サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 東の風さんのレビュー一覧

東の風さんのレビュー一覧

投稿者:東の風

298 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本くらべる図鑑

2009/08/08 18:44

あるテーマで色んなものを比べてみる楽しさ、面白さがありますね!

20人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 見開き二頁の同じ土俵の上に載せて比べてみることで、その動物や植物がいかに大きなものなのか、その建物がいかに高いものなのかといったことが、すっと理解できました。なかでも、オーストラリアにある岩山、ウルル(エアーズ・ロック)のでかさにはびっくり! 東京の皇居がすっぽり、覆われてしまうんですねぇ。これがほんとに、ひとつの岩でできているのか!って感じで、たまげました。

 面白かったのは、色んな生き物の顔を写真で紹介した見開き頁。左右の目が全く違う方向を見ている“ジャクソンカメレオン”の顔。角が生えたハンバーガーがガマ口開けてるように見える“アマゾンツノガエル”の顔。ぎょろ目の妖怪が壁に塗りこめられたみたいな魚“キビレミシマ”の顔。どいつもインパクトあり過ぎで、「こんな生き物が地球のどこかにいるんだなあ」と思うと、何かこう、しみじみしてしまいました。

 ただし、動物や乗り物、惑星の速さを比べた頁は、あまりピンときませんでしたね。映像と違って動きがないこうした本の中で、それぞれが持つ速さの違いを実感するというのは、やはり難しいものだなあと。

 とまれ、大昔の恐竜を現代の街の中に出現させてみたり、見開き二頁を次の見開き頁では縮小して掲載するなど、大きさや長さが異なる色々な物を対比する手法もよく考えられていて、見ごたえを感じながら頁をめくっていくことができた図鑑。利用対象となっている小学生だけではなく、中高生以上から十代後半のヤング・アダルト、大人まで、幅広い世代にわたって楽しめる一冊ではないでしょうか。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本打ちのめされるようなすごい本

2009/12/29 20:15

「ああ、こんなに生きのいい書評集があったのか」と、これはもう、実に心躍る一冊でしたね。

18人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 好奇心の赴くまま、自由に、のびのびと、本の世界を旅する米原万里(よねはら まり)。著者の本は初めて読んだのですが、「ああ、こんなに生きのいい書評集があったのか」と、これはもう、実に心躍る一冊でしたね。その本の魅力を鮮やかに伝える評言の的確さもさることながら、何より、対象におもねることのない著者の真っ直ぐな視線、率直な物言いが清々しく、素晴らしかった!

 2001年から2006年にわたって、月一度のペースで『週刊文春』に掲載された書評を収めた「第一部 私の読書日記」。1995年から2005年にわたる十年間の、著者のほぼ全ての書評を収録した「第二部 書評 1995~2005」。以上の二部構成になっています。アメリカやロシアといった超大国が引き起こした戦争の悲惨さ、おぞましさに対する著者の怒りが刻印された「世界を不安定にする最大の脅威」(週刊文春 2004/2/26)、「世界から忘れ去られたチェチェンという地獄」(週刊文春 2004/9/16)の二篇が、とりわけ強く、印象に残りました。

 巻末、「わたしは彼女を狙つてゐた」と題された丸谷才一の文庫版のための解説もいいですねぇ。汲めども尽きぬ本書の魅力を言いとめた次の文章など、ぽんと膝を叩きたくなりました。
 <これはほんの一例にすぎないけれど、とにかく米原万里は無類の本好きであつた。本好きといふことが書評家の根本的な条件であることは繰返すまでもない。何しろ彼女は、スターリンをきびしく弾劾したあとで、彼が「激務の合間に一日五百頁を読破する読書家」であつたと書きつけ、ほんのすこし、しぶしぶ、好意を寄せるくらゐの読書人だつた。自分と同じやうに本好きだと知ると黙つてはゐられないのだ。> p.570

