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先月(2017年8月)

kbn1215さんのレビュー一覧

投稿者:kbn1215

11 件中 1 件~ 11 件を表示

美しい本。

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 寡作な著者だから、熱心なファンは、収録されている作品すべてに見覚えがあるかも知れない。

 元々が少女漫画家である著者だが、相当に早い時期から彼女独自の表現に切り替わっていたように思う。もしかすると、「少女漫画家らしく」合わせていただけの幾許かの仮面をすぐさま脱いでしまったのかも知れない。
 繊細で美麗な描画と、哲学を思わせる裏に隠された真意を‥そんなものは、ないのかも知れないが‥探りたくなる言葉。漫画の1コマ1コマを切り取ってさえ、非常に丁寧で綿密に描かれている極細の描線は、必要以上に描きこまれることも、ない。
 なにを取っても、隅々まで検分されたかのように無駄な線が1本でも残ってはいないか。この紫は、あと僅かに明るいべきではないか。米粒程の黒く塗りつぶされた陰影に過不足はないか。
 そんな風に徹底して仕上げられた印象の作品ばかりである。
 そして、だからこそ漫画として‥1本の物語として目にした時には、まったく余計なことに気を取られず、絵と短い文章に没頭してしまう、そんな作品を描いてきた著者だ。

 この画集は、その物語性だけではなく「絵」に高い評価を受けてきた著者の、意外にも初の画集である。過去の漫画単行本と、美しい装丁の「作品集」とは別に、「おはなし」を伴わない純粋な画集となった。
 良くある漫画家のイラスト集では、その読者が期待する以上は当然かも知れないが、キャラクターの設定資料や作画工程に裏話、時には描きおろしの漫画まで含まれることがあるが、この画集に、そうした「余分」は一切付け加えられなかった。描き下ろしたカバーだけで目を惹こうとするなどということも、決してない。
 過去の単行本、作品集の大半が、著者自身がこだわった一般の漫画単行本はおろか、一般書籍にも稀な美しい装丁で発行されてきたのだが、この画集も期待を裏切らない。
 今回収録された初期の漫画作品のイメージに合わせたのだろうか、外箱は黒。ひっそり刻印された箔押しのタイトルも、著者名も、光の加減で見えなくなるような黒。そこから、細い十字の窓越しに深い赤が覗く。
 外箱から取り出す画集は、その赤い布で装丁されている。

 余計な付け足しのない本文の、どこを開いても部屋の美しいアクセサリーとなる画集だが、敢えて片隅のテーブルライトの下にでも、この画集は綴じたまま置いておきたい。著者の描く世界へ近づけるのなら、卵色のキャンドルの傍あたりが理想か。
 過去の傑作である純白の大判作品集、「悲劇的/その他卵に関する小編」と無造作に重ねておくのも、素敵かも知れない。
 画集などというものは、ただ絵を確認できれば良いわけじゃない。その形自体さえも鑑賞できなければと、思い出させる。

 そういった、美しい本である。

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「お姫さま」の居る、お茶の間。

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 架空の国の、宮廷を描いた漫画。
 カルバニアは、それなりに大きな国である。その即位間もない女王タニアは、万人が認める美貌と、「その辺の女の子」以外の何者でもない雰囲気を持つ少女である‥ 仮にも一国の女王たる者が、「その辺」では済まされないのだが、口やかましい年寄り大臣に「女王のくせに」と言動を非難されては、「女王って差別用語だ」と喚く、呆れる程に可愛らしい女王さまである。

 厳密な時代設定は、されていない。むしろ、これは「おとぎ話」に出てくる「‥そうして、お姫さまは幸せに暮らしました」といった世界の王国である。お城に、きれいなドレスを着た姫君たちが出入りする。女王も、その中に混ざって、ひときわ美人ではあるが、威厳や風格は身につけず、街娘の格好で、裸足で歩き回りたいと呟きながら、公務をこなす毎日だ。
 まったく王としての自覚がないのではないし、最近では、むしろ彼女にしか出来ない「女王としての行動」が光る。
 が、乳姉妹の公爵令嬢・エキューと、くだらない遊びや悪戯に熱心だったり、相変わらず年寄りにはアレコレと文句を言われる様は、せいぜい売れっ子アイドルのような有様だ。
 公爵令嬢も、美しかったという母親に似て、大変な美人である。愛らしい女王とは違って、すっきりとした印象の美女なのだが、彼女は普段、男装で過ごしている。言動も、下手をすると宮廷の礼儀正しい男などより、余程品がない。身なりにも気を遣わないし、そもそも男の格好をしているのが、高い踵の窮屈な靴より、皮のブーツを履いて、あちこち締め付けるドレスに、繊細に結われた髪では動き回れないというのが理由なのだから。
 
