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先月(2017年2月)

ジーナフウガさんのレビュー一覧

投稿者:ジーナフウガ

119 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本第2図書係補佐

2011/12/07 18:21

一風変わった味な本

34人中、31人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

飛び切り面白かった!芸人きっての読書家で、今までに読んだ本は約4000冊という
ピース又吉直樹さんが記した書評でも、感想文でもない、読書体験文的な感覚で読める本。

序文からして又吉さん有り得ない程謙虚です。あまりに素敵な姿勢表明なので、少し長いけど、
抜き書きしますね。『僕の役割は本の解説や批評ではありません。僕にそんな能力はありません。

心血注いで書かれた作家様や、その作品に対して命を懸け心中覚悟で批評する書評家の皆様にも
失礼だと思います。だから、僕は自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました。

本を読んだから思い出せたこと。本を読んだから思い付いたこと。本を読んだから救われたこと。
もう何年も本に助けられてばかりの僕ですが、本書で紹介させていただいた本に皆様が興味を持って

いただけたら幸いです。』文学に体当たりして、体内を通過し残った日常感覚を、
又吉さんは一見淡々としながら実は自分の魂の何処に響いたかを書き続けます。

本から派生した思い出は例えば、思春期にネタ帳とは別に、絶対に誰にも見せられない、
やり場のない暗い感情を書きなぐるノートを付けていた事。なかなか日の目を見る機会に恵まれなかった、

そのノートに書かれた言葉達。それでも、書く行為は続けていた。そんな時に尾崎放哉の自由律俳句に
出会った又吉さんの感動っぷりが濃密だ。『あった、あったと思った。あいつらの居場所あったぞと思った。』

この一冊の本との出会いに人生を揺さぶられ救われた体験、読書への感謝の念の深さに読み手であるこちらも、
気付けば大いに震えているのでした。又、他にも。

又吉さんは敬愛する太宰治から受ける小説の楽しみ方の一つとして、
『僕が文学に求める重要な要素の一つが、普段から漠然と感じてはいるが複雑過ぎて言葉に出来なかったり、

細か過ぎて把握しきれなかったり、スケールが大き過ぎて捉えきれないような感覚が的確な言葉に変えて
抽出されることである。そのような発見の文章を読むと、

感情の媒体として進化してきた言葉が本来の役割を存分に発揮できていることに感動する。
多くの人が、自分との共通点を太宰文学に見出だすのも太宰がその感覚に長けているからだろう。』

まさしく慧眼だと思いました。太宰が好きだからこそ、太宰と自分との正確な距離を体感した
読みっぷりができるのだろうな、と。まだまだ、この他にも様々なエピソードが掲載されていて、

文章一編読むごとに、読みたい小説が増えていく、そんな魅惑のエッセー集です。
是非ともあなたに読んで頂きたいなぁ!!

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紙の本夜市

2010/01/03 18:44

人外の世界の理に触れる本

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今宵は夜市が開かれる。そんな惹句に誘われて、夜の闇広がる森の中、
一歩足を踏み入れたなら、そこは、人外の者共蠢く、もう1つの世界だった。

欲しい物が何だって手に入る、代わりに何かを買うまでは絶対に元の世界には帰れない。
それが夜市のルール。幼い頃、偶然にも夜市に紛れ込んでしまった祐司が、

大学生となった現在必死になって買おうと探している物とは一体何なのか?
それに、幼かった彼は、どのようにして、買い物を成立させ夜市から元の世界へと帰還出来たのか?

この美しくも儚い物語には、欲望が生み出す残酷な悲劇と、それ故に欲望や煩悩を統制し、
自分自身の力で希望の道を選択、獲得していく事がどれほど尊い事なのかが教えとして説かれている。

ホラーと言うよりは、むしろ説話や怪談話としての色合いが強く印象として残った。
特にラストは全く予想外の展開で、それだけに切ない程に透き通っており、胸に物語の余韻が残った。

眼前に闇の中仄かに夜市が浮かび上がって来る情景描写力にも、唸らせられた。
人間界とは別の理で、確かに存在している異世界を描いている併録作品、【風の古道】も良かった。

七歳の春、花見に行った公園で、迷子になってしまった私は、親切そうなおばさんから、
家までの帰り道を教わる。「夜になったらお化けが出る道だし、寄り道しないで行くんだよ。」

と告げられたその道は、未舗装の田舎道で、一風変わっていた。道の両脇に家が並んでいるのだが、
どの家々も一軒残らず、この未舗装道に玄関を向けていないのだ。それどころか、

電信柱も、郵便ポストもないし、駐車場もなかったのだ。この時味わった秘密体験は、
自分だけの秘密として守らなくてはならない、もしも守らなければ多分…?本能的な直感として、

「道」について他人に口外するときっと、良くない事が起こるだろう。
そんな理由で記憶の外に置いていたタブー、けれども十二歳の夏休みに親友と心霊話になり、

うっかり口を滑らせてしまう。当然、友達は、「そんな道が本当にあるなら連れて行けよ!」そそのかす。
こうして私と友人のカズキは、私が最初に件の道から抜け出た所に行き、

反対側の出口から引き返そうと計画するのだが…。歩いても歩いても、それらしい場所には着けない。
弱り果てていた二人の前に、謎の青年レンが現れる。異世界には異世界の理が有り、

嘗て存在した入口は既に閉鎖された後との事だ。更に困り果てる二人は、一か八か、
この放浪を続ける青年と異界を旅することに決める。その過程で次第、

次第に明らかになっていくレンの事情。どうしてお化けでなく、妖怪でもない、
生身の人間であるレンは異界から外の人間界に出て行けないのか?