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本夜と霧 新版

2009/04/03 21:57

後世に残したい、人間の崇高さと尊厳を記録した名著。強く、心が揺さぶられました。

18人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アウシュヴィッツほかのナチス強制収容所で、被収容者の生活を体験した著者が、心理学者の観点から、その悲惨な状況を観察し、描写した一冊。極限の苦しみの日々を送る人間たちを、自分を含めてひたと見据えながら、人間の生きる意味とは何か、人間の尊厳とはどういうものかを問いかけ、考察していくのですね。150頁あまりの記述の哲学的な色合いを帯びた深みがもの凄く、あちこちで慄然とさせられました。人間らしい心が麻痺してしまう想像を絶した収容所生活の光景に打ちのめされ、その中でも、生きる意味を見出そうとする人間の勇気、人間の覚悟に接して、心が震えました。

 収容所から工事現場に向かって、何キロもの雪道を歩く途中、愛する妻の面影、その微笑みを思い出すことで、ひととき、至福の境地へと至る著者。収容所の現場監督が取り置きしておいてくれた小さなパンが、自分に向けてそっと差し出されたとき、彼の人間らしい言葉、人間らしいまなざしにたまらず、ぼろぼろと涙をこぼす著者。このふたつのシーンは、とりわけ、胸がいっぱいになってしまった記述です。読みながら、こちらもたまらない気持ちになりました。

 あるいはまた、次の記述などに。
<カポー(被収容者監視員 ※筆者註)は劣悪な者から選ばれた。この任務に耐えるのは、ありがたいことにもちろん例外はいたものの、もっとも残酷な人間だけだった。(中略)そういう者だけが命をつなぐことができたのだ。何千もの幸運な偶然によって、あるいはお望みなら神の奇跡によってと言ってもいいが、とにかく生きて帰ったわたしたちは、みなそのことを知っている。わたしたちはためらわずに言うことができる。いい人は帰ってこなかった、と。>(p.5)

 強制収容所の衝撃的な写真が掲載されていた旧版(1947年刊 霜山徳爾 訳)も読みごたえありましたが、こちら、シンプルなたたずまいの新版(1977年刊 池田香代子 訳)も素晴らしい。平明な言葉と文章。すっと頭の中に入ってきて、分かりやすかったことでは、本書のほうが上でしょうか。

 いずれにせよ、後世にきっと残したい、人間の崇高さと尊厳を記録した名著です。本作品は、小川洋子『心と響き合う読書案内』(PHP新書)でも取り上げられ、見事な紹介がされています。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本伊藤潤二の猫日記よん&むー

2009/04/26 14:21

近年出色の猫っ可愛がり漫画

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ホラー漫画家・伊藤潤二とA子の夫婦が、不思議顔した猫の「よん」と、おっとりとした美人猫「むー」に魅入られ、振り回され、癒しのパワーをもらう姿を、十のエピソードをとおして描いた漫画。一見、怪奇・ホラー漫画かと思いきや、とーんでもない! なんともコミカルで、気持ちがほっこりしてくる、これは癒し系・ネコ本なのでした。

 「よん」と「むー」の猫たちと触れ合ううちに、次第に彼らの虜と化してゆく夫・J君。白目が不気味、白黒シマシマズボンがトレードマークの妻・A子。人間ふたりのキャラもなかなかインパクトあったけれど、何と言っても魅力いっぱい、可愛さに乾杯、てな気分になったのが、「よん」「むー」の猫、二匹。

 「よん」が、変なおっさんになってテレビを見ているシーン。「むー」が、<プルルルル>と猫撫で声を出すシーン。「よん」と「むー」が、椅子の足元に丸くなって寝ているシーン。思わず、にんまりしてしまったにゃあ。にゃかでも、いや、なかでも「キャッ」と声を上げたそうになったくらい見とれてしまったのが、「よん」と「むー」、それぞれ一頁ずつのカラー写真【PHOTO GALLERY】。J君とA子の伊藤夫妻が、二匹を猫っ可愛がりする気持ちが、このカラー写真を見ていて、よーっく分かりました。

