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コンゴウインコ(赤)さんのレビュー一覧

投稿者:コンゴウインコ(赤)

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紙の本琉球弧・重なりあう歴史認識

2007/03/28 23:35

琉球弧、新たな歴史像への予感

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 沖縄島の琉球王国には日本の古代が残る、という定説は根強い。でも、冗談じゃない。琉球王国建国の時代は日本の戦国時代だ。東アジアの海は倭寇でいっぱい、台湾には悪名高いオランダの東インド会社がいすわっていた。東インド会社は交易をしていたそうだが、当時の交易は海賊と紙一重。オランダ船が日本に交易にあらわれた最初の頃、船の積荷はポルトガル船を襲って奪ったもの、という実話もある。そんなに怪しい人達が蠢く世界の真っ只中で、沖縄島だけが自閉して「古代でした」というのはおかしい。
 本著は二十代から八十代までの研究者の沖縄研究に関するアンソロジーである。時代も発生の場所も異なる文化複合が集積する琉球弧を、専攻も違えば国籍も異なる八人の研究者(奄美考古学、地理学、歴史社会学、文化人類学、民俗学、比較文学、日本文学、アイヌ歴史学)が分析した。八人の論が不思議なハーモニーを奏でているのがこの論集である。
 高梨修は、劇的な考古学成果のあがっている奄美諸島史を復元しようと試みる。大宰府政庁と同じ遺物の出る喜界島、琉球弧全域に流通していたカムィ焼窯趾のある徳之島、奥州平泉の中尊寺金色堂の螺鈿細工の原料であったヤコウガイ加工遺跡のある奄美大島、いずれも興味深い遺跡である。またそれらの遺跡から、同時代の沖縄島よりも先進していた部分が認められる。沖縄島、琉球王国中心の歴史観をひっくり返す価値がそこにある。
 吉成直樹は本土の研究者が沖縄の文化を日本の古代の文化として理解し、そうした理解を沖縄の文化に押し付けてきたこと、沖縄の文化的発展段階を本土より遅いという認識があることを指摘する。美化された非現実的な古代像を沖縄に託した研究者達は、沖縄の立地と沖縄の現実に無頓着すぎる。
 與那覇潤は近世沖縄の糸満をめぐる明治以来の言説の歴史を丁寧に記述する。なぜ糸満か、というと都市とは違う民俗をもつ漁撈集落であり、女性が自立し、彫の深い顔立ちの人々が住み、沖縄独自の親族組織門中制度がはっきりしている糸満だからである。與那覇の示す学者の糸満論は、正しくもあり正しくもなし。皆、糸満を語っているつもりで自分の言いたいことを言っているだけだったりする。高橋孝代は琉球弧を語る時、絶対出てくる日琉同祖論を批判する。日琉同祖論は政治的であり、大まか過ぎる所もある。ただ使える部分もあるから批判した上で継承できるところはしたら良い。酒井卯作の論文は情感に溢れる。海の哲学は「悲しかったり苦しかったりすると、いつまでも海を見ています。広い海を見ていると、自然に心がなごみます。」という八十年島から出なかった老女の言葉に尽きる、と酒井は述べる。それ以上、何も言う事はない。
 リース・モートンは大城立裕文学にあらわるポストコロニアリズムとハイブリディティーを琉球弧の女性シャーマンのユタと、公的宗教者のノロをめぐる作品から読み解く。スティーブ・ラブソンは差別されてきた沖縄出身者が、今や沖縄という故郷を誇るようになったことを語る。アイヌ研究者坂田美奈子は弱者アイヌ、とみなされがちなアイヌの主体性を語り、支配的な枠組みを意識せず琉球弧の歴史認識を語るヴァリエーションがあるのではないか、と語る。
 琉球弧の自然や民俗は魅力的だが、どうも研究はね、というところがあった。それは琉球=古代論者が多かったからだ。古代論者は絶滅危惧種だから、あとは本著の執筆者、頑張れ。新たな琉球弧、躍動する琉球弧の歴史、見たこともない世界、それをもっと見たい。

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