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マハラオさんのレビュー一覧

投稿者:マハラオ

16 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本第二次世界大戦外交史 上

2016/12/18 18:18

日米開戦を考える上で必読

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1941(昭和16)年12月8日、日本が無謀な太平洋戦争に踏み切ったのはなぜか。

1939(昭和14)年の独ソ不可侵条約を受け、8月28日平沼内閣は「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じた」との声明を残して総辞職した。直後の9月1日ドイツはポーランドに侵攻、第二次世界大戦が始った。明けて40年(昭和15年)9月27日日独伊三国同盟が成立し、翌41年4月13日には日独伊にソ連を加える日独伊ソ四国同盟構想のもとに日ソ中立条約が結ばれた。ところが6月には独ソ不可侵条約を破ってドイツ軍がソビエト連邦に侵攻、四国同盟構想は破綻した。本書はこの「複雑怪奇」な国際情勢の推移を明快に解き明かす。半世紀以上前に書かれたものだが文章はとても読み易い。

この時代著者の芦田均は衆議院議員。当事者として斎藤隆夫の演説を議場で聞き(143頁以下)、松岡洋右の「私に語ったところから判断すると」(265頁)と記す等通常の歴史家には知りえない情報を持っていたことが臨場感を増している。

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紙の本旅愁 下

2016/11/28 11:37

検閲前のテクストで旅愁を読むべきもの

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

旅愁は横光利一の代表作であり、日本文学史上最大の問題作でありながら戦後文壇では継子扱いされて来た。文学全集ではメジャーな新潮社、中央公論社、筑摩書房などメジャーな全集には採録されず、わずかに河出書房のグリーン版、平凡社の小型全集(外国文学もこみ)があった程度で、文庫版ではかつて刊行されていた旺文社文庫に入っていた。
 しかし今回の文庫版の最大の特徴はテクストがGHQ検閲以前のものであることだ。具体的には1982年刊行の定本 横光利一全集(河出書房新社刊)に倣い、第三篇は戦前刊行の初版本、四、五篇および梅瓶は雑誌掲載の初出稿を定本とするテクストを作成していることだ(裏を返せば定本 全集以外流布してきた旅愁テクストはすべて占領下の検閲済みテクストだということだ)。定本 全集版テクストの刊行からすでに三十有余年。毀誉褒貶に曝されて来た旅愁を先入観なく読み、新しい読者を獲得するため、著者の当初の意図が歪曲されないテクストが手頃な文庫版で提供されるのは悦ばしい。

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『愛國心』を収録

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『愛國心』は『ジャーナリズム』に続く著者二冊目の岩波新書(青版)として1950 (昭和25) 年3月発刊、1973年1月の28刷まで版を重ねたが、翌年十月従来の正字使用、旧仮名遣いを常用漢字使用の現代仮名遣いに改め、多くの漢字をかなに開いて改版された(しかしこの改版第29刷がそのまま最終版となった)。
  刊行後17年を経た時点で大熊信行が本書を評して愛国心を論じた多くの書物の中で「科学性をもった唯一の文献」とした。大熊も言うように「西洋の文献に乗りすぎ、日本の近代の史実をかえりみることがない」著作であるが、愛国心といえば直ちに忠君愛国と反応する当時の読者にもっと広い視野を与えようとした著者の意図は十分に伺える。1章から4章まではいわば愛国心の総論。教科書風の堅実な叙述であるが、最低限これくらいは踏まえて欲しいとの著者の思いが伝わってくる。5章が本書の眼目。論点は「個人の欠如」「世界のl欠如」「合理化されぬ愛国心」でありキーワードは(非)寛容 (in)tolerance である。要領よくまとまったこの基本書を正字・旧かなの初版のままで復刊して欲しい。

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清水幾太郎著『ジャーナリズム』はここでしか読めない

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新聞の定期購読者は減る一方で、新聞の余命は今世紀中に尽きるかと懸念される。ジャーナリズムの古典的著作を読み返すのは今日的な異議がある。

