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  3. 青木レフさんのレビュー一覧

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先月(2017年6月)

青木レフさんのレビュー一覧

投稿者:青木レフ

14 件中 1 件~ 14 件を表示

紙の本惑星のさみだれ 9

2010/06/21 04:24

エンデからツークンフトへ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

長い伏線が結実するのは楽しい。心ふるえる。
古くは「気分はグルービー」最近では「ネウロ」「SKET DANCE」で長い伏線が結実するのを見た。不発にならなかった数年越しのアイデアの見事な回収は、長年応援してきた読者へのご褒美であり、何を描きたいか何を描いてきたのか明確な指針を持ちつづけていた作者だけに許された収穫イベントでもある。

「惑星のさみだれ」9巻を読み、続けて1巻を再読した。つまり多くの読者がするであろう行動を取ったが、やはり気付かされる事は多かった。
1巻で示唆されていた主役2人、雨宮夕日と朝比奈さみだれの因縁が9巻で明らかになるのだが、1巻2話の
「信じる信じないを気軽に口に出す奴はキライだなぼくは」
は、9巻55話
「信じる信じないをに口に出す奴は人をだますやつだ」
に繋がる訳か。つまり"行動で人を信じさせろ"という話であり、それが1巻2話のさみだれの行動に通じる、と。

次巻が最終巻。
戦いも佳境に入り、今までのメッセージも再利用され、ますますクライマックス感を強めていくのだが、契約の際の"願い"について9巻はわかりやすくメッセージしてた。
"願い"の有無によりキャラは二分される。雨宮は登場時「平穏と退屈」が望みなので"願い"は無いと言い切る。さみだれも最初、虚無的だ。茜太陽も"願い"を探し続けていた。獣の騎士団の中でそれぞれ陰陽があり、一枚岩でなかった事が今までのストーリーに深みを与えていたのだ。

絵的なことで言うと、ロングの絵が素晴らしい。かつて、ここまで引いた絵を描いた漫画があっただろうか。9巻最後のコマなんか人物全身が小指の爪より何倍も小さいのに絵として完璧だ。このコマの凄さは分かりやすいけど、56話さみだれパンチ後の「倒れる10体目と浮かぶさみだれ」の構図もすでに目一杯に引ききってる。この画力は「ドラゴンボール」が直面してた"強さのインフレ問題"への1つの解答だと思う。山を崩したり、星を潰すほどの力をどれだけのリアリティを持って描けるか、という課題。人間不在で山や星が壊れたら只の"現象"にすぎない。いかに"ロングして人間をフレームインさせるか"、つまり"その力を人に関係させたように描くか"というインフレ問題への解答がここにあるように思う。
56話のタイトルエンドは「ここで終わり、そしてここから始まる」感があり、ぞくぞくする。単行本派だけど、ぜひ掲載雑誌でも読み返してみたい。

バトルも非常にお腹いっぱいでした。9巻が今までで1番詰まってたかも。しかし、服の破れた白道さんはコスプレっぽい。
(投射by 懐柔する怪獣)

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ケニア版「百年の孤独」

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

と帯つけて売り出せば良いのに、と思った。

ケニア版「百年の孤独」といっても、本書は小説ではなく社会学者によるフィールドワークの成果物である。著者はライフヒストリー(生活の歴史の聞き取り)の社会学的手法をとっているようだが、ライフヒストリーというより もうクランヒストリーといって良いかもしれない。一族(クラン)の歴史を聞き取り調査し、まずミクロでリアルなアフリカを伝え、解説としてその時の社会情勢や歴史的経緯を加え 俯瞰的なわかりやすさを得ている。

ガルシア・マルケスの「百年の孤独」はマジック・リアリズムと評されたが、本書「呪医の末裔」では本当のリアルとマジックを書いている。両者に共通するのは"読者を惑わせるほどの遠い異世界"がベースである、という事。その遠さを実感させる細かい情報が読者に用意されてる、という事だ。

