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  3. 佐々木 昇さんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年6月)

佐々木 昇さんのレビュー一覧

投稿者:佐々木 昇

36 件中 1 件~ 15 件を表示

そうか、「軍神」は国民が生み出したものだったのか。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『軍神』という本書の表題を見て、そういえばかつて、そう呼ばれた軍人たちがいた事を思い出した。近いところでは、ハワイ真珠湾攻撃のときに戦死した九軍神が思い出されるが、酒巻少尉が捕虜になっていること、九名は戦死したことを現場の上層部は早くに知っていたことを空母飛龍の乗員だった親戚の人から聞いたことがある。開戦早々、捕虜が出たなど発表できるわけもなく、悩んだ末に九軍神が発表されたものとのことだった。
 続々と報じられる陸海軍の大戦果に国民受けする記事を書くことに新聞社は多忙、国民は一人二人の戦死者の差など疑う余地もないほど新しい戦果に夢中だったのだろう。人気番組の視聴率を気にするあまり、放送内容を捏造し、鵜呑みするのと似ている気がする。

 幕末、倒幕軍と幕府軍の戦いは圧倒的な戦力差で倒幕軍が勝利した。
 このとき、倒幕軍の参謀たちは近代戦においては武器の質もさることながら、兵員の量が勝敗を決することを知っていた。そのため、倒幕軍の中には農民、僧兵、任侠の世界の者までが参加し、人足までもが駆り出されている。
 維新政府は徴兵制を敷き、近代的な軍隊を創設した。四民平等とはいえ、かつての武士は士族として存在し、平民あがりの兵隊と士族とが衝突を起こすという事件がしばしば起きている。明治十年の西南の役において旧武士階級の集団と軍隊との戦争は平民の軍隊の勝利に終わった。この結果、軍旗を奪われたとはいえ、乃木希典は近代的軍隊の象徴であり、階級闘争における平民の英雄になったのではと思う。
 続く日清戦争において陸軍はラッパ手の木口小平、海軍では「勇敢なる水兵」の三浦虎次郎が国民に知られるようになり、武士階級に支配されていたかつての庶民が、軍人になることで天皇の臣下として直接に扱われることに喜びを見出したのではないか。

 そして、敗戦後は仇敵のアメリカと手を結び、国民は経済進出という形で世界に飛び出し名と財をなすことで人種間闘争にも一応は勝利した。
 今夏の参議院選挙でイラク支援先遣隊長だった佐藤氏が自民党から出馬し当選したが、出馬の理由は国政を預かる国会議員の現地視察すらないことに憤りを感じたからとのことである。今の自衛隊からは「軍神」は生まれえず、国民も国民が選出した国会議員もそれが分っているから無関心なのだろう。

「軍神」の誕生をひとつひとつ追いかけることでかつての時代を生きた国民の姿が炙り出されたが、敗戦と同時に「平和と反戦」を希求する日本国民に変貌したのは「軍神」を生み出すという庶民のプロジェクトXの終焉宣言だったのではと思う。
 これは、国民が求めた英雄たちを検証することで、平和を維持するとはどういうものかを考え直す指針を与えてくれた一冊です。

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紙の本壬生義士伝 上

2003/04/18 22:14

通勤電車では読めない本。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 平成15年2月15日(土)の午後、ホテルオークラで浅田次郎氏の講演があり参加した。当日の朝、NHKの生放送で偶然にも浅田次郎氏がゲストであったが、画面で見た浅田次郎氏が同じスーツを着て登壇され、「本物だ」と不謹慎な言葉を吐いてしまった。すでに「壬生義士伝」が封切りされた後であり、映画を観ようかなと思ったが、氏の講演を聴いて原作を読まなければと思った。

 通勤電車の中で読むには困りものだった。
 のめり込みすぎて降車駅を通過しそうになること数度、不覚にも人前で涙ぐむこと数しれず。
 「平成の泣かせ屋」に泣かされてしまった。

