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    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

お月見さんのレビュー一覧

投稿者:お月見

85 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本死せる王女のための孔雀舞

2012/04/28 23:29

一度読んで、彼女の世界に触れてほしい

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「夢見る惑星」や、「ワン・ゼロ」などの傑作SFやハイファンタジーを描かれていた佐藤史生さんですが、本書はわりと初期に発表されていた、早熟な少女の学生生活を描くという、佐藤さんにしては珍しい作風のシリーズを収めた短編集の復刻版です。2009年にこの世を去られ、その著書の数々が絶版になっていたままでしたが、この度復刻され、更に他の作品も復刊予定があるようで、嬉しい限りです。
 頭脳明晰でクール、真面目な委員長タイプのヒロインの七生子は、子供の頃は、外界と繋がりをもたず、絵を書くことだけに没頭していた天才肌の少女でした。今は凡人と自己を評するけれど、なかなかどうしてクラスでもめったにいないタイプです。短い間だけ心を通わせるクラスメイトの美女も。二人とも、出自に秘密をかかえていて、そのために精神年齢は大人にならざるをえず、同士のような繋がりを感じていたのでした。
 10代のころ、この作品を何度も読み返していたころも、今読んでも、まったく色あせないこの作者ならではの独自性と知性のきらめきがあり、さらりとしたユーモアも、少しだけ垣間見せる幻想性も魅力的です。
 今回、単行本初収録のデビュー前の短編が読めたことも嬉しかったし、その中の一遍「一角獣にほほえみを」は、のちのSF短編集「金星樹」に収められた「一角獣の森で」としてリライトされていますね。セリフやストーリー展開にはあまり変更がありませんが、なるほどこのように表現するとより語りが生きるのかと、二つを読み比べるのも興味深かったです。
 復刊を機会に、ぜひたくさんの方たちに触れていただきたいし、他の作品も読んで彼女の世界の不思議な魅力にひたっていただきたいです。

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「王よ、王」

21人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 長い休載後の連載再開からこっち、単行本でいうと23巻から24巻以降。物語の手触りが変化していくさまを見守ってきた読者として、この30巻で、はっきりと休載以前との「違い」を感じたように思います。
 ネタバレになると困るので、まだ本書を読んでいない方は気をつけて欲しいのですが、本誌連載中、メルエム王と軍儀の天才少女コムギの長い語りのシーンを読んだ時から、カチリとチャンネルが切り替わるように、「HUNTER×HUNTER」はキャラクターの魅力に引っ張られる漫画から、ストーリーの緻密さに飲み込まれる漫画に変わってしまったのだなあと思ったのでした。
 読んでいるこちらがとまどうぐらい、とにかく急激に登場人物が成長します。精神的にも肉体的にも。主人公も親友もライバルも敵役も。
 本音をいえば、私が好きだったHUNTER×2は、ゴンやキルアが仲良くころげまわり、クラピカは復習の呪縛から解き放たれ、レオリオはドクターになってくれればそれで良かった。ついでにヒソカやゾルディック兄弟も相変わらずほくそ笑み、旅団も相変わらず悪巧めばいいし、団長も束だか東だかに行ってくればいいし(すごい乱暴なくくりですが)。
 だけどここ最近の物語の行方は、そんな甘えた期待を許さず、壮大な世界観の広がりが、歴史の流れが個々のキャラクターを動かす大河へと変貌を遂げたのでした。
 作者の初期の連載である、「幽☆遊☆白書」を思い返してみても、ストーリー後半で主人公、幽助の出自を遡ったあたりから、やっぱりキャラ重視から独自の世界観のねじれに重点が移っていったような感じがしたし、ある意味、暴走といっていいほどの急展開を遂げたのでした。
 更に、幽白とHUNTER×2の間の連載である「レベルE」に至っては、キャラの魅力もさることながら、特異な世界観も主役のうち、といってもいいぐらいの異端ぶりだったので、逆に破綻はなかったともいえます。はじめからキャラとストーリーが同軸で語られていたので。
 話が別の作品にそれてしまったので、本書の感想に戻りますが、一番驚いたのは、これだけ長い間をかけて執筆し、数多くの犠牲者と、登場人物の変貌を生んだ、(そしておそらく多数の読者のため息も生んだ)キメラアント編の締めが、一人の王と少女の存在意義の確認だったこと。だけどきっと、現実の歴史上の人物もこんな感じだったのかもしれない。この辺りのひねくれ感ががいかにも作者らしいです。
 その後の顛末とハンター協会の行く末も、まったく先が読めずにただストーリーの行方を追うだけで、精一杯。
それでもやっぱり、こんなに続きが気になる漫画はないと思ってしまう。
 今はただ、31巻以降に登場する、懐かしき登場人物たちの行方を見守りたいです