 今までで一番忘れられない伊藤潤二の漫画は、『死びとの恋わずらい 完全版』だったんですけれど・・・・・・。一気に読んで、それから二度三度と読み返したりしている今日この頃、マイ・ベスト・伊藤潤二漫画は本書のほうかもしれません。ひそかに、『伊藤潤二の猫日記』、続編&シリーズ化を期待しておりまする。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本銀の匙 改版

2009/04/18 21:04

永遠に古びない日本語の文章のみずみずしさ、美しさに、胸打たれました。

15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 内気で、感受性が強く、よく涙をこぼす少年の眼差しに映る景色が、清冽で、澄んだ泉を彷彿させる記憶となって湧き上がり、文章として流れ出している味わい。みずみずしく、美しい日本語の品格が素晴らしく、しばしば、うっとりさせられました。たとえば、伯母さんにおぶさって出かけた先の普請場で、少年が胸をときめかせながら見つめる風景の描写の、生き生きとして見事なこと。次の文章など、なんとも言えず綺麗で、いいですねぇ。

<きれいに箒目(ほうきめ)のたった仕事場のあとを見まわると今までの賑やかさにひきかえしんしんとして夕靄(ゆうもや)がかかってくる。私は残り惜しく呼びいれられてまた明日の朝をまつ。そのように木香(きが)に酔ってなんとなく爽(さわやか)な気もちになりながら日に日に新しい住居(すまい)が出来てゆくのを不思議らしく眺めていた。> p.28

 あるいは、少年の私をかけがえなく愛してくれた伯母さんとの思い出を語る件りの懐かしさ。「四王天(しおうてん)か」「清正(きよまさ)か」と声かけ合い、大立ち回りをして遊ぶ場面をはじめ、本書の『前篇』での伯母さんと少年の、あたたかな血が通っているところ。思い出が、生き生きと立ち上がってくる描写の素晴らしさ。心にほっと明かりが灯る、格別の味わいがありました。
 少年がかなり大きくなった頃の『後篇』には、もう、伯母さんはほとんど出てきませんけれど、その最後のほうで、成長した少年が伯母さんと、久しぶりに再会するシーンがあります。ここが、とてもいいんですね。

<伯母さんは後でさわりはしないかと思うくらいくるくると働いて用事をかたづけたのち膝のつきあうほど間ぢかにちょこんと坐って、その小さな眼のなかに私の姿をしまってあの十万億土までも持ってゆこうとするかのようにじっと見つめながら四方(よも)やまの話をする。> p.190~191

 『前篇』での幼かった少年と伯母さんの姿が彷彿と立ち返ってきて、胸がいっぱいになってしまった。

 小川洋子の『心と響き合う読書案内』(PHP新書)で紹介されていたのを読んで、興味を誘われて手にとってみたのですが、これは本当によかったなあ。しみじみと心にしみてくる作品の調べに、ほとほと堪能させられた次第。明治四十四年から大正二年にかけて書かれた作品ですが、永遠に古びない文章のみずみずしさ、美しさに、胸打たれました。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本乙嫁語り 2

2010/06/17 16:40

読んでいてドキドキしてきます。とても素敵な作品です。

14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 第十話「布支度」に描かれている刺繍、その刺繍を彩る文様の数々、素敵でしたねぇ。思わず、ほうっと見とれてしまいました。布をまとったティレケが話の扉に描かれた見開き二頁がとりわけ見事で、うっとりしてしまった。

 カルルクとアミルのおしどり夫婦ぶりも、読んでいてドキドキしてしまう。カルルクを見つめて頬を染めるアミルの新妻ぶりの初々しいこと。第九話「嫁心」の中、無邪気に戯れるふたりの姿に、見ているこちらまで泣き笑いしたくなりましたよ。

