サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 四月の旅人さんのレビュー一覧

四月の旅人さんのレビュー一覧

投稿者:四月の旅人

20 件中 1 件~ 15 件を表示

よみがえるのは、遠い日の「ふらんす」ばかりではない。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フランス語を学んだことのある方ならご存じのように、
白水社から「ふらんす」という月刊誌が発行されている。

出会いは遅くとも高校2年のとき、都立校ながら第2外国語が選択できた。
仏語・独語・露語・中国語、受験を意識すれば英語という選択肢もあった。
私は最初ロシア語を選択したが希望者が少なくて成立せず、
結局フランス語を学ぶことになる。

現在のように出版社のサイトに行けば刊行図書が一覧できる時代ではないので、
しばしば図書目録を請求した。
「ふらんす」はそこに同封されて来る、岩波書店なら「図書」、
丸善の「學鐙」、みすず書房の「みすず」などと同じPR誌だと思っていた。

1925年1月創刊。このときの誌名は「La Semeuse」── “種をまく女性”。
ミレーの『種をまく人 Le Semeur』を意識したかどうか。
2つの大戦のはざまでつかの間の自由を謳歌し、
モガとモボがGINZAを闊歩していた時代だ。
4年後に、現在の「ふらんす」に。
当時は仏語・仏文化の学習に資するだけでなく、
日本文化をフランスに伝えるという役割も担っていたらしい。

『ふらんす 80年の回想』は80周年にあたる2005年に、
創刊からこれまでを年代順に4章に分け、
当時掲載されたエセーと評論を中心にまとめたものだ。

まず目をみはるのが、目次に並ぶ執筆者の名。
創刊号にはポール・クローデルの書簡が掲載され、
与謝野晶子がフランスを詠み、堀口大學が自分の詩を仏訳している。
第II章(1945年〜55年)の冒頭では、
先ごろ亡くなった加藤周一が米文学と実存主義を論じ、
ジイドからの手紙を中村光夫が翻訳し・・・
きりがないので、こちらを。

 http://www.hakusuisha.co.jp/topics/france80.php

当時の誌面をそのまま復刻しているので、
時をさかのぼるほど文字の曲がりやつぶれが目立つ。
それがまた趣がある。
同時代の広告も数多く掲載されていて興味深い。
「歐洲大戰後に續出した新語五〇〇〇餘をもらさず収録」した
1932年増補新版の『模範 佛和大辞典』は定価9円のところ、
特価7.5円とある。今なら6万円ほどか。

その後、大学で仏文学を専攻することになった。
あのころ「ふらんす」はいつも手元にあった気がするが、
定期購読でもしていたのだろうか。
在学中に学んだ恩師3人の名も、本書に並んでいて感慨深い。
卒業後はすっかり遠ざかってしまっていたが、
これを機会にもう一度手にとってみようか。

それにしても、あのときもしロシア語クラスが成立していたら・・・。(文中敬称略)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ルナティックス 月を遊学する

2007/12/07 19:37

太陽でなく、月を愛する人──。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

書評サイト「千夜千冊」で知られる、
博覧強記の編集者・松岡正剛さんの作品。

睦月から極月の12章で
文学・科学・宗教などさまざまな容貌をもって描かれてきた“月”を
時空を超えて渉猟した、まさに“月の百科全書”である。
冒頭の数行で、すでにシェイクスピア、ワイルド、プラトン、
梶井基次郎、夢野久作らの名が登場する。

古今東西の図像を紹介した〈遊月図集〉や
月にまつわる伝承を集めた〈月神譜〉も楽しめる。
現在は文庫でしか手に入らないようだが、
1993年発行の単行本では装丁・デザインはもちろん、
構成の細部にいたるまで感心させられた。

すべてを晒す陽光よりも、やさしい月明かりを愛する人にお勧めする。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

世界観を揺さぶる名著。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

物理学・医学・生物学・脳科学・心理学など
最先端で活躍する科学者を取材。
それまで個別に紹介されていた科学のフロンティアを
全体像として描いてみせる。
『2001年宇宙の旅』のアーサー・C・クラークをして
「宇宙について理解する新たな革命の突端」と絶賛させ、
欧米ではベストセラーとなった。

