとも最前線の傭兵の視点からも
描いているわけです。
 又。当時、コーヘン一家、非差別民族だったユダヤ人一家の金貸しについても
そうでして、既得権益、実労の職業にはつけず、
生きるためには、金貸ししか商売がなく、
その分、教育と金融、情報には投資し被差別民族として表には、立てないが、
歴史を裏側から支配しようとする様が、大変リアルに描かれています。
彼らに言わせると、戦争は、大変儲かる。又自分たちを擁護してくれる権力者に投資するだけでなく、
金融と情報の力を屈指してそのような、権力者を育てていくのだと。
恐ろしいまでの、生き様です。

 巻末の参考文献も気になったのですが、
そこに、「ドイツ傭兵(ランツクネヒト)の文化史」(読めていません)が、でーんとありました。
これは以前、この本の訳者、菊池良生さんが、この本を底本にして書いた、
新書「傭兵の二千年史」(読みました)でも、紹介されていて、
ずーっと読みたいなと思っていた本です。
載っていて嬉しいやら、ちょっと悔しいやらでした。

 リアルなところ、歴史書としてのポイントなんかばかり
書きましたが、メインではありませんが、暗号、謎、ミステリとして面もありまして、当然、小説としてのリーダビリティも相当です。
 ちょっととっつきにくいかもしれませんが、
圧倒されること間違いなしです。

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