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OK さんのレビュー一覧

投稿者:OK 

15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本サバイバー

2001/02/24 08:12

あいかわらず病んだ文体が刺激的

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 『ファイト・クラブ』の作者の第二作。集団自殺したカルト教団の生き残りとして有名人になった男が、ハイジャックした旅客機のボイスレコーダーから語る。またこれもずいぶん変な形式の叙述で、さらにページ数がp.324からはじまって逆にカウントダウンされていく、というある意味革新的な造本になっている。『ファイト・クラブ』もたしかクライマックスの場面をいきなり冒頭に提示していたはずだから、だいたい似たような構成。そして文体はあいかわらず睡眠不足みたいに病んでいる。まるで強迫神経症のように語られる「繰り返し」の波や、無意味なディテイルの洪水が印象的。
 筋書きのほうも大量消費時代の自分探し、というような前作の流れをひきずっていて、教団のマニュアル通りにしか生きられなかった主人公は、そこから逃れたつもりでもやはり何かを模倣しているだけにすぎない(前作に描かれた「ファイト・クラブ」が、やがてただのネオナチ風テロリスト集団になってしまったように)。奇妙な三角関係やドッペルゲンガー・テーマ、破滅に突き進む行動といった構図もだいたい共通している。ただセックスの主題に関しては前作よりもかなり前面に押し出されていただろうか。全体としては前と似たような話だし主題がいささか露骨ぎみに思えるので衝撃が薄れるのは否めないけれども、わりと愉しめた。やはりこの人にしか書けない話なのだろうし。

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紙の本夜の記憶

2001/02/24 08:01

見事な多重構成

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 この作家のいわゆる「記憶」ものは『死の記憶』『緋色の記憶』と読んでいるけれど、交錯して語られる「過去」と「現在」の挿話を切実に結びつける動機が弱いように思えることが多かった(出来は『死の記憶』のほうが良くて、世評の高い『緋色の記憶』にはあまり感心しなかったおぼえがある)。
 けれどもこの作品は、「主人公の過去の事件」だけでなくもうひとつ別の「過去の事件」のほうをむしろ話の主軸にすえて、ふたつの「過去」が呼応しながら「現在」の主人公の身のうえで交わる、といった構成を採ることでそのあたりの難点をかなり巧妙に克服している。もしかすると上記のような批評をなにくそと封殺する意図があったのかもしれない。
 謎解きの形式も、真相を見つけだすのではなく納得できる「物語」を想像するのが目的という、モース警部的な「推論のひとり歩き」を奨励するような変わった筋書きでなかなか興味深かった(その設定を充分に活かしきっているとは思わないけど)。
 また「過去に逃避する犯罪小説作家」を主人公にすえた三人称叙述は、作家自身が昔の作品の一節を思い返して自嘲する場面があったりもして、みずからの作風をあえて相対化しているふうでもある(ちなみに、この主人公はスティーヴン・キングの『ミザリー』で監禁される流行作家を思い出させた。「ポール」というファーストネームが同じだし、シリーズキャラクターを生還させるための方策を思いつかない、という状況も似ている)。
 ただし主人公の相手役となる「女性脚本家」が、これといった性格づけをされていないにもかかわらず物語上の重要な役割を担わされているせいか、結果として「現在」の進展への興味がもうひとつ盛りあがらないのは否めない。この作家は「想い出のなかで美化された女性」を浮かびあがらせるのはたしかに達者なんだけど、そこから離れたときの女性描写にはあんまり関心がないのかな。
 あと「主人公の過去」の真相はともかくとしても、主軸の「娘の死の謎」のほうも〈ナチス人体実験〉のネタが語られた時点で落としどころの見当がつく。全体の多重的な構想はたしかにこちらのほうがよく考えられていると思うけれど、解決のあたえる衝撃では『死の記憶』のほうがだいぶ上だったかな、というのが感想でした。
 ところで、あまり指摘されていないようなのでこれは特殊な見解なのかもしれないけれど、クックの一連の「記憶」ものの構想をおおざっぱにいえば、ジャック・ケッチャムの青春虐待小説『隣の家の少女』から残虐描写を抜いて謎解き回想形式で物語る、ということなのじゃないかと考えている。主人公がいつもあこがれの「年上の女性」を救えなかった悔悟の念にさいなまれているのは、だから偶然ではないはずだ。