キーワードは「ゼロ・ポイント・フィールド」。
あらゆる存在が時空を超えて、つながっている場である。
そこでは、たとえば──

 ●生物は光子の吸収・放出によってコミュニケーションを行う。
 ●水は分子の周波数を増幅する記憶メディアである。
 ●記憶は、脳の外の巨大な記憶庫に保存されている。
 ●私たちの思いは、世界を変える。
 ●集団や場所のエネルギーがあり、それは個人に影響をあたえる・・・。

“トンデモ科学”に堕しがちなところを、
“科学的根拠”がしっかりと支える。
デカルトやニュートンやダーウィンによって、
長い間こころと身体に引き裂かれていた科学を
統合しようとする試みでもある。

代替医療の第一人者ラリー・ドッシーはこの作品を評して、
「3000年紀を予見する要注意の書! 
なぜなら、読後あなたの世界観を一変させてしまうだろうから」と語った。

私も揺さぶられた。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

曲づくりへの欲望をかき立てられる。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今なお世界のポップ・ミュージックを席巻しているらしい、
バークリー音楽院の音楽理論「バークリー・メソッド」を包括的に解説している。

広汎にして実践的な知性がつむぎ出す言葉は、
著者が望むようにチャーミングでさえある。
それは、楽器を手にしなくなって久しい私のような人間が、
曲づくりへの欲望をかき立てられるような魅力である。

アメリカ音楽が前世紀の中頃にアフリカのリズムと結びつくことで、
やっと世界を「リズム音痴」と蔑めるようになったことを知る。
きわめてクール。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

“読書脳”が用意する“奇跡のような体験”。

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

文字が読めない、読めても理解できない──。
ディスレクシア(失読症)は、
トム・クルーズがこの障害を抱えていたことを告白して注目された。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」で共演した
キーラ・ナイトレイ、オーランド・ブルームもそれぞれ
この症状を克服したことを公にしている。

日本語はひらがな・カタカナ五十音と、
常用漢字だけでもだけでも2,000字近い文字を持つ。
一方、わずか26文字ですべてを表現しなければならない言語もある。
そのせいか、英語圏──とくに米国では1割を超える人々が
程度の差こそあれディスレクシアであるともいわれている。
現大統領も例にもれない。

このとき文字を読み、理解するという基本的な能力が、
自然に身につくものではないことに思い当たる。

著者メアリアン・ウルフは、
米タフツ大学(村上春樹が一時、客員教授をつとめていた)小児発達学部教授で、
ディスレクシア研究の権威。
自身のお子さんも、この障害をもつという。

子どもが文字を読むようになると、
脳はシステムを組み替え劇的な変化を遂げていく。
そして、これは容易に想像がつくことだが、
5歳までにどれだけ文字に親しんだかがきわめて重要だという。
その後に永くつづく一生の“読書脳”の発達は、
このときに決められてしまうのだ。

眠りにつくまでのほんの短いひとときでも、
絵本を開いて子どもに読んで聞かせる。
ネットの掲示板や携帯メールの文章ばかりで成長してしまった世代は
不幸だったとするしかないのだろうが、
これからの子どもたちには可能な限り豊かな読書体験をさせたいものだ。

思えば、文字という単なる記号の連なりを読み、意味を理解し、
ときには感動できるとは・・・ウルフ教授は、それを
「奇跡のような体験」と表現している。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本楽園 上

2007/11/27 17:13

映画化注意──主役は女性だ。

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『模倣犯』の9年後を描いている。

前作で犯人に最も肉薄したライター・前畑滋子は
事件から受けたダメージで、その後しばらく仕事から遠ざかる。
そして今、やっと“軽い”テーマのものを少しずつあつかえるようになっていた。

そこに、息子を最近交通事故でなくした母親がたずねて来る。
彼が生前描いた絵が、ある事件を予告しているというのだ──。

『模倣犯』を映画だけで知る人間は、
原作者・宮部みゆきさんの評価がなぜこうも高いのか理解できない。
私も最近作『名もなき毒』で、彼女の著作にふれるまではそうだった。
こんなものは2時間ドラマでよいではないか・・・。
しかし、その責はすべて映画に帰するべきものであった。

