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先月(2017年8月)

pierreさんのレビュー一覧

投稿者:pierre

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本美しい国へ

2006/09/22 20:19

貶められた「戦後60年」「日本国憲法」安倍晋三『美しい国へ』を読んで

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書を一貫して流れているのは、「戦後60年」の否定ではないか。例えば戦後日本では「国家=悪という方程式」がビルトインされたという。そして原因を、戦争の原因と敗戦の理由をひたすら国家主義によるとした戦後教育に求める。しかし、戦前の国家は国民にとっての抑圧装置であったため、戦後、戦争や敗戦の原因を国家主義に求めたのは当然であった。むしろ、戦前の「国家」を明確に否定して「日本国憲法」に則った新しい国づくりに政府・政権党が率先して従事すべきだったにもかかわらず、その政権党である自民党が「自主憲法」を制定しなければ何ごとも始まらないという憲法に対する斜に構えた態度に終始してきたことが、国民にとって真の「国家」の存在を忘れさせてしまったのではなかろうか。
 「日本国憲法」はたしかに与えられたものだったが、そこには人類普遍の原理が網羅され、平和への強い決意も含まれており、戦前の国家主義に十分代わり得る原理を内包していた。そしてそれを堅持してきたのは間違いなく国民の意志であった。だから、原因は教育にあるというのは政府・政権党の責任転嫁にほかならない。
 安倍氏が「日本国憲法」をどう考えているのかは、次の下りに明らかだ。
「憲法前文には、敗戦国として連合国に対する“詫び状門”のような宣言がもうひとつある。《われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと務めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい》という箇所だ」。(p.122)
これほど憲法をあからさまに蔑む人物が首相になるのは日本は勿論、他国にもあまり例のないことではないか。これではまさにブラック・ユーモアである。
 自民党の結党の目標は経済力の回復と自主憲法の制定の2つで第1の目標は達成できたが、第2の目標は後回しにされ、その結果、損得を超える価値が軽視されてきた、という。戦後日本経済の復興、成長の果実を存分に享受したのが実は自民党だったのではないか。自民党は利益誘導政治に明け暮れ、「産軍複合体」ならぬ揺るぎない「産政官複合体」を形成してその実りを欲しいままにしてきた。政権党がいわばお手本を示して「経済優先」を体現したのである。この半世紀、自民党がほぼ政権を独占できたのもそのおかげに他ならない。
 「国家=悪という方程式」あるいは「損得を超える価値の軽視」というのはその大半が、この間政権の座にあった自民党がもたらしたものではないか。安倍氏が総裁になった自由民主党がその大半に責任を持つべきものなのである。それをどう考えているのか、本書では皆目分からない。したがって、本当にこの国を作り変えようとするのであれば、まず自民党を「ぶっ壊す」のが先なのである。
 国・地方自治体の借金は1、000兆円に達する今、利益誘導で国民を引きつけることができる時代は終わった。自民党政治は、それができなくなった今、新しい方法を懸命に模索しているはずである。安倍氏が強調する「国家主義」的な発想は、利益誘導に代る、政府・政権党が考えている新しい統治手段に違いない。そう考えると、安倍氏が言う「美しい国」とは一体何なのか、あらためて問うまでもないのである。

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