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先月(2017年8月)

円山公園の桜さんのレビュー一覧

投稿者:円山公園の桜

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本脳病院へまゐります。

2008/03/30 13:47

消費社会の情報量を持った小学生並みの心理劇

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

随分昔の本なんですね。海外に行っていたので知りませんでした。でもこの間友人宅で見つけ、冒頭のあっけらかんとした酷薄な男性登場人物の行動が面白いと思って、読み始めました。そう、冒頭はさらりと書いてぎょっとさせるところがあって感心したのですが、その後はおっしゃる通り言い訳の羅列、結局はモノローグで終始する失恋話ですね。よい教育を受けて、独立を目指し、小説を読み、女性の生き方を考えながら、パラドクサルにも「純朴に恋している」女性登場人物は、実は純朴ではなく、考える力がないだけなのかと思われます。主人公は(徐々に自明のことと思えるようになりますが)作家の自己ポートレート。女性心理の一人称小説は日本にも海外にも珍しく有りません。思うに、女性は社会的に役割を与えられることが幼少期から男性に比べて少ないので、コミュニケーションにおけるフィクションの必然性を、あまり理解出来ないのかもしれません。ともかく、これは古今東西古典的な女性文学のあり方。我が国には林芙美子がおります。
林の放浪記にも、同じように男性に捨てられる自らを哀れんだ場所が多々ありますが、林の方は男性との確実なつながりが過去にあるだけに、辛い経験も小説家の体験として昇華しています。放浪記を、女性の意志力知力が自発的に目覚める過程を書いた本として読むと感動的なのはその部分です。しかも林は昭和前期の人、貧民階級出身、学校も出ていない。若合さんは情報と商品にあふれた現代社会の人、きっと中流階級出身で大学まで行った。学ぶ力の差は、完全に個人の容量の問題です。
情痴文学、というよりも愚かに生まれて学ぶことを学ばずに育った女性の、自動人形の如き、無批判で無思慮な行動が延々と並び、これでは当の男性は心底腹が立っただろうと納得する部分があります。嗜虐被虐の関係でナルシズムを維持するには、相当な信頼関係と愛が相手の間になければならない。マゾッホが文学になり得ているのはそのせいなのです。ですから、SMと言ってもここで行なわれているのは、SMごっこのように見えます。しかし、「〜ごっこ」が常規を逸した行動を招いてしまうようになったのはいつからでしょうか。例えば、殺人ごっこが小学生の頭部切断事件にまで発展したように。小説ごっこも文学賞ごっこも、何故このように基本的に単純で、無意味で、成熟の過程で見捨ててしまえる情動を、しゃにむにかき立て、文学的感興として提示しようとするのでしょう。現実の経験から言っても、もっと豊かな情念と知られていない情動は存在します。誰もが経験し、しかし得体の知れない情動に名前を冠し、ステータスを与えるのが小説家の仕事ではないのですか。
それほど探求の精神と、かつては有機的に審美主義に結びついていた知性の賞揚が無価値なものになってしまったのでしょうか。小さな小説の世界ですけど、ここにも現代日本の問題の一端が見えているような気がします。
恋愛至上主義で性的自由と経済的独立を目指す女性は、とにかく現実を見失わないようにしましょう。いつまでも少女漫画を信じきった自己耽溺型のお子ちゃまでは、この小説のように後世に悪い影響を残す仕事をしてしまいます。

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