 颯爽、ひゅっと駆け抜ける風の気配も素敵。例えば、第七話「争い(前編)」の中、45~46頁にかけて。馬を走らせるアラクラが、駆けてくるアミルの手を引いて、馬上に引き上げるシーンがあります。アミルのひるがえる衣装のすそ。跳んだ瞬間のアミルの靴裏。そして、「ブワッ」と風を起こし、くるりと回転するアミルを描いたひとコマ。本の中から風が吹いてくるみたい。こういうところは素晴らしい描写力だなあと、わくわくしちゃいますね。

 あと、本巻での新キャラ、アミルの友達になる娘、パリヤの人柄もいいですね。アミルと話してて、正直に言いにくいことを最初はウソついてごまかそうとするんだけれど、思い直して正直に打ち明けて、打ち明けてる最中、ちょっと興奮してワアッとぶちまけてしまうところ。136~137頁にかけてのワン・シーン。くすりとさせられました。パリヤにも、アミルにとってのカルルクのようないい伴侶ができて、春が訪れるとよいなあ、なんて。

 ユーラシア大陸、オリエントの風を感じる素敵な漫画ですね。登場人物がまとう魅力的な衣装、彼らの表情の生き生きとしていること、ちょっとした話のエピソードに味わいがあることなど、実に読みごたえのある作品。第3巻を手にするのが、今から待ち遠しいです。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

ひたぶるに、激しく胸を 打つマンガ これほどのものとは 思いもよらず

14人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 羽海野(うみの)チカ『3月のライオン』(第2巻まで発売)、小玉(こだま)ユキ『坂道のアポロン』(第3巻まで発売)に続いて、最近、めっちゃハマった漫画がこれ! 2009年4月現在、第4巻まで出ている末次由紀の『ちはやふる』。百人一首の競技かるたに興味を持ち、類まれな才能を発揮していく少女・千早(ちはや)が主人公の物語。

 「かるたかよー。暗いんじゃねぇー?」「それって、ダサいよ」という周囲の冷ややかな視線をものともせず、ただひたむきに、競技かるたの世界にのめり込んでゆく千早の姿が、すごくいいですね。彼女が、畳に置かれた「からくれなゐにみつくくるとは」の札を見て、「ちはや」という“かるたの目”を発見する場面。その辺りからぐいぐいと、本シリーズの面白さに引きつけられていきました。

 ともに競技かるたに打ち込む仲間たちと千早とを結ぶ心の絆、それが実にダイナミックに、そしてハートフルに描かれているのも素晴らしい。紆余曲折あるけれど、競技かるたという勝負の世界を通して、切磋琢磨し、競い合える仲間たちを、千早が得ていくのですね。シリーズ4冊、一気読みに走ったあちこちで、目頭が熱くなりました。

 それにしても、競技かるたって、こんなに激しいスポーツだったんだ! 「畳の上の格闘技」と称される、その激しさ、その醍醐味が、絵的にうまく表現されているところ。見ごたえ、あります。

 第5巻以降の展開が、とても楽しみ。このシリーズと出会えたことに、感謝。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

“ゆくへも知らぬ恋の道”へと昇華するラストに乾杯!

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 平安の世の黒々とした闇の中、じんわりと広がる血の匂い。魔性の者・玉藻の前(たまものまえ)の艶やかな黒髪と端麗な容貌の中、ぽつりと燈る唇の赤。絵に色はついていないのですが、大きな黒の地に点々と散る鮮やかな赤、黒と赤の二色が目に見えるような作品でした。

 月の光、すすき、曼珠沙華、鈴虫、紅葉(もみじば)。秋を彩るそうした絵柄が、所々にそっと置かれています。秋の気配が、ひたひたと身にしみてくるような風情。平安の雅な香りが、ふわりと匂ってくるよう。

 岡本綺堂の原作は読んでいないので分かりませんが、この波津版・玉藻の前では、魔性の者に惹かれる千枝太郎こと千枝松(ちえまつ)の懊悩、迷う心にスポットライトを当てて描いています。その意味でも、魔の物語が痛切な恋の物語へと転調するp.250~251の見開き二頁のシーンが素晴らしかった。それまでの黒雲がみるみる引いていき、すっきりした心持ちになったラスト二頁に乾杯!