 敗戦後、日本人が忘れさせられたモラルを復活したいという氏の願いが存分に作品の登場人物のセリフとして出ていた。連載中も嘉一郎を殺さないでくれという投書が多く届いたそうであるが、どうにか娘と末子が生き残って良かったと思った。

 長編小説をわずか二時間程度の映画に凝縮すると割愛される箇所も多く、言いたいことが伝わらないと氏は語っていたが、読了後、二時間そこらの映画にまとめるのは到底無理だと改めて感じ、原作を読んで真髄に触れられてよかったと思った。

 講演会場で本書が売られていたので買ったが、浅田次郎氏のサイン入りだった。
 浅ましくも、上巻と下巻のどちらにもサインがあるものを探していたが、こういった上下巻の場合、上巻にしかサインはしないとか。勉強になりました。

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陸軍 小説 下巻

2003/03/13 22:19

廃棄処分の初版本

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 火野葦平の一連の兵隊小説にもいえるが、彼は小説という形式をとりながら軍隊生活や戦場でのありようを故国にいる多数の兵隊の家族に伝えたかったのではないかと思った。
 戦場から家族に送られる手紙は検閲という制度があり、紋切り型の内容しか書けないことを兵隊でもあった火野葦平は知っているがゆえに、小説というもので代筆をしたのではないだろうか。
 読み方によっては軍国主義を称える内容のため、敗戦後は「文学者戦犯第一号」のレッテルを貼られたが、「息子を兵隊として天子様にお返しできる」と喜んだ高木家の母親が息子の戦死公報を受け取ると狂ったように悲しむところなど、戦意高揚の小説であればこのような場面は書けないのではないだろうか。
 朝日新聞の連載小説であったものが本となった日、皮肉なことにそれは昭和二十年八月十五日の敗戦の日であった。
 その後、印刷された初版本がどのように処分されたかは不明のようである。

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陸軍 小説 上巻

2003/03/13 21:54

博多弁の小説

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 武田鉄矢率いる「海援隊」が「母に捧げるバラード」で博多弁を全国に広めたが、まさか火野葦平が半世紀以上も前に「博多弁」を駆使した小説を朝日新聞に連載していたとは驚きだった。
 それも、現在の博多っ子すら使わないような古典的な方言が出ており、どこかに注釈でも入れてもらわなければ理解できないのではと思った。
 しかしながら、火野葦平自身が見聞きしたもの、体験したものを高木家の人々に重ねて脚色されており、それが見事に日本陸軍の創設からを描きだしているのがおもしろく、陸軍という巨大な組織を頂上からではなく、当時の庶民の視点で捉えているのが良かった。
 余談ながら、火野葦平と同じ福岡出身の中野正剛、緒方竹虎といった朝日新聞が生んだ政治家もこの小説の中の博多弁の会話を楽しんでいたのではなかろうかと思った。

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生きる者の記録佐藤健

2003/04/21 23:24

それでも健さんは生きている。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 書店で本書を手にして初めて、佐藤 健さんが亡くなられたのを知った。
 「イチロー物語」を手にしたとき、佐藤 健さんはいい仕事を続けているなと思い、その後も順調に仕事をされているものと思っていた。健さんが所属する新聞社の新聞を購読していないので知らなかったが、闘病記が新聞に連載されていたとは。もう、まるっきりのフリーのジャーナリストとばかり思っていたのに、律義に記者を続けていたとは健さんらしい。
 
 学生の頃、入院僅か一ヶ月で母が亡くなり、突然に訪れた不幸に呆然とし、悶々とする日々を送っていた。出口の見えないトンネルに突入し、もがきつづけ、坊さんの説教も釈迦の教えもへったくれもあるものかと荒れている時、「宗教を現代に問う」で健さんの体験談である「記者が雲水になってみた」が強く印象に残り、健さんに憧れた。
 ずっと記憶に残っていた。若くて凛々しかった健さんも渋い親父になっていた。更に深みが増した顔つきになっていた。冷酒のグラスを口に運ぶポーズもさまになっていた。
 そんな健さんが、末期ガンでぼろぼろになりながら、自分を曝け出して標本になり、生体実験になっていた。まるで、雲水の修行の続きを見ているようだった。

