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書痴さんのレビュー一覧

投稿者:書痴

37 件中 1 件~ 15 件を表示

父は、父、私は私、でも…。漫画界巨匠の三人娘たちによる座談会。

21人中、21人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まず、朝日新聞の記者が思いついたという、本書のタイトルが秀逸です。タイトルから、それぞれ、誰の娘だかすぐ想像でき、それだけでも、三人の父親の凄さを物語っていると思います。

 本書は、「ゲゲゲの娘」こと、水木しげるの次女悦子さん、「レレレの娘」こと、赤塚不二夫の長女りえ子さん、そして「らららの娘」こと、手塚治虫さんの長女るみ子さんたち三人による、各自の父親に対する思い出話、対談集の内容になっています。

 有名漫画家のプライベートな話や、仕事にまつわる数々のエピソードが満載、これだけでも興味がわかないはずがありません。一般家庭とは異なった、ある意味特殊な家庭環境で育ったお三方が、幼少期から青春時代を通し、父親とどんな係わり合いを持ち、影響を受けてきたか、そして現在、父親の創造した作品も含め、どのような姿勢で父親と向き合っているかを語ります。

 水木悦子さんのお話で、印象に残ったのは、子供時代、姉と父親が漫画のことで喧嘩になり、「お父ちゃんの漫画には、未来がない。手塚漫画には未来がある」姉の手厳しい発言に対し、水木しげるは「これが現実なんだ!おれは現実を描いているんだ!」と返答したそうです。おならや、変な人(容貌も含め)が好き、勘違いのため来る原稿依頼は全て引き受けていたというような、ほのぼのした話が良かったです。

 伝説的なエピソードで有名な赤塚不二夫ですが、父親の愛人と一緒にセブ島旅行させられた高校生のりえ子さんの話は、まるで漫画みたいで強烈でした。ディズニーランドの年間パスポートを所持し、エレクトリックパレードが大好きな、意外な一面も知りました。

 「とりあえず好きなように、子供が納得するまでやらせる。もし迷っていたら拾ってあげる。それが親の役目だ」という、手塚治虫の教育観は、手塚作品の底流と共通するものがあって興味深く思いました。また、るみ子さんが、赤塚不二夫にホテルに誘われたという驚きの証言もあります。

 父親の女性観、好きな音楽、父親に対する愛情、反発、そして父親の作品を後世に伝えるための仕事と、まだまだ話題は尽きません。育った環境は個性的で各人バラバラですが、父親の偉大な遺産を受け継ぐお三方ですとって、共通するのは、父親の仕事(作品)に対する誰にも負けない愛情と誇りが感じられました。

 あとがきで、特に心に残った言葉がありました。ご両親が相次いで亡くなってから半ば呆然自失の赤塚えり子さんに、「何度でもお父様のことは話した方がいいよ。気持ちの整理になるから」と手塚るみ子さんが話したそうです。このことは、まさに、本書の背景に流れるテーマだと思います。

 文章の下に脚注があり、お話に出てきたキャラクターもきちんと紹介されているので、水木・赤塚・手塚作品にあまり馴染みのない読者にも、読みやすいかと思います。お三方の写真も掲載されており、本文中に、誰がどのキャラクターに似ているかという話も出てくるので、見比べてみてはいかがでしょうか?

 本書で、お三方が指摘されているように、メジャーな作品以外にも、全ての作品に思い入れがあり、本書を契機に、もっとたくさんの作品を読んでみたくなりました。

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紙の本岳 6 (ビッグコミックス)

2010/03/14 12:44

こんな山バカがいれば、最高です。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 最初は、評判になっている漫画で、題材としても珍しい?山岳救助の話、そんな印象で読み始めたのですが、巻数を重ねてゆくごとに、その魅力にどっぷりはまってしまいました。
 
 何といっても、主人公の三歩が最高にカッコいいのです。山岳救助のボランティアをしている彼こそ、まさに山男の理想、憧れだと思います。恋人未満?友達のクミ嬢いわく、「じゃがいも」みたいな顔で、決してイケメンにあらず。でも、すごくいい表情を、読者に見せてくれます。特に三歩の笑顔、目をつぶって二カッと歯を見せながら笑った表情に、癒されます。作者は、その辺を実に味わい深く効果的に描いてくれます。またシリアスな表情も良いのです。豪放磊落、こんなヤツが友人や同僚にいたらいいなと思わせる人間です。
 救助にやって来た三歩たちに、山岳遭難者が、まず必ずといっていいくらい口にするセリフがあります。「すいませんでした」で、「助かった」とか「ありがとう」という安堵や感謝よりも、謝罪が最初に口から出てしまうのは、日本人の国民性か自己責任からでしょうか?自分を責め続ける遭難者に対して、三歩のセリフが、「よくがんばった」です。現実の山岳救助の場面でもこんなやりとりがされているのかもしれませんが、この一言は、身体的な限界だけでなく、遭難者の呵責や精神的な苦しみを救う、魔法の言葉だと思えました。