「百年の孤独」は創作ゆえに色々な事件が起きたが、本書ではケニア特有の"歴史の早回し"が著者に有利に作用している。19世紀末から21世紀までの歴史を聞き取りしてるのだが、ケニアの植民地化が始まったのがその辺りで、ギリギリ「その時のわしらの一族の誰々は何々で~」とライフヒストリーを語らせることができる。
また停滞した歴史というものがなく、世代ごとに特徴が変わり記述しやすい。白人家庭でサーバント(使用人)として働いたら女主人に理不尽に鞭で打たれた話が1950年代なのも意外な現在との近さで臨場感がある。人気職種が独立後の1960年代~70年代は公務員、80年代は外資系、90年代以降は国際NGOや援助機関とクルクル変わるのも猛スピードで現在に肉薄してて、ちょっと眩暈を覚えるほどだ。ちなみにそれ以前は作業が楽という理由でサーバントも人気だった。

なお、聞き取り調査をしたのがケニア内の主たる部族の人ではないので、一般的なケニアの歴史を知りたいと思って本書を読むと足りなかったり過剰だったりするかも。
(投射by 懐柔する怪獣)

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世界で一番キモちいい小説

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

面白かった。単巻完結。ラブコメ。
ラノベを愛する人全てに必読の書。ラノベへの愛情に比例して面白さが増すアリ地獄のような不思議システム採用。ラスト盛り上がりは「正義を行えば人類の半分を敵にまわす」を思い出した。同作者同レーベルの「人類は衰退しました」シリーズより熱め。
実は黒幕が~だったとか、奇跡は本当に~とか、単純なストーリーにしない所がミソ。というか真骨頂。
萌えポイントは佐藤一郎序盤の信じっぷりだろうか。
巻等カラーイラストはブギーポップ先輩の「パンドラ」以来の高センスかと。(イラスト mebae デザイン 伸童社)
難点は
・売れるようなキャッチーなタイトルでない事
・ドイトってローカルなDIY店ではなかろうか
の2点か。

(投射by烏龍と鳥籠)

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紙の本惑星のさみだれ 6

2008/10/30 20:55

巻計算も完璧

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

バトル漫画。現ジャンプの全連載陣を超えてジャンプ的。この面白さに匹敵するのは調子いい時の「結界師」くらいか。
伏線の回収・再設置も早い。それに何といっても大ゴマ。大ゴマが生きる画力。
あと2巻くらいか。

以下細かい感想。
15頁。ちょ、ハッキリ言い過ぎ。三バカに"馬の人"がっ。
36頁。今巻カラーなしか。作者のサイトで見れるよう補完してくれないかな。データが失われたままになってしまう。
9番目かっけー。
37話最終頁の2頁前。空白ゴマ。「ネウロ」11巻ぶりに見た。
84頁。倒れるのはニラミきかせてから。
108頁。この頁だけじゃないけど、"カマキリの人"を力入れて描いてるなー。
155頁。この頁だけじゃないけど、カマキリの扱いひどいなー。
40話最終頁の前の頁。黒が効いてる。右上・左下が より黒い。
41話表紙前の頁。大ゴマ、大ゴマ。
41話、頁数がわかる頁無し。つまりクールダウンする間なくアクセル踏みっぱなしの回。
池の上に立っているのは凍らせてるから。攻撃型は防御がおろそかになる その補完。
"馬の人"は、倒すまでは泣かなかった。大人。
話が前後するが、"フクロウの人"の扱いは箱庭療法を連想した。箱庭療法は「はっきりと言葉にさせないで問題を浮かびあげる」という説明を読んだ覚えがある。つまり「親が憎い」とか言葉にすると、その言葉が定着し、言葉に支配されてしまうとかなんとか。41話の3頁目。

あと敵がテーブルトークRPGのマスターっぽい。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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1ビット足りとも

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「電脳戦最終局面」「家具調達」「弥子返済前半(幕間)」収録。89話から97話まで。

