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  3. サムシングブルーさんのレビュー一覧

サムシングブルーさんのレビュー一覧

投稿者:サムシングブルー

108 件中 1 件~ 15 件を表示

あなたにめぐり逢えて

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

先日の朝日新聞にみつはしちかこさんのコメントが載っていました。
昨年の春にご主人を亡くされたこと、その一ヶ月後に意識不明になり生死をさまよったこと、相田みつをさんとの詩画集のお話があって休刊していた“チッチとサリー”を書けるようになった喜びのコメントでした。
さっそく手にした詩画集は思い描いていた以上の素晴らしいものでした。

いつだったろう、“チッチとサリー”に胸をときめかしたのは。
東京フォーラムにある相田みつを美術館には何度も足を運びました。
そこには心が癒される空間があります。
詩画集をひらくと、そこには相田みつをさんの温かい肉筆と、“チッチとサリー”の世界がコラボしてました。
みつはしちかこさんのあとがきに相田みつをさんから勇気をもらった詩が載っていました。

 つまづいてもいい ころんでもいい
 これから先 どんなことがあってもいい
 あなたにめぐり逢えたから

みつはしちかこさんの『小さな恋のものがたり』は今年でデビュー50周年。
1月30日に古稀を迎えられたみつはしちかこさんのますますのご活躍を祈念いたします。

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紙の本おおきな木

2010/09/17 20:17

「しあわせ」って、なんですか。

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

シェル・シルヴァスタイン作『おおきな木』は1976年に、本田錦一郎さんの翻訳で出版されました。その翻訳者の本田さんが物故されたこともあり、村上春樹さんの翻訳で『おおきな木』が出版されました。
この絵本は、アメリカで1964年に出版され、30以上の言語に翻訳され、世界中で読まれているロングセラーであることを知りました。

少年はおおきな木がだいすきです。おおきな木と少年はいつも一緒です。
かくれんぼをしたり、こかげでねむっている少年の絵は、とてもとても愛らしい。
でも時間がながれて、少年はだんだん大きくなっていき、おおきな木はひとりぼっちになることがおおくなりました。
大人になったぼうやがやってくると「しあわせにおなりなさい」と、おおきな木は自分をぼうやに差し出すのです。
そして最後のページのおおきな木と老人になったぼうやの絵は、とてもとても痛々しい。
 「しあわせ」って、なんですか。

絵本の帯に
「・・・・・あなたはこの少年に似ているかもしれません。それともひょっとして、両方に似ているかもしれません」 (村上春樹/訳者あとがきより)
と、ありました。
わたしは短い文とモノトーンの線画に圧倒されました。
村上春樹さんはまた
「あなたがこの物語の中に何を感じるかは、もちろんあなたの自由です。それをあえて言葉にする必要もありません」と。

