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風太郎さんのレビュー一覧

投稿者:風太郎

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紙の本一箱古本市の歩きかた

2009/11/19 00:32

本を愛する人「一人一人の古本物語」であふれている。「一箱古本市」ほか全国のブックイベントを俯瞰できるお勧めの書。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「本が売れない」「本離れ」という活字が毎日のようにあちらこちらで踊っている。確かに出版社の姿勢、流通システム他売る側の問題は大きい。では、買う側、読む側はどうなのだろう。
本が好きで、その思いを誰かと共有したい。いい本を、入手しにくい古本をより多くの人のもとに届けたい。いつまでも本は生き残ってほしいと切実に願っている人は少ないのだろうか。
いやいや、そんなことはありません。この本を読めばきっとあなたなりの答えを見つけられます。
気軽にふらっと立ち寄れる、自分も参加してみたくなるような「本をとりまく世界」が待っているのだから。

著者は谷中・根津・千駄木、通称「谷根千」で2005年4月から開催されている「不忍ブックストリート一箱古本市」の発案者。今やこの「一箱古本市」は、北は盛岡から南は那覇まで全国的な広がりを見せている。本好きの素人が店主となり、各人の思い、こだわりを一箱に込めて本を販売するという新しいかたち。
プロだけが開催する古本市とも、今までのフリマとも違うおもしろさ、可能性が感じられる。
各地で催されている多くのブックイベントの特性もつまびらかに紹介されている。また、読書、読者のいまにも触れており、新しいムーブメントを俯瞰できるのがありがたい。

「一箱古本市」は、単に素人の店主が本好きの人との交流をはかる場ではない。そこは、スタッフ、出店場所を提供する大家さん、新刊書店、古書店、助っ人(ボランティア)さんほかさまざまな人の情熱が融合しマグマのように溶け出し、新しいものを生み出す空間でもあるのだと思わせてくれる。実際そうなのだろう。

著者は最近のブックイベントに見られる4つの特徴を、「業種やプロアマを問わないこと」「送り手(店主)と受け手(客)の距離が近いこと」「本に対する感度が強いこと」「本によって街と人がつながる」と捉え、「ブックイベントに集まる人たちが、本をめぐる状況をもっと変えたい、もっと面白くしたいと真摯に考えていること、そして、そういう思いを共有できる人と出会いたいと切望していることは確かなのだ」と、力強く述べている。
自ら無償で「一箱古本市」に関わり、全国を飛び回り、力を注いできた著者だからこそ、説得力がある。また、それぞれのイベントが抱える問題点に言及しているところにも好感が持てる。
お祭りとして参加する人たちが楽しむことが何よりと説きつつ、日常的な本との付き合い方を変えていくことで見えてくる世界の意義、新しいモデルを築いていくことの必要性にもきちんと触れている。

出版界の動き、新刊書店、古書店、ブックカフェなどの動向。ネット、ミニコミ、フリーペーパーなどのツールを活かし、本と遊んでいる「能動的読者」(著者による表現)の様子。読書論の変遷なども取りあげているので、読み応え十分。

鳥取県米子市での「一箱古本市」を扱った章で紹介されているエピソードがとりわけ心に残った。
演劇、映画関連の本、戦前のグラフ雑誌の合本などイイ本を出していた母娘。実は四年前に亡くなった息子さんの本であった。参加する数日前からそれらの本をめくっては、息子さんを思いだしていたという。「演劇をやっていたこともあり、本が好きな子でした。処分するのがしのびなくて取って置いたんですが、こういう機会に本好きの人の手に渡ればいいと思って」。
その母親の言葉を受けとめ、著者はこう語っている。「本と人をつなぐ場所があれば、一箱古本市はドコでもできる」。
ここに、著者のみならず、本を愛する多くの人々の思いが集約されていると言ったら大げさだろうか。

本を愛する人「一人一人の古本物語」であふれている素敵な書。
お勧めです。

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