90話は実質上の最終回だ。ここで終われば実に奇麗に幕を下ろせたろう。これ以上の最終回がシリーズとして果たして望めるのだろうか。
しかし4巻弱の長丁場をなんと精緻な計算でまとめ上げたのだろうか。連載誌巻末のコメントの
『今年はほぼ計画通りに描けた1年でした!』
に全面的に肯いてしまう。そして前巻巻頭コメントの
『連載前は「続いても10巻まで」と思って』
とか
『自分のような新人漫画家には自らの意思で止まれる足を持つ権利を持っていません』
を読むと不思議な気になる。やはり90話エンドがベスト(多分10巻でまとめてた)という勝手な思い込みの傍証を得た気にもなるし、ここまで冷徹に開き直っていて抜群の構成力を持つ作者なら、あっさり次の頂上へと読者を導いてくれる気もする。
さて89話。
・若い春川は天野喜孝風だ。
・蝉の幼虫が養分を吸い取られ、成虫になれず別のモノになってしまう冬虫花草の絵。せつない。
・89話最終頁の刹那は泣いていないし、89話90話の春川も泣かない。気高い。
で90話。
・「間違えれば国中を危険にさらしてでも助けたい奴が」…はい告白タイム始まりました。奴、奴ですよ。しかし、このメンタリティは作者女性ではないのかな。
・弥子のHALに対する決断/行為は重い。ヒロインは普通こんな事しないよっ(泣。
・漫画史上に残る白紙のひとコマ。
・90話ラス前頁ネウロ1話目の台詞ふたたび。ここでまた「1」が出るか。90話のサブタイトルは「0」。「1」と「0」だ。
・90話ラスト頁「日付も変わった」と大きく割れた窓。
「日付」の長い伏線の結実もさることながら、大きく割れた窓も効いてる。無理に言葉化するなら
「弥子ネウロが帰る場所がある事の示唆」か
「箱に閉じ込められていた春川(HAL)の解放」か
「電脳世界を長くさまよった読者に向けての星空。人工→自然。窓が暴力的に割れているのも非人工=自然をイメージした出口」というところか。
星空だけでなく、地上の建物の光も結構見えてて、描き込んでる、描き込みすぎだよ、と泣きたくなる。

で、この巻の最終話97話で引っ繰り返す。90話全否定。
「本当は善い奴だった」ていう「そんな半端な悪たおしても」発言で超矮小化。
あれだけ感動させておいて否定するなんて、どんだけ天才なんだ松井優征!
というより、次の巻ではなくこの巻で90話を否定する必要があった。次巻にも期待を繋げる為の冷静な構成計算。連載は続かなくてはいけないし、計算は永続していかなければならない。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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紙の本膚の下

2006/10/31 00:12

絆創膏を貼って読んだ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ホムンクルスの話。または偏差値70以上の「北斗の拳」。
「あなたの魂に安らぎあれ」「帝王の殻」に続く3部作目。各巻は独立している。最初に「膚の下」を読んでみたかった気も。
阿部謹也(歴史学者)がこんな事を言ってた。現状に満足している者は何かを考える必要性がない、何らかの不整合感、不満や軋轢を持つ者は考えて前に進む事ができると。本書の読み始めで、まず思い出す。
ぶ厚い本だけど、展開は早いと思った。シリーズものを圧縮したようなかんじ。
474頁あたりからのくだりで泣く。なんてSFな涙なんだろうと涙を解析したりもした。本書はSF・PF(政治的虚構小説)の感覚を持つ人に必読の書と思う。
「弱者は保護」って思想が出てくるけど、ひょっとしたら食物連鎖の観点から言ってるのではと気付く。自分が脅かされないなら下は賑わっていた方が良いみたいな。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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紙の本ハヤテのごとく! 2

2006/05/11 01:29

これが、最先端のサンデー漫画かっ!!てなかんじ。オタク系。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

少年マガジンがヤンキーと少女の混成で作られていて「魂」方向で話が出来ているのに対し、サンデーは「スタイリッシュ」方向に行っている。気がする。ありがちな話(パターン化)を恐れず、細かいトコロでツボをつく。
キャラにしたって、「描き分けなんか犬に喰わせろ」を実践してる漫画家が多い。
「ハヤテのごとく」も、絵が何となく読ませるのを躊躇う画力だなーとかキャラの相関関係がわからんなーとか、長期スルーしてた。
非常に面白かった。これが、最先端のサンデー漫画かっ!!てなかんじ。
こう、細かいツボが。107頁の負け犬公園とか115頁の池の立て札とか。76頁の「なんですか、このインチキくさい外国の方は?」とか13頁の介護ミサイルとか。94頁の銅像はコナンかな、とか。
2巻は割とシリアス。ビリヤードによる話の引き出し方は良い小説みたいな読後感。さ、サイドワインダー。
しかしこの2巻のシリアスさは異例だ。
これは、進行している出来事を違う視点で切り取ってみれば、全然違う出来事のように解釈されてしまうという芥川龍之介の「藪の中」方式だ。帝視点とマリア視点を、この巻だけ適用している。
作者は今まで見慣れていたモノをガラリと変えてしまう魔術を、また使うかもしれない。
「エマ」と「あさってDANCE」を足して100で割って秋葉原で野生化したような漫画です。
または光の者(金銭的に)と闇の者(金銭的に)が相克する「魔方陣グルグル」みたいな話。
(と言うまでもなく凪と疾風だから、真逆は明示されてんのか)
(投射by 「短歌と短剣」探検譚)