原題は “The Giving Tree”
 「しあわせ」って、なんですか。

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紙の本その日のまえに

2008/10/05 22:06

『その日』があることは幸せなことであろうか

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 誰しも死ぬことについて考えたことがあると思う。それは生きてきた時どきのおりに、自分であったり、愛するひとであったり、家族であったり、親であったりする。重松清著『その日のまえに』は生きること、死ぬこと、のこされること、歩きだすことを描いた作品です。
『ひこうき雲』僕は小学6年生の時、クラスのみんなに嫌われていた岩本隆子(ガンリュウ)のことを思い出す。ガンリュウは重い病気で入院していた。僕は担任の先生とクラス委員の美代子と男子3人とお見舞いに行った。同級生の死。「もしも神さまがいるのなら ― そして、ひとの命の行方を神さまが決めるものなのだとしたら、」(54頁)
『朝日のあたる家』高校教師のぷくさんは42歳。中学生の娘と二人暮らし。8年前、夫は会社の帰り地下鉄の駅で倒れ、虚血性心不全で亡くなった。「平凡。平和。平穏無事。そんな言葉でまとめられる毎日の、冗談みたいなもろさを、ぷくさんは知っている。だから―ジョギングを始めた。」(70頁)
『潮騒』余命3ヶ月の宣告を受けたその日、佐藤俊治(シュン)は30年前に住んでいた町、夏休みによく行った“かもめ海水浴場”を訪れる。シュンは同級生の石川(でめきん)にがんを宣告されたことを告げる。「時間は永遠に流れる。過去も未来も無限につづく時の流れの中で、自分の人生は四十二年前に始まり、そして間もなく、不意に終わってしまう。」(129頁)
『ヒア・カムズ・ザ・サン』高校生のトシくんは、父親を赤ん坊のときに交通事故で亡くし母ちゃんと二人暮らし。母はすごく甘ったれで、臆病な息子にがんであることを言えずにいた。そんな時、母ちゃんはカオルくんと知り合う。「素直に。静かに。感情の高ぶらない悲しさって、ある。初めて知った。涙が、頬ではなく、胸の内側を伝い落ちる。」(204頁)
『その日のまえに』去年の秋、妻、和美の病気がわかり、余命が告知された。年が明け最後の外出に僕と和美は結婚して最初に住んだ町を歩く。「僕には、信仰する宗教はない。それでも、もしも ― 神の代わりになるものを世の中で選べ、と言われるのなら。僕は、いまの和美を選ぶ。」(243頁)
『その日』
『その日のあとで』健哉と大輔と三人の生活が始まり三ヶ月がたった。7月に入って間もない頃、大学病院の師長の山本さんから「和美さんの手紙を預かったんです。亡くなる少し前に」と、電話がかかってくる。「便箋は一枚きり。三つ折りにした便箋を開く前に、目をつぶり、ゆっくりと深呼吸をした。目を開いた。………」(329頁)
 この連作短編集は最後の作品『その日のあとで』で終結します。自分の生きてきた意味や、死んでいく意味について考える『その日』があることは幸せなことであろうか。文庫版のためのあとがきは強烈でした。重松氏の作家としての使命感に感銘を受けました。

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人は息を吐いて生まれ息を吸って死す……

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 五木寛之著『息の発見』は書き下ろしエッセイと玄侑宗久さんとの対話本です。五木氏は玄侑宗久さんを禅寺の跡取りとして生まれ、物心ついたときからブッダの弟子として生きてこられた禅僧と紹介しています。装画は大阪・西福寺所蔵、伊藤若冲『蓮池図』です。重要文化財の『蓮池図』を装画に使用することは特例中の特例とあとがきにありました。五木氏は「発見シリーズ」の第四集に息をテーマに語り合ってみようと思います。ならばお相手は禅僧で作家の玄侑宗久しかいないと、福島県福聚寺を訪ねます。そして五木氏と玄侑宗久さんは呼吸について語り合います。息づかい=呼吸の呼(こ)吐く息と、吸(きゅう)吸う息のように寄りそったり、寄りそわなかったり白熱した対話が二日間続きます。息の発見からいのちの発見になり、太古から現代へ宇宙へとつながっていきます。この本には膨大な文献がでてきます。それには圧倒されましたが、心安らかに生きたいと願う方にお勧めの本です。

目次は
「息の世界に気づく旅のはじめに」
第一章 息の力
第二章 ブッダの息の教え
第三章 いのちをあやつる息のふしぎ
第四章 東洋の息、西洋の息
第五章 禅的呼吸法へのいざない
第六章 食と健康と呼吸法
第七章 呼吸革命への道
あとがき

 最後に興味深い対話を載せて書評を終わります。
玄侑  むかしは人間のこころは、おへそのあたり、臍下丹田(せいかたんでん)にあると考えられていましたからね。
五木  それが近代になると「ハート」ということをいいだすんですよ。胸に手をあてて「私はこんなふうに感じる」と。こころは胸まで上がってきて……。
玄侑  そう。現代ではもう、脳なんですね。
五木  悲しみも喜びも、みんな脳が感じるんだということになってきてい る。頭でっかちの人間が、ふらふらと歩いているというのが、私の実感です。
玄侑  だから、もう一ぺん、人間のこころを腹のほうに下ろさなければいけない。
五木  いのちの中心の意識を、頭から下、臍下丹田に下ろしていく必要があると思いますね。