永久放浪者として彷徨い続ける運命にあるのは何故なのか?
理由の一つずつが、とてもしっかり描かれていて、この世と別に存在する世界のルールに

美しい説得力を持たせるのに成功している。特にラストへと至る展開が、
両作品ともに素晴らしく美しいので、是非、どっぷり物語世界に浸かって下さいませ!!

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紙の本ワーキング・ホリデー

2011/11/02 20:43

笑って泣ける一冊!

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

笑いあり、涙ありで大いに読み応えがある一冊でした。素晴らしいので心から、オススメしたいと思います。
イケメンなのに、元ヤンなせいか、短気で口が悪い人柄が祟ってパッとしないホストのヤマト。

そんな彼の目の前に突如現れたのが、進と名乗る小学五年生。『初めましてお父さん。』
心当たりがある様な、ない様なヤマトは進を質問攻めに。で突き止めた進の母親は、

ヤマトの過去の唯一の弱点とも呼べる人。これで進が我が子に間違いないと確信していると、
更に息子は『夏休みの間にお父さんが善い人か、悪い人かを、自分なりに調べる!』等と

飛んでもない宣言をするのです。が、二人暮らしを始めた翌日ヤマトがホストを
クビになる大失態をしでかします。ここで捨てる神あらば拾う神もありで。

ホストクラブオーナーでヤマトを一から育てたジャスミンが(オカマ)が、ホストのヤマトでなく、
本名の沖田大和として昼の世界に生きて行きなさい。と、新たな仕事、

宅配のハチさん便への転職を手配してくれるのですが、この場面の描写は、とても温かく、
ジーンと胸が熱くなりました。さて、 沖田大和の転職先はと言うと。

宅配便の新規参入会社『ハチさん便』のセールスドライバー。
リヤカーを大和アレンジでカスタマイズして晴れの日も、土砂降りの日も、

荷物を届けに精一杯勤めます。そんな父に最初は反発を覚えていた優等生の進
(学校でのあだ名は、なんと『おかあさん』)ですが、大和の大雨の日でも、

なりふり構わないカッコ良さを見て、夏休みの間に、父から【モテモテの極意を教わる】
男塾への入塾を決意したりで、案外凸凹親子でだけど馬があうんだなあと思いました。

夏の間限定だと分かってるからこその特別な親子の絆はこんなところにも。
『他愛のない会話。部屋中に漂う煮物の匂い。そして何より、「おかえりなさい」という台詞。

自分以外の誰かがいる生活も、捨てたもんじゃない。俺はそんなことを考えながら、安らかな眠りにつく。』
この何気ないけど、ずしりとした生活の実感を描ける上手さが坂木司さんの味だと思います。

ラスト二人に訪れる否応ない別れ。不覚にも涙してしまいました。
本当にハートウォーミングな本なので是非読まれてみて下さいね。

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紙の本八日目の蟬

2009/12/04 08:23

七日目と八日目を結ぶ特別な時間、生き方が描かれています。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

0章、1章、2章で、構成されている。とにかく、この0章が持つ、切なさに胸を打たれた。
冒頭からして、『ドアノブをつかむ。氷を握ったように冷たい。

その冷たさが、もう後戻りできないと告げているみたいに思えた。』と、こうだ。
「何か分からないけれど、物凄い展開が迫ってくるぞ!」という緊張感を、自然、読み手に、

もたらすではないか!?しかも、この0章に、過去は主人公・希和子の記憶の中にしかないので、
果たして何故、彼女は『がらんどう』と罵られるまでになったか?

理由は、こちらが、推測で補うより他は無い。希和子に平気で酷い言葉を投げつける事の
出来る夫婦は、しかし、電熱ストーブ点けっぱなしの部屋に鍵も掛けず、

その中に我が娘を放ったらかしのまま、平然と出掛けて行く。
どう贔屓目にみてもロクな大人だとは思えない。この人達を的確に描写しているからこそ、

不法侵入という立派な犯罪行為を犯している希和子に、さしたる反発も覚えず、
スーッと彼女の心情や葛藤と、同調出来るまでになっていくのではないかと感じ、

角田光代さんの巧さに舌を巻いた!特に、希和子が、赤ん坊を目の前にしてからの、
内的変化、芽生え始める『絶対的な母性愛』この2点を鬼気迫る筆致で浮かび上がらせ、

圧倒的なリアリティーを持たせるのに成功している。背中に寒気が走りました!!
そして第1章、赤子を連れての逃亡劇が始まる訳ですが…。

母親になるべく、自分が子供を授かったら、男としても女としても、
通じる名前として、名付けようと考えていた『薫』と命名し、許されざる母と娘、

2人は日々を生き抜きます。この0章にせよ、1章にせよ、生き抜く為とは言え、根底に、
嘘や秘密などと呼ばれる負の感情に、加えて悲しい気配や違和感が漂います。

最初に希和子が身を寄せる友人宅でも、『康枝は、やさしくて正しい環境にいつだっているから、
やさしくて正しいんだと思った。』表面上、普通に接している、内面では、

自分が世間との間に覚えているズレや違和感は常に希和子の傍に在ります。
ズレが沸点に達する度、居場所を変え、必死に逃げよう、逃げ延びようとする希和子。

時には、宗教施設にも身を隠します。その度毎に、余計に『薫』に向ける愛情は色濃く、
切なさを増します。すくすくと育って行く薫との、母娘としての1日1日。絆は強く深まります。