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紙の本ネヴァダの犬たち

2001/01/14 08:48

現代風パルプ・ノワールの秀作

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 『愛はいかがわしく』の作者の第一作。主人公が賭事の借金で追いたてられる発端は「ほかに思いつかんのかい」とか思わないでもないけれど、アリゾナの砂漠に囲まれた場末の田舎町、行く手をさえぎる曲者の住人たち、淫蕩な妻と金持ちで策謀家の夫、炎暑のもと徐々に高まる乾いた暴力衝動……と、これはもうケイン/トンプスン系の典型的なパルプ・ノワールの世界。といっても古くさいかんじはせず、それぞれキャラの立った脇役たちに、軽妙でくせのある会話、それにポップな翻訳も手伝って、なかなか現代風の味わいで読める。このあたりはタランティーノ登場以降の潮流ということもあるのかな。それにしても『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』『残酷な夜』『ポップ1280』あたりは作者も意識しているんではないだろうか。次作の『愛はいかがわしく』では(たぶん主人公の職業なんかから)ジム・トンプスンの『グリフターズ』の題名を挙げる批評が出ていたけれど、それもむべなるかな。
 舞台となるアリゾナの田舎町「シエラ」は、まるで出口のない蟻地獄の巣みたいだ。人はそこで堕ちていくしかない。

From: http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/

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紙の本殺戮の天使

2001/01/14 08:45

まるで一編の映画のような

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 主人公は謎めいた女暗殺者。その非情なヒロインが田舎町に潜入して金持ちたちの愚かな争いに乗じようとする筋書きは、ダシール・ハメットの『赤い収穫』やジム・トンプスンの『残酷な夜』を思わせなくもないけれど、『残酷な夜』がそうだったように、終盤の暴走はほとんど破壊的で、どことなくシュールな絵画を暴力的に描いているような印象さえ与える。ちなみに「ブルジョワ」たちを成敗する構図にはたしかに左翼思想めいた哲学をかぎとれなくもないけれど、主人公が政治にまったく興味を示さないせいもあり、それは物語の遠景くらいにとどまっている。
 いささか奇異に感じたのは、文体がずいぶん映像を意識したものになっていること。登場人物の顔かたちや服装に、部屋のインテリアなど、それぞれ必要以上なほど詳細な描写がなされる。というより、こんなに書かれても小説の読者は把握しきれないのがふつうだろう。さらに台詞のあいまに挿入される括弧つきの注釈は、まるで台本のト書きのような印象。要するに作者は一編の映画を撮るような意識でこの小説を語っているのではないか。その「映像」が読者に伝わりきらないこともおそらく承知しているはずで、だからラストシーンが小説の文法を飛び越えてしまうのも当然のなりゆきなんだろうと思う。

From: http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/

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紙の本愛はいかがわしく

2001/01/14 08:40

よくできた「負け犬」小説

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 借金取りのギャングに追い立てられて起死回生の策を練る、というプロットはいまさら目新しくもないけれど、ハリウッドでの夢破れてうらぶれた、もう若くない主人公の行き場のなさが心にひびく。作者はさすがプロの脚本家だけあって会話は手慣れているし、「片腕のバーテン」「東洋で《禅ポーカー》を学んだ天才賭博師」「やたら早口の辣腕弁護士」など、コミック的な脇役たちの造形もそれぞれ印象に残る。乱雑に散りばめられたようなエピソードも意外に活きていて、なかなか隙のない職人ぶりだった。
 主人公がもと脚本家志望ということもあって、有名映画を下敷きにしたようなネタもいくつか効いている。『リービング・ラスベガス』(原作は読んでないけど)や『マイ・フェア・レディ』とか。ちなみに前者を引いているのは単にアル中破滅ネタの引用というだけでなく、本書の結末が一種のハッピーエンドといえなくもないことを留保しているんではないかと思った。