 本書のあとがきで、「私は岡本綺堂先生のファンで 狐好き 半七親分ラーヴ」と語っている波津さんには、ぜひ、半七捕物帳の中のお気に入りの話をいくつか、描いてほしいなあ。巻末に、同じく半七捕物帳を大の贔屓にしている作家・宮部みゆきとの対談を入れたりして。ああ、読んでみたいっ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本秘密 トップ・シークレット 7

2009/11/05 18:10

質量ともに、シリーズ最強の読みごたえ。衝撃度は、マグニチュード7クラスです。

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 死亡した犯人あるいは被害者の脳を取り出し、彼らが生前に見た映像をスクリーンに映すことで得られる情報をもとに、捜査員が事件解明を行う「MRI捜査」が可能になった2060年頃の日本。特に、通常の捜査では解明不可能な凶悪犯罪、異常犯罪に用いられるこの「MRI捜査」を一手に担っている科学警察研究所法医第九研究室、通称“第九”を舞台にしたこのシリーズ。犯人や被害者だけが知っていた生前の「秘密」が、事件の真相を知るためとはいえ、容赦なくさらけ出されてくるスリリングな妙味。今回、シリーズ7冊を一気に読まされながら、毎回、ぞくぞくさせられました。

 なかでもこの最新刊の第7巻は、凄かった! 余命わずかな人物が「鬼」となって実行した事件に潜む、恐るべき復讐の刃(やいば)。周到に計画、実行に移された誘拐事件の全容が明らかになった時、思わずぐぐっ・・・・・・とこう、息を呑みましたねぇ。地獄の機械が回している運命の歯車を思わせる事件の顛末、皮肉な様相を呈する事件の悲劇的な展開に、震撼させられましたです。

 さらに、シリーズ第4巻で導入され、新機軸となった話の妙味として、“第九”の室長である薪(まき)警視正と、“第九”の捜査員で部下の青木一行(いっこう)、法医第一研究所の女・薪こと三好雪子の三角関係があります。本巻でも、薪と青木の精神的な繋がりの強さ、深さを描いた場面が出てきて、それがこの、胸をえぐる復讐戦のアクセントとして効いているんですね。癒し効果というか、人間的な温もりを感じることができる本書の210~217頁にかけて。ぐっと胸に迫ってくるものがありました。

 余談ですが、本シリーズと一脈通じる味わいを持つシリーズとして、漫画ではないミステリ小説ですが、山田正紀の「おとり捜査官」シリーズ5巻(朝日文庫)を挙げておきます。こちらもとても面白いですよ!

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本世界は分けてもわからない

2009/07/26 19:32

上質のミステリの味わい。詩的な美しさを持った文章のきらめき。

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 “部分と全体”“切断と連続”という、本書の重要なテーマになっている構図が、著者の話の持って行き方、話の構成の仕方にも生かされているところが見事。一例を挙げれば、第8章から展開される、ラッカーとスペクターによるATP(アデノシン三リン酸)分解酵素の精製実験の件りが、本書の前半で紹介された須賀敦子の「ザッテレの河岸で」の中の水路の名前とつながるところ。ジグソーパズルのピースが組み合わさり、はめ込まれて、ひとつの絵柄の完成を見たような思いにとらわれました。
 何かこう、上質の本格ミステリの謎解きを味わったような心地と言ってもいいでしょうか。エラリー・クイーンの『Xの悲劇』『Yの悲劇』『十日間の不思議』といった傑作にある、部分の謎が寄り集まり、するすると合わさり、それが解き明かされた時の面白さ。それに通じる妙味を感じたんですね。一見バラバラに見えた話の中の点と点が結ばれ、あたかも星座のような絵柄を最後に生み出す本書の仕掛けと構成に、わくわくしました。