1949 (昭和24) 年4月、青版として再出発した岩波新書の最初期の一冊として「ジャーナリズム」は刊行されたが、著者の申し出により翌年2月第四刷を最終版として絶版となった。したがってこの著作集に依らなければ閲読は事実上不可能である。

本書はまず現代仮名遣い(正字・新かな)で書かれた著者の最初の著作であることが特徴的である。しかし編者によれば「現代仮名遣い」にしたのは著者でなく編集部であり、これが好評だった本書を絶版にした最大の理由と推測される。

平易・明快を旨とする著者であるが、一般読者を意識した本書は特に読みやすい。最初の三章はジャーナリズム論の前提、第四章からジャーナリズムの特質が論じられ、(4 ジャーナリズムの形式、5 ニュース 6 資本家 7 政治家 8 期者 9 讀者)最後に「10 若干の注意」が置かれる。この中では新聞の収入源を正面から論ずる6章が新聞が商品であることを改めて想起させるが、政治家と題する7章が異色でもっとも読み応えがある。

70年前新聞がまだ二頁建てだった時代の著作である。しかし福地桜痴の回顧談や中江兆民の大文章を引用するなど面白く読ませる工夫に富んでいるiる良書が埋もれたままにするのはいかにももったいない。

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異色のアンソロジー

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目次からは歴史の見方、各論、全集未収録作品と一見オーソドックスな構成に思えるが一歩中身に立ち入ると宮崎教授の独自説が満載。歴史の見方では「歴史と塩」が啓発的。文化史編の「シナの鉄について」と併読するべきもの。古代編の第二「条支と大秦と西海」はヒルト、白鳥庫吉の両権威に異を立て「条支はシリアであり、大秦は羅馬本国」とする論証が興味深い。中世編は「晋武帝の戸調式について」という専門家向けの論考をそのまま採録。重要なものは歯応えがあっても紹介したいという編者の見識が窺われる。宮崎ファンなら座右に備えて便利なこと疑いなし。

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紙の本絶望の国の幸福な若者たち

2020/08/13 15:39

平成の大宅壮一

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著者を一躍メディアの寵児とした出世作。「誰の味方でもありません」という題の週刊誌連載本を出すほどだから「誰の敵でもない」客観性・中立性がウリ。この文体は誰かにに似ていると二三日考えたら大宅壮一だった。大宅(やその系統の田原総一郎)とひと味違うのは立論の根拠となる典拠を律儀に載せていること。発行年の2011年は東日本大震災の年だったので当時の世相が自ずと反映いている。9年後の今年(2020)はコロナの年なので2020年度版の刊行を期待(その時はクリックひとつで典拠論考に飛ぶ様にして欲しい)。

面白かったのは人名に出身地と刊行時の(推定)満年齢が入っていること(大家の著作でも大家が若い時に書いた物だと分かる)。ただし生年と刊行年が分かれば自動的に分かる数え年の方が良い。たとえば「絶望の国の幸福な若者たち」の著者古市憲寿(26際、東京、♂)を(27際、東京、♂)と表記することになるが、満年齢の26歳は刊行日を誕生日が過ぎたものと(著者の言うとおり)勝手に想定している。一方、数え年なら1985年生まれは2011年には誕生日がいつであろうと27歳であって一義的に確定する。

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開拓団はなぜ送られたか

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満蒙開拓団は「満洲事変以降、45年の敗戦までに満洲および内モンゴル地区に、国策として送り込まれた入植者約27万人のことを指」す。そもそも「満蒙開拓団」がなぜ生まれたか。満洲事変の翌(32)年の試験移民492人は「在郷軍人会所属の独身男性からなる武装農業移民団」だった。ところが現実の開拓団は「すでにそこにいた中国人」を追い出し「無理やり連れて来た日本人を突っ込む」ものにたちまち変質した。「中国残留孤児」は「満洲国」に親が「満蒙開拓団」として移住して生まれた子(あるいは伴った子)で孤児となった者である。残留孤児はなぜ満洲(現中国東北)に「残留」したのか。敗戦時に親と一緒に帰国できなかったからである。満洲事変の背景にある満洲大豆の問題を解き明かす第二章が明快。読み応えのあるのは第三章の満洲重工業開発。満洲の工業化が共産党政権下で「鞍山鋼鉄公司」なった経緯も興味深い。
 読み物としての特色は「立場主義」の糾弾。「その立場に立てばだれでもそうするだろう」と考えるのであれば「学ぶ・教える必要もない」のだから。