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紙の本祈りの海

2001/01/08 19:23

「自分」への疑いが読者を巻き込む

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 なかなか粒揃いの好短編集。印象に残っているのは「貸金庫」(これを冒頭に持ってきているのはとてもよくわかる)「ぼくになることを」「誘拐」「無限の暗殺者」あたり。
 収録作がどれも一人称叙述の小説なのが、「自分」の認識をつねに疑う作風のひとらしい。作中の問題は必ずこの「語り手」を切実な当事者として巻き込みながら展開していく。基本的にどの作品もSFならではの切り口で、たえず「自分の認識」や「自由な意思決定」の臨界点を問いかけるような哲学的で普遍的なたとえ話になっているから、たとえ僕みたいな門外漢の読者でも充分に興味深く、自分にはねかえってくるような意識で読み進めることができる。
 あえていえば『宇宙消失』のような尖鋭さやねじくれた論理世界の暴走する魅力なんかはさほど感じられなかったけれど、読みやすいし初めての人に薦めるのには適していると思う。

from: http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/

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紙の本娼年

2002/01/13 23:40

一風変わった青春小説

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 退屈な日常を過ごしていた大学生の青年が、女に性を買われる「娼夫」の道に誘われて成長していく、一風変わった青春小説。主人公が何もせずに周囲から好意を持たれるところには、村上春樹風の都合の良さを感じて気にならないでもなかったけれど(それに結局嫌な顧客と出会わないし)、難しそうな題材をさらりと書いているのには好感を持てる。先輩格のホストに特徴的なキャラを配置して、やおい的な読みどころ(?)を用意しているあたりもこの作家らしい。

 この題材にはモデルになった実際の事件があるんだろうか。その点はよく知らないのだけど、ワイドショウ的な事件報道の裏側を、当事者の視点から青春小説として語りなおす、というようなこの作家の持ち味が出ている作品だと思う。『うつくしい子ども』がちょうどそういう趣向の話だったし、有名になった『池袋ウエストゲートパーク』連作でもいくらかそんなところがあった。

http://members.home.ne.jp/kogiso/

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紙の本氷の収穫

2001/07/29 14:50

類型的ノワールの図式におさまるのが残念

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 『ポップ1280』が評判になった効果か、近頃ノワール系の新顔作家の紹介が進んでいるみたいだけど、これもそのひとつ。題名は明らかにダシール・ハメットの古典的名作『赤い収穫』("Red Harvest") を意識したものだろう。人物の配置は結果的に『郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす』を思わせるような構図になっている。本国ではジム・トンプスンらを引き合いに出した批評も出ているようで、パルプ・ノワール好きならとりあえず読んでみてもいいかもしれない。

 作風としては、先頃訳出されたケント・ハリントンの『転落の道標』に近い。わりとまじめにパルプ・ノワールを踏襲したかんじのスリラー小説で、個人的にはこういうのなら、ジョン・リドリーの『ネヴァダの犬たち』みたいに割り切ったパロディ調のほうが愉しめる。話の組み立てもやや緩めで、特に前半はもう少し効率的に町や人物を紹介できたのではないだろうか。訳者あとがきは「単なるノワール小説」ではない「センスのよいユーモア感覚」を強調しているけれど、特にそういうものは感じなかった。

 あと、いまさら「淫蕩な悪女」みたいな類型をそのまま出されてもいささか困る。たとえばジム・トンプスンの『ポップ1280』や『残酷な夜』がいま読んでも全然古びていないのは、ひとつには女性の登場人物たちがことごとくそんな類型から逸脱しているせいもあるのではないか(逆に世評の高い『内なる殺人者』はその点で案外保守的に思えた)。

http://members.jcom.home.ne.jp/kogiso/

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紙の本煙か土か食い物

2001/05/14 12:49

勢いのある語り口に好感

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 毀誉褒貶のある作品みたいだけど個人的にはわりと支持。ネオ壊れ系(?)の語り口で新本格をやってしまおうという試みで、破れかぶれのようでいて意外に計算されているらしくもある文章の勢いは抜群。構成的には、過去の回想語りと現在の事件の進展とがばらけて融合しきれていない印象を与えるけれど(ちなみにそこらへんの組み立てはさすが整理されているなと思ったのが、馳星周の『不夜城』)、まあ文体と釣り合っているといえばそうかもしれない。とりあえず、内容よりも語り口で独自の新鮮味を出そうとする作風は、昨今の日本ミステリ界でほとんど見かけない態度で、それだけでも好感を抱く。

