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先月(2017年8月)

つれづれなるままにさんのレビュー一覧

投稿者:つれづれなるままに

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本日本沈没 第2部

2006/09/01 09:57

日本沈没から25年。国土を失ったおよそ1億人の日本人はどう生きようとしているのか。これは日本人の新しい神話の始まりかもしれない。

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 改めて言うまでもなく、これは33年前に出版された小松左京の『日本沈没』の続編である。沈没した日本はその後、どうなったか、沈没する寸前に日本を離れ、世界の各地に散った1億人の日本人はいまどんな現実をふまえて生きているのか。−−−「第二部」は読者のそうした疑問に答えようとするものであり、その意味で興味津々、手にとった。
 結論を先に書けば、期待は十分満たされた。実は読み始めるまでは、どんな展開を創れるのかが疑問だった。いったん沈めた日本列島を再浮上させることができれば楽なものだが、それが禁じ手だとすれば、読者を納得させるどんな物語を構築できるのか見当もつかなかった。だが企ては見事に成功し、面白い近未来小説が誕生した。ただ残念なことに導入部は重すぎる。スト−リ作りの天才、小松左京の何時ものシャ−プな切れがうかがえず戸惑ったが、それでもいったんエンジンがかかったあとの展開は素晴らしい。一気に盛り上げ、読者をグイグイ引っぱる腕力には敬服した。
 あらすじを追っただけでは、仲々そのスゴサは伝わるまいが、あえて書くと、こんな具合だ。
 「第二部」は「第一部」の異変から25年目の慰霊祭当日から話が始まる。式場ではかって日本列島が存在していたあたりの海底が写し出された。送電線、小学校・・・。ところがその映像が突然中断し、国籍不明の船舶の映像にきりかわった。いまは航行制限海域に指定されているこのあたりの海底を探査し、利権の確保をねらう中国の測量船の姿らしい。「この行動をこのまま放置していていいのだろうか」。物語はこうした疑問からスタ−トする。
 国土を失っても日本政府と日本国籍を有する国民は存在していた。日本をひきいる首相は、「第一部」で「切れることでは当代一といわれた情報科学専攻」と紹介された中田である。学者が政治家に転向したらしい。彼の目下の最大の懸念は、世界各地に散らばって存在する日本人が世代の経過で次第に現地化し、結束力を弱め、日本への帰属意識を希薄にしている現実である。また当初好意的だった移住地でも、さまざまなトラブルが発生している。例えば1千万人が移住した南米アマゾンの流域では大規模な農地開発で熱帯雨林が消滅し、そのせいか、山火事が頻発して原住民に大きな被害をおよぼしている。おかげで日本人憎しの入植地への焼きうちやテロが続発していた。
 こうして世界で肩身せまく生きている日本人に、もう一度誇りとナショナリズムをとりもどさせる方策として中田首相が立案したのは、かって日本が存在していた海域に浮体式の構造物を係留して、百万人の日本人が居住できる人工島をつくりあげようとする壮大な計画だった。それも他国から横やりが入る前に、素早く完成させる必要がある。
 ところがその計画を実施に移そうとした矢先、思わぬ異変がまたおこった。地球の寒冷化である。かって日本が存在していた海域にも大量の流氷が押しよせ、人工島どころではなくなった。しかもこの寒冷化現象をいち早くキャッチしたのは、地震と地殻変動のメカニズムを解明するため総力をあげて作り上げた日本の地球シュミレ−タだった。そのことが世界にまた新たな誤解を招き、日本は国際的に窮地にたたされることになる。特にアメリカと中国の世論操作はしたたかで巧みである。翻弄されるこの現状に鳥飼外相は中田首相に「ナショナリズム願望」を捨てるよう進言する。「これからの日本人は、国家や土地にしばられない生き方を模索することが必要です。日本人の現地化、大いに結構ではありませんか」と主張する。
 小松左京らが一番書きたかったのは、おそらくこの一行だったにちがいない。ナショナリズの行き過ぎが目に余る今日、グロ−バルな目で世界の未来を考えるきっかけをつくる、いい本が出た。