 さて、前置きが長くなりましたが、本書6巻にも様々なドラマがあります。9編どれも味わい深く、とりわけ印象に残ったのは、『半分成人式』と『ルート(前後編)』です。
 『半分成人式』では、レギュラーキャラの小学生ナオタと三歩の交流が描かれます。大人になったら何なる?みたいな、ほのぼのとした会話の後、父親の遭難死がトラウマになっているナオタ少年は、三歩が、救助現場で受けた血だらけの身体を川で洗い流しているのを見て、「兄ちゃん…この血の人どうなったの?」と質問します。「…ナオタ、即死…って分かるか?」「事故にあってすぐに死んでしまうのを『即死』って言うんだ」、今さっきあった死に対して、ありのまま話します。ナオタは、父親と同様、自分の大好きな人がいつか同じ運命を迎えるかもしれないと不安に駆られます。「兄ちゃん(三歩)は…山でソクシしない?」三歩は「死なないよ!!山でもどこでもオレは死ぬまで死なないよ!!」と、まぶしい笑顔で返答します。死の概念を、子供に説明する難しさを、こんな風に表現してしまう作者の力量には脱帽します。
 『ルート(前後編)』は、三歩の高校時代、山岳部の恩師をめぐるお話です。家業を継ぐか海外での登山をめざすかで悩む三歩に、先生のセリフ「なあ、島崎(三歩)…オレは死ぬぞ」「オレだけじゃない。全ての人の最終到達点は死…」「島崎、お前もだ」「そこまでのルートはお前にしか決められん。そう思わんか?」。その恩師が、山で遭難。同時に二ヶ所の遭難現場発生、恩師の救助でなく、今いる場所で救助活動を続ける三歩に対し、クミが、なぜ恩師の救助に向かわないかと問いただす。三歩は、山岳部の3つのモットーを引き合いに出して答えます。「困難は自分一人でのりこえる」「誰かの困難は、自分一人でも全力で助ける」「山では笑う」。一つ目のモットーは、恩師を信頼し、二つ目のモットーは、恩師の救助にあたる別働隊に信頼を寄せる三歩がいます。最後は言わずもがな、師弟の絆と理想の山男像が見事に描かれています。
 
 という具合に、6巻は、三歩を三歩たらしめている行動原理の源泉に行き当たる内容にもなっているかと思えます。
 

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流転の「フランスの子供」が辿った激動の人生

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ロイヤル・ファミリーに関する伝記でも、本書のヒロインたる、マリー・テレーズ・シャルロットは、ルイ16世とマリー・アントワネットの娘というだけでも、興味の対象として尽きません。フランス革命を生き抜いた女性を、詳細な資料を基に、時に、歴史ミステリーをからめながら、丹念につづった内容で、大変興味深く読めました。
 最初に、ルイ16世の非嫡出子の存在や、妻の「心友」ポリニャック夫人との関係を指摘する記述には驚かされました。
 革命により、マリー・テレーズの幸福な子供時代の終焉を「10歳でマリー・テレーズは注意深く会話を選び言葉を発する前にすべての考えを検閲することを学んだ」と作者は表現しています。多感なティーンエイジャーを、両親のとの死別、恐怖、孤独、トラウマを抱えながら生きていかねばならなかった牢獄生活は、どこか、『アンネの日記』を思い起こさせ感動的です。
 釈放後も、政治的事情に翻弄されつづける人生ですが、自分の結婚問題をはじめ、新しい家族や親類との軋轢に対し、周囲に流されることなく自己の意志を示し、生き別れの実弟ルイ17世の存在にまつわるミステリーや、数多くのエピソードが、マリー・テレーズの人間味あふれる姿を、読者に見せてくれます。
 どんな環境下においても、マリー・テレーズの生きる指針となったものは、両親の愛情と教えだったことが分かる内容の本だと思います。