 ベッドの上の健さんの姿が病床で闘っていた父の姿とダブって見え、哀れに思えたが、最後に健さんらしい往生だった。拍手で送られる健さんは、永 六輔さんの言葉どおり幸せな記者だったと思う。
 それでも、生への執着があったのか、孫娘をおんぶひもで背負って歩いた健さんだから、記者としてもっと生きて欲しかった。

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紙の本壬生義士伝 下

2003/04/18 21:55

無条件に人に勧めたい本です。

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 「勝てば官軍、負ければ賊軍」とは言いえて妙である。
 負けてしまえば、いかな正義も通じないということか。
 歴史を正面からだけで判断してはいけない、反面からも側面からも見なければ真実はわからないよと語りかけているような気がした。

 かつて、知人が知らずに下関の「ふぐ刺」を持参して会津若松を訪ねたところ、参集した客人は誰一人として箸をつけようともしなかったとのこと。その話を聞いて薩長に対する恨みつらみは早々には溶解しそうにもないなと思ったが、「朝敵」「賊軍」の汚名を着せられれば仕方がないと思える。この、朝廷ではなく薩長に弓引いた人々の苦しみはとうてい教科書では理解できないものであったが、本書で十二分に分かった。

 司馬遼太郎の「竜馬が行く」以来、久しぶりに惜しげもなく泣けた小説だった。
 竜馬暗殺の真犯人を推理した内容も、「そういう見方もあったのか」と思える解釈であり、竜馬暗殺の犯人は新撰組という固定観念を改めなければと思った。
 とにかく、無条件に人に勧めたい小説です。

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徹頭徹尾、強い人です。

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 海軍軍人として勇猛果敢な戦いを展開した山口多聞少将についての記録は多数あるが、個人としての山口多聞を知りえるものとしては本書をおいて他にはないだろう。
 家庭における避けては通れない諸問題を抱えながら、さりとて海軍を辞職することすらできない立場にあった山口多聞という人物の内面の苦悩が偲ばれる内容だった。公私共に苦しい中、それに耐えていた山口多聞の内面に触れ、単なる勇将という言葉では片付けられないものを感じた。ここまで人間は精神的に強くなれるのかと、ただただ恐れ入った。

 多忙な中において、妻にあてた膨大な手紙。
 それも、現代の我々すら赤面するほどの絶賛の言葉の羅列。労い。
 軍歴においては華やかでありながら、家庭においては同情を禁じえない不幸。

 「飛龍天に在り」を読んで猛将という印象しか持ち合わせていなかったが、本書を読んで人間を表面だけで判断し、評価することの安易さを諌められた気がする。
 個人の秘密に関する事柄を公開していただいた著者に深く感謝したいと思います。

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紙の本せどり男爵数奇譚

2003/04/06 21:40

事実は小説より奇なり。

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 本好きの方にはたまらなく面白い本である。
 あまりの奇想天外な展開にぐいぐいと引き込まれていって、時間が経つのも忘れる位だった。

 作家の方々のエッセイなどには時おり「せどり」稼業の人たちが登場する。
 「背取り」もしくは「競取り」という商売で、古本屋や古書店を巡り歩いては注文主が求めている本を探してきたり、入札で仕入れてくるものである。往々にして作家達は出入りの古本業者の他にこのような裏方商売の方々にお世話になっているようであるが、その方々の裏側をこのような形で暴いてもいいのかと心配になった。

 それにしても、古書に魅せられた人間の欲望の深さにはただただ驚くばかりである。「たかが古書、されど古書」である。
 流行の新古書店の経営者にはとうていできない芸当が多々詰まっていて、古書の奥深さを垣間見た気がした。