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紙の本殿様の通信簿

2006/09/29 23:50

江戸時代の殿様の生活の実態が、ほんの少し見えてくる。当時の殿様には、なかなか人間くさい人物もいたようだ。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 江戸元禄期、殿様の通信簿がつくられていた。『土芥寇讎記』(どかいこうしゅうき)である。これは幕府の隠密がさぐりだした秘密情報をもとに、幕府の高官がまとめたもので、243名もの殿様が登場する。もちろん門外不出。写本も固く禁じられ、いまでは日本に一冊残っているだけらしい。
 本著『殿様の通信簿』は、その『土芥寇讎記』を縦横無尽に援用しながらくりひろげる歴史エッセイ。本のオビに「平成の司馬遼太郎」とあるのはいささか過褒にしても、学者が書いたとは思えないこなれた文章で、水戸光圀、前田利家、本多作左衛門、浅野内匠頭など8人の人物論を、自由自在、軽妙にくりひろげていて面白い。しかも単に人物紹介にとどまらず、一種の文明批評にもなっているところが本著の魅力だ。
 例えば日向の国、延岡藩主の内藤家長は通信簿で、無類の能好きで遊興に身をゆだねた暗君と評された。しかし延岡ではいまでも能をつかった町おこしがさかんだそうだ。著者はこれをふまえ、「300年前は武具をたくわえ、戦いにそなえる軍備増強をするのが名君だったが、それはいまでは何の役にもたたない。能を舞いすぎるのは馬鹿殿さまの所業とされたが、この無駄遣いは、いまでも観光資源や文化になって残っている」と書いている。随所に散らばるこうした一節が、歴史のもつ面白さを教えてくれる。
 また水戸黄門さま、徳川光圀について通信簿は「文武両道をよく学び、才智発明な(頭の良い)男である。自分の身を正して、道にのっとった政治をやっている」とする一方、「女色に耽りたまい、ひそかに悪所(遊廓)に通い、かつまた、常に酒宴遊興、甚だし」とも評している。このくだりを著者は、「当時、身分を超えた交わりができる場所は、遊廓くらいしかなかったのだ」と解説する。そしてそれを読んだ読者の側は、「下世話に強い“黄門さま伝説”は、こうした生活の中から生まれたのだ」と覚ることになる。
 新しい資料が見つかったときの著者の興奮がそのまま素直に記されているのも面白い。例えば通信簿に「あまつさえ、女色を好むこと、倫を超えたり」と記された岡山藩主池田綱政の生活ぶりを裏付ける資料が早稲田大学の中央図書館にあると知って、著者は高田馬場にかけつけ、バスを待つのももどかしくタクシ−に乗ったそうだ。すると運転手氏が、「本をみにいくの?」と聞いてきた。これに「まさか、文盲で精力絶倫、といわれている大名がいて、それが本当かどうかを確かめるため、古文書をさがしに行く途中だ、とはいえず、私は口をつぐんだ」と書いている。このくだりでは、思わず吹き出した。
 ちなみにこの綱政は、金沢の兼六園、水戸の偕楽園とならぶ後楽園を岡山につくった殿様だが、子供を70人もつくったことでも有名だ。大名にとって子種を残すことが何より大事だった時代とはいえ、これはただごとではない。しかしいまの教育で綱政をとりあげる時には、後楽園にはふれることはあっても70人の子供に言及することは絶対にないそうだ。これには考えさせられた。
 仄聞するところでは、イギリスでヘンリ−8世をとりあげる時には、英国国教会をロ−マから分離独立させた王様であると同時に、6回も正式の結婚をくりかえした王様であることもちゃんと教えているらしい。綺麗ごとだけでは歴史はつまらない。子供たちを歴史好きにするには、もっと人間くさい部分にもふみこんだ教育が望ましい。「そのあたりは小説に」では、歴史家の責任逃れになるだろう。そんなことも考えつつ読んで楽しんだ。
 『武士の家計簿』で評判をとった磯田道史氏の歴史エッセイ第2弾。仲々いい本だ。

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紙の本七姫幻想

2006/08/06 15:54

あでやかな絵巻に絡む悲劇と謎−不思議な味わいの作品

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 珍しい不思議な味わいの作品にめぐりあった。7編の短編からなっているが、短編連作の形をとっていて、読者を幻想の世界に導いてくれる。連作をつなぐのは、語り部の老婆という設定である。
 冒頭の短編「ささがにの泉」では、大王に愛されている衣通姫 が登場する。姫が住まう小造りな白木の館の横には泉があり、姫の使い神が住まっていて、宵になると館に白い糸をはって姫を護る。その館のなかで大王がみまかった。悲しむ大后は、姫が毒を盛ったのではと邪推する。白い糸で護られた館には余人がはいれるわけがないからだ。姫は泉に身を投げ、大王のあとを追って死んでしまう。
 大王は殺されたのか、では誰に。この謎を姫の死後、日嗣御子の軽皇子があざやかにといてみせる。
 次の短編「秋去衣」では、前編で謎をといた軽皇子が主人公だ。大王の喪がまだあけてもいないのに、皇子は酔ったあげく、神に仕えて機を織る美しい巫女とまじわりをもつ。それだけでも問題なのに、その巫女が妹姫の軽大郎女であることがやがてわかり、皇子は日嗣御子を廃され伊予に流されることになる。
 だがこの間違いはなぜおこったのか。次の大王の座をねらう弟君に謀られたのか、それとも妹姫の恋心か。
 このように紹介すると、いかにもおどろおどろしい物語の連続のようだが、そうではない。話の中心にあるのは美しい織姫の恋であり、その恋をめぐるあでやかな絵巻である。その絵巻が織りなす世界に、ある日突然悲劇が訪れ、謎が生まれる。物語はその謎にせまる形で展開する。
 この作品、まず舞台が優雅で美しい。しかもそこに登場するのは幻想的な衣をまとった姫たちであり、この世のものとは思えない秘めやかでありながら熱い恋である。そこに謎解きが加わっている。
 しかも登場するのは、いずれも実在の人物がモデルである。さりげなく散りばめられたヒントをもとに、この大王は允恭天皇らしい、この少女は幼い日の清少納言らしい、などと推理を働かせながら読むのも楽しい。
 さらにそれぞれの短編の末尾には、物語の内容とかかわりの深い和歌や句が添えられている。これもなかなかステキな趣向だ。