『楽園』というタイトルとは裏腹に、物語は家族の崩壊を描いていく。
子を失った母親、その彼女を見捨てた兄弟、
娘を殺した両親、それを知る妹・・・。
ここに登場する女性たちは自らが負わされた悲惨な状況に
ときにくずおれそうになりながらも、そこから目をそらすことはない。

そう、前作もこの作品も、主人公は殺す側のオトコではなく、
殺される側にいる女性たちとその事件を追う女性ライターなのだ。
映画「模倣犯」では、ここがすっかり反転してしまっている。

過去の事件を別にすれば、衝撃的な事件や激しい軋轢が描かれることはない。
それが古くからのファンのもの足りないところなのか。
しかし、時代をしっかりと見すえながら、
崩壊していた家族たちを最後にはすべて再生してみせる。
やはり“宮部みゆき”は、ただ者ではない。
ラストシーンはただ・・・感涙。

配慮のいき届いたあとがきにも、少なからず感心させられた。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

国内屈指の航空写真家による、クールなフォトブック。

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今月(2008年11月)中旬公開された「ハッピーフライト」は矢口ワールド全開で、
週末のボックスオフィスは初登場2位。
これまで事件や事故の舞台としてばかり描かれてきた機内を、
笑いと涙の空間に変えた手腕に拍手を送りたい。

キャビン撮影には通常なら実物大のモックアップが使われるのだろうが、
この作品ではANAがボーイング747-700──テクノジャンボを提供している。
実際の機内だと知れば、カメラワークにも注目したくなる。

封切り当日には、
ANAの公式ガイドブック「That's ANA ビジュアル」が同時発売された。

クルーの日常をフォトストーリー風にまとめた導入部から8章にわたって、
ANAとその周辺を鮮やかに、ときに注意深く切りとっている。
とくに飛行中の航空機は、一般のフォトグラファーでは金輪際とらえられないものだ。
当該ページで、21世紀を待たずに倒産したオランダ フォッカー社の航空機が
今なお日本の空を飛んでいることを知る。

全編を撮影したのは、昨年ホームパーティにご招待した小栗義幸さんだ。
すでに国内屈指の航空写真家となった彼は、航空機についての造詣もきわめて深い。
パーティ当日、わが家のはるか上空を行き過ぎたエンジン音だけで、
機種を答えて周囲を驚かせる。

それぞれの写真に添えられている文字も、小栗さんが自ら書いた。
このジャンルの出版物によくある凡庸な解説とは一線を画して
マニアばかりでなく、一般の読者にもイメージがふくらむ
クールなコピーライティングとしてまとめられている。

カドカワムックからはこの秋、
スターアライアンスの公式ガイドブック「That's STAR ALLIANCE」も発行された。
ここでも、彼の写真が過半を占めている。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本灯台守の話

2008/04/18 10:47

物語のチカラ。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私たちは
大好きなパートナーや家族や友人やご近所や職場の同僚や
この社会をともに育んでいる方々に、
いつも少しだけ多めに期待しているのかもしれない。
まぁ、自分のことを棚上げにして。

だから、時どきがっかりさせられ、
それがたび重なればとても疲れるし、
いたる所で自分がひき裂かれているような気分を
味わうことさえ少なくないだろう。
でも、そんなときは“いたる所”で物語を語るんだ。

『灯台守の話』の主人公シルバーは父を知らず、
幼くして母を亡くした少女として私たちに語りかける。
そして、すでにその光を必要としなくなりつつある時代の灯台で、
盲目の灯台守ピューと暮らし始める。

著者のジャネット・ウィンターソンは私と同じ年に、
英国北部の工業都市マンチェスターで孤児として?生まれる。
多くの場合“狂信的”との形容詞を付される
ペンテコスタ派を信仰する養父母に育てられたが、
同性愛者ゆえに家を追われる。

もうひとりの主要人物──ダーク牧師を含めて、
この物語に登場する人びとの境遇は幸せとはほど遠い。
しかし、その悲惨さが物語として語り直されることで、
やけに明るくなる。
それは、様々な職業を転々としながらも
独学でオックスフォードにたどり着く
著者の内面に通底しているものなのだろう。

少しだけ我慢して読み進めてほしい。
いつしか幸せな気分に包まれている自分に気づくはずだ。

Tell me a story, Pew.