 華やかな宮廷だが、彼らにとっては自分たちの生まれ育った場所であり、毎日を過ごす場所である。女王であるタニアは勿論、国で一番の貴族の娘、エキューにとって、「身分の高い方」など存在しないも当然である。
 それなりに、年長の大人達の目を気にすることもあるが、本当は制限の多い筈の生活を好き放題に謳歌している。
 そう、彼女たちにとって、「王様」や「王子さま」の居る世界など、ただの「お茶の間」に過ぎないのだ!

 絶世の美男子で、最高級の「王子さま」も、隣の学校の人気者くらいの扱い。なんと言っても、彼女たちは「お姫さま」になんて、憧れる必要はない。
「あぁ、お姫さまって本当に面倒くさいよね」‥と言えるのだ。

 時折、ピリッとした皮肉なエピソードが登場するのも、魅力。ただただ、お花とリボンの世界じゃない。

 のんびり、楽しみたい「お姫さま」たちのお話。

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赤と緑。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 出るまで、どれだけ待ったか。

 発売日が延期になった、という意味ではなくて。
 かつての「リンダキューブ・アゲイン」の設定資料集の復刊を望む声は結構高かった。あくまでゲームの設定本なのだが、ここに多くの作品が収められていたから。
 ここは、あえて「田中達之」ではなく「Cannabis」と呼びたいが、彼の絵なくして「リンダキューブ」は始まらない。古い古いゲームである。
 半年前と比べてもCGのレベルは格段に上がるものだから、これだけ古いゲームの「CGのクオリティ」は、期待しないで欲しい。が、このゲームには随所にアニメーションが折り込まれていた。それが、正に「Cannabis」の絵で動く。人気の漫画家やイラストレーターに、ちょっとパッケージだけ描いて貰いました、という代物ではないだけに、そのままの絵である。
 画集のイラストは、宣伝用販促物や設定画なので、すべてがゲーム画面ではないのだが、制約なしの絵は、実に活き活きと描かれる。映画の1シーンを描き起こしたようだ。
 キャラクターを格好良く・可愛らしく見せるためだけに描かれたものではないから、物語性が強く出る。
 ちなみに、このゲームは「滅亡寸前の惑星から、ノアの箱舟よろしく多種の動物のつがいを集める」ことが基本目的。その保護対象の動物の革剥いで牙抜いて身の回りの品を作り、肉を喰って生きる連中の、物語り。

 他作品からのイラストも、予想より多く収録されていた。動かすことを前提に描かれてきた絵は、抜群のデッサンと表現の力を備えている。
 氏の作品のイメージは、混ざりあって灰色になりかけた緑と赤。錆と、血の色。

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雑学王の西遊記。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「パタリロ!」は、ご存知のものとして語りたい。少女漫画の最長不倒記録を今なお更新し続けている漫画の、番外とでも言うシリーズである。

「西遊記」は、子供向けの絵本なども多く、何度もドラマにもなっているし、日本やヨーロッパの昔話と同列で知られていると思う。中国の物語としては、日本では一番知名度は高いかも知れない。
 この物語を漫画化したものや、下敷きとしてアレンジされた漫画もあるくらいなのだから。(ドラゴンボールが当初は西遊記をイメージされたものであるのは、主人公の名前からもお分かりだろうし、最遊記なども同様である)

 孫悟空をパタリロが。実在人物とは異なるが、度々「美形である」とされる三蔵法師をマライヒが演じている。その他の主要キャラクターも、それぞれの役を持ち登場しているが、それは実際に読んで確かめて欲しい。
(わたしが意外だったのは、当然端役で登場すると思っていたタマネギたちの不在である。今後登場するだろうか?)