読み進める内に、『あぁ、もう良いじゃないか!このまま無事に過ごさせてやれたらよいのに。』
祈りにも似た思いを感じてしまいました。

けれど、やっとの事で違和感が薄まりつつあった暮らしにも終焉の時が…。
何気ない日常の、文字通り何気ないひとこまがきっかけ。逮捕の場面では溜め息が零れました。

2章『薫』から、本名に戻った少女からの視点で物語の謎は少しずつ、少しずつ、
まるで霧が晴れていく時の速度で明らかにされていきます。憎しみも愛情も、全てが、

日の光に照らされ、ゆっくりと溶けていく。
最後の最期、ずっと長い歳月『薫』が忘れていた希和子との別れの(逮捕)の瞬間を

思い出すシーンには涙が出ました。だからと言って、この物語を『産みの親より育ての親』や
『血よりも濃い絆がある』って単純に容認する気はないです。

が、この小説には、『どうすれば自分の力で本物の愛を手に出来るか』記されていると思います。
ご一読の程、お薦め致します。

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紙の本氷菓

2010/08/22 16:12

タイトルに隠された、真意に触れて震えて下さい!

9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

冒頭の設定からして、とても面白く引き込まれる物を感じた。
何せ『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に、だ』が、

主人公・折木奉太郎のモットー。そんな彼が(何故だかインドのベナレスに滞在中の)
姉からの手紙での指令で、とは言え成りゆきで、潰れかけた古典部を救済すべく入部する。

ここから古典部活動を巡り物語は展開する。
『部員がお前独りならば、学校内にお前だけのプライベート・空間を確保出来るって訳だ。』

そんな風に仇敵・福部里志に唆され訪れた部室、地学講義室には先客として、
不思議な雰囲気を醸し出している少女、千反田えるが居た。

千反田との初対面の挨拶を終え帰ろうとした奉太郎。その時千反田が言う
『どなたかはいらっしゃるものと思っていましたから、鍵を用意してこなかったんです』

更に、奉太郎が来た時、鍵は閉まっていた。ので、当然、
先に来ていた千反田が鍵を持っているものと考えた。けれど千反田は自分は閉じ込められていたと主張。

果たして、これは一体どういう事なのだろうか!?
【伝統ある古典部の再生】千反田を部長に据えて新入生三名による新生古典部が始動する。

のだが、古典部とは一体全体どの様な活動をするものなのだろうか?
それを知る為の手懸かりとして部の活動内容をまとめた文集の存在が重要になるはずだと訪れた図書室。

そこで奉太郎逹は、毎週金曜日の昼休みに貸し出され、
放課後には必ず返却されるという一冊の本があることを教えられる。

それは読むには余りに分厚い、『神山高校五十年の歩み』。
そんな分厚い本に短時間限定で毎週借り手が付くなんて、どういう理由があっての事なんだろうか?

【名誉ある古典部の活動】ある日曜日、千反田に呼び出された奉太郎。彼女は告白する
『古典部に入部をしなくてはならなかった一身上の理由』を。

行方不明になって七年目、今年で死亡したことにされてしまう、
伯父との思い出の中に『古典部』という単語があることの意味、理由を、

何とか思い出させてはくれないかと奉太郎に依頼する千反田。
『自分がしなくてもいいことはしないのだ。だったら、他人がしなければいけないことを手伝うのは、

少しもおかしくはないんじゃないか?』と葛藤しながらも引き受ける奉太郎。
【事情ある古典部の末裔】冒頭の奉太郎への手紙ではインドのベナレスにいたはずの奉太郎の姉、

折木供恵が、今度はトルコのイスタンブールから手紙を寄越した。
その手紙にはなんと!古典部文集のバックナンバーの在処が記されていた。

筈なのだが、保管場所として使用されていた薬品金庫は、昨年度の部室交代により、
現在は壁新聞部の部室の敷地内へと替わっていた。早速、壁新聞部に交渉に向かう奉太郎逹。

だが思惑は外れ、壁新聞部の部長は、そこにある筈の薬品金庫などないと言うのだ。
文集は何処へと消え去ったと言うのか?奉太郎逹古典部員は如何なる方法で文集を入手するのだろうか?

【由緒ある古典部の封印】文集を入手する事に成功した奉太郎たち。
文集の名前は『氷菓』その創刊第二号には三十三年前、

千反田の伯父が何らかの事件に巻き込まれたらしき様子が記されていた…。
早速数少ない手掛かりを基に真実の究明に乗り出す古典部員。

【栄光ある古典部の昔日】文集『氷菓』に書かれている千反田の伯父、
関谷純の物語は決して英雄譚なんかでは無いものだった。最終的に明らかにされる

『氷菓』に込められた真意とは?周囲の高校生活を『薔薇色』だが浪費の多い物として、
自身は『灰色』の日々を甘んじて送ろうとしている主人公奉太郎が、

日常に潜む謎を解き続ける内、次第、次第に活動的な思考を取るようになっていくのが面白い。
他にも、随所に的確にユーモア一杯の表現がなされているのも、

シリアスとコミカルのバランスが取れていて良かったと思う。
この本が読めて良かった。そう感じさせる読後感の爽やかさも抜群です。オススメ致します!!