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背伸びして情熱

2009/06/07 21:04

出オチに死をかぶせて

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

四コマ的コマ割の漫画が9編。「赤くない糸」「背伸びして情熱」ほか収録。

読んでる途中 ふと思ったが、仙石寛子の漫画て出オチなんじゃ……いやいや本巻途中の頁構成で1編終わってすぐ別の話が始まるから そう思っただけか。
1編終わったら1頁分余韻のページが要るよな。

まあ、出オチと話のまとめ方(死がかぶさるイメージ)が仙石寛子の作風といえるかもしれない。

で、「赤くない糸」の素晴らしさ。しんねりむっつり描くなー。中編小説読んだような読み応え。

「赤くない糸」「背伸びして情熱」の雑誌連載中も驚いたんだけど、四コマ的形式にしては驚くほど頁数が多い。1話8頁ある。四コマは頁数が長いと基本飽きてしまう。四コマ目で終わらせて強い刺激を連続的に与え続ける場合、長いとキツい。

が、仙石寛子は読ませる。その薄さ、間の取り方は武器なんだな、と納得。或る意味、つまり8頁勝負では四コマ界で一番なのではないか。

仙石寛子の漫画は通常の四コマではないかもしれないが、普通の漫画と比べると、読む生理速度は明確に四コマに近くて、淡々と 河のようなメトロノームのような-非ドラマで、内省的なコマ割りは彼女の作風にマッチしてる。(非ドラマというのはコマ割りが非ドラマチックという意味で、話が非ドラマという訳ではない)

あと酒の漫画は最初アル中の幻覚かと思った。

(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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紙の本果てしなき渇き

2008/10/06 22:48

兼ヒロイン

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ハードボイルド。というか大宮ノワール。深町秋生は初めて読む。
大宮に住んでる人で14才以下は閲覧禁止にすべきと思った。リアル感のある地名の本を読むて こんななのか。東京者は見知った地名がドラマに頻出してて、よく平気だ。
序盤ノロノロしてて読みにくいが、後半の加速力は圧巻。よく編み上がってる。
宝島社の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。選者の1人に「ありがち」と批判されているが、全然同意しない。ストーリーの型は"seek and find(探して見つけるよ)"でヒネリが無いが、主人公(父)の暴走ぶりは1000冊読んでも出てこないし、主人公(娘)の「心の闇」は深すぎるくらいだ。で、物語の真のヒーローは主人公(少年)、と。
細かい点だが、主人公(父)を"彼"と人称する時に文章的な違和感。
仮想ライバル作家は東山彰良か。
.
地名に関して「さいたま市」を使っているのは残念。「大宮市」で良いのに。
浦和とさいたま新都心の使い方にニヤリとする。(さいたま新都心は新しいビルがニョキニョキ建ってる新興エリア)
大宮圏の話なので上尾、春日部、蓮田辺りもロケ地。岩槻・越谷・川越なども少し出てた…と思う。
しかし、長崎屋なつかしい。
.
(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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簡単な線 早い浸透力

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いい意味で驚いた。枷を外した四コマ漫画家て こんなか。読んだことのない漫画を読んだ気がした。
2002-2006年に小坂俊史/重野なおきの2人同人サークルで描かれた四コマ漫画・ショート漫画を商業出版。
テーマは感傷的だったり、死死死死死だったり、ちょっとした不思議な感覚だったりする。通常の商業四コマよりビターなかんじ。でも四コマ的なサービス精神もちゃんとある。
プロの四コマ漫画家のチカラってのは「早い浸透力」なのかと実感した。「簡単な線」は伊達じゃない。そのチカラで上記のテーマを扱われた為、どんどん漂白され晒されてくような奇妙な読書体験をした。
ひょっとして、短歌の歌集が一番近い?
(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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書き手としてのライトスタッフ(正しい資質)