What kind of story, child?
A story with a happy ending.
There's no such thing in all the world.
As a happy ending?
As an ending.

私たちが主人公のいくつかの物語だって、まだ始まったばかりだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ぼくと1ルピーの神様

2007/12/12 15:19

神はいつも、自ら望むところに宿る。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

インドの作家ヴィカス・スワラップのデビュー作。

インド社会の底辺に暮らし、まともな教育を受けたことのない少年が、
TVのクイズ番組で史上最高額の賞金を獲得したことで、
警察に逮捕されるところから物語は始まる。
なぜ、彼は13の難問すべてに正解できたのか──。

著者はクイズ1問につき1章をあて、社会の最底辺で
さまざまなトラブルに遭いながらたくましく生きのびていく彼の姿を描く。
そして、そこにこそクイズの答があった。

設定とは裏腹に、爽快感に満たされる小説である。
コインのトリックには、うかつにも最後まで気づかなかった。
16か国語に翻訳され、すでに映画化の予定もあるという。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

Still there are a way to get back homeward.

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

春の「本屋大賞」、年末の「このミステリーがすごい!」のベストテンを見て
(ミステリチャンネルの「闘うベストテン」も
そして、bk1の文芸カテゴリー年間ベストセラーも)、
1冊も読んでいないことに少しばかり汗る(笑)。

そこで、ともに1位にランクされていた
話題作『ゴールデンスランバー』を手にとる。

物語の舞台は、著者・伊坂幸太郎の地元・仙台。
米大統領暗殺に酷似した事件(「教科書倉庫ビル」って、おいおい)を発端に、
終始“オズワルド” をでっち上げようとする権力の側ではなく、
非力な “でっち上げられる側” から描く。

日本の刑法犯の検挙率はずっと3割を下回っている(凶悪犯でも60%前後)が、
そのうち真犯人の割合は?と疑っている身としては背筋が寒くなる。
マスコミの扱いも好ましい。

第一印象・・・。
私と同世代の作家、たとえば東野圭吾や宮部みゆきと比べて、
プロットも文体も全体にいかにも若い気がした。

また、これはとるにたりないことなのだろうが、
視覚や聴覚がとらえたものはていねいに書き込まれているのに
それ以外の感覚、とくに嗅覚についての表現がない。
たとえば、物語を動かす重要なアイテム・花火でも、
その色彩や音が描かれている場面で、
その場にいれば気づかぬはずのない火薬の香りの記述がない。
デジタル世代の宿命だろうか。

空を見上げる。
自分が思っている人、自分を思っている人が同じ空を見つめている
──ゆるやかだけれど、ゆるぎない確信に満ちたつながり。
ハリウッドさながらのスケールで始まった物語は、
実は主人公の大学時代のサークル仲間とその周辺にいた人びとの
そんな絆こそがテーマだ。

タイトルの「ゴールデンスランバー」は、
ビートルズとして最後に制作されたアルバム『Abbey Road』B面の同名曲から。
ポールが義妹のソングブックにあった、
エリザベス朝の詩人トマス・デッカーの子守唄に想を得て書いた。

 Once there was a way
 To get back homeward

 Golden slumbers fill your eyes
 Smiles awake you when you rise

すでに修復不可能だったメンバーたちを何とかつなぎとめようとしたポールと、
卒業後すっかり疎遠となっていたサークルのメンバーたちと、
それぞれが抱く想いは静かに、しかししっかりとシンクロしていく。
ラストまで連なる美しく感動的なシーンには、私からも
「たいへんよくできました」と花マルを贈らせていただこう。(文中敬称略)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本テロル

2007/12/15 09:25

日常の風景であることの悲しさ。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「レストランを爆発させた犯人はきみの奥さんだとしか思えないんだよ」。

なぜ? 
妻とふたり、ユダヤ人もうらやむ幸福な家庭をつくり上げたと
信じて疑わなかったアラブ系イスラエル人のエリート医師が、
その答えを探すところから物語は動き始める。