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紙の本せどり男爵数奇譚

2012/02/24 17:52

あまりの面白さに続けて二回目を読んだ、痛快な名著!

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

先日読了した【ビブリア古書堂の事件手帖】に於いて、重要な鍵を握っていたのが、
この小説と、主人公で【せどり男爵】の二つ名を持つ笠井菊哉氏であった。

狂信的な古書マニアが使用した物語と、その主人公。これは、本好きの端くれとして見聞しておかねば、
との思い強く、手に取った次第である。六編の連作短編から出来ている本書であるが、

先ずは筆者と男爵笠井氏との出逢いからして面白い!筆者である梶山季之氏が働いていたバーに、
時々現れては、焼酎やジン等の透明な酒を水で割って創るカクテル、その名も『セドリーカクテル』のみ注文し、

きれいに現金で支払いを済ませ去って行く。謎多き紳士として、筆者の記憶に残っていたのが笠井氏だった。
作家となってから客として飲んでいた店に、相変わらず謎に包まれた風貌で入店してきた男性に、

勇気を出して話し掛けてみた所、向こうも梶山氏の存在を記憶していて、貴方にならばと、
自分の関係している古書店の業界内で、如何にして己が【せどり男爵】と呼ばれるに至ったかを

打ち明けるのだった。はてさて肝心要の【せどり】なる行為であるが、これは、新規開店の店へ行って、
必要な古本だけを買う事で、俗に『抜く』とか『せどり』と云うのだそうな…。

笠井氏は本物の男爵家の子息でもあったから、せどり名人である彼に、皮肉と敬意を込め、
【せどり男爵】の誕生と相成った訳である。それにしても、様々な古書業界の内幕が分かって、すこぶる面白い!!

全集は一巻でも抜け落ちていれば価値は暴落。反面、全巻がキチンと揃っていれば価値も価格も高騰する。
だから好事家は今日も、恋人探しの如く、一冊の書物を求めてさ迷う。

男爵が宝物一冊を入手する為に払った驚くべき代価とは?男爵が仙台のクズ屋の店先に見つけた
永井荷風の発禁書【ふらんす物語】。裏表紙の内側に貼られた蔵書票の、

その下に隠されていた謎の伝言を読み解いていくとそこには…。
古書店主たちと訪れた韓国で、総額一億二千万円もする、コインの一枚を購入した縁で、

沢山の宝物を入手する経緯。笠井男爵が、プライベート用に秘蔵していた、シェイクスピアの初版本を巡って、
アメリカを影から動かす権力を持っている、大富豪婦人との丁々発止の駆け引きと、

『セドリーカクテル』誕生秘話。ここの部分は、さすが男爵と渾名されるだけあるなと笠井氏の手腕に舌を
巻きました!!それにしても、こうして、長い間本好きに読み継がれている隠れた名著が

他にも沢山あるんだろうなと思うと、自分も古書の世界へ惹かれていくのが分かります。あ、そうそう。
この本も特装限定版が五部上梓されているそうです!これから古書店巡りが益々楽しみになりました。

全ての本好きさんにオススメしたい逸品です!!

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紙の本むかしのはなし

2011/02/24 22:13

古くて新しい三浦しをん流、昔話の誕生です。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

限りなく壮大な試みに挑戦した作品集である。昔話を現代社会に採り入れて作品を展開させたら、
語り手や聴き手は果たしてどの様な存在になるのが相応しいかというテーマに真正面から取り組んでいる。

決して安易なパロディーに走らず、今の社会の取り立てて大きくはない日常から非日常性が立ち上がるのを
目を凝らして観察した結果が、収録されている七つの中・短編小説として昇華されているのではないかと思う。

冒頭に記された言葉も頁を捲るに連れ、加速度的に印象が強くなる。ここに引用したい。
『わたしを記憶するひとはだれもいない。わたし自身さえ、わたしのことを忘れてしまった。

胸のうちに、語り伝えよという声のみが響く。これはたぶん、思い出のようなもの。
あとはただ、ゆっくりと忘れ去られていくだけの。』

現在が過去に、それより遥かに時が経ち、風化して、我々現代人も
『むかしむかし』と語られるような日が来るのだろうか?想像してみると、

なんだかじんわり楽しいではないか…。改めて、書き手としての三浦しをんさんの手腕には脱帽する。
更に中盤に収録されている【入江は緑】から、当初は一つ、一つの小説が個別に独立しているかの様に

思わせられていた、作品同士が、実は微妙な相互関係の下繋がっていた事に気付かされ、とても驚いた!
『地球は三ヶ月後に衝突する隕石によって滅亡する。だから木星までロケットに乗って脱出する人類を、

都合、一千万人抽選する。当選者番号は随時ニュースで発表される。』特にヤラレタ!と
思ったのは冴えない空き巣が刑事相手の調書に応えているだけだと思っていた、【ロケットの思い出】と、

【たどりつくまで】に登場する、怪しげなタクシーの乗客との接点に気付いた瞬間だ。
これ以上いうとネタバレになるから言わないが、この伏線の回収以外にも様々な仕掛けが用意されているので

是非とも探される事をオススメする。それにしても。一千万人を木星に運ぶのには何回ロケットを
飛ばさなくちゃいけないのだろう?なんて事を本編中唯一の中編

【懐かしき川べりの町の物語せよ】を読みながら思った。作中の主人公で伝説の不良モモちゃんは、
あっさりとロケットに乗ろうとするあがきは捨て『死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか』と

