Piyotaさんのレビュー一覧
投稿者:Piyota
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2004/06/01 17:03
分子生物学者・構造生物学者必携・最強のバイオインフォマティクス最新ガイド
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
書評タイトルにも書いたように、本書は分子生物学・蛋白質科学・構造生物学者が論文や文献でよく目にするバイオインフォマティクスによる最新の解析手法のほとんどを、その原理と応用法の両面からコンサイスに解説する、読み応えのある解説書である。逆に本書には、いわゆる有名データベースWWWサイトの利用法とか、名だたるデファクトスタンダードのプログラムの出力スコアの詳細な読み方などは一切紹介されていない。その意味で、大学院生・アカデミック研究者・企業研究者向きの本である。あくまで原理とコンセプト、そしてそれを利用することにより何ができるか、どう応用するか、を記述することに筆者のこだわりが見られる。
内容は以下の5章にわけて解説してある。
第1章 タンパク質のバイオインフォマティクス
第2章 タンパク質の分子進化
第3章 タンパク質の生化学的機能の解析
第4章 タンパク質の生物学的機能の解析
第5章 おわりに—進化的情報とバイオインフォマティクス
ヒト・マウスなどのゲノムプロジェクトが続々と完成し、さらに網羅的構造ゲノミクスが着々と進みPDBのエントリーが日々増え続けている今日、その情報を活用するための「お作法」について最低限のことは理解しておかないと正直言ってカッコワルイ。そしてそれだけに留まることなく、生物情報を解析するためのそれぞれの解析法の背景となっている哲学を理解すると、そこからぼんやりと生物情報(ゲノム・配列情報)そのものが持っている情報の総体やその性格が浮かび上がってくるのではなかろうか?
そして、いわゆるウェットの実験生物学の主要な目的は、個々の分子機能の解明を通じて生物情報の総体を理解することである。その意味で本書は、実験生物学者に重要なヒントとアイデアを提供してくれると言えるであろう。
紙の本Last kiss
2004/04/26 01:44
妹フラグ立ってしまいました
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
俺もこの小説には泣かされました。
主人公の鈍感さと残酷さには、途中からある意味、腹立ちすら覚えます。おまえ、兄として男として、あまりに身勝手すぎないか? もっとしっかり受け止めてやれよ!と。
そして、そう思っている自分を知ってガクゼンとするわけです。なぜなら、それはもうすっかり作者の術中に落ちているのだから。キーワードは「妹フラグ」です。それは切ない、でも運命的必然を感じる、ひとつの大切な出会いなのです。
2004/06/08 00:45
図書館が好きな人におすすめ。
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上田志岐さんの創りだすキャラには、ゴキゲンな連中が多い。
このシリーズは、魔法都市グーデリア市にある
つぶれる寸前の私設図書館「ケリポット図書館」
が舞台である。
そこの新任の図書館長、ロクデナシのレクト君と、
職員でありお目付け役である精霊ヒャッカの
ステキなドタバタらぶこめ、ということにしておこう。
ヒャッカちゃんは、ともかく魔術式を起動し始めると
めちゃめちゃ強い。だがそのヒャッカちゃんにも手に負えない
ロクデナし館長の秘密が、いま、明かされる…
惜しむらくは、地下が迷宮になっているという図書館の
設定が某RODとかとかぶっちゃうことですネ。
シリーズになりそうだし、これからに期待しましょう。
紙の本海泡
2004/04/26 01:38
南の島を舞台にしたコージーミステリの傑作
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主人公、大学生の木村洋介が夏休みに小笠原の島に帰省してきたところから物語ははじまる。そこには洋介のもと彼女、中学高校の同級生だった一宮和希が帰省していた。しかし、和希は洋介のことを避けるようにもと村長の実家にこもり、しかもほどなくして三日月山展望台から謎の転落死を遂げてしまう。
洋上の楽園、父島の自然にめぐまれた豊かな日常生活が、都心に出て行ったものの隠された秘密、都心から父島に来た余所者の行動との対立軸で描かれる。洋介は幼なじみに会い、話を聞き、謎を解き明かそうとする。だが、そこでまた第二の事件が…
樋口が描く南海の島の若者たちの開放的な雰囲気は、本書を読んだ人の旅情を書き立てることは間違いない。また、まだそう遠くない高校時代の恋の思い出を思い出した人は、きっと昔の同級生に連絡をとろうとおもうにちがいない。そんな甘く切ない、「青春」といっていいような郷愁を誘うミステリは、だが同時に日本中どこでもある利権争いや、因習といった現実社会のダークサイドから、南海の楽園すら無縁ではないことを描いている。そして洋介がたどりついた苦い真相とは? 作中登場するカクテル「小笠原スペシャル(ラム酒炭酸割りパッションフルーツ添え)」の氷をからからいわせながら、読まれることをおすすめする。
紙の本魔女
2004/04/26 01:15
切なさと苦さと、魔女と呼ばれた女の子と。
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主人公の広也は、テレビ局の報道部で売り出し中の美人で野心あふれる姉から、もと彼女の千秋の謎の焼死について知らされる。キャスターへの転向を狙う姉は、就職浪人中の広也を5万円で雇い、その謎を調べさせ始める。
主人公の広也は、他の樋口作品の主人公と同じように、クールでちょっとさめていて、しかもとぼけた奴である。周囲が彼をそう見ているほどには、本人はセンチメンタルでもロマンチストでもない。ただ、別れて二年経ったあと、広也は千秋のことを何も知らない自分を発見し、千秋を探して、千秋の死の謎を解明するために、彼女の過去に会いにでかけるのだ。そこで明らかになってくる「魔女」の正体とは? これ以上書くとネタばれになるので、詳細は読んでのお楽しみ、ということにしておこう。
たとえば著作中にでてくる魔術書の古典と呼ばれている本、たとえばアレイスタクロウリイの著書とか世界魔法大全とかを、実は評者も学生のころ買い漁ったことがあり、登場人物のセリフをかりて作者自身がそうした魔術のもつ構造をどのようにとらえているか、という片鱗がのぞけたのが個人的に興味深いといえば興味深いが、それはこのミステリーの本筋にはあまり関係がない。
そして、これが評者のもっとも好きなところなのではあるが、他の樋口作品の期待に違わず、この作品もまた、読後感は切なく苦い。
紙の本天国にそっくりな星
2004/03/29 03:34
異世界ハードボイルドはこうでなくっちゃ♪
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SFやファンタジーの分野でも、ハードボイルドな主人公が
見直されつつある。と同時に、ミステリー分野でのハードボ
イルド系探偵小説において、主人公の探偵自身が内省さを増し
たり、傷をおっていたりするのが最近の流行(?)であるのと
おなじように、天国にそっくりな星の主人公、坂北天界も
内省的で、思慮深く、やさしくて、しかもタフだ。
だが、空がなく貧富の差のない、「天国にそっくりな星」では
天界はセンチメンタルになれない。ごきげんなナイスバディ
の恋人、玲美に振り回されながら、ユーモラスな異星人の
同僚になかばだまされながらこきつかわれながら、
マトリックスを髣髴させる巨悪な複雑怪奇なバーチャルリアリティを
相手に、天界は戦う。
あくまで快楽的に自己中心的に。
それはそれでいいんじゃないか? だってここは天国にそっくりな
星なんだから。
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