 細胞を擬人化して表現したり、ジグソーパズルやトランプ・タワー(トランプカードで作る城)を引き合いに出しながら、生命のミクロのことを文学的に語っていく文章もいいですね。第1章「ランゲルハンス島、一八六九年二月」、第2章「ヴェネツィア、二〇〇二年六月」の件りは、特に素晴らしかった。詩的な美しさを持った文章のきらめき。<彼女の視線は私におそらく赤い光の粒子を投げかける>p.33 というところなど、思わず、ぞくぞくしてしまいました。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本宵山万華鏡

2009/07/05 13:06

めくるめく不思議なファンタジー・ワールドに、行ってらっしゃい!

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 京都の祇園祭は宵山(よいやま)をめぐって展開、回転する話が六つ。仲のいい小学生姉妹の冒険を描いた最初の「宵山姉妹」の話にはじまり、それぞれに繋がり、絡まり合う「宵山金魚」「宵山劇場」「宵山回廊」「宵山迷宮」の話を通って、おしまいの「宵山万華鏡」の話に至る連作短編の妙。それはなんだか、話の中にも出てくる万華鏡をくるくると回しながら、覗き見している感じ。ああ、面白かったあ。いつまでもいつまでも、この宵山の祭りの世界から抜け出したくない、そんな思いに駆られたくらい、それはめくるめく不思議なファンタジー・ワールドでした。

 話の中にいつしかさ迷いこんでいて、その世界を旅している味わいに似ているところ、通じているものがあるかなあとふっと思い出したのが、恒川光太郎の「夜市」「秋の牢獄」といった短編。本書の万華鏡世界から抜け出した後、そちらの世界にも足を延ばしてみる、というのも面白いかもしれません。

 きらきら光るものを散りばめた表紙カバー、装画のさやか(呼び捨て御免)の絵もいいっすね。お祭りの賑やかさ、楽しさ、わくわく感に包まれる素敵なイラスト。この表紙カバーを外すと、そこにはまた、一種異様で、暗くて怖い幻想味に満ちた絵が、目に飛び込んでまいります。本を広げてその絵に親しんだ後、くるりと本をひっくり返し、頁をめくって、宵山の祭りの世界に、行ってらっしゃい!

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本孤独のグルメ 新装版 1

2009/02/04 16:00

「うん! これはうまい」って時の男の満ち足りた表情が、とてもいい

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 主人公の井之頭五郎(30代後半くらいか)が、仕事で立ち寄った街の食事処でとる食事の一こまを綴った、一話が8頁の連作短篇マンガ集。
 全18話の文庫で出ていた一冊に、10年ぶりの新作「東京都内某病院のカレイの煮つけ」(8頁)と、谷口ジロー、川上弘美、久住昌之の三人の鼎談(10頁)を加えた新装版です。

 その街、その場所のたたずまいと、腹の減った主人公が食べる食べ物とがいい感じで合わさって、心地よく、どこか懐かしい空気感を醸し出しているところ。「うん! これはうまい」「うん! これこれ!」と思いながら食べている男の、幸せな満足感に浸っている表情。そういうところが、とてもいい。『孤独のグルメ』ってタイトルも、この作品にふさわしいネーミング。

 作画者、本作品のファンである小説家、原作者の三人の対談では、絵を描かれた谷口ジローのコメントが興味深かったですね。
 <うまく描けそうだなって思ったのは、豆かんのときね。あの回のときに、豆かんを食べたときの表情というのかな、「うん、うまい!」っていう顔が描けたから。なんか描けそうな感じがしたんですよ、そのあとから>なんて語っているところとか、「なるほどなあ、そっかあ」と、頷かされました。