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静かに、祈るように

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 作者のゆうみ・えこさんは被災県に暮らしています。このマンガエッセイは、震災の一年後に刊行されました。
私も、作者と同じく被災県に暮らしています。新聞(河北新報)の書評欄でこの本のことを知り、購入しました。
 震災関係の本をマンガも含めて数冊読みましたが、正直、言葉にできない違和感を感じていました。
 誤解を恐れずにいうと、被災地から遠く離れた人が語られる事は、どうしても「どうせ、地元の人でもないのに」と思ってしまう。
 テレビの番組で識者の方が「貴方はもう(被災地に)行かれましたか」と問い、問われた人が「ええ、私は震災○日後に、○○に行きました」と答える。○日後の数字が少なければいいのか。行った場所の被害がより酷いところならいいのかと、順位づけのようなものを感じてやるせなかった。実際、私の知人が遠方に住む家族に「そろそろ、そっち行っていい?一度は被災地も観ておかないとね」とまるで観光地のように言われたと嘆いていました。
 著書のゆうみ・えこさんが謙虚に語られていた、避難所で出会った女性の言葉。彼女は津波で家をなくし、両親も亡くし、炊き出しのおにぎりを配る人にさえ、「どうせあんたは助かったんでしょ」と嫌悪感を感じてしまう。
 私も、家族と数日間連絡がとれず、最悪の事態を予想し一時は絶望感にとらわれました。おかげさまで再会できたので、何もかも失った彼女からすれば、私が嫌悪する遠方の識者たちと同じ立ち位置です。
 その女性が、久しぶりに口にしたトン汁を吐き出してしまい、反射的にもったいないと思ってしまう。それはわずかに残った生命力なのか。助かった人が恨めしい、ボランティアの人たちも、何もかもが恨めしくてたまらないのに、掛けられた言葉と、トン汁の温かさに気持ちを取り戻していく。
 この本は、著書のサブタイトルにあるように、被災地のオフレコ話を語ったエッセイでもあり、実際、語られるテレビでは報道できないような犯罪は、残念だしやりきれない。だけど、この本の魅力は、にゃんこ達とのふれあいや、今は住める状態にない実家で育てていた植物への愛着など、普通の暮らしの延長の心やすらぐ描写にあると思います。

 最後に、まるで関係ない話題かもしれませんが、大震災を経験して、一番意外だったこと。
人は、災害に遭うと、もっとパニックになると思っていた。実際、大震災を扱ったドラマのシーンでも、ビルから見下ろす通りのシーンでは、通行人がワーキャー言いながら走っていた。
 震災直後、余震がおさまってきた30分後に勤務先から帰宅する途中。駅前の通りはたくさんの人であふれかえっていたけど。
 皆、一様に静かだった。大勢の人が静かに立ち尽くして、携帯と、空を交互に見上げていた。

一年後、同じ商店街で、震災があった時間に追悼のために黙祷を行った。
偶然、家族と友人と駅前を歩いていたら、今から追悼のための黙祷を数分行いますとアナウンスが流れ、道行くたくさんの人々がその場で足を止め、お店の店員さんも店先に出て目をつぶり祈った。
 休日で、家族連れも多かったけど、小さな子供まで静かに祈った。
 黙祷が終わったあと、泣いている人も多かったけど、何事もなかったようにまた人ごみが動き出す瞬間、何人かの人が上を見上げていた。アーケード街で空なんか見えないけど、私も、見上げた。
 やっぱり見上げてしまうもんなんだなあ。