60年以上も前に、一瞬にしてすべてを奪われる恐怖から解放された日本人には、
アルジャジーラが日々伝えるパレスチナ+イスラエルの映像は
あまりに遠い出来事と映るだろう。
そして、ややあって、その悲惨な景色の周囲にも
私たちと同じように日々の暮らしに喜びや悲しみを育む
人びとの生活があることに思いいたる。

主人公の大叔父が、アラビアのロレンスについて語った言葉。
「あの蒼白い顔をした悪魔は霧の晴れぬ国から来て、
オスマン帝国に対してベドウィンを蜂起させ、
イスラム教徒のあいだに反目の種を植えつけた」。
そう、これは2000年にわたる宗教対立などではなく、第1次大戦のときの
英国のいわゆる“三枚舌外交”に端を発していたことを思い出す。

欧米が勝手につくり、変更を認めない20世紀以降の世界──。
アフリカ大陸に引かれたほぼ直線の国境線を思い浮かべれば十分だろう。
日本政府が国際社会というとき、いったいどの国を想定しているだろうか・・・。
そこには、そのまま私自身の認識も投影されているのだろう。
だからこそ、
書物や映像を通して可能な限り多くの国の文化にふれたいと考えている。

たとえば、ドキュメンタリー映画「プロミス」はうかつにして怠惰な私に、
イスラエルとパレスチナの7人の子どもたちの声を通して、
憎しみの連鎖の中に生まれつつある希望を伝えてくれる。

同じ頃、書店に並んでいた作品のリスト──。
北朝鮮の精鋭部隊が福岡ドームを占拠する村上龍著『半島を出よ』、
東京と地球の未来をかけて闘う反政府ゲリラを描いた池上永一著『シャングリ・ラ』、
お台場を徹底的に破壊して爽快な(?)福井晴敏著『Op.ローズダスト』、
日系二世の米兵が原爆投下阻止のために太平洋を渡る建倉圭介著『デッドライン』、
日本人作家によるこれらの作品はいずれもスリリングな展開で、
最後まで一気に読ませてくれる。

それでも、それは小説の世界だ(当たり前か・・・)。
『テロル』の舞台となった国でも、特異な舞台設定がなければ
こうした物語が成立しなくなる日が来ることを願ってやまない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

私たちは、旅を必要としている。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「旅には偏見や頑なさ、心の狭さなどを粉みじんに打ち砕く力がある。
 そして、多くの人はまさにそれらを克服するために、
 旅を必要としている」(マーク・トウェイン)。

東アフリカの大地溝帯に誕生したという霊長類の小さな集団が
崖の向こう側に広がるまだ見ぬ世界を知りたいと願い
眼前にそそり立つ壁を越えて北へ西へと歩み出す──
という“好奇心”をもし持ち合わせていなかったら、
人類は今のように世界中に存在することもなく
地球は平和だったかもしれない・・・笑。

全米250万部のベストセラー?
あの国の人びとがこれほど海外旅行好きとは知らなかった。
少しばかりタイトルはベタだが、
プライベートでも仕事上でも資料になると思い、ヨーロッパ編を購入した。

『死ぬまでに一度は行きたい世界の1000か所』の著者パトリシア・シュルツは
旅行家としても名高いトウェインの血筋に連なるという。
彼女もまた旅のライターとして世界中を巡り
「Conde Nast Traveler」「Departures」「Harper's Bazaar」などに
寄稿しているらしい。

このヨーロッパ編の25か国420か所のほか、南北アメリカ編で361か所、
アジア・アフリカ編245か所が、データや周辺情報とともに紹介されている。
読むだけでも楽しめるが、それではもったいない。
かの“百名山”のように「死ぬまでには・・・」という目標にはなるかもしれない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

現代史の舞台に立つ。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「イワンや、早くお帰り、お前のナターシャが
隣のコーリャ(ニコライ)と寝ているよ──母より」。
1968年、プラハに侵攻したソ連軍兵士に向けた、チェコの人びとのメッセージ。
街中に貼られたというビラは、彼らの精一杯の矜持だ。