 裏稼業(失礼!)を短編集にまとめあげた梶山季之の好奇心とストーリーの展開の面白さに脱帽でした。

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彼が生きていたら日本のレース界はどうなっていただろう。

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 ふたたびこの本を読み返したいと思ったのは「日本を動かした大霊脈」という本を手にした時からだった。
 堀川辰吉郎という人物の自伝のようなものであるが、ぱらぱらとその本のページをめくっていたら「浮谷東次郎」という名前が目に入った。
 かつて天才レーサーといわれ、鈴鹿サーキットで不慮の事故死を遂げた浮谷東次郎が何故に堀川辰吉郎に関係するのかが不思議であり、「日本を動かした大霊脈」という本の題名から、あの浮谷東次郎がなにやら宗教団体にでも入っていたのかと思っていた。
 が、なんと、浮谷東次郎の母方の祖父が堀川辰吉郎であった。

 浮谷東次郎が中学生の時に千葉県市川市と大阪を50ccのクライドラーというバイクで往復した記録を中心に東次郎の中学生時代の日記で構成されている「がむしゃら1500キロ」であるが、旅先の大阪で祖父と会って「明治天皇と日露大戦争」という映画を観たと書かれている。この祖父が堀川辰吉郎である。
 昭和三十年代、自転車を入手することすらままならぬ時代にバイクを持っている中学生など極めて珍しい存在であるが、その事だけでも彼が非常に恵まれた家庭環境にあったことが分かる。
 浮谷家は千葉県でも有数の名門の家柄であるとか。
 そして、現在のように東名高速も名神高速も無く、ましてや国道すら満足に舗装されていない時に市川から大阪までをバイクで往復するなど、無謀としかいえない。
 しかし、彼はそれをやり遂げたのである。

 家柄の良さ、恵まれた家庭環境に自分自身を埋没させず、逆にそれを恥じながらもどこかに他者を顧みる視線を失わない東次郎の心理、言葉に共感を覚えずにはいられなかった。
 単調で、少し退屈な内容であるかもしれないものの、正直な気持ちが反映するのが日記文である。その素直な日記の文体に当時中学生か高校生かであった私は引き込まれていってしまい、東次郎の「俺様の宝石さ」など一連の著作を捜して読んでいった。
 当時の私はバイクなど乗れる身分ではなかったが、気持ちは東次郎と一緒にひたすら東海道を走っていた。
 三十年以上も経過して再読してみたが、古臭さを感じさせないのは何故だろう。

 余談ながら、東次郎の祖父である堀川辰吉郎は明治天皇のご落胤といわれている。
 躾の厳しい養母に育てられるものの、その激しい気性から幾つもの学校を放校処分となり、後見人の一人である頭山満の伝手で孫文の秘書役として中国大陸を駆け巡ったそうであるが、気性の激しさと行動力は存分にレーサー東次郎に受け継がれていたのである。
 また、他者を思いやる東次郎の心根は天皇家のDNAなのだろうか。

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紙の本松本清張の残像

2003/03/14 23:05

ミステリー作家の謎を暴く編集者

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 松本清張ファン必読の書である。
 膨大な量の作品を残した作家であるがゆえに、松本清張に関わった編集者はその作品点数以上であると想像されるが、30年もの長い間、一貫して松本清張の担当編集者であった著者と作家の関係の濃さが知れる内容であり、「人間・松本清張」を描いた他の編集者の追随を許さないものがある。

 司馬遼太郎の作品は亡くなってからも売れ続けているが、松本清張の作品はテレビのミステリーとしての材料になるだけで、安定した読者の存在を感じることができない。
 この死後の松本清張が辿らなければならなかった原因とも思える経過が辛口の担当編集者であった著者によって描かれているが、あの松本清張の分身ともいえる「半生の記」すら著者によって真相を謎解きされているのは興味がそそられた。作家自身のミステリーを担当編集者が暴いているのを地下の松本清張は苦笑いするしかないだろう。