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紙の本英国メイドマーガレットの回想

2012/02/03 14:08

メイドは見た、キッチンメイドの一代記

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日本のメイドブームも、落ち着いた感のある昨今、本家英国のメイドの回想録としては、先駆的ともいえる作者の代表作、その邦訳がついに、刊行!
 本書は、小説や映画で私たちがよく目にする、雇用者と接触の多いハウスメイドではなく、主に台所の雑用をするキッチンメイドとコックを勤めた作者の半自叙伝です。
 日々の重労働、上司や主人たちの人を人とも思わない態度に、心身ともに疲労困憊になる作者に対し、似たような境遇にありながら、『おしん』や『小公女セーラ』のような隠忍自重で、お涙頂戴とならないのは、作者の反骨精神や前向きな姿勢に共感し、ユーモアと皮肉をまじえた語り口の読みやすさにあります。
 仕事内容、まかない(食事)、住み込みの部屋、役職の違う他のメイドたちとの対人関係、上司(コック)、雇用者およびその家族、自由時間の使い方、恋愛そして結婚と、作者がその都度体験し、感じた事を率直に述べた文章からは、作者の「階級差別」と「食への強い関心」や、20世紀前半の英国社会の縮図(女性の置かれた社会的立場)を読み取る事ができます。
 靴紐までアイロンをかけ、根気のいるマヨネーズ作り、女主人に銀の盆を介さず物を直接手渡すのはご法度、自分達のことは棚にあげ一方的にモラルを押し付ける雇用者の独善などを、メイドと主人側の独特で旧弊的な世界が提示される一方で、料理に関しては、作者は懐古的です。作者の目標が、自由裁量の高いコックにあるので、当然最大の関心は、上司のコックや自分のつくる料理にあります。ポテトチップをこしらえるにも、実に手間の込んだ調理方法が紹介され、昔は、新鮮な食材の流通もあって、不味い英国料理というイメージを覆すようでした。
 キャリアアップと労働条件の向上を求めて、変わる勤め先の家庭の事情は、それぞれ違い、まるで『家政婦は見た!』のノリで面白く、作者が一番ほめられた料理の失敗談「本物の味を出したければ、まずはゴミバケツでかき回せばいいのよ」は、最高でした。
 ジェンダー

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英国王室版ソープドラマ

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まず共著の一人が、タブロイド誌の記者なので、週刊誌みたいに気軽に読めて、驚き、ユーモア、なるほどと思わせる逸話の数々が最高に面白かったです。
 
 読後、英国王室への親近感やトリビアが増すこと間違いなしです。

 特に興味を覚えた話から、いくつか紹介します。
 
 表題にもある女王個人のバッグの中身には、S時フックが入っており、これは女王に限らず一般にも役立ちそうなアイデアです。
 バッグの持ち(置き)位置は、女王のサインでもあります。
 ゲストもビックリ、女王は、公式の晩餐会中にお化粧直しをする。
 愛犬のために車種変更、王室の小暴君たちが巻き起こす悲喜劇。
 お付きの人間との信頼関係、裏切り、バッキンガム宮殿の庭で朝まで、真っ裸で寝ていた副執事。
 ロイヤル・ファミリーの食生活では、誰が酒豪で下戸か。自家製の食材しか口にしない皇太子。「コーラには殺菌効果がある」との理由でコーラ信奉者のアン王女、大の甘党でメタボなエドワード王子。海外訪問でゲテモノ料理体験、女王の優雅な対応。
 有料TVを申し込み、女王が競馬番組を視れなかった理由とは。
 中東王子の恐怖体験、ドライブで案内する女王陛下、つい手元がおろそかに…。スピード狂一家、民間人に訴えられた事もあり。妻(ダイアナ妃)よりも車が大事な皇太子。
 
 女王は控えめですが、他のメンバーは結構、いろいろ無茶している様子が紙面から伝わってきます。

 他にも王室の伝統的なクリスマスの過ごし方や、イギリス人にはおなじみの食べ物などもきちんと解説されているので、王室のゴシップ以外にも英国通になれるでしょう。

 私たちが、こうまで英国王室に魅了されるのはなぜでしょう?
プライベートな自分達を垣間見せつつ威厳を保つ、ある意味、ロイヤル・ファミリーは、現代史で演じる、生まれながらの超一流の役者(エンターテナー)だと感じさせるものが、本書にはあるのかもしれません。

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WORLD WAR Z

2010/05/24 16:58

恐怖という最強、最凶相手に、世界は、そして日本はどう戦かったか?

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 久しぶりに、ハードカバーの長編(500ページ以上)を徹夜で読みました。

 本書のイメージは、『復活の日』、『日本沈没』、『トリフィドの日』、『冷たい方程式』のゾンビ版といったところでしょうか。
 
 ゾンビを題材にした作品は、今までにも小説や映画などを通じてたくさんありますが、主人公の視界に収まる小さな世界、地域限定で繰り広げられるお話がメインだと思います。しかし、その時、自分達以外の場所、世界中はどうなっていたかとなると、どうでしょう?

 本書は、国連職員が、ゾンビ戦争で生き抜いた世界各国の人々にインタビューをすることで、その時、何が起こりどんなドラマが生まれたかが、複数の視線で語られます。科学者なり軍人といった一部のヒーロー、ヒロインが世界を救うパターンよりも、それこそ一般人から、軍人、政治家、薬事業界の大物、不法出国の運び屋、セレブのガードマンや宇宙飛行士といった、職業も地位もバラエティーに富んだ彼ら彼女らの人生や世界観が、シビアで時にハリウッド風に表現されている点に、感情移入できました。 
 
 アメリカ人の作者が、自国以外をどう描くのが興味深く思いました。日本の扱いは、文章量も含め中国より下、韓国より上といった感じです。引きこもりのネットオタクと、被爆者で盲目の老人二人のサバイバルが語られますが、直接的表現はないものの、キャラクターの造型は、どこか忍者やサムライのイメージが投射されているように思えました。ゾンビ大発生後の自殺率が各国中最高というのは、痛いところをついています。しかし、在日米軍の存在を見落としているのは、ちょっと残念でした。
 将軍様の某国、上手いオチです。
 ゾンビ戦争後の勝ち組は、中南米のとある国、その地政学的条件と政治体制を根拠云々よりも、きっとアメリカに対する皮肉を言いたかったのでしょう。
 他にも気になる各国の様子が、政治・経済・文化を丁寧に踏まえた上で描かれています。
 