以前、第2次大戦は日米連合軍がナチス・ドイツと戦ったと思っている
若者たちが少なくない、と耳にして驚かされた。
年号と固有名詞ばかり詰め込まれる歴史教育の中でも、
学年の最後に時間切れでたどり着けない“現代史”とはいえ・・・。
彼らの祖父母が実体験したろう出来事なのだが・・・。

著者は朝日新聞記者として、プラハの春の前年にモスクワに赴任。
この歴史的事件を現地からレポートする。
同時に、アルバニア以外のすべての東欧諸国を訪れ、
ノルウェーとポルトガルをのぞく西欧諸国を旅したという。

71年にはモスクワ支局長となるが、中ソの対立を取材してクレムリンの不評を買い、
“国外追放”という名誉ある処分を受ける。
その後、10年間にわたりソ連からはビザが発給されなかったらしい。

これまではやはりロシア関連の著書が多かったようだが、
この作品ではソ連・東欧はもちろん中国・台湾・朝鮮半島の同時代を描いて、
馴染みのある人物・団体の名が頻出する。
ユーラシア現代史を学ぶには、よい素材かもしれない。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

いくつになっても、ハグは大切。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大月書店が昨年10月から、毎月発行している「心をケアする絵本」の5作目──。

幼い子どもたちの無垢な精神はいつもなら、この殺伐とした社会から
親や周囲の大人たちによって周到に守られている。
それが「親がうつ病になったとき」「親が離婚しようとするとき」
「障害のあるきょうだいがいるとき」「身近な人を交通事故で失ったとき」
否応なく、そのただ中に放り出される。

いつもはニコニコしているパパとママが、
ちょっと恐い顔でTVをじっと見つめている。
モニタでは、深刻な顔をした大人がしゃべっている。
ふたりは黙って、その人の話を聞いているようだ。
画面は、事件や事故の現場の暗い映像に変わる。

そんなとき、幼い心にはどんなことが起こっているのだろう・・・。

「こわいことや かなしいできごとは きっと なくならない。
でもね、こうやって はなして ぎゅっと だきあえば、
ほら、ずっと きぶんが よくなるだろう?」

いくつになっても、ハグは大切・・・汗。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本ラジオ・キラー

2008/02/23 06:15

ドイツ・ミステリーはハリウッド製アクション映画を見るか。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

彼女は今まさに服毒自殺をしようとしていた。
たまたま、それを飲むためのコーラ・ライト・レモンが
冷蔵庫になかっただけなのだ。
出かけた食料品店では銃撃に巻き込まれ、
そこからベルリン警察特別出動隊(SEK)のヘリで
物語の主舞台へと拉致される。

『ラジオ・キラー』は、ドイツ人作家セバスチャン・フィツェックの2作目。
ベストセラーとなったデビュー作『治療島』を凌ぐ評価を、
すでに得ているようだ。
今回は、現在も著者自身が携わっているラジオ局を舞台としている。

冒頭の部分を読んで、
私は「ダイ・ハード3」のジョン・マクレーンを思い起こした。
停職中で泥酔した彼は突然、事件現場の渦中に連れ出された。
そう、そこにサミュエル・L・ジャクソン。

ただし、主人公のイーラはSEKの優秀なベテラン交渉人だから、
派手なアクションを演じるわけではない。
テレ朝系のドラマ『交渉人』の宇佐木玲子
──その10年ほど後を想像すれば少しは近いか。

物語を動かすものは、ラジオ局のスタジオに人質とともに立てこもった、
かつては優秀な心理学者だったヤン・マイとの“交渉”。
ではなく、次つぎに提示される新たな事実と
周囲でくり広げられるアクションである。

この意味でも、きわめてハリウッド的だ。
幼い頃からそんな映画ばかりを見せられて来た日本人の私には、
展開が透けて見える。だから、読みやすい。

著者はトーマス・マンやカフカよりも、チャンドラーあたりを
好んで読んで育ったのではないだろうか。
同時に、シュレンドルフやヴェンダースではなく、
マクティアナンのような作品を観ていたのでは・・・笑。
それゆえ、イーラもまたマクレーン同様に
ラストでは瀕死の状態で犯罪者と対峙することになる。

静かなエピローグ──。
自殺した長女からのメッセージ、そしてドアの外には?

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

20 件中 1 件~ 15 件を表示