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先月(2017年1月)

りくパパ さんのレビュー一覧

投稿者:りくパパ 

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保育の問題を考えるすべての方に

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保育制度の議論には長い歴史があるが、近年変化のスピードが早まってきた。少子化対策のために保育園を活用しようという方向に国の方針が大きく変わってきたためだ。かつては、保育園は少数の人のもの、母親は働かず子育てに専念を、という論陣が保育の充実をはばんできた。ところが、少子化の進行と働く女性の激増、専業主婦層での子育て困難と子どもの荒れの広がりが、保育園を少子化対策と子育て支援の中心に据えようという価値観の大転換をもたらした。そして90年代後半以降は、児童福祉法の改正から始まる雪崩のような制度改革。これと合わせた「多様なニーズ」を合い言葉にした延長保育などの事業の進展。

本書のテーマは、認可保育園への企業の参入の問題である。これまで認可保育園の設置主体は公立と社会福祉法人などにかぎられており、企業の設置は認められていなかった。その規制が、2000年の制度改正により緩和された。保育を企業活動の場にしてほしいという企業側のニーズと、企業の活用で安い保育園を増やして財政負担を軽くしたいという国の期待によるものだ。

企業が作る認可保育園は少しずつ増えているが、当初期待されていたほどではない。それは、認可保育園では企業はもうけることができないからである。さらなる制度改革でもうかるしくみを作ることがねらわれていると本書は予測するが、その方向性は、三鷹市の公立保育園がベネッセがコーポレーションに運営委託されたこと、東京都が新設した認証保育園制度でさきどりされていると詳しく紹介されている。

保育園を取り巻く動きには公立保育園の民営化や給食の外部委託などさまざまある。これらを保育の市場原理化という大きな流れで見つめることによって、全体像を分かりやすく描いている。保育事業に参入した企業とその保育園への調査、企業保育が中心のアメリカの実態調査に基づいて、市場原理に基づく保育の未来像が描かれる。市場原理を進める側からは「多様な選択枝から質の高いサービスが選択できる」と言われるが、アメリカの調査か、保育料にリンクした多様な質が生まれることになり、悪質な園が排除されるものではないことが示される。市場原理は人件費削減を目的化し、保育者を正社員ではなく契約社員化することにつながる。不安定な雇用での保育の質の確保はマニュアルで保障されると企業は主張する。しかし、経験と専門性を身につけた保育者による創造的保育がマニュアル保育にとって変わられることは、深刻な影響を保育におよぼす。

保育を本当の意味で充実させる方向性も示されている。国がほんの少しの予算を出せば、保育ニーズを満たすことができること、しかしその本来取るべき対策以前であっても、公立保育園で可能なかぎりニーズを満たすよう努力することがもとめられる。その最大のポイントは、保育者と親の共同と専門性に基づく現場の創意工夫である。東京都品川区では区長が「子育て支援は行政がやるべきもの」として、上からの改革で夜間保育などの事業を実行した一方で、現場で出される不安を封じ込めるため、親と保育者との共同に対してくさびを打ち込んだ。他方、大阪府吹田市では、ずっと以前から保育者の自主性と専門性の中から延長保育や子育て支援の取り組みが進み、それを行政が後追いする形で制度化されてきた。両自治体の対比から、現場の専門性を基本に公立である特質を生かした保育改革の方向性が描かれる。

保育者、研究者を含めて、大阪で研究会を継続してきた成果が盛り込まれており、保育の問題を考えるすべての方に一読いただきたい書である。アメリカの保育の現状については、「市場原理のゆくすえ」に別に詳しくまとめられている。

★連載『りくパパが選んだ「保育の本」』はこちらから

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