 細かいところでは、実在する人物名や、「(略)あのチヤホヤされるのに慣れきった勘違いの淫売女」といった、それとなく分かる実在の人物も登場します。また、ゾンビの呼称には、米国では主に、ザック、英国ではゼットヘッドなどきちんと使い分けている点も笑えます。
 
 本書の醍醐味の一つは、ゾンビ相手のサバイバルと戦闘シーンです。荒唐無稽といより、近代兵器や防御面での城塞の有効性などを通して語られるのも、本書の前に、作者がゾンビから身を守るガイドブック(未訳)がベストセラーという事実が、大いに反映されているようです。

 人の持つ根源的な恐怖をベースにし、エンターテイメントでありながら、世界規模に物語を展開したことは、話の流れが複雑面倒になるどころか、中東問題、鳥インフルエンザ・パニック、臓器売買、商業化するマス・メディア、現在がかかえる社会や世界問題とも、大きく関連しているので、リアリティにも重みが増し、非常に面白い内容になっていると思います。

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紙の本南極。

2012/01/26 15:23

強烈、お下劣、脱力の三位一体そろった「ギャグ小説」!南極夏彦は、赤塚不二夫を超えられるか?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まずカバーのキャラクター、南極夏彦のフィギュアがビジュアル的にインパクト大です(口絵にて、南極の正面、横、背後の三面が見られます)。まるで山上たつひこの『こまわり君』が中高年になったような造型、作者自身のパロディとして、文中で徹底的に貶められ、矮小、具現化したようなこの南極夏彦と、ツッコミ役の女性編集者(長)を中心に、毎回、妖怪やオカルトにまつわる怪奇現象の謎解きを目的に、物語が展開してゆく構成ですが、真面目なミステリーを期待していると肩すかしをくらいます。
 中短編あわせて8作品のタイトル(ペンネームすら)も、『新宿○』『デ○ノート』『探偵ガリレ○』など、ベストセラー作家の有名作品をパロディにして、内容も、ほとんど強引といってもよい話の展開とオチに、どこか「○○先生、ごめんなさ~い」の文句で、数々の有名漫画をパロッた永井豪(『けっこう仮面』や『リボンの志士』)にも通じる印象を受けました。
 当初は、女性編集者に蹴られて毎回何メートルも吹っ飛ぶ南極夏彦を筆頭に、強烈なサブ・ゲストキャラも含め、彼らの破天荒な言動や、漫画的な描写を単純に面白がっていました。ただ、次第に内容が、マンネリ化し、オチも見え、作者のめざした新機軸「ギャグ小説」の限界かと思いきや、赤塚不二夫の漫画世界にリンクした『巷説ギャグ物語』において一転。赤塚キャラを使い「漫画」と「小説」の相違論を実践、展開、本書が「ギャグ小説」を試みた実験小説の一種だと思えました。文中にて、南極夏彦いわく「(略)まあわしもすたもんだと奮闘してみたのじゃがね、やはりまだ土壌が練れてないようじゃね。思ったより不自由なもんね小説」とあり、「小説」や「漫画」など、いろいろな表現方法によらず、それだけ「ギャグ」の世界は深遠だということでしょう。
 百鬼夜行シリーズのファンには、あのお方も登場します。『こち亀』とのコラボ他、古屋兎丸が描く美少女やメイドのイラストなど、読者サービスもたっぷりつまって、笑って脱力できる一冊です。

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紙の本赤毛のアン 新訳

2011/07/19 16:57

騒々(想像)しい女の子の成長物語は、子育ての参考書にもピッタリ?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いろいろな翻訳に関連本、映像やアニメとビジュアル化にも恵まれた『赤毛のアン』にあって、本書を選んだきっかけは、やはり、何といってもカバーイラストを飾る羽海野チカさんが描いたアンでした。
 文中のイラストは、残念ながら羽海野チカさんではなく、別の方が担当されていますが、羽海野チカさんのコミカルでかわいらしい作風を損なうことなく、慣れ親しんだ登場人物やシーンを見事にイラストで表現されており、良かったです。

 アンの努力や友情、前向きの人生観に、少しのやっかみを感じる事もありますが、それでも、好きな作品だと思えるのは、アンを含めた登場人物の言動や心理描写に、ハッとさせるものが多いからです。
 