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紙の本半落ち

2008/09/19 21:35

人間の尊厳とは

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 週末、出張を終えた長男が久しぶりに我が家に帰ってきました。「この本、読んでみる」と、横山秀夫著『半落ち』の本を置いて勤務地の鹿児島に戻っていきました。読んだことのないジャンルの本でしたが、まっさらな気持ちで読んでみることにしました。
 『半落ち』は警察用語で、取調官に対して被疑者が洗いざらい事実を自供しないことです。現職警察官、梶総一郎(49歳)は、アルツハイマーを患う妻、啓子を殺害し自首してきます。容疑は嘱託殺人。動機も経過も素直に話しますが、殺害から自首までの空白の二日間の行動だけは語ろうとしません。県警は現職警察官の殺人に震撼します。
志木和正(W県警本部捜査第一課強行犯指揮官)の章:取調室の梶総一郎の顔は両眼が澄みきっていた。空白の二日間のことを聞かれると「そっとしておいていただけないでしょうか」
佐瀬銛男(W地方検察庁三席検事)の章:梶総一郎の顔は「無私の顔」だった。我が身を捨ててでも、大切な何かを守り通そうとしている顔。誰かを庇うと固く心に誓った顔。
植村 学(私選弁護人)の章:澄みきった二つの瞳が植村を見つめていた。新聞の写真では窺い知ることのできない、それが梶総一郎の心の窓だった。「どうか、そっとしておいて下さい」
藤林圭吾(W地裁裁判官)の章:無垢な瞳だった。梶という男の澄みきった瞳は普通ではない気がした。
古賀誠司(M刑務所刑務官)の章:絶望してしまった顔ではない。澄んだ瞳には力がある。梶の目は生きている。
梶総一郎の澄みきった瞳に隠されているものとは。「完落ち」できなかった取調官、志木のとった行動は。
 最後は感動的な結末で終わります。しかし、著者横山秀夫氏のメッセージは感動の結末ではないような気がします。藤林裁判官の父もアルツハイマーで妻の澄子が介護をしています。梶は妻に、澄子は舅に「死なせて欲しい」と言われます。自分の手を汚した梶総一郎の優しさと、殺さなかった澄子の優しさと。人間の尊厳を問われる小説でした。

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紙の本夕凪の街 桜の国

2008/05/10 10:18

「人は何のために生まれてくるのか」

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「それは幸せになるためです」
 『夕凪の街 桜の国』を読んで、細川佳代子さん(スペシャルオリンピックス日本理事長)の言葉を思い出しました。細川さんの問いかけに、私は答えられなかった。
 『夕凪の街』ではヒロシマに原爆が投下されてから10年後、主人公の皆実(みなみ)はまっくろな血を吐いて死んでいく。その場面には絵がなくことばだけが書かれている。「嬉しい? 十年経ったけど原爆を落とした人はわたしを見て「やった! またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?」
 『桜の国』は42年後疎開先に預けられていた皆実の弟、旭の家族の物語です。旭には七波と凪生の二人の子どもがいます。父がある夜、ふらっと出かける。七波は友人の東子と父の後を追う。父は姉、皆実の五十回忌に広島を訪れたのであった。
 こうの史代さんのあとがきに「原爆の惨禍はこのくらいの判りにくさでいまも世の中に潜んでいる、ということが伝わればいいと思います」と書かれています。
 『夕凪の街 桜の国』は漫画本のジャンルを超越して私たちにメッセージを送っている本です。