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者の妻、向井千秋のスペースシャトルフライトを巡る実録。宇宙ものとして、かなりの名著ではないだろうか。
医者で宇宙オタク、おまけに文が立って固苦しい立場も背負ってないという彼の資質は宇宙本の書き手として、これ以上の逸材は現れない気さえする。スペースシャトル当時の話なので少し古いかもしれないが、基本として読んでおいて損は無いだろう。

小説のように描かれた聞き書きの向井千秋パート、そして頁の大部分を占めている向井万起男パートで構成されている。ただ帰りを待つ日々なのだが、細々とした事が面白い。NASAって、宇宙飛行士ってこういうものかという日常感覚的実像を掴むことができる。

・無重力は全身の血液を上半身に多く流させる。血圧を感知する部位は首のあたりにあり、無重力では「血圧が常より高い→血圧を下げねば」と血液の量が減って寒気を感じるようになる。

・TEMPUS(電磁浮遊無容器処理装置)。無重力で金属球を浮かせる箱。浮いたままにする為に電磁波で固定する。融解したり結晶化する場合、地上では容器と金属の接触面から変化が起こり、その金属本来の性質を観察するのが難しいが、無重力下ではTEMPUSを使って様々な実験が可能。温度を上げて液体にして、下げて再び固体にさせる実験をTEMPUSですると、地球上では固体になる温度でもまだ液体の状態を保つという過冷却現象が起こる。

・NIZEMI(重力可変式生物実験装置)。箱の中で重力を調節できる。OG下で遠心力を利用。
0Gでは植物の根の発育方向が定まらなくなる。一体何Gなら根がきちんと伸びてくれるのか、地上と同じ1Gが必要なのか、その中間で良いのかを実験できる。

・宇宙から地球に帰ると起立性低血圧になりやすい。宇宙にいる間は ただでさえ血液が少なくなっている上に、地上に戻って下半身に血液が集中し、上半身が一気に血液不足となるからである。対策として、宇宙飛行士は帰還直前に塩水を1リットル飲んでいる。

・天井の上に立っても最初の違和感を過ぎれば床の上に立つのと同じ感覚になるが、壁の上に立つと「壁を床」と認識できずに「自分が壁から突き出ている」という感覚が抜けないとのこと。

・向井千秋がこの本でのフライトを終えると女性宇宙飛行士の宇宙滞在最長記録の保持者となった。若田光一宇宙飛行士がISSに滞在するまでは向井千秋が日本での最長滞在記録を持っていたのは知っていたけど、女性全体のレコードも得ていたのか。ミールには女性乗らなかったんだな。

・昔のアメリカは随分騒がれたらしいけど今は全然だ、と向井千秋を羨ましがる米の宇宙飛行士。

・向井千秋は帰還後、地球の重力が面白くて仕方なく、手を放しては落ちる様を何度も繰り返し見ていた。スーパーで何度もハンドバッグを床に落として周囲から奇異に見られる。帰還4日後に感覚が消え「私の体は、もう、重力を全く感じなくなってしまった」と喪失を悲しんだ。


これが宇宙か。
(投射by 懐柔する怪獣)

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紙の本ヨイコノミライ 完全版 4

2006/10/22 22:09

オタ以外に何処にエッジがあるってんだ?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

オタ集団とサークルクラッシャーの話。
と認識して3巻まで読んでいたが、青木杏はサークルクラッシャーではないかもしれない。事態を加速させる役割、もっと言えば全員の願いを一度は叶えてしまったのかもしれない。ある意味恐ろしい事だ。
オタ同士お互いを斬り合うほどに踏み込んでいくが、安易な悲惨に堕していない。
登場人物のオタクという属性に惑わされてはいけない。読み重ねていくと登場人物たちは意外にタフだったり、優しい事に気付く。だからこそここまで惹きつけられたと思ってる。
平松の弱さについては成程 確かに弱い。でも彼女は優しさがあの逃避形態を取ったのだと思う。彼女は井之上も青木杏も憎めなかった。憎めなかった為の弱さだ。周囲の人間を自分(平松)と同じくらい愛他心があり、気前が良い人間であるという認識がおそらく彼女の世界認識。甘いし弱いけど優しいじゃんと彼女の為に一言いいたかった。弱い優しさに意味なんてないけど。
有栖川に対しては平松の甘えだったり、もともと下に見てたりとかあるけど、二人の関係を簡単に断罪するのは避ける。
最後、一番キツイのは有栖川だ。
(投射by「短歌と短剣」探検譚)

