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ぎわさんのレビュー一覧

投稿者:ぎわ

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本火山噴火 予知と減災を考える

2007/11/07 06:34

火山災害を、防げぬまでも減らす。その試みの歴史と最前線。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


 火山の噴火は防ぎようがない。しかし噴火予知の技術は高まり、適切な対処によって被害を減らすこと(防災ならぬ「減災」)はできる。本書の中で著者は繰り返しそう説き続ける。自分に優る強敵の力量を謙虚に認めながらも一歩も引かず立ち向かう、そんな闘士を見るような思いに駆られた。
 さて、その減災のために必要なのは何か? 提案されるのは、科学者と行政とマスメディアと住民による正四面体の形成。行政は泥縄に陥ることなくいずれ起こり得る災害に備え、住民への告知や子供への教育を忘れない。マスメディアはヒステリックに風評を煽ったりせず、科学を踏まえて冷静に報道する。住民は災害の危険性を学び取り、しかし惑わず、いざという時は落ち着いて行動する。そして科学者は、科学者以外の人々に平易な言葉で火山についての知識と研究の成果を伝える。例えばこの本のように。

 一章は噴火現象全般についての解説で、マグマや火山灰や火砕流あるいは有毒ガスなど火山による産出物に関しても紹介している。ガスによる中毒死事件などにも触れており、勉強になる。
 二章では噴火のいくつかの種類とそれぞれがもたらしうる災害のパターンを並べる。火山噴火の本として読者がまず連想するのはこうした記述かもしれない。豊富な写真と図によって示される常識外れの事物は、火山の凄まじい力を実感させてくれる。
 三章は噴火予知の様々な技術を説明。完璧とは行かないまでも、地殻変動はもちろんのこと、地磁気の変化に、地面を流れる電流の抵抗の大きさ、さらにはガスの成分変化まで、物理と化学の蓄積を種々に駆使して火山学者たちが噴火予知に取り組んでいることがよく伝わる。
 四章では噴火に備えるための色々な取り組みを伝えている。特に、科学者と行政の共同作業であるハザードマップの作成と配布、小中学校で用いる副読本の刊行など、人々の知識の共有こそが遠回りに見えて実は最も効果的な減災であると述べている。モデルケースとして取り上げられているのは有珠山。噴火予知を活かして犠牲者を出すことなく避難を完了し、活動が収束した今は被災地の一部を保存して数十年後に備えた教育に結びつけている。

 活火山地帯に住んでいない一般人には、あるいは無縁に思える本かもしれない。しかし本書で再三説かれている心構えは、単に火山対策に留まらず、広く災害全般に適応できる考え方ではないかと思う。
 またそういうことを意識せずとも、人間とはまったく尺度の違う時間とスケールで活動している(数千年休止していても簡単に活動再開しかねない。一つの地域、場合によっては一つの文明すら、滅ぼすことがある)火山たちの姿はそれだけで興味深く、時に魅力的ですらある。最後の五章で紹介される、火山がもたらす恵みの数々にも注目したい。自然のパワーと、自然に翻弄されてもただでは起きない人間のしぶとさとを思わせて、実に味わい深いのだ。

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紙の本暴風ガールズファイト

2013/11/20 08:02

変人揃いの女子ラクロス部が巻き起こす激しい旋風! スポーツ青春小説の新たなる傑作シリーズ開幕!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

森絵都の『DIVE!』、佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』など、中高生が主人公のスポーツ小説には良作が近年いくつかある。それぞれのスポーツに対して一途にひたむきに取り組む選手たちの美しい姿を描き、丹念な取材に裏打ちされた説得力ある競技や試合の描写を見せ、しかしかつてのスポ根物語(より正確には《「その手の物語」に対する一般的なイメージ》か)ほど視野狭窄を起こしているわけでなく、スポーツ以外の日常的な部分などにも丁寧に目を配っている。漫画で言えばひぐちアサの『おおきく振りかぶって』も同じ流れに属しているように見える。
 そして、本書が第一巻である『暴風ガールズファイト』シリーズも、それら先行作品に引けを取らない輝きを放っていると思うのだ。