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紙の本第2図書係補佐

2012/03/17 23:49

生活の中に本がある嬉しさ

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 又吉さんは、お笑い芸人の中でも特に本好きとして有名なかたですね。この本におさめられた対談で、中村文則さんが触れられていた「キングオフコント2010」の出場者紹介のVTRでも、蔵書2000冊とか、又吉さんの部屋の本棚が紹介されていました。中村さんが語られたとおり、キングオブコントで披露したネタの山んばと公務員の青年のコントは物語性があって大好きです。就職活動に励む山姥を応援する役人の青年。山姥には人の背中を見ると鉈を振り下ろしてしまうという習性(?)があり、就活は難航するという設定が面白かった。決勝のハンサム男爵も、チャーミングでトホホ感もあって面白かった。爆笑レッドカーペットでの、又吉さんがジョンレノンに扮して「想像してごらん」とあるあるネタならぬ、ないないネタを披露するのも好きでした。「大秒殺」で披露する大喜利も、即興のアドリブなのに次々と味わい深いネタを披露していて、このあたりが得意の自由律俳句とつながるのかなあと思ったりしました。
 そんな又吉さんの書物にかかわるエッセイ集と聞き、期待して購入しました。BK1さんで注文後、一時的に品切れで発想が遅れますとのメールが届き、売れているんだなあと思いましたが、少し遅れて手元に届いたのが第6版。初版から4ヶ月後で、新しく添付された帯には「続々重版8万部」とブクログ第3回「期待の新人作家賞」受賞の文字と又吉さんの、受賞コメントが載っていました(「尚、僕に対する過度の期待はおやめ下さい。」というコメントの締めが又吉さんらしいです)
 はじめに目次で又吉さんおすすめ本のタイトルを見て、これも好きな作品だ、これもだ。と、宝探しみたいに喜んで読んでいったのですが、最後の対談で、吉本のライブ会場に置いていたフリーペーパーに連載していたので、学生に読んでもらいたい本を中心に紹介していたと知り、なんだか自分がいい年して学生の精神年齢なんだなあ・・・勝手に親近感沸いてごめんと恥ずかしくなりました。いや、連載していたものばかりでなく、書き下ろしのものもあるのですが。
 でもそのあとに読んだ、「神保町公式ガイド」というムック本での又吉さんのインタビューでおすすめしていた本が、この本の中で紹介していた本と同じものだったので、やっぱり自分が好きなものはどうしたってチョイスしてしまうし、全力で語ってしまうよなあ。やっぱりこの人も、本に生きる力をもらっている方で、今もそれは同じで、別に全て若い子にあわせたわけではなかったのねと少し安心(?)したりもして。
  特に、この本でも神田神保町ガイドでもどちらでも紹介している、中村文則さんの「何もかも憂鬱な夜に」の最後の文章。「この本は僕の過去にまで遡り思春期のころの僕と今の僕を救ってくれた。僕に必要なことは全て書いてくれていた。こんなにも明確に生きる理由を与えてくれる小説はなかった」という部分に共感しました。又吉さんのエッセイには、思わず抜粋したくなるような名セリフともいうべき胸に響く言葉がたくさんあって、まさに今、悩める若者が又吉さんの言葉に救われることもたくさんあるのでしょう。だからこその重版なのかも、とも思いました。
  
 又吉さんのエッセイを読んでいると、友人とお酒でも飲みながら、えんえんと思いつくままに好きな本のこと、その時の自分の思い出を語りあったりしているような近しい気持ちになります。本について語るというよりは、その本を読んだころの自分の身上を語っているのですが、中でもピースのコントでも感じた、物語の光を強く放っていると思ったのが村上春樹さんの「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」のビリヤード場の店員さん。この女性がカッコ良すぎて、何だかもうドラマの中の人です。それから宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」についてのエッセイは、このまま小学校の教科書に載せてたくさんの子供たちに読ませたいと思うぐらい面白く、新しい考察だと思いました。

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素敵な番組を、有難うございました。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は、「週刊ブックレビュー」というテレビ書評番組が20周年を迎えた記念に発行されました。・・・と、よそよそしく紹介するのも無粋なほど、本好きの間では有名な番組であったろうと思います。

 本来は、本の解説であるべきレビューですが、「週刊ブックレビュー」がついにこの3月で終わりを迎えてしまうということと、テレビ番組のムック本ということに免じて、番組の内容も多く語る事をお許し下さい。

 私は、残念ながら番組の存在を知ったのが去年の1月ごろで、こんないい番組を何故今まで知らなかったのかと惜しみつつ、毎週楽しみにしていました。長い歴史の中には、公開放送もあったんですね。かつて、私の地元にも来てくれていたなんて。ぜひ参加したかったなあ。
 本が好きな出演者の皆様と、本が好きな司会者の方がおだやかに(ごくまれに激しく)、そして熱く語られる本への想い。その空間が心地良かった。

