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先月(2017年6月)

小判と麦茶さんのレビュー一覧

投稿者:小判と麦茶

1 件中 1 件~ 1 件を表示

フウセンタケに興味のある人にはお勧め、しかし…

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

十数年間に渡り、原色日本新菌類図鑑のような大型のキノコ図鑑が出版されていない現在、地方のキノコ図鑑にはあまり図鑑に載っていないキノコや最近、新種・新産種報告されたキノコを掲載することが望まれている。
そんな中、出版された「新潟県のきのこ」は、ムラサキズボタケやキツネフウセンタケなど、他の図鑑には掲載されていないフウセンタケ属のキノコが充実しており、是非ともフウセンタケ科に興味がある人や地方のキノコ会の同定員の方にはお勧めしたい図鑑である。
このことは、フウセンタケ属のキノコを数多く新種記載してきた宮内信之助氏が監修したからこそ、成しえたことだろう。

しかし、欠点も多くある。
第一に、悪い写真が散見されることである。図鑑は写真が命といっても過言ではなく、良い写真がなければ無理に載せる必要もないのではないだろうか。
第二に、全体的に特徴の記述が簡易で曖昧な点である。「初心者でもわかるように顕微鏡による観察は少なくして」というコンセプトも分からなくもないが、「○○に似るがこげ茶色が強い」「○○と比較して少し大きい」では、あまり同定に役に立つとは思えない。
第三に和名の付け間違いがあることである。例えば、カキシメジモドキとして掲載されているTricholoma ustaloidesには、北陸のきのこ図鑑でニガシメジという名が付けられているため、先に公の書籍として出版された「ニガシメジ」を用いるべきである。和名の混乱は出来るだけ避けるべきだ。
最後に、あまりに新産種報告が多すぎることである。
本書では、タカネキヌメリガサやカッパツルタケ、ブナベニタケなどを新産種として報告しているにも関わらず、写真と外観の簡易な記述だけで、顕微鏡学的な記述がないとは一体どういうことか。
「長年キノコを見続けて、論文発表もしているのだから間違いない」という著者の驕りがあるのではないか。
ただでさえマスタケにように、これまで海外のものと同種とされていたキノコが、DNA解析やより精細な顕微鏡観察によって別種であると判明してきている現在、安易に海外で報告されているキノコの学名を当てはめるべきではない。まして、このような査読もない書籍で発表することは慎むべきだ。
せめて、新産種報告をした標本がどこのハーバリウムに保存されているかということが書いてあれば、後の研究者が再検討を行なうこともできるが、本書にはそのような記述も一切ない。

長々と書いたが、本書はフウセンタケ科のキノコが充実しているという点だけでも、十分有用だと思う。ただ、「東北きのこ図鑑」や「いきなりきのこ採り名人」と同様、著者の「欲張った」記述が非常に残念に思う。

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