 松本清張は映像の世界に挑戦したが、憧れの菊池寛がなしえなかった映像というものを身代わりになって成し遂げようとしたのだろうか。
 著者は映像ミステリーとして一人歩きする作品や「半生の記」をベースにした松本清張に対して嫌悪を表しているが、それは松本清張の真実を守り通したいという正義感の現れである。

 松本清張の全集を手がけたり、作品の資料収集のために駈けずり廻った舞台裏が清張作品を読んでいるのかと錯覚するほどの文体で構成されている。松本清張と一心同体で仕事をしてきた結果と思うが、本書を読んでいて「北九州市立松本清張記念館」の館長になりえる人はこの著者しかいないと断言できる内容であった。

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紙の本ノモンハンの夏

2003/04/22 22:16

無益な戦いに駆りだされた兵隊達が可哀想。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 膨大な資料を集めるだけ集めて、ついに司馬遼太郎はノモンハンについて書けなかった。
 その作家の苦悩をまじかに見ていた半藤 一利氏でしか、これは書けなかったのではないか。

 「勝って兜の緒を締めよ」、陸軍のエリート達は陸軍創建以来の連戦連勝に古の教えも覚える暇がないほど勉強に、昇進に忙しかったのだろうか。このエリート達に引きずられた国民ほど哀れなものはない。
 本来ならば軍法会議で銃殺刑であった辻 政信、東條 英機などが処分もされずに生き残ったのが大きな間違いである。国家の行く末よりも自己の出世欲を優先させ、暗記だけが得意な小才が舵取りすると子々孫々までもたたる例である。
 姑息にも辻 政信などは敗戦後には戦犯としての処分を怖れて逃亡生活を送り、なにを間違ったか国会議員にまでなるという破廉恥極まる輩である。「作戦の神様」など馬鹿な尊称を誰が奉ったのだろう。

 半藤 一利氏も憤りを隠さずに書いてあるが、読んでいて猛烈に腹がたってしかたがなかった。こんな無用な戦に駆りだされた兵隊ほど可哀想なものはない。あの司馬遼太郎も激しい怒りで書けなかったのだろうが、半藤 一利氏の血圧が平常値になっているのを願うばかりである。

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たられば話はしたくないけど、つくづく残念な提督です。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 すでに亡くなられてはいるが、ある親戚が空母「飛龍」の乗組員であり、当時の話をよく聞かせていただいた。
 運がよかったのか悪かったのかは分かりませんが、と言いながら艦橋での山口多聞少将の思い出や戦闘機の発艦や着艦の様子を身振り手振りで語ってくれ、止む無き用事で上陸している間に艦は出港し、死にそこなったとの事であった。

 そんな思い出を確認しながら読み進んでいったが、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦においての山口少将の読みの深さ、鋭さには驚かされる。何故、この提督に両海戦の指揮を執らせなかったのかと残念でならない。
 当時の海軍といえども官僚主義に首脳が侵されていたのだろうか。たらればは禁物だろうが、日露戦争におけるような大胆な指揮官の起用があったなら結末も少しは変わっていたのではないかと悔やまれてならない。

 しかし、本書に紹介されている萬代久男氏の「武器なき戦い」にもあるように、アメリカの徹底的なスパイ網が構築されていたのでは、とうてい勝利は難しかったと思う。
 それにしても、開国以来わずか100年足らずのうちに国産の兵器をもって近代文明のアメリカと戦うなど、日本人はすごい民族であるとつくづく思った。

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松本清張の世界

2003/05/25 20:34

美しい文章よりも真実の文字を書きたい。

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 松本清張に関わった作家、編集者などの評論や思い出が並べてあって、それぞれが思い入れや松本清張と関わりあったというプライドが出ていた本であった。まるごと一冊、どかんと読み応えがあって、初期の作品がいいアクセントになって飽きなかった。これだけのボリュームがあって、それも1,000円を切って、文庫というのも松本清張らしいと思った。

