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先月(2017年8月)

トリケンさんのレビュー一覧

投稿者:トリケン

1 件中 1 件~ 1 件を表示

韓国近代短篇小説のの先駆者―玄鎮健の短篇集を読んで

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 原作者の玄鎮健(1900-1943)は、韓国における写実主義短篇小説の基礎を築いた作家としてよく知られている。日本では、作家としてよりも、1936年のベルリン・オリンピックのマラソン競技で優勝した孫基禎選手のユニホームの日章旗を消して東亜日報に掲載した、いわゆる日章旗抹消事件の当事者として記憶している方が多いのではないか。
 これまでこの作家の作品は何篇か散発的に翻訳されてはいるが、今回のように、まとめて10篇の作品が翻訳・出版されたのは画期的なことである。これによって玄鎮健という作家の業績を知ることができる。
 まず、表題になっている「運のいい日」では、貧民の生活状況を掘り下げて悲惨な現実を批判した。

 人力車夫の〈キム・チョムジ〉は、久し振りに巡ってきた〈運のいい日〉を迎えて、思いがけない大金を稼いで酒を飲み、病気で寝ている妻が食べたがっていたソルロンタンを買って家に帰ったが、妻は、幼子に乳を含ませたまま、すでに息を引き取っていたという、息詰まるような情景を描いた悲劇である。

「祖母の死」は作家がそれまでの身辺小説から本格的な純粋客観小説へ飛躍する起点になった作品である。

 〈お祖母さんが亡くなったようだ〉
  私たちは、とっさにそう思いながら祖母の側に集まった。祖母は痰が絡  まってごろごろ喘ぎながら昏々と眠っていた。伯母は流れる涙を抑えら  れないまま、祖母のみみに向けて、涙声で阿弥陀仏と地蔵菩薩を物悲し  く唱えていた。
  しばらく厳粛な緊張がその場に漂った。みんなが同じことを期待しなが  ら……(本文より)

 ところが、なかなか臨終は訪れなくて、集まった親族たちも散り散りに各自の家に帰ってしまったのである。
 何日か後に主人公の〈私〉が〈午前三時祖母逝去〉という電報を受け取る場面で「祖母の死」は締めくくられている。複雑な事情よりも時々刻々と近づいて来る臨終を前面に立てて、複雑に絡み合う親族の人心と人情をリアルに捕捉した作品である。

 他の作品も、韓国近代短篇小説の先駆者、写実主義文学の開拓者といわれるに相応しい作品であり、一読の価値がある。

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