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    3月のライオン(1)

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    羽海野 チカ(著),先崎 学 (将棋監修)

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    はらぺこあおむし 改訂

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    エリック=カール (さく),もり ひさし (やく)

    5つ星のうち 4.5 レビュー詳細を見る

紫衣さんのレビュー一覧

投稿者:紫衣

1 件中 1 件~ 1 件を表示

「異形のもの」ではない元少年像の構築の意義

17人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 光市母子殺人事件の被告人の実名をタイトルに冠し、弁護団が発売禁止を求めているいわくつきの書籍である。
 まず最初に指摘しなければならないことは、筆者の力量不足が否めず、そのことにより、本来伝えようとした元少年の真実の姿を曖昧なものにさせてしまったことである。元少年の父とのインタビュー内容等を書き起こしてあるが、相手に投げかける筆者の言葉、それへの相手の反応に対する筆者の対応などは、ノンフィクションの書き手としては余りに稚拙であり、閉ざされた心、本当は話したい本音を引き出すには無理がありすぎる。反発させて本音を口ばらせるという手法もあるだろうが、筆者の対象へのスタンスでは、それをも引き出すには至らない。かと言って、冷静な第三者としてのスタンスも取り得ていない。筆者に利があるとすれば、長年にわたり、元少年と交流し、取材を続けたことのみである。
 筆写の力量不足はさておき、ここにある元少年の姿は、他のマスコミに報じられたものとは異なりすぎる。元少年と過去面識のあった人々が述べる元少年像も、報道されているものとは大きくかけ離れている。元少年に筆者との対応に限り擬態を演じていた可能性は全く否定できないかもしれないが、元少年の周りから浮かびあがる姿は明らかに異型である。
 元少年の犯行の異様さ、法廷における発言、態度から描かれる元少年の姿は、姦計にたけた矯正の効果など認められない、死刑も已むなしという「極悪人」のそれであるが、果たして人間は、そんなに簡単なうすっぺらなものなのだろうかという疑問を長く抱いていた。犯行時に18歳、そのように短い年月の間に、「極悪人」としての人格が確定してしまうものだろうかと疑問があった。インターネットのサイトや、ホームレスを襲う少年たちの犯行の幼稚さとは明らかに違う。
 その姿をもう少し明確に伝えてほしかった思いは強いが、読み手によって、固定化された従来の「元少年像」(報道から伝わる元少年像も、弁護団から伝わる元少年像も、共に「異形のもの」としか伝わってこない)とは異なり、また違う人間像を構築する一助にはなりえるものと考える。
 元少年の犯した罪は、どのような事情の元であっても許されないことは明白である。その意味で元少年は断罪されなければならないが、せめて元少年にも生まれてきた意味、価値を与えてやりたいと切実に思う。
 そういった視点から、果たして元少年はどのようにして育ち、その中でどのような思考を抱くに至り、犯罪を犯したのか、深く考察しなければならないし、その考察が、「極悪人の元少年のコピー」の作成を劣化させていくことになるのではないだろうか。
 そうすれば、何故弁護団がやっきになって、本書の出版差止をしなければならないのか。元少年自身が実名を許可していなかった、少年法に則り違法である、その他法律論はあるのだろうが、元少年の実名は既に広く一般に認知されているのに必要以上に包み隠すことによって、元少年の真実は、実態のない、茫洋としたものになってしまうのではないか。そして、それは元少年自身にとって、決して利益にはならないのではないか。
 このままでは、元少年の忌むべき犯罪は、死刑を回避したいがためのドタバタ劇を繰り広げた弁護団と一方的なマスコミ報道に終始し、元少年の死刑という結末を迎えるだけであって、何の落ち度もない被害者や遺族の方々の心が癒されることのない帰結となってしまう。
 元少年が今後できる唯一の社会貢献は、次の「元少年」を世に放たないために私たちはどうすべきかを考察するときのデータを提供することでしかない。その意味において、本書は意味のあるものであるが、悲しいことに筆者の力量が本書の持つ意義を明確にするには不足しすぎており、評価としては保留とせざるを得ない。
 

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