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紙の本ノルウェイの森 上

2010/01/09 20:43

すべては第一章に。

12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 村上春樹作品をすべて読んでいる彼女からのお薦めは『ノルウェイの森』でした。
 何度も書店で見た赤と緑のカバー。書店の壁にあった1000万人が読んだ『ノルウェイの森』の広告。少し尻込みしました。でも、読みたくて仕方がなかったのです。そしてページをめくると、そこには「多くの祭り(フエト)のために」とありました。
「僕と直子は四ツ谷駅を降りて、線路わきの土手を市ヶ谷のほうに向けて歩いていた。五月の半ばの日曜日の午後だった。」(38頁)
 主人公・僕に似た人を思い出しました。そして頑なだった二十歳前の私をも思い出してしまいました。
 上巻を読み終えてビートルズの『ノルウェイの森』を聴き、もう一度第一章を読みました。
「文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。」(22頁)
 完全な文章に圧倒されて読んだ上巻でした。

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紙の本くまちゃん

2009/08/09 13:34

男と女の間に大河が流れていることを感じた一冊

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 角田光代さんの小説を読むのは初めてです。『くまちゃん』のあとがきにふられ小説を書きたかったこと、「ふられることがいいことだとは思わないけれど、でも、旅を一回するようなことくらいのよさはあると思う。(中略)旅から帰れば、以前とは違う場所にいる自分に気づく。」とありました。一期一会の恋愛は旅に似ているのかもしれませんね。
 また、恋をするたびに自分ですごいと思える小説を書きたいと思っていた角田光代さんに同性として、熱いものを感じました。

 『くまちゃん』の主人公・苑子はお花見でピンクのくまのトレーナーを着たくまちゃん(持田英之)とお花見で出会い、くまちゃんに恋をしてふられます。第2話『アイドル』では苑子をふった持田英之がゆりえにふられる、といった具合に登場人物の全員がふられる「ふられ小説」です。
 第7話の主人公・こずえは夫に「好きな女性がいる。だから別れてほしい」といわれ協議離婚したある日、交際した男性の数とふられた回数とが同じであることに気づきます。『乙女相談室』という失恋した女たちのサイトのオフ会に参加したこずえは、そこで第3話『勝負恋愛』でロック歌手にふられたユリエと出会います。居酒屋で乾杯のあと、自己紹介したあとの女同士の会話がおもしろい。その箇所を抜粋します。

ユリエがだらけた調子で言う。「だれかとつき合うってさー、その人に合わせて、自分の分身みたいなのを一個作るような感じ、しない? えーと本来の自分とは違う、その人といっしょにいるためだけの自分、みたいなのがもうできあがって、別れたりふられたりすると、その自分をさー、こうべりべりっと剥がして、いたたたたたっていうか」
「股裂き!」こずえは思わず、大声を出した。
「え、なあに、それ」
「股裂きの刑くらいつらいって思ったんです私」
「違うわ、こずえさん、それ、ふられる痛みじゃないの。別れる痛みなの。ふる側もそりゃあ痛いのよ。」と、ミナは訥々と話す。

 お酒が入ったときの女同士の会話は、とかく暴走しがちですが、真実をついています。そして、一人、また一人乙女相談室を卒業していきます。

 角田光代さんが書きたかった仕事と複雑に絡み合った恋愛を楽しめました。第6話の『光の子』は異質ですが感動モノです。7話を通して男女の人生観と恋愛観の葛藤が描かれており、男と女の間に大河が流れていることを感じた一冊です。

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紙の本100万回生きたねこ

2009/04/10 21:13

この絵本を、あなたはどなたと読みますか

12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『心と響き合う読書案内』で紹介されていた佐野洋子作・絵の絵本『100万回生きたねこ』を読みました。
 子どもが小さい頃、よく絵本を読みました。絵本のページをめくるとき、ちらっとのぞき見る子どもの顔は、きらきらしていて、愛らしくて、幸せなひとときでした。今回は一人で絵本を読みました。実は、私、ねこが苦手なんです。ねこを抱っこしたことがありません。ねこの目が怖いのです。

 表紙のねこはエメラルドグリーンの眼をしているとらねこで、太い後ろ足で立っていて、強そうです。
次のページのねこは、もっと怖い顔をして、前足を人間の手のように広げ、とうせんぼをしています。