 猿の孫悟空が、三蔵法師と共に旅をする。供をするのは、河童の沙悟浄に豚の猪八戒。ここまでが、よく知られる「西遊記」ではないか。
 しかし、中国で愛されている物語では、「これ以前」の出来事が中心となっている。三蔵と、経典を得に行く旅は、いわば後日談とさえ言えるかも知れない。
 それが一体どんな物語であるかは、この「パタリロ」演じる西遊記で確認することが出来るので、触れない。実際、三蔵との旅がメインにはなっているものの、「これ以前」の出来事を踏まえて進められる。
 勿論、細部については著者の脚色や創作も大いに含まれているのだが、非常に長い原作を読んだことがなければ、知らなかったエピソードが山ほど登場する。
 原作の「パタリロ!」や、著者の他作品にも言えるが、とにかく雑学の知識を豊富に得られる。細々とした薀蓄が大好きらしい。その範囲は、得意としているオカルトや宝石に関わることが多いが、落語であったり、昔の風俗であったりと多岐に渡る。
 正直、「西遊記」を読破するのは面倒かも知れない。
 が、これを読めば充分じゃないだろうか?

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愛すべき娘たち

2003/12/27 23:39

「恋愛」には、収められていない「愛」。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この著者をテレビドラマ化された「西洋骨董洋菓子店」‥ドラマタイトル「アンティーク」で知った方も多いのではないだろうか。
 彼女の作品を長く愛してきた読者達にとっては、やはり著者はボーイズラブの、いわゆる「ホモ漫画」作家として描いてきた多くの作品の印象を強く持つかも知れない。美しい「男たち」の、愛の物語だ。
 それらの作品には、確かに過激な性描写も多いが、反面いつでも物語の中心に置かれてきたのは「心」だった。
 派手な事件や、突拍子もない出来事、現実のどこを探しても見つからないような完璧な人物は、著者の作品では、描かれることはない。
 いつでも、魅力的でありながら、どこか欠陥を持った、どこかで出会ったことがあるような、そんな人物達が描かれてきた。
 激しい共感や感情移入よりも、これまでに出会った人が抱えていたかも知れない、見逃してしまった秘密に出くわしてしまいそうな気がする。わたしにとっての著者の作品は、いつもこんな印象を携えて登場する。
 そして、世間で「正論」として万人に認められるような意見は、必ずしも最善ではないこと。しかし夢みたいな幸せを諦めてでも、「正論」に沿わなければ生きていけない、一層の不幸に陥るのは怖い。そんな小さな悲しみが繰り返し描かれている。

 このシリーズでは、一応それぞれの話が独立した物語としても、読める。関連性を無視してもストーリーは成り立っている。
 様々な立場の「娘」の、もしかすると誰にでも訪れるかも知れない出来事が淡々と語られる。素直に祝福できない母の再婚、結婚は生きる上で「必然」の途中経過だと信じる人、少女の頃に抱いていた希望が現実になる保障など、どこにもないこと。そして、遣り切れない溜息と引き換えの、ささやかな救い。
 すべての女性が「娘」だったことを思い出させる1冊だが、それ以上に、たった今わずかにでも関わりのある誰かに、思いがけない「なにか」が起こっているのでは‥と、人と関わりたくなる物語である。

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まさしく、映画のような。

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 完結後に、全巻揃った段階で読破したタイトルだった。

 表題「バナナフィッシュ」は、ある麻薬の名である。
 これに関わる人間の物語だが、主人公の少年・アッシュの人生を描いたと言っても良い。
 アッシュは、その経歴が語られる以前に、裏街道の強者として登場する。暴力で成り立っているような世界で、彼は能力こそ高いが、むしろ弱い立場に見える若く、きれいな少年だ。
 彼の才能は、天性のものである。実際には、彼は多くの教育を受けていたのだが、「天才」として、努力で得られる以上の天賦の才を持って生まれた。
 彼と、唯一心を通わせた日本人の青年(平和に生きてきた彼は、過酷な過去を背負うアッシュと同世代に感じてしまうが)・エイジは、あまりにも掛け離れた成長の過程から、酷く価値観も考え方も異なる。
 しかし、彼らは互いに絶対的な友情で結ばれた。
 他人の目からも「証拠」となるような出来事はないままに終わったが。
 長い物語であるが、実際に彼らの中で過ぎた時間は、非常な程に短いのである。