http://members.jcom.home.ne.jp/kogiso/

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紙の本四年後の夏

2001/04/18 20:48

風変わりな趣向だが手堅い

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 「合致しない証言」に焦点を絞ったパズラー的なミステリ。この作家ははじめて読んだのだけど(オーストラリアのサスペンス作家)、風変わりな趣向を手がたくまとめる職人作家のような印象で、ほかのも読んでみたい気になった。ふたりの容疑者の言い分が決定的に食い違う展開を扱ったミステリはたまにあると思うけれど(ヒラリー・ウォー『事件当夜は雨』の終盤などが思い浮かぶ)、このくらい小説全体でそれを押し通した作品は珍しいのではないか。本作はいくつか留保したい点もあったものの(後述)、適度に意外な真相も用意されていて全体的にはよくまとまっている。
 気になったのはまず、どちらの少女の主張が真相に近いのかという物語の焦点が、事実の問題というよりも「どちらの少女が邪悪か」の人格的な問題になりかけていること。この小説では本人の供述のほかには親や教師の証言しか紹介されず、少女の同世代のティーンエイジャーの視点はほとんど問題にされない。そちらの方面の描写に興味も自信もなかったためだろうけど(作者は発表当時50歳くらい)、こういう典型的な「大人から見た若者像」だけで人格を云々するのは少々苦しい。ただ最終的にはそこへ帰着するわけではないから、決定的な問題にはならずにすんでいるけれど。
 もうひとつ、本書の解決はたとえばジル・マゴーンの『騙し絵の檻』みたいなところがあって、意外な逆転劇というよりは、わざと検証をぼかした論点を突いているだけのような釈然としなさも残らないではない。まあ、『騙し絵の檻』みたいにそこを主眼にした構成ではないので、一応許容しうる範囲ではないかと思うところ。

http://members.jcom.home.ne.jp/kogiso/

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紙の本処刑の方程式

2001/02/24 08:04

たしかに読ませる力作

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 やたら閉鎖的な田舎の小村で起きた少女の失踪事件を、英国作家らしい重厚な筆致で描く。長い年月を経た「過去」と「現在」とを結びつける発想には、ロバート・ゴダードあたりの作風を思い浮かべるむきもあるだろう。たしかに読ませるしまじめな力作だとは思うけれども、分厚い描写を積み重ねているわりには小説的な感興に乏しかったのも否めない。たとえば『ジグザグ・ガール』のマーティン・ベッドフォ−ドのような、洗練された語り口や印象的な人物造形といった小説的技巧が備わっていればまた違ったろうと思う。終盤で明かされる真相も想像のとおりで(というか、この舞台設定ならこれしかないだろう)、まったく意外な点はなかった。ちなみにこの真相はアガサ・クリスティのいくつかの作品を想起させる。そういう古典的な話を現代英国風の重層的な物語に組み入れているのが売り、ということになるでしょうか。

http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/

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紙の本白の海へ

2001/01/08 19:10

個性的な異郷サバイバル物語

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 第二次世界大戦時、B29で来襲した米軍飛行士がひとり東京付近で墜落。なにしろそれがアラスカ出身のエスキモーだったものだから、とりあえず地図を見て惹かれていた北海道をめざしてひたすら北上していく、というなんだかよくわからない不思議なロード・ノヴェル。森と獣にしか興味のないマタギみたいな人物が主人公なので、話が政治性を帯びたりなんかはまったくせず、いくぶんファンタジー的な異郷サバイバル物語というおもむきになっている。
 無感動で淡々としながらも強靱な主人公の語りが独特で、ある種のハードボイルド小説のような味わいを感じさせる。とりわけ印象的だったのは、彼にとっては全身を流れる「血」の熱さこそが「生命」そのものらしい、ということ。食糧や水を得て体力が回復したりするたびに、新しく血を入れ換えたような気分だ、といったような言葉で表現される。凍えそうな北国の山中で、獣たちの貴重な「血の熱さ」を捕獲する暮らしをしていると、そんなふうに実感するものなんだろうなと思わせる説得力がある。
 コーエン兄弟監督+ブラッド・ピット主演で映画化が決まっているらしい。でも「黒髪で背の低いエスキモー」って、どう考えてもブラッド・ピットと合致する点がひとつもないんだけど……。