 100万年も しなない ねこが いました。
 100万回も しんで、100万回も 生きたのです。
 りっぱな とらねこでした。
 100万人の 人が、そのねこを かわいがり、100万人の
人が、そのねこが しんだとき なきました。
 ねこは、1回も なきませんでした。
 
 ねこはパープルの眼をして、しっぽをたらして、少し寂しそうです。

物語は進みます。
 あるとき、ねこは だれの ねこでも ありませんでした。

 ねこはエメラルドグリーンの眼をして、仰向けになっておなかを見せています。気持ちが良さそうです。

物語は進みます。
 たった 1ぴき、ねこに 見むきも しない、白い
うつくしい ねこが いました。

自分がだいすきなねこは、白いねこに恋をします。
「おれは、100万回も・・・・。」
と いいかけて、ねこは、
「そばに いても いいかい。」
と、白いねこに たずねました。
胸がきゅんとなる大好きなページです。

物語は進みます。
 白いねこは、かわいい 子ねこを たくさん うまみした。
 ねこは、白いねこと たくさんの 子ねこを、
自分よりも すきなくらいでした。

 ねこは、白いねこのそばに寄り添い、まわりに白い子ねこと、とらねこの子ねこが遊んでいる家族の絵が描かれています。

そして物語が進みます。
 ねこは白いねこを胸に抱いて、眼から大粒の涙を流し、泣いています。

 ねこは、はじめて なきました。夜になって、朝になって、
また、夜になって、ねこは 100万回も
なきました。

 ねこは もう、けっして 生きかえりませんでした。

 最後のページにはどんな絵が・・・。
 絵本は100万倍も感動します。
『100万回生きたねこ』を、あなたはどなたと読みますか。

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紙の本十字架

2010/03/08 23:03

それぞれの十字架

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 重松清さんの作品は哀しさと愛しさがいっぱいつまっています。今回の作品『十字架』は人は幸せになるため生まれてきたのに、なぜ十字架を背負って生きなければならないのか、人間の本質をみつめた作品になっています。

 いじめを苦にして自殺した中学二年のフジシュン。フジシュンは4人の同級生の名前を書いた遺書を残し、庭にある柿の木で首を吊ります。いけにえにされたフジシュン。見殺しにした僕。『十字架』はフジシュンの親友に選ばれた僕の20年間の物語です。
 二年三組全員で告別式に行った場面は凄まじかったです。斎場に入ると報道陣の中から突然フリーライター・田原の「土下座しろ、おまえら」の声が響きます。お別れをしてほしいと言われた僕はフジシュンのお父さんに「俊介を・・・なんで、助けてくれなかったんだ・・・」と胸ぐらをつかまれます。自分の誕生日がフジシュンの命日になってしまった中川さん。フジシュンからプレゼントされた貯金箱をずっと持っている中川さん。降ろすことのできない十字架を中川さんに背負わした重松さんに怒りさえ感じました。
 僕は大学を卒業して、就職をして、結婚して、息子が生まれて父親になります。そして中川さんもまた母親になります。
 重松さんのメッセージは僕に届いた中川さんの手紙に書かれていました。『十字架』は人間の本質をみつめた作品でした。

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勝間本の原点を読む

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私は本に関しては臆病です。経済評論家、公認会計士であり、あらゆるジャンルのテレビ番組に出演している勝間和代さんの本の書評を読みつつも、なかなか手が出ませんでした。そんなある日、私にもとうとう勝間本がやってきました。それは2006年1月発行の『インディでいこう!』の提書版『勝間和代のインディペンデントな生き方』でした。
 本書のキーワードは「インディペンデント」すなわち「自立」。自立には「じょうぶな心」と「学び続ける力」が必要であり、「インディ」になるための6つの約束が書かれています。「じょうぶな心」とは何ぞや。その部分を抜粋します。

 じょうぶな心1 自分の想いで環境を作る
 じょうぶな心2 周りと調和する 「アサーティブ」に振る舞う
  「アサーティブ」とは「自分も相手も大事にして、うまく自分を表現すること」
 じょうぶな心3 すべてをゼロイチで考えない 「セレンディピティー」を活用しよう
  「セレンディピティー」とは「思わぬものを偶然に発見する能力、幸運を招き寄せる力」
 じょうぶな心4 がんばりすぎない