 すべてが済んだ後には、幻だったとさえ思える、奇跡のようなアッシュの存在に、彼と関わった人間は皆、それを忘れられない。
 とりわけ、エイジには。彼は、アッシュへの邂逅と、いくつかの後悔の想いを長く長く、抱き続ける羽目になるのだから。
 19冊に及ぶ漫画なのだが、その少女漫画らしからぬ冷たささえ感じる描写の切り口は、一気に読破すれば1本の良く出来た映画を観た気分を味あわせる。わたしは、これを連載中にだらだらと続きを待ちながら読まずに済んで、良かったと思ったくらいだ。

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「世界平和だとか、どうでもいい」と死闘を繰り広げる面々。

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 漫画については、ごくごく限られた、はっきり「大嫌いなジャンル」以外では、とりあえず手当たり次第に読んでみる習慣である。
 が、何故か「読んでいて当然」のこの作品をわたしが始めて読んだのは、完結してから相当経ってからである。手に取った理由は、このワイド版の刊行ではなかった(まだ出てなかった)。弟が全巻揃いで持っていて、風邪を引いて寝込んだ際に、あまりの暇を持て余し、未読なら何でもいいや、頭もぼんやりしているし‥と適当に持ち出したものである。
 そう、弟が連載当時に毎巻買い集めていたにも関わらず、何故か未読だったのだ。
 バラバラと眺めるだけのつもりが、単行本では39巻(!)という量を続けて読みきってしまったのである。眠気も我慢して。
 
 幽霊などを退治する職業である「ゴーストスイーパー」の美女・美神と、その助手である少年・横島が主人公格。少年誌らしく、短いエピソードと単行本数巻以上に及ぶシリーズが交互に続く。
 一応、仇敵となるような存在や運命とも言えるしがらみもあるのだが、そうした大きな目的を持って、結末へ進む連中ではない。
 あくまで彼らにとって(特に美神には)、悪霊との戦いは「商売」であり、金儲けにならない以上、関わりたくないことなのだ。正義の味方であれば失格どころか選考ラインにも上らないだろうが、彼らは店を構える商売人なのだから、仕方ない。
 後半、人気の少年漫画には有り勝ちだが、編集部の意向や連載上の商業誌としての都合だったのだろうか、それまでの物語を楽しんで、細部まで読み込んでみると、今ひとつ納得しかねるエピソードや表現も登場する。
 だが、全般通してなら、素直に楽しめる作品だった。

 著者は、最近読みきりを何本か発表しているが、連載はしていない。
 この作品は完結しているものの、新たにエピソードを加えることに全く無理のない結末で連載を終えている。もう、あの頃のような雰囲気で作品を描いてはくれないのだろうか‥ 
 読みきりででも、もう一度彼らの騒がしい仕事っぷりを見たいのだが、どうだろう?

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紙の本DOLL 6

2004/01/04 01:43

ロボットは、心を持った「ヒト」ではない。

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 人間と同じ心を持ったロボット‥夢がある。美しい理想だと思う。
 だが、果たして本当に「同じ心を持つ機械」が生まれた世界というのは、素晴らしいものだろうか?

 表題にもなっている「DOLL」は、非常に性能の良いロボットである。
 家事雑用などを行う便利な道具として、高価ではあるが(恐らく、相場は1千万円から2千万円なのだと思う)、代価さえ支払えば、誰にでも手に入るものだ。人間の使用人のように、命令すれば仕事をするので、誰にでも扱える。
 主な用途が「メイド代わり」であるからか、DOLLは多くが女性型で、非常に美しいことを除けば、人間と左程変わらない外観を持っている。「商品」である彼女たちが美しいのは当然かも知れない、購入者だって、見栄えの良い、素敵なデザインの道具の方が、嬉しいに決まっている。
 機械であるだけに、どれも仕事は確実にこなす。「壊れて」いない限り、パソコンや家電と一緒だ、ユーザーの命令通りに動く。いくつかの制限はあるらしいが、例えば「死体」を埋めることも命令であれば、気に留めず行う。