 余談ですが、他の放送局のBSの書評番組を一度観たことがあるのですが、本の書評をされていた方が、おすすめの箇所の部分を、本のページを折り曲げてマークしているのを見て、一緒に観ていた娘と怒り爆発!百歩譲って、自分の家で本のページの端を折るのは持ち主の勝手だとしても、テレビの画面に映してはイカン!!
 「週刊ブックレビュー」は、きちんと付箋でマークしていて、その付箋の量が多いほど作品への愛を感じて嬉しくなるのでした。
 それから印象に残っているのが、書籍売り上げランキングのコーナーで、タイトルとあわせて作者名を読み上げる時に「○○○○」(作家名です) 著。と言うんですね。この、”ちょ” というのが、”作”とかではないんだなあといつも面白く聞いていました。
 そして週刊ブックレビューといえば、番組の顔であった児玉清さんの存在。私も児玉さんのミステリーの書評が大好きだったので、児玉さんが語る本への想いをじっくりと聞き入ることができて嬉しかったです、

 本の内容に戻りますが、ゲストへのインタビュー(太田光さんチョイスは、なるほどです。そしてやはりというか、太田さんは初期のころからの番組のファンだったのですね)、司会者三人の座談会。中江有里さんは、女優デビューをされたころ、私のアイドルだったのです。番組を見始めたころは、あの中江さんが、あの中江有里さんだとは気づかなくて、驚くとともに、嬉しくもなりました。
 それから書評家の方々、作家の方々が選ばれたおすすめ本のリスト。各年間ごとの売り上げベスト、番組で取り上げた本のリストと、永久保存版ともいっていいぐらいの内容です。
 番組でこの本の発売を知り、購入した時には、まだまだずっと続く番組だと思っていたのに。児玉さんへの追悼も含め、番組の卒業文集のような役割にもなってしまったのかと、惜しむ気持ちでいっぱいです。

 だけど1年と数ヶ月だけでも、この番組に触れることができただけでも感謝したいです。何よりもこの一年、私の住む地域が大震災で大きな被害を被り、物資がない中、ライフラインもままならない中、本がもたらしてくれた心の支えは大きかった。その気持ちを汲んでくれるかのように、時に震災のことに触れ、震災がらみの著書の紹介での、言葉には出ないけども感じる暖かい配慮はエールのようでした。
 残された回はあと数回ですが、とっておきのお酒を、好物のおつまみでいただくように、じっくりと最後まで楽しみたいと思います。

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紙の本日出処の天子 完全版 1

2012/02/06 21:25

美しい、とため息が出ます

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 雑誌「LALA」に連載中もリアルタイムで読んでいたし(あの頃のLALAはとんでもない名作ぞろいで、毎月発売日が待ち遠しかった)、新書版も文庫版も持っているのですが、当時のカラー扉絵や、カットなども収録されているという事で、やっぱり購入することにしました。
 あらすじや説明は、有名な作品でもあることですし今回は完全版の感想だけに留めますが、一番印象に残ったのはカラーの「色」でしょうか。古来日本の色、ともいうべき繊細でくすんだ色あいが、相乗効果で作品に何ともいえない空気をかもし出しています。
 雑誌の連載中、心躍らせながら、むさぼり読んでいた当時の気持ちまで蘇ってきました。
高価な本なので、まだ読んでいない方は、先に漫画文庫で試してもいいと思うけど、やっぱり大判で読んだ方が堪能できますね。