 特に聞きなれないアサーティブには心が動きました。勝間女史は女性の心理をよくわかっていて、読んでいて小気味よい。いまこそ、現実を直視するのではなく、自分がどうなりたいかをイメージして、コンフォートゾーンを上げていったら、表紙の吹き出しにあった「私らしく自然体で生きている」ことができると、ふっと笑みがこぼれました。

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紙の本わたしと小鳥とすずと

2009/04/13 18:14

森鴎外は言う。 「童謡は詩の芽である」

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 金子みすゞさんは、明治36年山口県仙崎村(長門市仙崎)に生まれました。仙崎は日本海に面した漁師町です。本屋を営む母に育てられた彼女は、小さいころから本が大好きでした。女学生を卒業した彼女は、下関の本屋さんの出店で働きながら、西條八十が選をしている雑誌『童話』に童謡『お魚』を投稿します。その作品は、西條八十に絶賛されましたが、彼女は26歳の若さで亡くなってしまいます。みすゞさんの512編もの童謡は、児童文学者・矢崎節雄さんによって、後世に残りました。
 あとがきで、矢崎節雄さんはおっしゃっています。「童謡は詩です。リズムのある詩です。だれにでも、わかることばで書いた詩です。じぶんのリズムで、読んだり、うたったりできる詩です。みすゞの童謡は、みすゞのいのりの詩だった。」

『星とたんぽぽ』

 青いお空のそこふかく、
 海の小石のそのように、
 夜がくるまでしずんでる、
 昼のお星はめにみえぬ。
   見えぬけれどもあるんだよ、
   見えぬものでもあるんだよ。 (一部抜粋)

 まわりから土がなくなり、草木がなくなり、小鳥の声が聞こえなくなってしまった今、金子みすゞさんの童謡は、地球のいのちの声となって、私たちの心に、あたたかくひびきます。

 童謡集を読んで、心に残ったものをひとつ。

『夕顔』

 お空の星が
 夕顔に、
 さびしかないの、と
 ききました。

 おちちのいろの
 夕顔は、
 さびしかないわ、と
 いいました。

 お空の星は
 それっきり、
 すましてキラキラ
 ひかります。

 さびしくなった
 夕顔は、
 だんだん下を
 むきました。


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紙の本KAGEROU

2011/01/21 14:40

KAGEROU を読んで年の始めに思ったこと

18人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

子どもに本を読んで聞かせる「読み聞かせの会」という会があるそうですが、基本的に読書は『個』であると認識しています。
『個』は『己』であるため、日常生活のなかで本の話題に触れることは私の場合、皆無に等しいです。

それが先日、何気ない会話の中で突然「そうそう『KAGEROU』読んだー?」と聞かれたのです。
「まだ読んでないわ、どうだったー」と、わたしは目を輝かせて彼女を見ました。彼女とは旧知の友ですが、本の話をしたのは初めてでした。

第五回ポプラ社小説大賞受賞作は話題作となり、たくさんのひとに読まれました。
『KAGEROU』は茶の間までやってきました。それは喜ばしい社会現象だと思います。
本はコミュニケーションツールであり、人間関係を良好にします。
本の話をしていると、まるでお互いの人生を語り合えるようで至福のときです。

小説は『創造』であると思います。
今日もどこかで起きている人身事故。東京では毎日8人を超える自殺者がいる現実をニュースで知りました。著者・齋藤智裕さんの『創造』は社会の『孤』を描き『KAGEROU』は『希望』となり、わたしに届きました。

思い起こせば三年前、親友と川上弘美さんの『真鶴』の話をしていたら「その読後感を文章にしてみたら」と言われたのをきっかけに、読書感想文のような書評をBK1に投稿するようになりました。
感じたことを文章にするのはとても難しい作業ですが、そのとき感じた自分を知ることができて良かったと思っています。
小説だけではなくいろいろなジャンルの本の書評を参考にして、今年は読書のはばを広げていきたいと思います。