 「アンの部屋は基本的には初めのころと変わっていなかった。壁も相変わらず真っ白だ。だが部屋の性格はまるで変わり、新しい、生き生きした個性にあふれていた。元気な部屋の主が見る夢の数々が、目に見えても手に取れない形をとって、寒々としていた部屋に、虹と月光でできた美しい薄布をかけめぐらせたように思われた」 部屋の変化にヒロインを重ねる描写が実に秀逸です。
 「(略)あたし(アン)は同じ失敗をくりかえさないの」「いつもの新しい失敗をするんなら、そんなの何の役にも立ちゃしないでしょうが」「それはちがうわ、マリラ。ひとりの人間がしでかす失敗には、限りがあるはずなの。だから全部しつくせば、それ以上失敗することはないはずよ。それって、とても気が楽になる考え方でしょう?」マリラの皮肉もさらりとかわすアンとの会話は、まるで漫才のよう。
 「そのとたん、マリラは心臓を恐怖の剣でさしつらぬかれたような気がした。たしかにそれまでもアンを好きだとは思っていた。だがこの瞬間、坂を無我夢中で走りながら、アンがこの世の何者にもかえがたく愛しいものであることを、マリラは悟ったのだった」 アンとマリラ、育った環境も考え方も違う二人は、頑固さでは共通しています。アンが度胸試しで屋根から落ちた時のマリラの描写には、マリラにとってアンの占める位置が大きくなったことを示します。
 「(略)だけど子どもを育てた者なら、どの子にもぴったり合うような育て方なんかないと、わかるものなのよね。血肉でできた人間は、算数みたいにわりきれるもんじゃないのに。あんなかわいそうななり(マリラの用意するアンの服は、どれも飾りのない質素で実用的なもの)をさせて、謙遜の心を養ってるつもりだろうけど、養われるのはうらやみと不満ぐらいだわ」 子供の養育に関して、リンド夫人の言葉は、どの時代にも通用します。
 数ある美しい叙情的な描写の中からひとつ。「アンにとって過ぎゆく日々は、一年というネックレスに連なる黄金のビーズ玉のようだった」
 かつて膨らんだ袖や容姿など、他人の物質的豊かさが羨ましかったアンは、「あの海を見て。銀色と影と目に見えない幻でできたものよ。何百万ドルものお金や太いダイヤのネックレスを持っていたら、海のあの美しさを楽しめなくなってしまうわ」と、精神的な充足感と成長ぶりが伺えます。
 その成長が、マリラにとって少し残念に思えてしまうのは、世の親と同じ事。「あんたが小さい時のことを、ついつい思い出してしまったのよ。あのまま、あのへんてこな子どものままでいてくればよかったのにねえ。(略)そ、それに、その服を着ているとまるで他人みたいで、全然アボンリーの人間でなくなったような気がして…そしたらとてもさびしくなってしまったのよ」
 アンに魅せられたダイアナのおばミス・バリーのセリフから、「アンって子は、いつまでも進歩をやめないよ。他の女の子は似たり寄ったりで飽きるけど、アンは虹の七つの色を持ち合わせていて、それぞれの色が輝いているんだ」
 最愛のマシューを喪い、進学を一時断念したアンの発言。「クィーン(学院)を出た時、自分の未来は見通しのいいまっすぐな道のよういに思えたわ。でも今、曲がり角に来たの。曲がり角の先に何があるかはわからないけど、最高のものがあると信じたいわ」
 そして最後は、「真摯な仕事と健やかな向上心と心地よい友情が、アンの財産だった。アンが生まれつき持つ想像力と夢の王国は、何者もうばうことができないのだ」

 子どもの頃は、少女向けとして、敬遠していた作品も、なぜか、大人になった今では、素直に読めて感動してしまう不思議さ、ストーリーは熟知していてもついハマってしまいます。それに映画やアニメと対比する楽しみもあります。それだけ想像の余地のある懐の広い作品なのでしょう。児童文学の枠に押し込めてしまうのは、もったいない気がします。色あせず、読めば読むたびに何かしら再発見できる素晴らしい本だと思います。
 
 訳文も、「心の友」を「縁(えにし)の友」とするなど、『赤毛のアン』の魅力を一層引き出す細かい点に配慮されていてととても良かったです。

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水木しげる超入門篇

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 超メジャーな作品『ゲゲゲの鬼太郎』から、30年以上も昔に『DEATH NOTE』が存在していたのかと思わせる作品『不思議な手帖』まで、上下巻あわせて、38篇の中は、妖怪もの、ファンタジー、オカルト、SF、人間ドラマ、伝記、歴史、社会風刺、なんでもありの、水木ワールドのエッセンスがたっぷりと凝縮した内容になっています。
 その名の通り、1000ページの量は、読みでがあります。ちなみに、読み終えるのに2時間ほどかかりましたが、中・短編がメインなので、とっつきやすく、読みやすい作品が多いので、水木作品の初心者にも、熱烈なファンにもお勧めします。
 個人的なベストをあげるとしたら、上巻からは、『浮気会社』、下巻からは、『惑星』でしょうか。星新一風のショート・ショートのひねりのきいたオチが面白かったです。