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完成度の高い短編集です

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 以前は別の出版社から出ていたのですが、1995年に作者が惜しくもこの世を去られてから、長らく絶版でした。ご遺族と元の出版社のご厚意で、文庫での再販化が実現したそうです。
 作者と連絡がつかず、今も絶版になり手に入りにくい状態のコミックも多いので、いろいろな事情があるとはいえ、再販化はファンにとって本当に嬉しいです。
 「夢の中、悪夢の中」は作者の後期の短編集となりますが、後期の長編と同じく、凝った構成、書き込まれた背景。圧倒的な画力と構成力が特徴的です。
 特に、表題作は、テーマが母と娘ということもあり、身につまされるような気持ちで読みました。
本が好きでインドア派のヒロインは、アウトドアで体育会系の家族の皆になじめません。家族だって相性が合ったり、合わなかったり一人一人性格が違うのだから当たり前なのに、まるで親が決めたことが絶対の戒律であるかのように押し付けられてしまう。わかるわかる。私もそうだった。
 でも、ラスト近くではそんなヒロインの孤独な強がりも、独りよがりの未発達の思い込みなのかと、冷やりとしました。
いまだ中二病を引きずっている自分が投影されて、読んでいて辛くなるほど。だけどそこに気づいただけましというか、そこからどう自分を建て直していくかだと思うのですが。希望がまったくないわけではないと思いたいです。同じ作者の遺作、「ビリーの森、ジョディの木」のヒロインが、描く事で自分を取り戻していったように。
 他にも、やはり「ビリーの森、ジョディの木」を彷彿とさせる「ベンジャミンを追って」や、ラストが鮮烈な「彼女に翼を」、短編映画にしたら素敵だろうなあ、と思ってしまった「帽子物語」(ラストの暖かなセリフは、作者の初期短編を思わせるいいシーンです)など、どれも読み応えのある作品ばかりです。
 三原順さんの作品を読むのがはじめての方よりは、ある程度長編を読んでファンになった人におすすめしたいです。

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紙の本凍りのくじら

2012/02/15 21:06

読んだあと、また読み返したくなります

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 辻村さんの小説のヒロインは、気が強くて、意地っぱりで、友人はいるけど孤高で誇り高い。そして美人でおしゃれ番長なイメージがあります。
 だけど繊細で、いろんなとこを深読みしすぎちゃって疲れるし、実はもろい。
 「凍りのくじら」も、思春期にふくれあがる自意識と他者、世間とのずれにもがく主人公が痛々しくて、傍目にも、本人にも自覚がないけど、実はかなりあやういとこにきていて読んでいてヒリヒリしました。
 そして男性キャラは、優しくて、クール。寡黙な天才肌の人が多い気がする。(実に私好みの設定です)
 意外に女子キャラのほうが、強そうなのにどっかなげやりであきらめてて、男子キャラのほうがあきらめていそうで、なげていない、達観した頼もしさがあるんですよね。
 この作品は少女の成長と、少年の成長を軸に描かれていて、ラストにはちょっとしか仕掛けもあるので、読み終わったあとに、またはじめから読んでみて、このシーンには、こういう意味があったのかな、と確かめるのも楽しいです。

 また別のお話なのですが、「ぼくのメジャースプーン」にも共通の人物が出てきて、あわせて読むと面白いですよ。そのせいか、本書と「ぼくのメジャースプーン」は、私の中では少年少女の成長ものとして、セットで楽しみたい存在になっています。

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点を付けたくはならないのでしょうか。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 せきしろさんと、又吉さんの自由律俳句を読むのはこれが二冊目です。後に出版されたほうの「まさかジープで来るとは」を先に読みました。二冊目なので、だんだん、この句はせきしろさん作かな、とか、これは又吉さんが詠んだほうだな、とか見当がつくようになってきました。そこてやっと気づいた、この本のシステムと私の阿呆ぶりに。
 見開きの、向かって右のページの句がせきしろさん。左が又吉さん。お二人とも絶妙の言葉使いで、興味のツボも重なる部分があるので、今まであまり、どれがどっちの作品なのか意識しないで楽しんでいたのでした。
 そして、見開きの二人の句が、左右のページごとにかすかにテーマに共通するものがあるようで、右側と左側のネタがうまく呼応しあっている気がします。
 せきしろさんが、ふと見せる情景描写からの背景の広がりが好きです。
例えば、
「風が運んできたのはカナブンの亡骸」
「醤油差しを倒すまでは幸せだった」