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紙の本デイドリームネイション 3

2011/02/05 14:11

王道と変態の結婚

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

言ってしまえばkashmirは小技の漫画家だ。ごく一部の人向けにわかるネタを連発する。たださすがネット出身、のびのびと狭い世界を"世界の中心"のように描き、メジャー的なものに媚びることなく、メジャー臭もつかず、我が道を行っている。紙媒体出身の漫画家の窮屈さが無い。作法もない。自由だ。
.
などと思っていたら、3巻は王道だった。しかも面白い。王道とアウトローの稀な結婚を見てしまったようなラッキー感を味わってしまった。
.
まず第一に話が動くというトコロから感動した。ギャグ漫画なのにキャラの位置関係が変わるんだ。
.
変化は喪失に通じる。しかし、綿々と続く過去(かつての先輩の高校生活)と未来(新入部員)も同時に提示した事で喪失を相殺させる絶妙な味わいとなっている。
(投射by 懐柔する怪獣)

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紙の本モダンタイムス

2010/11/28 23:53

願わくは この書評が検索の上位にあらんことを

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ジェットコースータームービーを思わせるような息もつかせぬ展開。「どうも今度の新しい仕事は何か変だ」という穏当な小説の始め方も出来たろうに、初めからトップギアだ。最初のテンションに乗ってしまえば、後は全自動で様々な扉が開いて、読者を思いもよらぬ場所へ運んでくれるだろう。

本書はSFである。ディストピアもの。それも珍しいことに、明るいディストピアもの。

ネット版「1984」。または本書を読んで星新一の「声の網」を思い浮かべる人もいるかもしれない。伊坂幸太郎と比肩されるべき現代作家は「ねじまき鳥クロニクル」を書いた村上春樹だと主張する人も多いだろう。彼らは暴力を描く。そして今1番読者に現代的なメッセージを伝えられる作家だ。伝えようとする意志と技量がある。

ただ伊坂幸太郎の小説は良い意味でも悪い意味でも軽い。チャップリンからの引用はわかりやすいのだけど、そのチョイスは やや通俗的。伊坂幸太郎の位置は村上春樹とライトノベルの間だろうか(春樹寄り)。

以下蛇足。

もし本書を映像化するとしたら、終盤の説明部分(435頁- 436頁-)の台詞が長すぎて処理が難しいだろうなと少し余計な心配をした。作中人物の作家に「小説を映画にして貰ったら、つまらなくなった」旨の発言をさせており、つまらなくなった理由は要は端折られたからだと断言してる。『"省略できるパート"こそ実は大事』という(原作からの)映画論なのだが、ちょうど逆の事を考えていた。映画こそ情報が大量に混じるメディアで、小説こそ読者はブリンカー(遮眼革)を付けられたかのように誘導され放題だな、と。

つまり小説なら

『彼は「~」と言った。』

で済むが、映画なら その声色・表情も標準で付いてくるわけで、観客は小説内では省略されていた情報を大量に受け取ることになる。それが作り手が企図した情報ではないかもしれないけど映画の情報量は膨大だ。

もし伊坂幸太郎原作の映画が つまらなかったとすれば情報が足りなかったからではなく情報が余計だったからではないか? と考えることもできる。小説内の登場人物はエピソードの不足により、その登場人物と違うモノになったわけではなく、"血肉を備えた役者"という過剰情報により、"小説の登場人物"と異なったのではないか。小説よりテーマがぼやけたなら、やはり小説より映画のほうが余分に情報を含んでいるからではないだろうか。まあ、伊坂幸太郎の言う『"省略できるパート"こそ実は大事』のロジックもよくわかるし、実際伊坂幸太郎原作の映画観た事ないので語る資格ないかもだが。
(投射by 懐柔する怪獣)

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