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のび太の妹登場!?ジャイアンの歌は、フグの毒、戦慄!相互確証破壊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書に掲載された『ドラえもん』73作品の内、ビジュアル的にインパクトのあるコマは、『あとからアルバム』で、のび太にいたずら書きされたドラえもんの寝姿、のび太のセリフは、「モデルがよくない。美しくともかわいくもない!」 動物の擬人化が秀逸な『動物変身恩返しグスリ』のドロボウ猫。
 時事ネタからは、1981年にスペースシャトルの初飛行で『のび太のスペースシャトル』、のび太の工作したスペースシャトルは不恰好だがアイデアは良い。冷戦時代の核戦略(自動報復システム)を風刺した『ペンシル・ミサイルと自動しかえしレーダー』、仲直りしたのび太とジャイアンたちが、空き地で野球している姿を俯瞰したラストのコマに「合計二十五発のミサイルがせまってくる……」、大人になって読み返すと、背筋が少し寒くなりました。
 貴重なキャラクター登場の回として、のび太の母方の祖母と伯父(玉夫叔父さんではない)が見られる『グルメテーブルかけ』、おまけにファンサービスで巻末に、のび太の妹が登場します。
 アニメ版も素晴らしいスプラスティックな『ドッキリビデオ』。タイトルが意表をつく『ジャイアン殺人事件』。道具で金儲け、タブーに挑戦?『なんでもひきうけ会社』。ファン垂涎!しずかちゃんの可動等身大フィギュア他、モデラーの夢をかなえる『百丈島の原寸大プラモ』など、それこそ、夢あり、涙あり、楽しい作品がたくさん掲載されています。
 キャラクター、ガジェト、ストーリー、絵のセンス、どれをとっても、やはり『ドラえもん』はどの作品もハズレがなく、読者を選ばず、いつ読んでも何かしらの発見があり、まさに国民的、世界的漫画にふさわしい作品だと思います。

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紙の本ぼんち 改版

2012/01/02 15:50

美しい国のエロス、男のロマン、女の執念、昭和の光源氏一代記。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 お茶屋で芸者をあげての大散財、女道楽もビジネスチャンスにしてしまう才覚、仕事も遊びもきっちりこなす『ぼんち』こと主人公の喜久治は、さしずめ、業平、光源氏、世之介、日本の古典文学の系譜に連なる昭和のプレイボーイでしょうか。戦前・戦中の昭和の世相を背景に、大阪商人の格式やしきたり、花柳界といった特殊で閉鎖的な世界を、喜久治と共に体験しつつ、彼を取り巻く女性達とのドラマを興味深く読む事ができます。
 喜久治と愛人達の関係は、精神的には、対等に、むしろ喜久治の方が何倍も翻弄される描写が、コメディーでありながら、どこか男の悲哀に感じられるのは、男の勝手な言い分でしょうか? 文中に次のような表現があります。「別に女不足もしていないのに、ふとしたはずみに、次々と女をつくり、そのどの女にも惹かれる自分を弱々しく笑った。しかし、何人かの女を養うことが商いの励みになり、一人一人の女によって喜久治の場格を加えていきそうだった。(略)一人、一人の女を、それぞれに愛しているとは云い条、所詮は、四人の女に四等分の一の自分しか与えていない。それが女道楽のきまった勘定書であると、いってしまえばそれまでだが、一人、一人の女の心にまで、責任をもってやらねばならぬとすれば、喜久治は奈落へ落ち込んで行くような暗い惑いを覚えた」 
 同じ女性でも、喜久治にとって、肉親となる祖母と母親に対する心情は別で、老舗の品格やしきたりに固執し、家付き娘、女系家族としてのプライドからくる傲慢さが、非人情に写り、陰湿な嫁いびりをはじめ、読み手としても、悪役のような印象を受けますが、喜久治との心理的駆け引きは、絶妙です。祖母は、本編中一番、女の業の深さと強さを見せてくれるようで、その実、一番弱い存在だったかもしれません。それは、戦争で灰燼と帰した自宅を前にした、祖母のセリフに効いています。「(略)商い蔵は男のもの、衣装蔵や、家屋敷にはわてらの血が沁み込んでおますわ、空襲にこと寄せて、わてらに繋がるものは、みな灰にしてしまもうたんやな、(略)あんたには(喜久治)、女が残ってる、わてらには、もう何もかも失ってしもうた」  
 最後に、数々の印象深いシーンやセリフの中から、お気に入り場面を紹介します。病床の喜久治を、しきたりで本宅には見舞えず、いろいろ手を回して設けた快気祝いの席で、再会した喜久治とお福のくだりから。
 「お福は、暫く黙り込んでいたが、『女の愚かさには、変りがおまへん』ぽとりと滴るような声で云った」。この後、、普段あまり感情を表に出さないお福の高ぶりと、それをいじらしく思いいたわる喜久治の短いやりとりがあります。行間から読み取れる熱さ冷たさなどの感覚の対比が、目に映るようで、非常に繊細でエロチックな描写は素晴らしいの一言です。
 
 