あと、大好きなあるあるネタ
「ダイドーの自動販売機が続く道」

又吉さんならではの、本に関する句も良いです。
「憂鬱な夜を救ってくれる本といる」
「本の内容に反するしおり」

それから、
「単三電池握りしめて単三電池を買いに行った日」

わかる、わかるです。又吉さんのエッセイの、オカッパ髪のエピソードのオチも好き。先生がなんか愛おしい。

 懲りずにまた私も作ってみました。

「夜中のテンションで送信あ~あ誤字脱字もあるし」
「試食しておいて買わないよスマンという顔で去る客」

そうか、俳句だから点「、」が無いのね。自分で作ると、どうしても点を付けたくなるのです。
あらためてお二人が絶妙なセンスで詠まれている事に驚くばかりなのでした

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紙の本嘆きの美女

2012/04/04 03:30

女子たちのサバイバル

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 主人公の耶居子は引きこもりでブスでデブ。実家の6畳間に籠もり、スナック菓子を食べながら一日中ネットにあけくれ、生きがいはサイト荒らしやブログを炎上させたりすること。この設定だけで笑えてしまい、時々、顔を出すマンガネタやスナック菓子の商品名の羅列も小気味よく一気に読み終えました。
 ネット荒らしの次の標的である、「嘆きの美女」のサイトの住人の個人情報を調べ上げようと、久方ぶりに外へ出る耶居子。引きこもりが外に出る原動力が嫌がらせとは、ほんとにしょうもないヒロインなんですが、悩める美女達のサイトなんて許せない、どうせたいしたことないでしょ、とこっそりオフ会を覗きに行くところから、ストーリーが動き出します。
 ほんの偶然から、「嘆きの美女」の管理人たち、本物の美女たちと同居することになる耶居子ですが、次第に彼女たちの美女ならではの悩みに触れたり、自分自身も新しい環境に飛び込むことによって視野が開けたり、隠された才能に気づいていくのでした。
 耶居子自身も、美女たちに感化されて多少はおしゃれに変身するのですが、コーディネイトが耶居子らしい。ロックなTシャツはゾンビ柄(下品なロゴ入り)で、目の周りを暗くする不健康メイク、前髪はリーゼント風と、あくまでも自分の好みが優先で、媚びていない。時々繰り出す毒舌も相変わらずだけど、誰かに媚びたり自分を曲げたりしないから妙な説得力があって、次第に耶居子が頼もしく、好ましく思えてくるのでした。
 巻末の「耶居子のごはん日記」は、連載時にはなかった書き下ろしで、おまけのような形で本編の後日談のように語られるのですが、ラストが、ハッピーエンド好き、甘甘ロマンチック好きの心をくすぐり、このおまけなしでは作品の魅力が半減するなあと思うほどです。
 女子の生き辛さや、女子をうまく活用した(?)生き延びかた、まわりに合わせることと自分を曲げないことのうまい折り合いのつけかたなど、多分、女子が読んだほうが、身につまされ、共感し、嫌悪し、めいっぱい楽しめるのではないかと思います。そして、そんな理屈をこねなくても、単純に「面白かった~」と読後に元気が沸いてくる作品でもあります。

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アラサーちゃん

2012/03/23 21:24

いるいる、会社にこんな人

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 作者の峰なゆかさんはAV女優を経て、ライターをされている方で、アラサーちゃんがマンガデビュー作とのことですが、デビュー作とは思えないほど、台詞がこなれていてセンスを感じます。可愛らしい絵なのに毒もあり、そして鋭い観察眼が生み出したキャラクター達が、ほんとに今そこらにいるリアル若者で、会社の同僚にもこういう人いるなあと、つい身近な人にあてはめてしまうのでした。
  主人公のアラサーちゃんはじめ、女子力の高いゆるふわちゃん、キャバ嬢(美人でもないし太っているところがリアル)のヤリマンちゃん、男前をきどるサバサバちゃん、全身コムデの非モテちゃん。対して男子は文系くん、チャラいオラオラ君、大衆くん、ゆとり君、脱オタ君など、キャラクターに名前がなく、わざわざ特長的なあだ名に、くんやちゃんを着けるところは、決まった特定の誰かではなくて、こういう人、貴方のまわりにもいるでしょ?という記号のような設定なのでしょう。人物紹介を見ると、職業や年収、年齢もバラバラなのに、オフィスで、遊びでの彼らはまるで同じ職場で会話している?ような描写です。(まさか取引先の出入りの業者の人とか、同じビルに違うテナントが複数入っていて、アラサーちゃんやゆるふわちゃんがトイレや給湯室で会うわけでもないよね)たぶん、職場でも学校でも、どこにでもゆるふわちゃんみたいな子っているよねえ、という表現だと思うのですが。
 私の会社の同僚が、誰タイプなのか考えてみたのですが、だいたいはあてはまったけど、自分と自分が一番苦手な人がどのキャラかわからず、あれこれ考えた結果、「お局ちゃんがないんだねえ」と思ったのでした。あるいはギスギスちゃんとか。まあタイトルがアラサーちゃんですので、トウのたったおばさんはエロからは除外されてるのね。ちょっと寂しいかも。
 それにしても、男性陣の、文系くん、脱オタ君などと、くんをひらがなにするか漢字にするか、この違いは何なんでしょう。気になります。それから、アラサーちゃんの瞳の表現が、時々白目になり、アゴの角度がくっと変わって真理を語る場面、怖いです。怖いけど当たってる。人生お得に生きられるのは、ゆるかわちゃんのようでいて、アラサーちゃんもゆるかわちゃんも実は本命には振り向いてもらえない。でもかしこく、雄雄しく生きてるのは、男性よりも女性陣のような気がするのでした。