 人間関係を上手く持てない人間ほど、彼女たちに救いを求めている。
 それが、良い結果をもたらす時もあるが、悲しい結末を迎えることもある。彼女たちが、結局は「機械」であることを、この物語は強調し続ける。

 自然な表情を得て、あたかも「心」を持っているように気配りをする「DOLL」たち。人間は、それに導かれるように時に心を取り戻しさえする。
 しかし、彼女たちは最期まで「心」を得ることは、出来ない。
 何故なら、彼女たちは「機械」だから。
 その、人工の心に縋って生きる人間たちは、悲しい。だが、もし彼女たちに「本当の心」が宿っていたのだとしたら、それこそ悲劇ではないだろうか。
 あくまでも、彼女たちは「良く出来た機械」として造られ、壊れていく。
 見た目は寸分人間と変わらない彼女らを平気で叩き壊す人間も、自らの娘のように、必死で守ろうとする人間も、高価な機械を持っている隣人を嫉妬の目で見る人間も、心を持っている。心は、善なるものだけとは限らない。
 しかし、機械に心はない。
 
 いつしか、彼女たちのようなロボットが現れるに違いない。その時に、誰かがこの作品を思い出すだろう。ようやくロボットが2本の足で歩き出した当時の物語として。
 人間と区別のつかないロボットが、実現しそうな未来が近づきつつある今だからこその名作だと思う。

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紙の本おそろしくて言えない 第1巻

2003/12/28 01:41

彼らが「言えなかった」こと。

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 コメディタッチのオカルト。
 ‥無理がある。が、全編通して主人公の一人、「霊能力者の男子高校生」が好き勝手し放題なのだから、仕方がない。
 よくある狙ったミスマッチなキャラクター設定は、この作品には用いられていない。悪い霊を払い、そうした霊的な存在を観ることが出来る「霊能力者」御堂は、いかにも胡散臭い容貌で、一見して物静かというか陰気な雰囲気に描かれる。
 実際、彼の「霊能力」は、クラスメイトから時に怪しげに白い目で見られることはあっても、あまり疑われていない。体の不調や、不可解な現象を実際に解決しているからだ。しかも、それは異常な事件としてではなく、ごく日常的な行為として。「隣のクラスの男子が、電気屋の息子で機械に詳しいから」と、壊れたウォークマンを持ち込む気軽さで、不審な頭痛を「お祓い」してもらう生徒が毎日訪れるのだ。
 多少、大きな事件も起こる。そうした際の御堂の能力絶対的で、苦労する素振りはまるでない。窮地に陥ることもない。実際、彼自身がそうした霊的なトラブルに巻き込まれることをストレスに感じてはいないのだ。表面的に表さないというだけではなく。
 もう一人の主人公、新名は霊的な存在を真っ向から否定している。
 彼は非常な不運の持ち主であり、無闇と怪我をしたり、起こりえない不幸に見舞われている。負けず嫌いで、しばしば悩んでも見せるが基本的に楽天家な面が強く、悲惨な筈の境遇にも強気だ。間違っても、霊の仕業だなどとは認めない。そして、あまりにも酷い霊の悪影響を辛うじて弱めているのが、彼の母親や愛犬であることも。

 連載誌が少女漫画誌であり、恋愛要素も描かれるが、一筋縄ではいかない。未読の方に、結論を知らせてしまう羽目になるので省略するが、似たような環境に置かれても、御堂は絶対的な強者だ。誰に何を言われようが、決して動じない。というか、そもそも彼に弱みとなる存在が、ないのだ。