滅亡する運命に従ったのだ。だが。モモちゃんとの、ある夏の日は語り手が居る以上、
永遠の物語りとして聴き手に受け継がれてゆく。三浦しをん作の、傑作昔話の誕生だ。

小さな頃、【桃太郎】や【浦島太郎】を語り聴かされた時の様な胸のときめきを持って読んでもらいたい。
最良の読書時間をお約束致します。

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人生という名のスープ

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

食べ物の描写が真に迫っている作品に、駄作は少ないように思う。
何しろ「衣・食・住」という位なもんで、「食」は人の暮らしの真ん中に位置しているんだから。

その点、吉田さんの作品に出てくる料理の美味しそうなことと言ったら!
温かい湯気や匂いまで、伝わって来そうにリアルだし、

美味しい物を食べる時の幸せの実感がページから漂って来るのだ。
この幸せの実感が作品全体に行き届いているのは、吉田さんが丁寧に、丁寧に、それこそ、

スープの灰汁を掬う要領で、日々の暮らしから濁りを取り除ける腕の持ち主だからじゃないだろうかと思う。
物語の登場人物達が、皆、澄んだ心と明るく優しい精神の持ち主で、

人生を大いに楽しみながら毎日を過ごしているので、読んでいると、気持ちがスッキリ浄化されていくのだ。
大好きな映画館に「通いたいから」と言う訳で、わざわざ映画館のある月舟町の隣の町、

「桜川」に住み始めた、主人公のオーリィくんこと大里青年からして、なんとも悠然としているというか、
飄々としているというか…。読んでるこちらの胸にも、「ほっこり」とした時間が流れ始めるのだ。

オーリィくんの周囲の人たちの人物造詣が、これまた抜群に良い。
オーリィの名着け親、大屋さんという名前の大家さんは素敵なマダムだ。

彼女が発した「なかなか美味しいわよ」の一言がきっかけになって、物語の舞台となるサンドイッチ店、
「3」(トロワと読む、店名の由来は是非とも読んで確認されたい。

きっとアナタは微笑むだろう。)の描写が始まるのも粋な演出だ。
だって、このサンドイッチ、オーリィくんの人生観をも変える力のある逸品だったのだから!

人生観が変わる味って、一体どれ程の美味しさなんだろう?
自由に想像する面白さも、この本を魅力的にしている要素の1つだと思う。

話を戻して。世にも美味しいサンドイッチを作るトロワの店主が、不器用極まりない職人さんで、
常に、妥協のない仕事を己に課している点や、彼の唯一人の家族である息子が一見、

父親にはクールな素振りを見せている反面、誰よりも父親の不器用さを心配している点にも好印象を持った。
良い人間が良い味を醸し出すから、この本に綴られる様々な人生には、

幅と奥行きがあるのだろう。オーリィくんが足繁く通う、
<月舟シネマ>のポップコーン売り青年の孤軍奮闘振りしかり、緑色の帽子をかぶった謎の老婦人しかり。

さて、肝腎要のスープについてだが、読んでいて、一手間加える、と言うのは、
人が手間暇加えるという事なのだと、しみじみ思った。料理の最後の隠し味が真心だと、

結構頻繁に耳にするけれども、実際の所、その通りなようだ。それにしても、スープ美味しそうだなぁ…!!

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紙の本釣り上げては 詩集

2009/12/01 07:30

日本語の大河に釣り糸垂れて、言葉や文字を釣り上げる。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アメリカ人学生、アーサー・ビナード青年が卒業製作時に出会った感じの世界に魅せられ、
1990年に来日。それからの日々を日本語での詩作にあてて、生活。

遂には2001年、中原中也賞を受賞するに至る。この詩集には、
詩人が日常の、ありとあらゆる場面で、日本語を獲得する様と、一つ、又、一つ、

体得した日本語を、詩へと昇華させる日々が、克明に記されている。
子どもの頃、釣り上げては、放流していたブラックバスにブルーギルが、日本でも放流された結果、

古来からの生き物を激減させてしまっている事実に、
新参もの(よそ者)としての自分を重ねている【放流】。

この詩など、特に、異邦人であるからこそ、書き得た日本語だと思う。
ユーモラスな詩の中に漂う著者の孤独が読み手にもヒリヒリ伝わって来る。

他にも、来日直後、近所中の人たちとしらみ潰しに話をして、
日々の言葉の糧をなんとか得ていた頃、詩人のアパート迄、勧誘にやって来たのが、

キリスト教系の新興宗教。断りたかったのだが、彼らの言う『無神論』という単語の意味が知りたくて、
ついつい説教に耳を貸してしまったというエピソードが印象的な【許したまえ】等など。

文字通り、詩人の体得した日本語で書かれた詩。
あぁ、こんな風に新鮮で分かりやすく伝わる詩もあるんだなぁ!!。

普段、詩を読まない人にこそ、オススメしたいです!

