サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. de_chocolatさんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年8月)

de_chocolatさんのレビュー一覧

投稿者:de_chocolat

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本夕凪の街 桜の国

2005/09/03 23:44

漫画や小説にできること

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

装丁のとても美しい薄い本。しばらくは読まずに眺めていた。スクリーントーンも一つも使っていない。ベタも多用してない。とても丁寧に描かれた漫画。
わたしが子供の頃、小学校には一クラスに必ず一セット『はだしのゲン』があった。漫画に飢えていた小学生たちは勿論内容に頓着せずむさぼるように読んだ。あの頃教育を受けた人間は必ずその幼くやわらかな脳味噌に原爆がどれだけ恐ろしいかという刷り込みをされた筈だ(それくらいに『はだしのゲン』の描く原爆は恐ろしかった)。それから三十年近くが経って、伝え聞く話では小学生の九割は原爆が落とされたことを知らないというし、平和記念公園にある原爆ドームの来館者は低下の一途だというし、形の上の『平和』は口にされても、多分ほんとにあったことは聞きたくないんだろうと漠然と思っていた。世の中はきらびやかで、でもそれがもたらす微熱のような不安はいつもあって、『戦争』とか『原爆』というはっきりとわかる災いではない、『なにか』に追い詰められるようになった現代に、いつまでも『はだしのゲン』を伝えていくのは難しいのだと思う。実際に被爆された方々が一人また一人と(恐らくもう実際にそこにいて被爆した方というのは何人かしかいらっしゃらないのでは。だからこそ二世三世の辛さが深刻になるのだろうけど)いなくなり、誰もがそれを実際の体験として語られなくなった時に、誰にももうそれに対して責任を取れと言えない時代がやってきて、よくわからない『平和』があって、でもこの世界の一体どこに平和なんてあったんだろうといつも呆然としてしまう(湾岸戦争もイラク戦争も戦争ではなかったのだろうか。しかもわたしたちはその戦争を実際に指揮した国ととても近い関係にある)。
そのような時にその原爆を主題とした漫画が出てくるとは思わなかった。この漫画は実際に原爆が投下された十年後を一作目が描き、二作目はさらにその三十年後、三作目はそのさらに十八年後と描いていくわけですけども、三作目の『六本木ヒルズ』とかプロ野球一リーグ制騒動とか出てくるとなんかくらっと目眩がします……なんかそれくらい三十年代っぽい……生活とか。そしてやっぱオヤクソクですかというかやられるというかもう32ページあたりでへろへろになり33ページで泣く。
こんな事実の前に『感想』なんて語る言葉はなんて陳腐なんだろう。だからこそというか漫画が小説にできることは沢山あるんだなぁ、と思う。『桜の国(2)』で、ヒロインの父親(一話目のヒロインの弟)が姉の足跡を訪ねるエピソードがあるんだけど、五十年たっても、ああ、これはあの人だ、この人はあれだな、とわかるシーンがとても素敵だった。最後に一緒にお父さんと弁当くってた人って打越さんだよね! とか。ちゃんと五十年生きていた優しい顔だった。
『教えない』『学ばない』『記憶から消す』ことでその事実そのものをなかったものとして進まなきゃいけないとこまで追い詰められるっことはあるんだろうな、と思う。今の日本がそうかもしれない。そのことを非難するんじゃなくて、それでもこうやって知らせることを諦めない人は必ずいるんだから、あとはそれを受け取る人間の中で始まっていくんだろうなぁ、と思う。多分それを望まれて生まれた漫画だと思うし。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

1 件中 1 件~ 1 件を表示