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紙の本天使と悪魔 上

2006/09/14 08:43

17世紀の秘密結社「イルミナテイ」が蘇る。犯行の標的は、キリスト教の総本山ヴァチカンだ。時あたかもヴァチカンでは、次の教皇を決めるコンクラーベがはじまっていた。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 良質のスリラーやサスペンスを読むのは至福の一瞬である。贅沢な時間をすごせたという実感があり、作者の確かな腕前をシカと見届けたという充足感がある。その意味でこれはお勧め。ページをくりながら、読み終えるのが惜しい気分を味わった。
 さてこの作品は「ダン・ブラウンのラングドン・シリーズ」の第一作である。こう書けばもうお分かりだろう。シリーズの第二作はいま話題の『ダ・ヴィンチ・コード』であり、その前作がこの作品である。
 物語の主人公はハーバード大学で宗教図像解釈学を講じているロバート・ラングドン教授である。熟睡していた彼のもとに午前5時、一面識もない人物から突然電話が入った。世界最大の科学研究機関、スイスのセルン(欧州原子核研究機構)の所長から、「研究所の優れた科学者が殺害され、その遺体に”イルミナテイ”という文字が刻印されていた。イルミナテイとはいったい何か。この分野の専門家である先生の意見を聞きながら、犯人追求にとりくみたい。ついては是非スイスに来てほしい」との依頼だった。
 はじめは断るつもりだったラングドンだが、「なぜいまごろイルミナテイなのか」、それを考えるうちに奇妙な不安と興奮にとらえられ、ついにスイスへ出発することになる。物語はこうしてスタートする。
 ラングドンが「なぜ、いまごろ」と思ったのも無理はない。ヨーロッパでは16世紀から17世紀にかけて、宗教と科学が鋭く対立した時代があった。その犠牲になった科学者のひとりが、地動説を是認して異端者の烙印をおされ、迫害をうけたガリレオ・ガリレイである。イルミナテイはこの憎いカトリック教会への復讐を誓って、17世紀に結成された秘密結社だ。
 しかし以来300年。イルミナテイはいまでも本当に存在するのか。犯行は本当に彼らの手によるものなのか。物語はこうした疑問をはらみながらハイテンポで進行する。
 このスピード感が心地よい。やがて事件の舞台はローマのヴァチカンに移っていく。
 このころヴァチカンは2つの重大な問題をかかえていた。1つはセルンの科学者を殺した犯人が盗み出した物質が爆発する時間が間近に迫っていた。また時を同じくして、ヴァチカンではローマ教皇が逝去し、新しい教皇を選ぶためのコンクラーベが行われていた。ところが最も有力な教皇候補の枢機卿4人がそろって行方不明になり、会場に姿を現さない。やがてイルミナテイを名乗る男から、「これも自分たちの犯行だ。拉致した4人の枢機卿を、1時間ごとに1人ずつ殺していく」と告げてきた。
 同時進行で進むこの2つの事件の解明に、ラングドンは、殺された科学者の若い娘、魅力的なヴィットリアとペアをくんで、必死になってとりくんだ。手がかりは犯人がもらした僅かな言葉から得たヒントしかない。しかし時間は容赦なく刻々とすぎ、犯人まであと一歩に迫る都度、殺人は実行される。こちらの動きがどうやら犯人に的確に伝わっているらしい。だが、誰から?
 すべては時間との勝負の形で進行し、最後に想像を絶するドンデン返しが待っている。この構成は見事である。
 日本人にとって宗教はいわば非日常の世界であり、この問題で深刻に悩むことはあまりない。ところがこの作品では、神の存在がさまざまな形で語られて、それがとてもいいスパイスになっている。
 また日本人になじみの薄い法王庁の内部を垣間見ることができるのも嬉しいところだ。つまりこれは、サスペンス、神の問題、さらにはヴァチカンの観光案内と、1冊で何冊分もの楽しみを味わせてくれる、本であり、その意味でもお勧めだ。

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