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先月(2017年8月)

ジャレットさんのレビュー一覧

投稿者:ジャレット

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本バースト・ゾーン 爆裂地区

2009/08/20 13:07

あなたは何を感じるか?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ページを繰ると暴力とエログロの大炸裂。乾いた文体で綴られるひたすらグロテスクな近未来世界。正直言って気持ち悪く、何回も読み進める手が止まりました。しかし、その思いを上回る「先を知りたい!」という気持ちに負けてしまい本を閉じられない。
何なんだこれは…どうしたらいいんだ…う~ん気がついたらほとんど一気に読み終えていました。エロなんです。グロなんです。暴力が支配するグロテスクな模写にあふれた作品なんです。私はこういう作品は大嫌いなんです。が、本を閉じることが出来ませんでした。なぜか?……面白かったんです。そう、本当に面白かったんです。この作品は、全部で三章に分かれています。
第一章、テロリンと呼ばれる正体不明のテロリストの暗躍によって荒廃した日本が描かれます。出てくる風俗店の名前から推察するとどうやら渋谷が物語の中心のようです。時は記されていませんが近未来であることは分かります。それは10年後なのか、30年後なのか100年後なのか…いやいや明日のことなのかもしれません。
繰り返される爆破テロによって荒廃した街。サイバーテロによって破戒され尽くされている情報網、かろうじて生き残っている一局だけのラジオ。そのラジオから繰り返し放送される「テロリンを殺せ!浄化しろ!」というアジテーション。人々は猜疑心のかたまりになっており、ちょっとでも普通と違う人間(風貌、肌の色、癖のある話し方…)を見かけると、「テロリンだぞ!」という声がどこからか起こって、民衆はテロリンと指された人物に凄絶なリンチを加え惨殺してしまう。逼迫した経済、飲まず食わずの国民。蔓延するダニなどの微小害虫、これが原因なのか多くの国民が罹患している奇病。ここにこの物語を形づくる人物たちが登場してきます。
椹木武(さわらぎたけし)…奇病にかかっている妻と娘の治療費のために、「処理局」という行政機関に雇われ、テロ現場の後始末という危険な仕事をしている男。
小柳寛子…風俗店で身体を売り、その金を愛人である椹木に貢いでいる女。
寛子の身体を弄ぶ変態ヤクザ、寛子をストーキングする空疎な画家、国策を信じて無益な人体実験を繰り返す狂った医者、この人物たちが闇市マーケットで起こった最大規模の爆破テロにからみ、第二章へと物語は広がっていきます。
第二章、テロリンの巣窟とされる大陸に志願兵となって渡る椹木。その椹木を看護兵に志願して追う寛子、寛子を追うストーカー画家、重罪から逃れるために大陸に密航する変態ヤクザ。寛子が乗った女性ばかりの看護兵船は、サイバーテロなのか、単なるミスなのか、士官が乗り組む前に出港してしまう。その船はコンピュータ制御なので航海はつづいたが、指揮系統のない船内は無法状態になり、地獄図の様相を呈していく。食料の奪い合い、どこからか流されている淫眠ガスの影響で、男性乗組員のオモチャになっていく女たち、やがてそんな状況に耐えられなくなった、一人の女が海に身を投げる。その時、海を押し渡ってくる牛のような動物の大群が、その女に襲いかかって……
あまり長々と内容を説明するのは、よしましょう。ここから先は読まれる方のためにとっておこうと思います。
先の戦争(第二次世界大戦)以降、経済成長を続けた国々、東西冷戦が終結するも新たな覇権のために繰り返される、戦争・テロ。見捨てられる弱小国、全世界の人民を襲う格差社会。近年制作される近未来、未来を想定して描かれるSFアニメ、SF映画は悪VS善悪VS正義という構図のものばかり、しかし、戦争に善があるのか?正義なんてものがあるのか?戦争から全ての建前、モラルを剥ぎ取ったら真の人間が見えてくるのではないか?真の人間が見えたときそこに光はなく、滅びだけがみえるのかも……
吉村萬壱は、正統なSF小説と文学を融合させ明日来るかもしれない、‘滅び’を見事に描き出しました。近未来がこの様な‘滅び’ではなく光が見える世界であることを願いたいものです。
先に記しましたが、この小説は エロなんです。グロなんです。暴力が支配するグロテスクな模写にあふれた作品なんです。哲学的であるにもかかわらず、分かりやすい文章と、物語構成。う~ん面白い。「興味を持たれた方だけが、読まれれば良い。」「いや読まないのは、勿体ない」という相反する読後感がいつまでも消えない(これから先も消えないであろう)、誠に不思議な小説。こんな小説を読んだのは初めてでした。


