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先月(2017年6月)

春都 さんのレビュー一覧

投稿者:春都 

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終着点としての真相

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 本格ミステリの短編集ということで、最近読んだ恩田陸の『象と耳鳴り』とのあきらかな違いが、僕には興味深かった。読者への挑戦状こそついていないものの、あちら(象耳)も同系統の短編集である。謎があり、推理があり、解決がある。だが、二作品の印象は全くといっていいほど異なる。どちらをより評価するかは好みの問題だろうけれど、本格ミステリが「放浪探偵」も「象耳」も内包できる事実は、このジャンルにとって強みに違いない。

『象と耳鳴り』において真相を解明することは、物語の終わりを意味しない。語られてきたストーリーの裏側にあったもの、たとえば人物の心理であったり、犯罪の悲哀であったり、舞台の不可思議さであったり、そういったものが現われてくる窓口として、真相がある。いわば、新たな物語を生み出す手段としての「本格ミステリ」なのだ。ストーリーが終焉を迎えたあとに見えるもの、それが恩田陸が『象と耳鳴り』で描いたメインの像である、と僕は思っている。

 しかし、この作品の真相解明は、なにも生み出さない。物語はそこで終わる。なぜなら、『放浪探偵』の「本格ミステリ」とは、手段でもなければ窓口でもなく、それ自体が目的だからだ。物語の終着点としての真相である。スケールの大きい謎小さい謎、考え抜かれた伏線やミスリード、丁寧に作りこまれたロジック、それらはすべて「真相解明」に矛先を向け、物語のなかに配置されている。そして作品を構成する様々な要素は、ラストにいたって集約し、読者に驚きを与える真相に姿を変え、その役目を終える。同時に物語も終わる。だから、そこになにか生まれようはずもない。

 先にも述べたが、どちらのタイプが本格ミステリとして優れているか、僕には決めかねる。フェアプレイの犯人当てとして成立している『放浪探偵』も、物語の裏側にあるものを感じさせてくれる『象と耳鳴り』も、どちらも本格ミステリとして成功していると言っていいと思う。方向性は違えど、このジャンルに不可欠な、というより僕が「あってほしい」と思うものを、しっかりとつかんでいる気がする。好みとしては「象耳」なのだが、ここまで忠実な本格を見せてもらうと、やっぱりすごいねえと感心せざるを得ないわけで。

 ちなみに収録編でよかったのは、『黒い家』本格仕上げみたいな「烏勧請」、騙しがおみごと「水難の夜」、島田的っていうかアトポス「阿闍梨天空死譚」。最後のはたぶん他の編よりもだいぶ前に書いたからだろうけど、肩に力がはいりまくりで、そこが逆にクセがあってよかったりした。「有罪としての不在」はややこしすぎてきれいじゃない。

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