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血に染まった冷酷無常な魂とは…

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 映画『グラディエーター』や『スパルタクス』に、興味を覚えた人なら、壮絶な剣闘士同士の闘いの裏側で実際に何が行われてきたのか? ハリウッドのスペクタクル映画では、語られなかった剣闘士の徴集、訓練、ランキング、タイプと戦闘方法、興行主、闘技場、観客の反応、制度としての剣闘士競技を、その発生から終焉までを、本書を通じて知る事ができます。

 二部構成で、最初に、『ある剣闘士の手記』を持ってきたのは大正解だったと思います。人間の尊厳を奪われ、常に死と隣り合わせにして生きざるえない剣闘士の内面が、痛いほど読み手に伝わるので、まるで小説を読んでいるような感覚になりました。
 汚物(トイレットペーパー代わりの海綿)をのどに詰まらせて自殺した同僚の剣闘士に対し、ある剣闘士ことミヌキウスの心情は、トイレぐらいしか自由になれる場所がない剣闘士の悲哀以上に、見世物にされ惨めな死を与えられるより、自害する度胸に感じ入る反面、自分が自殺できる勇気もないほど、現状に絶望していることを吐露しています。
 生い立ちから、剣闘士として売られて初試合、対戦者への感情、ファンの女性に癒され、不利な対戦相手との息詰まる闘い、最後に相手にとどめを刺す時の様子を紹介します。「(略)ぐさっと突き入れた右手の感触とともに、えもいわれぬ反吐が胸にこみあげてきた。(略)どよめく歓声につつまれていたが、そんなことはどうでもよかった。殺された者の哀れさも殺す者の惨めさも観衆にはなにひとつ意味がないのだ。(略)人を殺すことに馴れることなどあろうか」

 後半は、初め先祖供養などの祭祀で私的に始まった剣闘士競技が、次第に、選挙や人気取りを目的に公人が主催、野獣狩りとあわせて大規模化、競技場も専門化しローマのコロッセウムが完成。有名剣闘士を追っかけするセレブ夫人の登場や剣闘士の姿を刻まれた哺乳瓶(図版あり)など、一大エンターテイメントと化す様子が解説されます。しかし剣闘士競技に、キリスト教が、それほど大きな影響を与えなかったとする著者の意見は意外でした。

 何事にも流行り、すたりがあるように、ローマ帝国といえば、ビジュアル的にも非常にインパクトのある剣闘士競技も同様ということでしょうか?
 読後、偉大な文明の担い手であったローマの血なまぐさいイメージを、本書を通じて、再考させてくれました。特に『ある剣闘士の手記』が、非常に印象に残りました。

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お嬢さまアントワネットのベルサイユ学園転入、孤軍奮闘物語!

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 藤本ひとみさんの描くマリー・アントワネット像は、歴史に翻弄される悲劇のヒロインというより、時代や生まれに関係なく、当時14歳という彼女の年齢と同じ、現代の女子中学生が、転入先の新しい学校で孤軍奮闘する姿に重なって見えてしまいました。
 もちろん、児童向けだからといって、作者は歴史的背景や時代考証を疎かにする事は一切ありません。深い見識と、堅苦しくないユニークな語り口で、読者をぐいぐい本書に引き込む源泉になっています。

 まずは、フランス宮廷での複雑な人間関係に対し、『多くの兄や姉の間で育ったマリー・アントワネットは、集団の中で、うまくやっていく方法を知っていました。一つの集団があれば、必ずそこのルールがあり、またリーダーがいるのです。そのルールを守ること、そしてリーダーにさからわないこと。この二つが大事でした』と考えるアントワネットは、時代や場所に関係なく、人間関係の本質をずばり突いていると思います。

 また、アントワネットが、夫ルイ16世の趣味に関して抱いたことは、『気になるのは、ただひとつ、ルイ16世は、それら(趣味の錠前作りや漆喰塗り)を一人きりで楽しんでいるのではないかということです。実家(ハプスブルク家)では、みんな、その趣味を通じて家族とつながっていました。でもなんとなく、ルイ16世からは、そんな感じがしないのでした』家族愛に恵まれたアントワネットの積極性に対し、内向的なルイ16世の姿が想像できます。

 デュ・バリー伯爵夫人の出自に対しては、『神が許さない、いかがわしい仕事!アントワネットは、背筋をゾクゾクさせました。それは、いったいなんなのかしら。もしかして泥棒?いえ、強盗かもしれない。いいえ、人さらいとか、ひょっとして、人殺しかもしれないっ!ぞくっ、ぞくぞく、ぞくぞくぞくっ!!』
 いかがわしい仕事を、娼婦といわない点は、本書が、児童書だという事実を再認識させられる点だと思います。