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アテネからの使者

2009/08/18 14:06

埋もれさせるには勿体ない作品

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エーゲ海に浮かぶティミノス島。春まっ盛り、澄みきった空気、降り注ぐ眩しい日差し、外に出るにはもってこいのある日の事、女性の変死体が発見される。
崖下で川の中に半身を横たえたその遺体は、現場から数キロ離れた村に住む主婦イリーニと判明する。漁師の妻であるイリーニは、夫が漁に出ている間、浮気を繰り返していたとの噂が絶えなかった。警察はこの噂を基に夫と不倫相手の板挟みとなったイリーニが絶望し自殺したものと結論づけ捜査を放棄する。数ヶ月後、島に風変わりな男がやってくる。でっぷりと太った体に白いスーツを着、真っ白なスニーカーを履き、高価な鞄を携えた男。ヘルメス・ディアクトロスと名乗ったこの男は、警察署に出向き「私は、漁師の妻イリーニの死を究明するため、アテネの機関から遣わされてきました」と宣言する。

‐神々の使者ヘルメスは、ただちにかがみこんで、美しいサンダルを履こうとその紐を結んだ。水の上を、果てしない陸の上を、一陣の風に乗せてヘルメスを運ぶサンダル……
……荒涼とした海の波と波とのはざまで、羽をぬらしながら餌を獲ろうとくちばしを水に浸すカモメのよに、ヘルメスははるかかなたに横たわる島に向かって、低く波間を飛んだ。
「オデゥッセイア」ホロメスより‐本文プロローグより抜粋

美しいサンダルを履き自由に飛び回る神と同じ名を名乗った太った男。この男はいったい何者なのか?神と同じく軽快なフットワークで村中を歩き、イリーニの死の真相を追う男、しかし、男の捜査の前には島の古い因習や淀んだ人間関係が立ちはだかっていた……
被害者であるイリーニとその相手である、不倫相手との視点で語られる物語。その物語を繋ぐ太った男の捜査記録、この小説構成は見事。
イリーニは、警察が言うように‘自殺’なのか?夫と不倫相手が言う‘事故死’なのか?
太った男が言う‘他殺’なのか?。古くから島の人々をを支配する、慣習、孤独、宗教、閉塞感、無気力感…舞台設定と主題(殺人?)を考えると、暗い話になりそうなところを、作者は一幅の絵画のように美しい風景模写と、ちょっと滑稽で生真面目、それ故に外から見たら閉ざされた世界に見える島の人々の生活を生き生きと描いていきます。
…幸せを求めて生きてきた男女を襲う閉塞感、それから逃れようと手を伸ばした先には切なくて悲しい結末が待っていた…
心の底から悪に染まっている人間には苛烈な罰を与え、救いの余地がある悪人にはそれに見合う罰を与えて救いの手段をおしえる太った男、この男は何者なのか?この男の正体は物語が終わっても語られません。おそらくこの太った男を主人公にしたシリーズが続くんだと思います。(と言っても「アテネからの使者」は誰もが納得できる結末を迎えますからご心配されませんように)
いやぁ、面白かったですね。何気なく手に取った新人作家のデビュー作は思わぬ「当たり」の作品でした。優れた物語、脇役までキッチリと描かれる人物像、チョット切ないながらもスッキリとさせる読後感。もちろんこれらを読み手にしっかりと伝えてくれる優れた訳文。埋もれさせるには勿体ない作品です。ミステリー好きの方、面白本をお探しの方、手に取ってみて下さい。損はしませんよ~

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