 収録作品の中のマイ・ベストは、「第11話 東京都練馬区石神井公園のカレー丼とおでん」。不思議な懐かしい空気感を、特に強く感じた逸品。ラスト、男の満ち足りた寝顔がまた、とてもいいのだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

チョコレート専門店の四季折々に、目頭が自然、熱くなる。ええ話です~。

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 イケ面の兄弟、一郎と二郎が出しているチョコレート専門店“クーベルチュール”。値段は張るけれど、とびきり美味しいチョコレートが売り物のお店を舞台に、あたたかくて、ほろりとしちゃう、そんな素敵な話を四つ、読むことができました。

 末次由紀さん、こういうハートウォーミングな話を描かせたら、本当に上手いですねぇ。特に、「夏味」と「秋味」と題した後半二つの話がよかったなあ。読んでて、じわっと涙が湧いてきました。

 どの話にもそれぞれに、主人公の表情が大写しになる絵があって、それがとてもいいんだ。心に感じた思いが、すっとそのまま、顔に出たとでもいう笑顔、泣き顔、一生懸命顔に、ぎゅっと胸を掴まれてしまった。うーん、いいなあ。

 巻末の「おまけ」四コマ漫画では、作者の人気シリーズ『ちはやふる』とのコラボも楽しめます。てことは、『ちはやふる』の中に“クーベルチュール”が出てくる可能性も大ありですね。こういう饗宴・・・じゃない、共演も、チョコっと楽しみにしたいです(笑)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本銀河鉄道の夜

2010/01/06 23:12

鉱石のきらめきを思わせる清川あさみの五十の絵と、宮沢賢治の名作が織りなすハーモニー

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 縦189mm × 横267mm の横長サイズ。右側に本の背中があって、左から右に頁をめくっていく右開きの絵本です。

 鉱石のきらめきを思わせる絵の中のビーズ、クリスタルの輝く様が綺麗ですねぇ。ビーズやクリスタルを配した清川あさみの五十の絵と、宮沢賢治の名作が織りなすハーモニー。一枚一枚、絵本の頁をめくっていくうちに、しんとして静かな海の底へと引き込まれ、死の予感が漂う幻想空間を旅していくみたいな、寂しくて、ちょっと恐いような気持ちになりましたね。

 静けさの中にきらめきをたたえた絵の数々を胸のポケットに収めながら、死の影と哀しみ、美しい透明感にあふれた宮沢賢治の名作を読んでいく喜び。贅沢なひとときを堪能しました。

 大好きな『銀河鉄道の夜』にまたひとつ、素敵な絵本が加わって嬉しいな。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本乙嫁語り 1

2009/11/08 17:17

風薫る中央アジアの草原の息吹き。素敵な絵の数々に、部屋中、駆け回りたくなりました。

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 なんてまあ、見事な絵なんでしょう。著者のデッサン力、絵の上手さにびっくりしました。キャラの風貌、表情、動物の絵も上手いですけど、殊に目を奪われたのは、登場人物たちが着ている民族衣装。各人それぞれの帽子やターバン、オリエンタルな雰囲気あふれる服装など、思わずため息がでてしまうほど魅力的。うっとりしてしまいました。

 「第二話 お守り」の初めのほうも凄いです。家の柱となる木を、職人の爺っちゃんがノミで彫っていくと、文様・模様が浮かび上がってくるシーン。生き生きと描き出されていく絵の、精緻で見事なこと。Wonderful!

 八つ年下の夫を思いやり、気遣う花嫁アミルの健気な姿もよいなあ。カゼをひいて熱が出た夫を案じて、おろおろしながらも一心に看病するアミルを見てたら、ほうっと胸があったまってきましたね。ほのぼのとした心持ちになりました。

 それにしても、なんて素敵な絵を描く人なのか。著者の漫画は初めて読んだのですが、たちまち魅了されてしまいましたー。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

298 件中 1 件~ 15 件を表示