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短篇だから、なおいっそうこわさを感じた短篇集

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「あたしですか、あたしはこれから人を殺しにいくんです。」で始まる『このバスはどこへ』の作品を読んで、「性善説」と「性悪説」を思い浮かべました。中学の頃、人間は性善か性悪か悩んだものです。人間の本性として捉える「悪」は、空腹感を覚えたり安楽を望もうとしたりする自然な欲望であり「悪」とは異なると筍子は説いています。「殺したい」という欲望は自然な欲望ではありませんが、欲望の一つでありえると思います。

 主人公・くり子は32歳。くり子は東京・三鷹に住む幼友達の宏絵に会いに長野・飯田発の高速バスに乗ります。うとうとしていると、背後の座席で話している「あたしはこれから人を殺しにいくんです」の女の声を聞いてしまいます。耳を疑いながらもくり子はその言葉に動揺します。しだいにくり子は主語を自分に置き換えて、自分にとって殺したい人間を考え始めるのです。とっさに思いついたのが夫。実家に帰ることは絶対にないと言っていた約束を反故した夫、その元凶をつくった義母。でも二人はそういうのとは違うと思い返します。夜、宏絵と枕を並べて話しているときに、突然、くり子は憎悪の対象を思い出したのです。それは5・6年生のときの担任でした。元・担任の居所を探し出したくり子は、次の日さっそく横浜の病院に向かいます。くり子が元・担任に投げかけた言葉とは……。そして、くり子は混乱してその場から逃げるように立ち去ります。ラストのなかなか来ないバスを待つ場面がいいです。

 短篇の7作品ともどうしようもないこわさを感じました。そのどうしようもなさは自分の身の上にも起こるかもしれないこわさであり「善」が「悪」になるこわさです。
 角田光代さんの作品『対岸の彼女』に出てくる小夜子が女社長・葵に自尊心を傷つけられたときに放った言葉といい、言葉で人を殺してしまうほどの小説を書く角田光代さんはすごい作家です。

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紙の本心と響き合う読書案内

2009/04/07 22:26

52の作品が教えたくれたもの

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 やりきれない気持ちになったとき、本に触れたくなります。小川洋子著『心と響き合う読書案内』は、そんな私を温かく迎えてくれました。
 『まえがき』に書かれている小川洋子さんのメッセージに、心が高鳴りました。
「本書により、昔々に読んだ本と再会するきっかけが生まれてくれたら、と願っています。どれほどの時間が空こうと、本はちゃんと待ってくれています。年齢を重ねた自分に、必ずまた新たな魅力を見せてくれます。本は、人間よりもずっと我慢強い存在です。」


第一章   春の読書案内
金子みすゞ著 『わたしと小鳥とすずと』
 最初の作品です。ほか、『星とたんぽぽ』も紹介されています。金子みすゞさんは、童謡詩人と紹介されています。26歳で自ら命を絶った金子みすゞさんの童謡を知りたいと思いました。
 小川洋子さんは、優しく語りかけます。
「子ども時代に優れた詩を暗誦することはとても大事なことです。小さい頃に覚えたフレーズは一生忘れません。十年後か二十年後か、それまで気づかなかった感動を、ふっと覚えることもあるかもしれません。」

 春夏秋冬の読書案内、52作品を読み終わりました。
『アンネの日記』、『悲しみよ こんにちは』、『グレート・ギャッビー』を読んでいた頃の遠い日のことを懐かしみ、田辺聖子の作品、向田邦子の作品を読んでいたことを思い出し、たくさんの本と再会することができました。また、小川洋子さんがこれまで何度読み返したかわからないと紹介されていたV・Eフランクル著『夜と霧』と、佐野洋子著『100万回生きたねこ』に、興味を惹かれました。

 どれほどの時間が空こうと、本はちゃんと待ってくれていますね。そして、本に救われました。

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