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紙の本ファンタジーのDNA

2012/03/23 20:39

夢中で読んだ日々

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

荻原規子さんの、独創的な世界観と魅力的な登場人物が駆け回るファンタジーが大好きで、そんな荻原さんのファンタジーにまつわるエッセイというので期待して読みました。
 子供のころに読んだ児童文学のあれこれを語られているのですが、ファンタジー好きの子供は、同じような経験をするのでしょうか?どの本も、私も好きだったものばかりで、懐かしさと嬉しさで、そうそうと頷きながら荻原さんの語りに聞き入りました。
 荻原さんは、両親に買ってもらった「少年少女世界の名作文学全集」が小学生の低学年の読書のきっかけと語っておられますが、私も、世界の名作文学全集が家にあって、でもすごく訳が古くて読むのに苦労したのを覚えています。
 「赤毛のアン」「宝島」「秘密の花園」・・・タイトルだけでも懐かしいし、また「枕草子」や「古事記」「ギリシア神話」「北欧神話」に興味をもっていて、のちに「ケルト神話」に遭遇したことが、荻原さんの創作に影響しているというのが興味深いです。一時期、児童書を卒業しなければと思ったというのも同じで、私も中学の後半では家の書斎の太宰治全集や芥川龍之介全集や世界文学全集、吉川英治全集とか1巻から順に読破してました。そのうち、新井素子さんや栗本薫さんがデビューしてからは、SFやミステリーにどどどっと流れていきましたが・・・。
 荻原さんは、ユングの性格分類になぞらえて、ファンタジーにも「思考」「感覚」「感情」「直観」に対応する作品があるのではと、たとえば「ソフィーの世界」は思考タイプ、「指輪物語」は感覚タイプとイメージしています。創作メルヘンのような叙情メインば感情タイプ、ナンセンス作品は直感タイプ、というのも面白し、お国柄でも違いがあり、イギリスは感覚タイプ、ドイツは思考タイプというのもなるほどと共感できました。「ハリーポッター」ブームで感覚タイプのファンタジーが勢いに乗れた、というのも当時の私の実感でもありました。(絶版だった創元推理文庫のファンタジーの数々が復刊された嬉しさよ!)さらに神話の世界も、根源は感覚タイプではないのかという考察にはぞくぞくしました。
 そのほか、タイトルをあげればきりがないのだけれど、ジブリのアニメ「となりのトトロ」がジブリの最高傑作で「天空の城ラピュタ」が一番好きな作品というのも同感だし、「十二国記」シリーズやダイアナ・ウィン・ジョーンズ、佐藤さとるのコロボックルシリーズ、「ナルニア国ものがたり」「ゲド戦記」「妖女サイベルの呼び声」などなど、まさに私も「どはまり」した物語の数々を、その作品のどこに惹かれたのか、どのように読み解いたのかを訥々と「追求」していて、荻原さんは本当にファンタジーを愛しく大事に思っているのだなあ。だからこそ、あんなに魅力的なファンタジーが生み出せるのだなあとあらためて思ったのでした。
 好きな本が一緒だと、勝手に親近感を持ってしまうのは悪いくせかもしれないけれど、そしてはじめにも言いましたけど、ファンタジー好きの子供は、好きな本も、読み方もかぶってしまうのか。それとも、力のある本というのは誰もが惹きつけられずにはいられない魔力を持っているということなのでしょうか。

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ヤマの暮らし、見たこと、描いたもの。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 炭鉱の暮らしを描いた絵の数々が、ユネスコの記憶遺産に日本ではじめて登録されました、というニュースをテレビで見て、その絵に魅かれて読みました。
とはいえ、ユネスコって何?という疑問からはじまって、ネットで調べました。国際連合の機関なのですね。名称は国際連合教育科学文化機関。教育や文化の振興を通じて、戦争の悲劇を繰り返さないとの理念により設立されたとあります。
 文学にちなんだものとしては、アンネの日記、グリム童話、アンデルセンの原稿、などが登録されていますし、清の官吏登用試験合格者掲示なんていうのも面白い。まさに記憶遺産。
 最近では、パリの本部に、「ファイト新聞」のレプリカが展示されて話題になりました。ファイト新聞は、東日本大震災で被災した子供たちが、気仙沼の避難所で手書きで発行した壁新聞です。