 デュ・バリー伯爵夫人とのガチンコも、まだ緒戦、続きが楽しみなシリーズです。

 イラストは、ややマンガチックで、衣装など時代考証に忠実とはいえませんが、個人的お気に入りは、ルイ15世の娘たち、特に、ルイーズ王女です。

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踊る男たちのロマン

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バレエファンになってから、まだ日が浅く、バレエといったら、『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』、いわゆるチャイコフスキーの超メジャーな三大作品ぐらいしか知らないので、他にどんな演目を鑑賞してよいのか迷っていた時、本書に出会いました。
 作品が収録されているDVDがメインですが、解説書も手抜きの無い内容になっていました。簡潔なストーリー・ダイジェスト、一目瞭然の登場人物の相関図、物語の背景、音楽、エピソードをはじめとして、鑑賞し理解度を深めるためのよい手引きになりました。特に、バレエのテクニックを解説した項目は、DVDと関連した技を、写真付き紹介しているの点に感心しました。見比べができて非常に頭に入りやすく、次回からは、技を見れば専門用語が出てくるじゃないかと期待してます。
 本書の作品『海賊』は、約一時間半ほどの作品なので、一気に集中して鑑賞でき、話の筋も明瞭で初心者にも入りやすい作品だと思います。冒頭の難破場面は、スーパー歌舞伎を想起させる迫力、一幕目の奴隷市場では、悪役の奴隷商人役の男性ダンサーが、魅力的な踊りを披露し、二幕目の洞窟のシーンでは、アリ役ルジマートフのダイナミックな跳躍、計算つくされた展開は、本作品の醍醐味といってよいでしょう。三幕目のハーレムでは、華やかな群舞、全てが完璧な舞台に仕上がっています。
 女性ダンサーたちも、超絶技巧を難なく見せて、素晴らしいの一言につきますが、むしろ、スポットライトを浴びるのは、全体を通して、躍動的な動きをする男性ダンサーの魅力が全開、まさに血わき肉踊る海賊のロマンを具現しており、男性ダンサーに対する認識を新たにさせられました。
ただ一つの難点は、カーテンコールの省略でしょうか…
 

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紙の本ドレの神曲

2010/03/04 17:28

へタレでオタクなダンテの、自分探しの旅

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JICC出版局版を読んで以来、20年以上も経過しましたが、インパクトのある地獄篇の挿絵にばかり注目して、表面的にしか読まなかったその当時に比べ、いろいろと面白く読めたのが新鮮でした。
 永井豪など、著名な漫画家にも影響を与えたように、ドレの緻密で幻想的な版画が、文章を見事に、ビジュアル化されており、非常に分かりやすいので、堅苦しい古典のイメージに敬遠されている人にもとっつきやすいと思います。
 
 まずビジュアル的見地から、地獄篇では、悪魔や亡者たちは、老若男女みな、ミケランジェロの描いたシスティーナ礼拝堂のフレスコ画よろしくマッチョな姿で登場するので、あたかも肉体美(ヌードも含め)は罪であるみたいな印象を受けます。ですから、天国篇では、スリムなお方ばかりでストイックすぎて面白みがありません。煉獄篇でも、ドレの好みが明確で、マッチョとスリムの好みが顕著に見られます。師匠ヴィルギリウスと旧友が再開する場面では、嫉妬に燃える?厳しい表情のダンテが描かれている挿絵があったりと、細部まで見飽きません。煉獄山のふもとで、星空を見上げながら、師匠と弟子二人が静かに語り合うシーンは、文章と共に、天国篇よりも癒されるかもしれません。
 
 続いて本文は、意訳や注釈もあり、深読みしやすく、ダンテのへタレでオタクな部分が読み取れます。もちろん、含蓄深い言葉にも出会えます。
 権力闘争に敗れ、意気消沈のダンテが、見知らぬ場所(地獄)で、頼れるのは大先輩のヴィルギリウスのみ、地獄篇のシーンごとに、無理もありませんがビクつきっぱなし、そんな弱気な面を、師匠ヴィルギリウスに叱咤され、師匠の陰に隠れぱなし。しかし、地獄の第八圏第三の邪悪の壕あたりまで来ると、『犬神家の一族』状態の罪人に対し、手厳しく責め立てると思ったら、次のシーンでは、再びビクついたりと、精神的にかなり不安定だったダンテも、煉獄篇に入ると、師匠との対話を通して、精神的な成長を見せたりもしますが、地獄のような悲惨な場面がなくなったせいか、調子に乗って好奇心丸出しのダンテに、師匠のツッコミが炸裂といった具合です。これだけでは、単なる凸凹コンビの珍道中で終わってしまいそうですが、『神曲』を不朽の名作たらしめている理由の一つには、いつの世にも当てはまる「理詰め限界」や「自由意志の大切さ」といった示唆を、ダンテを代表とした人生に悩む人々へ与えている点にもあるかと思います。
 そしていよいよ、天国篇に至っては、現実世界では上手くいかなかった分の反動でしょうか、今までへタレだった自分は何処へやら、本領発揮、思い人ベアトリーチェに対する萌えが爆発、その勢いはとどまるところを知りません。浄化よりも軽い疲労感におそわれました…
 蛇足ですが、おどろおどろしい地獄篇にも、グロテスクな外見に反し、愛らしい?キャラがいました。その名は、『ゲリュオン』、城壁を壊したり武器を壊すのが趣味という怪獣です。ドレの挿絵もあります。

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