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紙の本圏外へ

2009/11/25 04:44

これほどまでに面白い小説を、私は知らない。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何しろ、とてつもなく素晴らしい物語なのである。面白い事、比類なしなのである。
これ程までに面白い小説は、1人でも多くの読者に読まれて然るべきだと考えるのである。

「で、ある」からして、俄然、「のである」にも、力が入ろうと言うものである。
ダアレも知らない突き当たり、<内藤写真機店>、それでも、いつ何時、

誰かが壊れた写真機を持ち込むかも知れず、夜の夜中でも店を閉めたりしない。
中古というよりチュウブル・レンズと読ませたくなる逸品が持ち込まれるやも判らないからである。

写真機店の主の名は、キミとアキ。両性具有の親が、両性具有の子を産んだ。
が、今キミは、日々酒ばかりのみ、娘にして息子のアキが二人暮らしの生活を賄うべく

チュウブル写真機店を営んでいるのだ。と、ここまでを設定した所で、小説の語り手は、
自分が、カタリテである事に悩み出し、迂闊にも、

作品の中に作者が顔を覗かせ立ち止まってしまうのだ…。
話の「序の口」を探し始めたは良いものの、早くもカタリを放棄してしまう、カタリテ。

そればかりか、語り手=作家である所の日々の葛藤を、娘の音や、

将棋の仲間ツブラダ君相手に、『何であれ僕はスラスラ書こうと思ったことは一度もなかった。
そもそも自分の中にスラスラしていないものがあって、どうにもソイツがもどかしくて、

ソイツを叩き出してしまいたかったんです』だらり喋りながら日々過ごしている。
ところが、それでも尚、この作品が凄いのは、作家の発想が柔軟で

「書いてるつもりが書かれていた」のが当の自分なのかも、と考えられる点だ。
更に娘も、「わたしはいつでも、自分はどこかの誰かが書いていると子供の時から思ってた。

そう考えた方が楽しいし」あっけらかんとしているし、円田くんにしても
「最後に福を迎えたい。そうですよね。だからたしかに書き始めの入り口は

笑う門じゃないと駄目なんです」かなりの楽天的な思考の持ち主なのだ。
しかし、こんなに悠長な考え方、やり方で、設定されたままの登場人物は

溜まった物じゃないんでしょうね…。カタリテに警告に来る主要人物キミ。
「次のセリフも貰えぬままココでこうして路地に閉じ込められて何ひとつ進展しない。

カタリテ、これはどういうことだ。お前さんがナントカしてくれないと、
われわれはココでこうして途方にくれるばかり。早くこの先を書いてくれないと―」「ないと」

「こっちからそっちへ出てゆく」次第、次第に薄れゆくカタリテの意識から脱出するキミ…。
空気、天気、空間、時間、人物、と呼ばれる全ての制約の「圏外」へと、易々と解放され、

より変幻自在に語られる物語。唯一の共通点は円田くんや音ちゃんも、
自由に飛翔を続けるキミも、そしてカタリテにも、それぞれの「役割」と「詩」がある点と、

各自「南」を目指していること。果たして「南」には何があるというのか!?
先がまるで読めない展開と、各章に名付けられた余りにも美しい詩的なタイトル

(「夕方の飛行の果てに電線から逆さにぶら下がって」や、
「観覧車に乗って遠くの景色を見渡すように」)に惹き込まれます。

登場する各人物の言葉も詩的で『走り書きはいかん。ついでに殴り書きもいかんぞ。
人を殴るようなヤツは人間の屑だ。小走りで行くのだ。小走りで書き続けるのだ』とか、

『「聴」の一字には、ひとつの耳と十四の心が隠されている。十四の心である。
俺は幸いにもそいつを手にした。持っている。所持している。所有している。十四である。

この数を不吉なる十三を乗り越えた次のナンバーとして記憶し、
俺は自分の心の臓を切り刻んで、十四のハートに分離させた。』などの言葉を目にした時に、

作者・吉田篤弘さんは文字通り、全身と全霊で体感した言葉を、
肚の底から満足出来るようになるまで吟味している人なんだろうと思いました。

カタリテからヨミテに極自然に発せられた質問について考えるのも、読み応えがありました。
特に、『遠くで泣いている仲間のためにいまここで』に書かれてある神話的な世界は、

1人でも多くの人に読んで貰いたいって感じました。500ページ超の、厚みある小説ですけれど、
これぞ小説!という醍醐味を感じられますし、自信を持ってオススメいたします!!

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これでいいのだ!!人生をギャグに捧げた男の賛歌

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

赤塚夫人真知子さんからの
『生きてる間に、赤塚らしい対談本を作ってもらえれば…』と言う要望で出来た本。

出版されて2年後に先生が病に倒れ、再び意識が戻る事なかったのを考えると、
よくぞ実現させてくれました!と賛辞の拍手を贈りたくなる。

対談相手もタモリ、柳美里、立川談志、北野武、ダニエル・カール、荒木経惟、松本人志。
実に豪華だ。更に、この面々と相対す為、赤塚先生のしていた準備が物凄い。

朝方病院に出向き、アルコール抜いた後、
開始2時間前にホテル入りし点滴打ち終えてから対談に臨む。

いざ話し始める。やはり、対人恐怖症を和らげる為飲まずに居られない。命懸けの滅茶苦茶。
常識をどんでん返し、ナンセンスなギャグで笑い飛ばす赤塚漫画を体現した生き方。