 さて、そんな記憶遺産に登録された山本作兵衛さんのヤマの記録。
7歳から鉱山で働き、50年以上も炭鉱員としてヤマに生き、引退して炭鉱事務所に勤めながら、本格的に絵筆を採ったのは60歳を過ぎてからだといいます。炭鉱が次々と閉山する中、孫たちにヤマの記録を残そうと書き始めた、その絵画、日記、ノートなどが、日本では唯一、記憶遺産として評価されたのでした。(記憶遺産の候補としては、ほかには源氏物語や鳥獣戯画なども推薦されていたとか)
 山本さんのあとがきには、無学で文章が苦手なので、少年時代から好きだった絵で描いてみる事にしました、と語られていますが、本におさめられた炭鉱の記録の語り、絵に添えられた文章は実に的確で無駄がなく、具体的です。そして、炭鉱の閉山とともに、そこで暮らした炭鉱員や家族の生活の記憶も風化していく中、貴重な記録となるとともに、語りの面白さも堪能できるのでした。それにしても、ヤマを下りてから描いたはずなのに、なんという記憶力なのでしょう。炭鉱で使用していた道具、着物の柄。家庭の暮らしぶり。絵を見ながら、山本さんの語りを聞いていると、まるで知らない世界なのに、遠い昔、どこかで誰かに語ってもらったことがあるかのような不思議な感覚に陥ります。

 特に心に残ったのが、「ヤマと狐」の絵と添えられた文章です。化け狐の伝承が、普通に暮らしの中に入り込んでいる。炭鉱の危険な仕事では避けられない死の現実と、狐の幻想的な怪談が見事に同化していると思いました。

 昔は、石炭は貴重な燃料で、労働者たちが独特の閉じられた社会で暮らしながら、危険に身をさらしながら採掘するもので、それを享受していた富める者はその苦労を知らない。
 今、そのイメージに重なるものは、東日本大地震での原発事故です。
 日本で唯一、記憶遺産に登録された、消えゆく炭鉱の記録。
 そして同じ年に、ユネスコ本部に展示された震災の避難所の壁新聞。
山本さんの絵は、とくだん平和を強調するような押し付けがましいものではなく、ただ見たものをそのままに丹念に描いたものではあるのですが、それを見る私たちが、山本さんの語りを聞いた私たちが、きちんと考えていかなければならないものが、今だから、あるように思います。


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どんな姿になろうと・・・

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 前号までは、「活字倶楽部」というタイトルの季刊誌でしたが、去年の夏号の休刊をへて別の出版社から1号分あけて再刊、そしてタイトルを変えてのリニューアル1号が本書です。
 「ファンロード」と「活字倶楽部」は、本、漫画、アニメ好きの私にとって、長年の愛読書でした。「ファンロード」は出版社を移ったのちに休刊してしまうし、去年、本書が休刊した時には「かつくら、お前もかあああ~」と寂しかった。
 「活字倶楽部」はその後、無事復活し、タイトルが変わっても内容はそのまま。
 今のまま、本好きにとっての憩いの場所でいて欲しいです。
 かつくらの愛のあるレビューが大好きで、いつも本を読む参考にしていました。
 がんばれ、かつくら!

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紙の本三原順傑作選 ’70s

2012/02/05 21:45

いろいろな魅力がつまった作品集

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 その昔、雑誌「花とゆめ」の企画で、看板漫画家さんにホラー仕立ての読みきり長編をリレーで発表してもらうというシリーズがありました。山岸涼子さん、美内すずえさん、和田慎二さんなど花ゆめ常連の作家さんたちが次々とよみごたえのある
作品を発表する中、三原順さんが描かれたのがこの傑作選にも収録されている、
「祈りの鐘が響くとも」です。
 そう思って読んでみると、やっぱりどことなくゴシックホラーの香りを漂わせていますね。
短編だと、わりに重めの作品が多い三原順作品ですが、この傑作選の中で一番好きなのは「君の好きな帰り道」です。

心あたたまるラストのセリフと、キャラクターの可愛らしさが印象に残るおすすめの作品です。

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