 物語は、聖ヴェリタス女学院――幼稚園から高等部までを抱える女子校――の高等部入学式の朝からスタートする。一年生・麻生広海のクラスに現れて入学初日からいきなり騒動を起こした外部入学組の五十嵐千果。ラクロスの盛んなアメリカからの帰国子女である彼女は、ラクロス部に入って日本一になると公言。人数の少なさゆえにすでに同好会へ降格されていたラクロス部の現状に驚きつつも、再度の部昇格を目指してメンバー集めに奔走し出す。自ら「嵐を呼ぶ女」と自称する千果が発生させる強烈な嵐。それに呼び寄せられるように集う、学院内の変わり者やはぐれ者。身近にいた広海も、ラクロス自体に知識も興味も関心もなかったのに、いつしか巻き込まれていく。
 小さな体に破天荒なまでのバイタリティを秘めて突っ走る千果の印象がとにかく強いストーリーだが、語り手にして主人公の広海も実にいいキャラだ。そつのない優等生として毎年のように級長を務めているが、中学卒業間際のある出来事を機に、穏やかだが怠惰な学園生活に微妙な鬱屈を抱えていた彼女。そんな彼女が千果に振り回される中、新たな(あるいは本当の)自分をさらけ出し、次の一歩を踏み出せるようになっていく。情熱で突進する千果に対し、広海は知略(謀略)を担当して、好対照のコンビ。地の文における広海の鋭く的確な突っ込みの数々も、見逃せない作品の魅力となっている。
 他の登場人物も、負けず嫌いのお嬢様やオタクな関西人など、典型的だが類型的ではない多彩なキャラクター。わけても同好会に元々属していた上級生の大西と黒田はこの一巻で力を入れて描写され、マイナースポーツを愛してしまった切なさとか、目標と現実の落差への苦悩とか、空回りする優しさとか、様々なものが二人を通して描かれる。
 また、スポーツシーンの描写も見事。日本ではマイナーでルールを知っている読者も少ないラクロスの面白さを、素人の広海の視点から描くことで、わかりやすく的確に伝えている。

 ライトノベルを読まない読者の場合、レーベルやイラスト混じりの造本に偏見を抱いてしまう恐れもあるかもしれないが、そんなつまらない先入観は抜きに、ただ素直に読んでもらえればと思う。
 ライトノベルのスポーツ小説と言えば二〇〇六年末に全九巻で見事なフィナーレを迎えた海原零の『銀盤カレイドスコープ』が思い浮かぶ。そちらは文句のつけようもない完璧な締めくくりによって名作として完結したが、『暴風ガールズファイト』も同様に作者が納得の行く形で完結できるまで続いて欲しいと、切に、切に、願う。

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紙の本小さな異邦人

2014/03/12 08:47

ミステリの名手は最後まで衰えず

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

同じ女性を同じ晩に同じ場所で複数の人物が殺す『私という名の変奏曲』、異様な復讐を描いた表題作を筆頭にトリッキーな(いっそトリッキーすぎると言ってもいい)短編揃いの『夜よ鼠たちのために』。大学時代にサークルで先輩たちに薦められてこれら連城三紀彦作品を読み、感嘆させられました。
 個人的に最も鮮烈な印象を受けたのは『瓦斯灯』所収の短編「花衣の客」。恋愛の心理とミステリ的な意外性が完璧に融合した大傑作だと思います。
 他には、誘拐ミステリ『人間動物園』も、往復書簡形式で逆転また逆転な『明日という過去に』も、とある家庭が舞台のショートショート連作という趣で分量的には平日昼下がりの帯ドラマにちょうどよさそうだけどもし実現したら変な意味で評判になりそうな『さざなみの家』も、とても好きです。

 そんな作者が昨年逝去。六十五歳なんて早すぎると嘆いたものの、本になっていない作品はまだあったのですね。ネットで検索したところ、長編すら何作も残っているようで、未読の既刊ともどもいずれ読みたいものだと思います。