そんな赤塚不二夫との対話。

ゲストも皆、知らぬ間に破天荒な赤塚ペースに乗せられてか、
普段は決して話さないであろうエピソードや本音を吐露し始めるのだ。

タモリが語る、ビートたけし。

いろいろな上の世代からの否定をかい潜って同時代やってきたという戦友意識と、
自分に関係なかった伝統的なことを跳ね返して来た姿への敬意を感じているのが分かる。

これに対してたけしは、演芸系の自分たちにはない、
文化人色の強い笑いとして距離を置きつつ見ていたようなのだ。

大物2人に、ここまで核心を喋らすのが可能なのも、
生涯現役でギャグや笑いを追い続けた人ならではだと感じる。

他にも。荒木経惟にアラーキーの愛称を名付けた当時、
『赤塚!二十年後見てろよ。俺の写真が本物になるぞ』と言い返されたという。

天才同士意地を張り合った逸話。

松本人志のコントに出てきたダブル・ボケは、多少ならず『天才バカボン』の影響からだったとの告白。

神様手塚治虫は遅刻の言い訳にバレバレの嘘。
『大変だぁー、羽田で、飛行機が爆発した!』平気で騙る、愛すべき大ウソつきでもあったとの仰天暴露など。

読み応え満点、書き尽くせないほどの面白さ!!一冊を読み通してから冒頭の師弟対談を再読。

すると。早くも伝説と呼ばれているタモリさんの弔辞こそ、
人生を笑いに捧げた巨人・赤塚不二夫さんが最後に放ったギャグだったんだな、と思えます。

『これでいいのだ。』

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紙の本ねにもつタイプ

2009/11/11 01:43

エッセイとはこんなにも幅の広いものだったのか!

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

毎日の暮らし、日々のあれこれ。岸本さんの日常には、実にさりげなく妄想が差し込まれている。
本人も述べている様に、だいたいが小心者なので、物思いが始まると、

あ~でもない、こ~でもない、いや待て!違う風にも考えられるぞと『物』を持ち上げたり、
こじ開けたり、ひっくり返したり、とまぁ驚異的な粘着力なのだ。

四六時中、脳内フル稼働で量産、展開されていく妄想の物語は、
もはや妄想日記文学と呼んで差し支えない程の、深さや奥行きを有している。

列に割り込んで来た中年女性山田フサエ
(もちろん岸本さんが適当に名付けた)との息詰まる攻防(のシュミレーション)描いた【郵便局にて】

今日も今日とて、肉の不味そうな動物ベストテン
(ナマケモノ、アルマジロ、マレーバク、スカンク…… 。) や、

もし万が一過去にタイムスリップしてしまった場合に備えて、
自分が未来人であることを証明するために覚えておくべき出来事

(地震やテロの日付け、ワールドカップの勝敗)等の、
実にどーでも良いテーマを思い浮かべる内に、脱線思考の中でも

『これは実用化できるアイデアなのでは!?』閃きを、大真面目に発表するのが
『猫のマッサージ屋』だったり【ニュー・ビジネス】

そうかと思えば常日頃、ニュースを聞く度、犯人の犯行動機が、【むしゃくしゃして】。
ばかりで変だと疑問に思ってたと、ツッコミ入れるのが刑事と犯人の取り調べ中の会話。

たまらなく可笑しい。--刑事、むしゃくしゃしてやったと記入。

犯人(それを覗き込んで)「ちょっと待ってください。“むしゃくしゃ"じゃ
私のあの時の微妙な心理は表現しきれません。“モヤモヤ"に訂正してください」

‐‐刑事「大して変わらないだろう」
犯人「いや、全然ちがいます。私は私の心に忠実でありたい。あなたは私の表現の自由を奪うのか」

--刑事、“むしゃくしゃしてやった"を二本線で消し、“訳のわからないことを供述"と記入。
ブラックだなぁ、と。大爆笑してしまった。

だが。こういう見落とされがちなニュースを決して見逃さず、分解と拡大、
ミクロとマクロの両方から捉えるのって、そう簡単な事でないと思う。

この点、岸本さんは視点に些かのぶれもなく、どんな内容でも、
スッキリと分かりやすく書き切るのだから、大した書き手さんなんだと思う。

この驚きの名著に授賞した講談社エッセイ大賞(最近では立川談春師匠の【赤めだか】にも)
選考委員の先生方にも称賛の拍手を贈りたいと思う!

読む前と後で、確実に世界の見え方に違いが生じて来る事間違いなしのグレートな本ですよ!!

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紙の本陽だまりの彼女

2012/02/17 08:09

秘密と謎に包まれた、愛の奇跡

8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

目下マイブーム真っ最中、一押し!作家、越谷オサムさん。
抜群の発想力を持って書かれた小説は、笑いや人情味に溢れていて、どの作品も抜群に面白い。

その越谷さんの作品が、某K國屋書店やJ堂書店さん両方で売れてる文庫ベスト10ランキングに
名を連ねていた。当然の如く嬉しくなり、即、購入へと至った訳である。

いやが上にも期待を煽る帯文に胸踊る。『それは、一世一代の恋(うそ)だった。
女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1』おほー、今度は濃密なベタ甘風味ですか!?

主人公の2人の名前は浩介と真緒。中学生時代に分数の計算はおろか、漢字の読み書きもままならない
『学年有数のバカ』と呼ばれ、仲間外れにされていた真緒の面倒を見ていたのが、浩介だけだった事もあり、

2人は2人だけの、秘密の親密さをも持つような関係になっていた。所が、中学3年生になり、
浩介が引っ越してしまった為、2人の関係は永遠に閉ざされたかに見えた。

のだが、浩介の勤める鉄道広告会社のクライアントとしてやって来た下着メーカーの広報部に、なんたる事か!
真緒が同行していたのである。更に驚くべきは、彼女は十数年の時を経て、バリバリ仕事もこなせる、

イケてる大人の女性へと、一大変貌を遂げていたのだ。が、浩介には昔通り、
砕けた態度や関係を保ってくれる訳で。2人の熱烈ベタ甘恋愛路線が展開されるのも無理はないだろう。けれど。

