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先月(2017年8月)

朋末順さんのレビュー一覧

投稿者:朋末順

1 件中 1 件~ 1 件を表示

歴史書なのにヘルマン・ヘッセのような味わい

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 今年の夏休みに生まれて初めて大宰府天満宮を訪れた。この大宰府天満宮に「定遠館」なる建物があることはまったく知らなかった。地元出身の著者も知らなかったそうなので、東京からの旅行者である私が知らなくても仕方あるまい。
 夏休みの旅行から戻り、蒸し暑いさなかの東京でこの本を手にした。旅行前に読んでおくべきだったと悔やまれた。名所大宰府が、俄然深みを帯びて見えてくる。こういう本を読んでから旅をするのが、本当に贅沢な旅なのかもしれない。
 定遠館を軸に、万葉の時代から日清・日露の時代まで、タイムマシンに乗ったかのように話は縦横無尽に移動する。それなのに目まぐるしい感じはしない。巻末の略歴を見ると著者はサラリーマン生活をしながらこの本を書いたようだが、相当深い教養の持主なのではないだろうか。その教養に支えられいるから、時代が飛躍しても違和感なく読めるのだと思う。
 更に、ところどころに散りばめられた著者自身のエピソードが結構面白い。ダメモトで大宰府天満宮に定遠館のことを問い合わせたらその親切な対応に驚いたこと。小学校のころ行った「だざいふ遊園地」のことや、中学校のころに天満宮近くの「紫藤の瀧」の流れを悪戯でせき止めたことなど、どこかヘルマン・ヘッセの初期作品が醸し出す雰囲気に似ている。
 この著者の次回作も是非読んでみたい。

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