 三年前に突飛な理屈で別れた妻の影を見る「指飾り」。
 地方駅で不審な挙動を見せる女と、彼女が指名手配書を見ていたその日の晩に時効となる殺人犯、そして彼女らに関わることになった刑事を描く「無人駅」。
 互いの夫の交換殺人が奇妙な結末に至る「蘭が枯れるまで」。
 悪夢が意外な形で収束する「冬薔薇」。
 妙な噂が立ちがちな上司と通り魔事件が絡む「風の誤算」。
 少女の経験するいじめと、彼女の母が幼い時に遭遇した父親の死亡事件が不思議な交錯を見せる「白雨」。
 同僚駅員との不倫旅行がおかしな切符盗難をもたらす「さい涯てまで」。
 八人の子がいる一家に、家族が全員いるのに誘拐電話がかかってくる「小さな異邦人」。
 短編ながらどんでん返しを秘めた作品が実に多く、期待通りにとても楽しめました。
 タイムリミットもありサスペンスフルな「無人駅」と、どこからこんな取り合わせとあの真相を思いついたのかと言いたくなる「白雨」が忘れがたいですが、一番好きなのは作者最後の短編という表題作です。「夜よ鼠たちのために」などで見られた、既成概念の拡大や転倒がこの作品でも用いられていて、被害者の見当たらない誘拐事件を鮮やかに成立させています。連城作品のイメージをいい意味で裏切る(過去にも時々こうした作品はありましたが)結末であったのも、うれしい誤算でした。

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紙の本図書室のキリギリス

2015/10/29 00:06

舞台は高校の図書室。人と本の巡り合いがもたらす物語。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

カメラマンの夫が失踪して三年。離婚が成立した詩織は、本格的に仕事を探し始めた矢先、県立高で音楽教師をしている友人の縁で、その高校の司書になった。
司書資格を持たない「なんちゃって司書」だけど、詩織は昔から本が好き。前任者の残した手引きや、ユーモラスな校長、一癖ある司書資格持ちの英語教諭、そして図書委員ら様々な生徒たちに囲まれて、大学・就職・専業主婦と気楽に生きてきた「キリギリス」だった詩織の新たな生活が幕を開ける。

校長先生が匿名で寄贈した本、そこに付された雅号(?)の意味を調べる「司書室のキリギリス」。
唐突に退職したように見える前任者の足跡を辿るうちにそのいきさつを知る「本の町のティンカー・ベル」。
別の高校の蔵書印を押された本の謎を探る中で、数年前にこの高校で繰り広げられた素敵な出来事に巡り合う「小さな本のリタ・ヘイワース」。
読書会で一冊の本について話し合い、英語の勉強に洋書を訳す、生徒たちが本と図書館の使い方をさらに広げていくそんな日々の中、詩織の夫の本から見つかった鳥の羽根が波紋を生む「読書会のブックマーカー」。
白い栞に本の宣伝文句を書き込む、数冊の本をうまく絡めて人前で紹介してみせる、読書会で語ってみる……学校で生徒も先生も巻き込んで文化祭の企画が進むのと並行して、詩織の夫がどうしていたかが判明する「図書室のバトンリレー」。
三月から十一月までの、五話構成の物語。

実在の本がたっぷり登場する、本の本。ある本との出会いが別の本を招き、その連なりが時に人生に影響を与える、そんな出来事が全編を通じてバリエーション豊かにいくつも語られる。ドラマ部分を堪能しつつも、未知の本が出ればそれに心惹かれ、既読の本が現れれば何となくうれしくなる、そういった楽しみ方もできる小説だ。

また、学校図書館における業務や取り組み・試みなどを描いた、職業小説としての側面もある。現実には、作中でも描かれる、図書館を宝の持ち腐れにするような運用もなされていそうで、これらがどの学校でも実現しているかは怪しいが……こんな風に本に接して本との関係を深めていく子が増えて欲しいと願いたくなる。

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