 このなかで、おもしろかったのは松本清張を芥川賞に選んだ選評委員の方々の言葉がそれぞれに思惑があるようで面白かった。
 いずれ自分達を追い抜いていくであろうという才能を認めながら、絶賛する人、けなす人、それぞれの評価は各個人の個性が出ていて大変興味を抱いた。
 また、松本清張の才能を認め、彼を世に送り出すべく支えた火野葦平の姿はまさに若松港の大親分の風格である。

 松本清張の出世作から初期の作品がこの一冊に重厚さをもたらしている。一度は読んでいるものの、もう一度読み返しても面白いというのはなんという感動だろうか。初めて読んだ時のページをめくるもどかしさはないものの、一文字、一行を丹念に追っていく楽しみ、これぞ松本清張というものばかりである。

 司馬遼太郎と比較対照されるが、やはり松本清張は松本清張であって、比較するというよりも両者の作風や個性、感性を楽しんだほうが読者としては安心する。できれば、ミステリー作家というよりも社会派作家として後世まで評価され続けて欲しいと願っている。

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紙の本沖縄やぎ地獄

2003/05/24 22:48

沖縄県民斯く食せり。

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 久々の休みに気分転換のつもりで読んでいたが、観光ガイドブックのようにさらりとしていながら著者の好奇心旺盛な食欲に圧倒されてしまった。
 「百聞は一見にしかず」、まさに沖縄は新発見と感動とが山盛りであるが、それも沖縄リゾートでの出来事ではなく、沖縄庶民の食生活を中心にしているのがいい。
 更に、著者の奥さんに小さな娘さんまでがその沖縄食体験にどっぷりと浸かっていて、飾りのない意見が出ていて良かった。

 格式というかプライドの高い飲食店は子供の入店を拒否するが、あれは躾の悪い子供が他の方々の邪魔をするという理由でそのようにしている。(確かに躾のなっていない親子もいるが)
 しかし、本当のところ子供の舌は正直なので、まずいものは「マズイ」とはっきりと大きな声に出して言うからだと思う。もしくは、美味しくなかったなら無条件に箸を投げ出すのを知っているからだと思う。そんな大和の色に染まらぬウチナンの店はあっけらかんと親子をもてなしてくれ、ものの見事に「おかわり」を連呼せしめる。
 沖縄の魅力は訪ねた人でなければ分からないが、それにしてもチャレンジャーな親子というか、沖縄にはまってしまった親子というか。お見事です。

 単なる物好きではなく、著者は沖縄の置かれた現状や問題、歴史を学んだ上で沖縄を楽しんでいるので軽く上っ面をなでた文章になっていないのがいい。トーク調の文体でも説得力がでている。
 最後に、ヤギ料理も堪能したならば海亀料理についてもどんなものか披露して欲しかった。(那覇の居酒屋で海亀の刺身を食べそこなったので)

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おまけのCDを聴くと爆睡できます。

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 瀬戸内寂聴師が説く仏教解説書ではあるが、師が仏門に入るまでの葛藤が興味深かった。
 師が女流作家から仏門に入られた時のことを覚えているが、芸能ネタ程度にしか捉えておらず、いつ師が還俗するかに興味を抱いたくらいだった。

 瀬戸内流に般若心経を分かりやすく解説してあるが、般若心経というのは解説するそれぞれの人に差異があるのはどうしてだろうか。大きな誤差はないものの、細部に至ると般若心経を解読した人の経験が顔を出すのだろうか。
 仏教というものを説明する解説書でありながら、結局のところ瀬戸内寂聴師の発心から現在までの生き方をノンフィクションとして読んでいるようだった。読む人それぞれが独自の世界で理解する内容と思ったが、それが仏の裁量の大きさなのかと思った。
 
 付録に説法と般若心経の読経のCDが付いていて、師の柔らかな声に惹きこまれ気がついたらぐっすりと寝込んでいました。不眠症に悩む方にはオススメです。

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