甘いだけでは渡れないのが『世間』って奴の正体なのだ。初めて真緒の両親に挨拶に行った時、
浩介は彼女の父親から、『真緒の秘密』を告白され、結婚を反対される。秘密は秘密であっても、

真緒は真緒だから、と駆け落ちして入籍を果たす浩介と真緒。幸せな日々を暮らしていく2人。
ただ、この幸せな生活の中でも真緒は様々な謎の行動を取るようになり…。遂に結婚一年後。

驚くべき運命が愛し合う2人の上に襲い掛かって来る!!正直面食らう展開だった。
でもラスト付近で、浩介が真緒の両親と交わした会話の温かさ。最後の最期、明らかになる全ての謎と、

実は深い意味の込められているタイトルに上手に騙されました!様々なジャンルの小説を網羅したロマンス小説。
読了後の爽やかさを体感しながら、ビーチボーイズの『素敵じゃないか』を聴けば最高の気分が味わえますよ!!

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紙の本いとみち 1の糸

2012/01/03 09:03

胸に響くは、いとのみち

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

メイド服と津軽三味線を抱えた女の子と聴いてあなたはどんな物語が始まると想像するであろうか?
僕は全く想像がつかず、とにかく読み進めることにしたのです。

この作品の主役は相馬いとちゃん。地元の町人にすら『は?』と聞き返されるほどの濃厚すぎる津軽弁
(ズーズー弁)を話す人見知りで口数少ないタイプの少女だ。勿論その事をコンプレックスに感じている。

そんな彼女が自分は変わりたいとメイド喫茶で働く事になったのだ。とは言え。
恐らく本州最北端にある、メイド喫茶には超個性的な先輩メイド2人だけ

(化粧1つで年齢が10才若返る、メイド服に原チャリで遅刻ギリギリやってくる)なのだった。
こんな個性的な先輩に挟まれ、いとは何とか、メイド喫茶のお約束『おかえりなさいませ、ご主人様』と

お客さんを迎えようとする。のだが、緊張の頂点に達していた彼女は、
『お、おけえりなせえまし、ごスずん様』と口走ってしまう…。

いとちゃんが、そんな風にまで訛りの酷い女の子になったのには凄い理由がある。
御年七十七歳祖母ハツエの存在だ。津軽三味線の達人なだけでなく、

何故かヴァン・ヘイレンをもこよなく愛す彼女は、ヴァンヘイレンの演奏を、
軽々と三味線の三本の糸で弾きこなすのだから、いやはや飛んでもない怪物だ。

この祖母の話す最早記号としか呼べないような、純正津軽弁を聞き取りつつ育てられたいと。
三味線と訛りの両方が思春期の彼女には恥ずかしくて堪らなく

非常に内気で人見知りな女の子にさせてしまっていたのだ。
それでも友達を作ったり、カフェでも、ご主人様連による

『いとちゃんを守る紳士協定』の様な物が結成される中、高校一年の女子いとは次第次第に成長していく。
最初は抱腹絶倒(汽車ポッポで、標準語を練習しても津軽訛りになる辺りとか)物語中盤を過ぎると、

鋭くも優しい人物描写が、胸にビンビン響いてくる。いとみちの表題に込められた意味が分かった時には
心が震えました!文句なしに素晴らしい傑作小説です。読んで損はさせません。

是非あなたも、素晴らしい読書時間を御過ごし下さいませ!!

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紙の本大河の一滴

2011/04/20 23:11

今と言う時代の正体を知るために必要なメッセージ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

こんなにも素晴らしい本を読む機会に恵まれた事に感謝致します。

実際、読んでいる最中は五木さんの肉声が刻まれた活字に、素直に自分の心を向き合わせました。
言うなれば作者である五木さんの魂と、読み手としてのこちらの魂を対話させて読むのが、

この本に似合う読み方だと思います。これ程実直で愚直なまでに正直な内容が綴られた本を僕は知りません。
例えば人々はよく『こんな時代だから』と口にしますが、果たしてそれはどんな時代なんでしょうか?

五木さんはそこの部分を決して見過ごしたりなおざりにしたりしません。
『私たちは〈心の内戦〉というもののまっただなかにいるのではないか、
ということを平和のなかでふっと一度ぐらいは考えてみる必要がありそうな気がしてなりません。』

と述べます。そして自殺者や、自殺者予備軍まで含めて考えて、
現代人が如何に生命の危機に瀕しているかとズバリ!直言するのです。

これらの言葉には心底震えを覚えました。それから行き過ぎたプラス思考に対しての例として
『子供から殴られつづけて、カウンセラーから「とにかく耐えて我慢しろ。それも愛情だ」
と言われ涙をながしながらそれに耐えていた父親が結局、金属バットで息子を殴り殺してしまうという事件が
先ごろありました。この父親に対して息子の暴力をプラス思考で考えろと言えるでしょうか。
それはふつうではできないと思います。』との例を挙げます。

この二つの事案の提示に対する返答として、マイナスや絶望の中から人生を生きなおし、
どん底からプラスや希望を見つけよう、今こそ人間は大河の一滴として謙虚に生きるべきではないのか?

と読者に呼び掛けてくる五木さん。呼び声は確かに届きました。
僕も僕なりに生きて生きたいと思います!どうぞあなたも手に取って、

この本からのメッセージに耳を傾けてみませんか?

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