 御堂いわく「お気に入り」である新名への、霊的な嫌がらせ‥それは、本来新名に「霊の存在を認めさせる」ために行われるのだが、そうしたドタバタの物語である。

 この文庫2冊は、過去発行された単行本の待望の文庫化だが、各巻には描きおろしがある。
 著者の多くの作品で、タイトルは全体の雰囲気を「も」表しているが、物語の最後の最後に至って、本来の意味に到達することがある。本作も同様で、連載時の最終話では、新名にとっての「おそろしくて言えない」ことが何か、わかるようになっている。それは、結局口にされることはない。
 そして、この文庫にも収録されているが連載終了後に描かれた番外編では、常に絶対的な強者であった御堂の、意外な一面を覗くことができる。この話はファンの中でも人気の高いものであったが、文庫2巻の描きおろしでは、更にそれを補完した、御堂の「おそろしくて言えない」ことが描かれた。単行本をお持ちの方でも、ぜひ一読してほしい。

 連載時からは、相当年数が経っている。当時、彼らと同年代だった読者は、わたしも含めて作中での重要なポイントでもあった「まぁ、そういったような話」の10年後を迎えている。
 この、絶妙のタイミングでの文庫化は、偶然だったのかも知れないが、昔からのファンにとっては嬉しいことだった。

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「オタク」らしく。

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 タイトル「げんしけん」は、「現代視覚文化研究会」の略称。作中、主人公らが所属する、某大学のサークルである。
 一見、高尚な名称とは裏腹に、その扱うものはといえば、コミック、アニメ、ゲーム‥フィギュアやコスプレと、確かに「現代」で「視覚」で「文化」だ。これらのメディアが、決して「高尚ではない」「研究に値しない」などとは、わたしは思わないが、「げんしけん」一行は、ただ毎日、こうしたものに夢中になって、だらだらと過ごす、それだけなのだ。
 彼らのような「オタク」を批判的に、そうでなくとも冷たい目で見るものは多いのに、一部の有名アニメが大ヒットする。フィギュアなんて、オタクの中でも更に細分化された一部の人間だけが関わっていたものが、今や「食玩」などと普及してしまう。もはや「コスプレ」の意味がわからない若者も少ないはず‥ 
「オタク」と、一般人の境界は、年々近づいている気がしてならない。この壁は、決して薄くなっているのではなくて、それぞれに分かれた住人たちの居場所が、だんだんと壁に近寄って、時にはお互い、交流することもある‥そんな程度のズレがある。

「オタク」ではない者を馬鹿にすることで、自分たちの優位を保とうとする一部の連中が「オタク」ではない「一般人」から迫害されかねない一方で、だらだらと、自分の嗜好を満たす有害性のない「オタク」が大勢いる。
 アニメやゲームの内容を延々と繰り返し、時には常識を疑うような発言もするが、実際、それを行動に出したりはしない。基本的に、「オタク」は内向的だ。「げんしけん」所属の彼らは、皆そうした静かに、他人に迷惑をかけない「オタク」たちである。

 物語は「オタク」の壁を越えてしまった主人公を据えつつも、根っからの「オタク」を最愛の彼氏に持った「一般人」の女性・咲の視点から、冷ややかに客観的に見つめられる。なんで、アニメやゲームに熱中出来るのか、咲には理解しがたい。特に、最愛の彼氏が。
「げんしけん」を胡散臭いと毛嫌いする咲だが、自分は壁を越える気などサラサラないだけに、かえって距離は縮まってゆく、壁越しに。

「オタク」にとっては馴染みある日常を。「一般人」には、実際に近づく機会の少ない彼らの日々を遠慮なく覗いて欲しい。

 ところで、内容も登場人物もまるで違うが、「究極超人あ〜る」の「光画部」を思い出す。
 目的も、理想もなく、ただぼんやりと過ごす、夢のような放課後である。

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カードも素晴らしい!

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カードゲーム・アナログゲームオタクとして、大好きな作品に、こういった付録がついたら買わないわけにはいきません。
今後も、こういった特装版が企画されれば嬉しいですね。未登場だったり、既出だけれど、あまりスポットの当たっていない宝石たちも、今後色々な機会で描かれていくのかな。

この作品も、手元に届いたら本文を読む前にカバー剥がして本体表紙を見たくなります。

キャラグッズとして発売された、原石風キャンドルも驚きましたがw
(キャンドル… 物凄く素晴らしいけれど、だからこそ作中設定を念頭におくと、宝石たちの身体を略奪する月人になっちゃった気分で手が出せない…)

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