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先月(2017年8月)

クラークさんのレビュー一覧

投稿者:クラーク

1 件中 1 件~ 1 件を表示

『日本海海戦とメディア——秋山真之神話批判』は百年来の通説を覆した注目の書である。

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日本海海戦の実像を『極秘明治三十七八年海戦史』と『公刊明治三十七八年海戦史』の比較照合、及び当時の新聞・雑誌報道によって明らかにした書。
 同書は、ジャーナリストとしての著者がメディアへの自省を込めて書いた日露戦争報道とその歴史叙述化への批判の書であり、その点での著者の問題意識は執念といえるほど一貫している。ところが、上記の書評に書かれている、「(軍広報を)そのまま流し続けたメディア側の責任について言及がないのはおかしい」という言は、本当にこの書を読んだのかどうか疑問を抱かせるものであり、読んでいるとするならこの評者の読解力の希薄さを露呈してしまっている。
 上記の評者が指摘する「論文でありながら引用文を現代語訳してしまったり、引用文献の一覧を付さなかったのも不適当」も奇妙な言である。本書は公刊戦史と極秘戦史の記述を突き合わせ、矛盾点の比較検証を通じた事実究明への試みであり、参考文献の組み合わせにより成立した書とは基本的に異なる。しかも引用はそのつど本文中に出典が明示されている。また同選書シリーズが専門研究者対象の論文形式をとっていないことへの認識を欠くのは仕方がないとして、本書の場合はむしろ律儀なほど原文へのこだわりがあり、それが一般読者にとっつきにくささえ生んでいる。指摘された点において同書に欠点はないと思う。
 秋山と八代六郎および島村速雄との不協和音も、本書はあくまで史料照合の方法をとっており、「八代が結婚の世話をした」などというレベルでは語っていない。他方で「島村との間に齟齬があったとするのが仮に事実としても」という言い方には、評者の史料読解力の限界が改めて示されている。とくに秋山と島村との不和はことの核心に関わることであり、従来使われていない史料を使って論証されている。
 評者が挙げている田中氏についての問題点をいえば、丁字戦法がなかったとしていた氏が、説明もなく「あった」という説に変わった点に存する(その変説を「著者は知っているのか」と問うているが、むろんそうだろう、p186・l4に書かれている通り)。評者は「何らかの理由で考えを改めたのであろう」と寛大であるが、その「何」の説明を氏に求めることこそ丁字戦法重視論者であるらしい評者がなすべきことの順序というものであろう。しかし本書が明確にしたのは、丁字戦法云々は海戦の本質に関係のないことを示した点にある。従って変説についてはさほど重視せず、軽い皮肉で流している(そのコピー的用語の本質は事実隠蔽操作にありとする)。評者が相も変わらず小笠原仕掛けの丁の字談義に(なすべき問いもせず)低回しているのはいただけない。
 極秘海戦史が閲覧可能になって確かに約20年になるが、驚くのは本書に至るまで核心部の海戦についてさえトータルな読みがなされてこなかったということである。戦艦・八島沈没の隠蔽工作や東郷への注意処分なども初めて国民に知らされる事実である。「極秘戦史は未見」という評者が「本書は史料を読みたいように読んでいる」というのは矛盾してる。ただ確かに、本書にも欠点はあると感じる。前後を参照しつつ読まなければならない構成上の工夫がもう少しあってよかったし、原文へのこだわりがむしろわずらわしくもある。分析された事態が現代社会にどういう影響をもたらしたかへの具体的言及があってもよかった(あるいはこれがメディアの責任追及不足論を生む余地を生じたか)。
 しかしながら100年来の軍国主義神話、ひいては近代日本の社会・文化が背負い込んだ負の体質にメスを入れた点で本書には一読の価値がある。

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