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吉村眞由美さんのレビュー一覧

投稿者:吉村眞由美

「美しいかどうか」―平山郁夫画伯の「ぶれない自分」をつくるための法則

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 広島での被爆にはじまり、人生に対する迷いと苦闘を自ら語り、「仏教伝来」をはじめとする仏教画への導きととシルクロードへの旅立ちを語った平山郁夫画伯の半生記である『群青の海へ』(中公文庫)に深い感銘を受けて以来、平山画伯の言葉が自分の人生のあらゆる場面で思い出される。
 同著の「私は単に風俗を写しとるのではなく、もっと精神性の高いもの、自分自身が救われるような、不安感が消えるようなものを描きたいと思っていた」という芸術家としてのポリシーや「人間ばかりではありません。野の花も、空を翔ける小鳥も、生命の哀しさ、重荷に耐えて生きています。輪廻転生の中で、あがき苦しむのが生命の実相なのです。この状況から脱するには、宇宙の真理を体得し、自らも宇宙と一体になるような悟りを開かねばなりません」という示唆、そして、「永遠なるものを求め、それこそ塵のようなところから、宇宙を描くのだという高い志をもって進んでいってほしい」という言葉を支えにささやかな短歌創作を続けてきた。

 本書『ぶれない』では、『群青の海へ』(中公文庫)が刊行されて20年余を経て変わらない画伯の人生哲学や芸術家としてのポリシーを貫く基準が解き明かされている。
 その基準は「美しいかどうか」。絵の世界だけでなく美しいものには「力」がある。生きるものは「美しいとき」ほど盛んに生き、栄える。美しくないものは、たとえ一時的に目を奪っても、長く輝き続けることはできないと説く。心の底に潜む甘えを断ち切り、「ぶれない」生きかたの基準を持つことで、人生はもっと豊かに、思い通りに生きられるはずだと。
 自らの芸術家としての人生を振り返り、「自分はどういうモチーフで、何を一生かけて訴えていくか」という芸術理念を確立するための命がけの闘いや苦しみ、血のにじむような試練を語り、自分の生い立ちという「タテ糸」と、教養として身につけた「ヨコ糸」が交じり合ったとき、ひらめきー啓示のようなものが現れてくると語る言葉は60年余に及ぶ画業に裏づけされているだけに力強い。
 「タンポポのタネは石垣のわずかなすき間に着地して、小さな芽を出します。風に吹かれると吹き飛ばされそうなところにも、しっかりと根づいて健気に花を咲かせている。そういう姿を見ると、私は本当の美しさと強さを感じます」と語る画伯の美の感受性や「そして、今の私の夢は、「自分を含め、誰が見ても『見事だ』という一生を終えたい」と言うこと。そのために、一切の責任を自分で持って今日一日を生きていくのです」という本書最後の画伯の夢が心に残る。
 迷いなく、「これを一生狙っていく」というターゲットを定め、それに向かって自分のすべてのエネルギーを一点集中させる。それによって「ぶれない」ものができあがっていくと説く平山画伯の「ぶれない自分」をつくるための法則が述べられている。芸術論としても人生哲学としても名言に満ちた良書だ。

 出世作「仏教伝来」(第44回院展)から、第91回院展「神峰黄山雲海図」まで院展出品作を中心に代表作62点を収録した『平山郁夫の世界』(美術年鑑社)ー画業60年を概観する一冊と合わせてお薦めしたい。

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