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紙の本ハドリアヌスの長城

2000/12/22 12:37

「刑務所の町」の濃厚な描写が秀逸

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 惜しいなあ。過去/現在の交錯する重層的な語り、やや粗いけれども力強い筆致、そして物語の舞台となる「刑務所の町」にしっかりと根づいた登場人物たち。いったいどんな傑作になるんだろうと途中まで期待していたのだけど、積みあげてきた物語は終盤の「謎解き」でほぼ台なしになってしまった。物語の解明が主人公の人生の意味を塗りかえる、という展開にしたかったのだろうけど、あえて説明をとばしたのかと思っていたところを突いているだけなので、ただ興醒めでしかないし何の感銘ももたらさない。だいたいこれでは物語の解釈として薄っぺらすぎる。それに、こういうことをわざわざ他人から指摘させるのでは、主人公がただの間抜けになってしまうだけだろう。
 刑務所産業で経済が成り立っている特異で保守的な町、テキサス州シェパーズヴィルの描写がとても印象深かった。登場人物たちは塀の中と外とにかかわらず、いつまでも刑務所から自由になれない。たとえば矯正施設の長官となったソニー・ホープは、この「刑務所の町」でだけ重要人物としてふるまうことができた。また主人公のほうは劇的な脱獄を果たしながらも決して自由を謳歌することはできず、結局なぜかこの町へ舞い戻ってくる。
 ちなみに訳者あとがきでは指摘されていないけれども、古代ローマのハドリアヌス帝は名君としてだけではなく、〈美少年愛好〉でも史上に知られる人物。本書の前半で語られる重要な場面の出来事は、そこからの暗示に対応してもいるのだろうと思う。
 作者は新人。ジャーナリスト出身らしい濃厚な社会・情景・自然描写には力量を感じる。
From:
http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/review2000_12.html#Hadrian'sWalls

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紙の本失踪当時の服装は

2000/11/13 22:03

代表作というほどじゃないかな

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 ヒラリー・ウォーの代表作といわれることの多い作品。いま読んでもなかなか興味深かった『事件当夜は雨』(1961)にくらべると、どうも思ったほどではなかった。かなりたどたどしい訳文だったので、翻訳の好みなんかも加味されてはいるだろうけど。
 警察小説の先駆的作品として紹介されがちのようだけど、例によって捜査を緻密に描くというより、机上の仮説/検証の試行錯誤で謎を絞り込んでいくさまが主眼になる。そのあたりはわりとパズラー系。失踪した女学生の日記の文面をめぐって延々と重箱の隅つつきをしたりもするし。ただし推理役が基本的にひとりだけで、『事件当夜は雨』にみられたディスカッション的な推理のおもむきがまだ確立されていないようなのは残念。
 ちなみに警察捜査の描写は、時代的なものもあるのだろうけど結構いいかげん。被疑者でもなんでもない人物をむりやり警察署へひっぱってきたりするので、ちょっと驚いてしまった。それじゃミランダ条項どころの騒ぎじゃないなあ。

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紙の本穢れしものに祝福を

2001/01/08 19:26

ハリウッドまがいの安易さに失望

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 『スコッチに涙を託して』、『闇よ、我が手を取りたまえ』でハードボイルド系の新鋭として期待を集めたデニス・レヘインだけど、この続編はぜんぜん駄目。
 「いんちきセミナーから秘密のフロッピーを盗み出す」「いきなり銀行口座を押さえられている」など、どこをとってもできそこないのハリウッド映画なみの安易さで、出てくる人物も「男なら誰も抵抗できない絶世の美女」「世界市場を牛耳る悪辣な大富豪」をはじめ(悪い意味で)漫画的としかいいようがない。主人公たちの行動も知性なくむやみに事を荒立てているだけ。前二作で見せたような、「社会」にも「個人」にも動機を還元しきれない、善悪の境界の混沌とした世界観は跡形もなくなっていた。軽薄な会話もいちいち鼻につく。どうにも弁護しようのない出来で、落ちるにしてもここまで急激とはさすがに思わなかった。慢心したのだろうか。
 探偵の技術を主人公に教え込んだ師匠が出てくる展開は少し『第八の地獄』や『ストリート・キッズ』みたいで、富豪の失踪した娘を探す筋書きはいくぶんロス・マクドナルド風かな。でもまあどうでもいい。前作の『闇よ、我が手を取りたまえ』ですでに、主人公の周りの「相棒の美女」にしても「無敵の暴れん坊」にしても、やや持て余し気味のきらいがあったけれど、今回はそのあたりのまずさが露骨に出てしまっている。

from: http://www.geocities.co.jp/Bookend/1079/

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