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S/Tさんのレビュー一覧

投稿者:S/T

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痛みも辛みも、ほんとうは知らない

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ポール・ボウルズ、チカーノ文学、沖縄文学・・・。今日学者の世界で、「ちょっと、おいしいかも」とされるフィールド=小皿をつまみ食い。俗流ポストコロニアリズム批評の嗅覚だけを頼りに、これら辺境の詩の世界を土足で観光し、表層のイメージだけを適当に掠めとって、口当たりのいい日本語に移しただけ。ここには、魂のこもった本質的なことばが、まるでない。自分の思考や感性が対峙する世界に実存を賭して飛び込もうとする、勇気も知恵もない、悪しきブンガク紹介屋のやせほそった像だけが、みえかくれする。著者が、いくらガクモンのアウトサーダーを気取ったところで、やっているのはせいぜいその程度のこと。みずからの「ボーダー文化論」を、偉大な亡命思想家・比較文学者エドワード・サイード(1935〜2003)の熾烈な生と知の営みになぞらえているようだが、それは無理。
沖縄のシマジマでも、米墨国境地帯でも、モロッコでも、ラテンアメリカでも、本気でそうした熱い血を流すボーダーの社会と想像力のリアリティに足を踏み入れようとするなら、『トウガラシのちいさな旅』、おすすめできません。さっき触れた、サイードの著作集に本格的にむきあうほうが、われわれの生き方を真に深めるのに、ずっと役に立ちます。こんな本に、「色目」を使ったら最後、本質的な探求者としては終わりでしょうね。

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