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先月(2017年6月)

ようすけさんのレビュー一覧

投稿者:ようすけ

1 件中 1 件~ 1 件を表示

最後の宝

2005/09/29 23:07

読み終えた後の圧倒的な充実感!「古き良きアメリカ」の雰囲気をもった児童書。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 一気に読んでしまった。ずっしりと読み応えのある本だった。まず、主人公の少年、エルズワースがいい。この感受性の強い少年は、自分の一族の歴史に圧倒されそうになりながらも、果敢に前へ進んでいく。最初のほうで何回か、彼の視点で、何かただならぬことが起こりそうだという予感を書いた部分があるが、その場面は読んでいてぞくぞくと鳥肌が立った。実際に起こる出来事、というか、わかってくる一族の歴史も、この予感にたがわず波瀾万丈だ。
 もう一人の主人公であるジェスは、わがままいっぱいの困ったお嬢さんとして登場する。エルズワースは、彼女の気まぐれに翻弄される。だが、やがて、そんな彼女の心の中のやわらかい部分、心に負った傷が見えてくる。おかしな行動の理由がわかってくる。そのころには、エルズワースもやられっぱなしではなくなる。最初は「迷コンビ」だったこの二人が次第に息が合い、名コンビになっていく様子がほほえましい。
もう一つおもしろかったのは、実際に語られているのはわずか数日の出来事であるにもかかわらず、また読むのにかかった時間もごく短いものだったにもかかわらず、長い時間の流れを感じさせられたことだ。エルズワースとジェスがザ・スクエアと呼ばれる居住地内のあちこちを訪ね歩き、人々を訪問してまわるにつれ、この一族の上に流れてきた時間が、読んでいる者の心の中に積もっていく——そんな感じなのだ。
 結末を考えると、ミステリとしてはやや異色の作品と言えるかもしれない。インディー・ジョーンズ風の宝さがしを期待していた読者の中には、とまどいをおぼえる人もいるかもしれない。だが、読み終えた後には、そういったジャンルを超えた、圧倒的な充実感があった。
 なお、物語の展開はスピーディーで現代的だが、全体に「古き良きアメリカ」の雰囲気が漂う。最近、アメリカやアメリカ人に嫌気のさすような出来事が多いが、こんなアメリカだったらつきあってもいいなと思った。せかせかと忙しい生活のなかで、ひさしぶりになごませてくれた作品だった。

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