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紙の本月岡芳年魁題百撰相

2012/03/25 09:25

展覧会のガイドに最適です

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町田市立国際版画美術館(原町田4−28-1)で開催中の月岡芳年の戦争画を見るのに最適なガイドブックです。展覧会自体は師匠の国芳、同輩の浮世絵を含み、芳年の作品も妖怪画、美人画と多彩です。百人の勇士・烈女を描く『魁題百撰相』からは十点出品されています。いずれも往事に仮託して同時代の戊辰戦争を描いたものと解説にあります。すると画中の詞書が分かると一層興味が湧くのですが、ありがたいことにこの本では見開き左頁が画、右頁が詞書の読み下しと現代語訳、下段に解説というレイアウトになっていて読みやすく構成されています。展覧会は4月1日まで。受付でも販売していました。

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紙の本ニーチェの顔 他十三篇

2019/09/30 17:32

華麗な訳文を堪能

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『ツァラトゥストラ』は秋山英夫訳、手塚富雄訳、浅井真男訳と訳者に恵まれている。しかし一度氷上訳(岩波文庫)を手にすると他は要らない気がする。名文家の故氷上英廣教授の手になるエッセイだけに素晴らしい訳文が随所に鏤められている。なかでも『漂泊者とその影』(『人間的な、あまりに人間的な』第二部)のなかの断想や『華やぐ知恵』の一節(V. 339f.、VII.227f.) が印象的。もちろん『ツァラトゥストラ』からの引用も「ニーチェにおける脱ヨーロッパの思想」をはじめたっぷりと。しかし特筆すべきは氷上教授が引く諸家の訳業。ボードレール作白井健三郎訳「リヒアルト・ワーグナーと『タンホイザー』のパリ公演』はみごとと言うしかなく、秋山英夫訳『悲劇の誕生』のリズミカルな訳文は間然する所がない。

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紙の本シルクロードと唐帝国

2016/12/12 22:47

唐はすでに漢民族の国ではない

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隋を建てた楊堅や唐を建国した李氏の姻戚関係から隋唐政権の上層部は漢の時代と異なることはかねて指摘されてきた。本書で森安教授は唐を漢の復興と見るよりむしろ北魏の系譜を引くものとする。たしかに班田制の起源は北朝にあるから首肯できる面はあるが、すると従来遼にはじまるとされている征服王朝を再考しなくてはならず、唐文化の世界性といわれているものも非ー漢民族性と捉える必要がありそうだ。もうひとつ教授は従来イラン系といわれてきた「胡」はっきりソグド系と言うべきだとする。トルコ系といっても今のトルコを連想しないのに、イランといえば昔ペルシアといった国を連想してしまうからだ。書名にも入っているシルクロードファンには冷水を浴びせることになるのだが。(それにしても「イラン」を広く西方と解するなら秦への西方の影響が改めて問われよう)安史の乱後、唐の税制は両税法へと変ってゆくが教授の力説するソグド人の活躍がこのことにかかわることはないのか。
 最後に特記すべきは2007年刊行原本の「忠実な」文庫化ということである。普通文庫になると原本刊行後の進展、解釈の変更などアップトゥーデイトが測られるが、教授は原本の内容維持に意を用い、追加情報はない。(研究の進展に伴い内容の訂正が一カ所あるが、その訂正も本文中でなく文庫版へのあとがきでなされる徹底ぶりである)

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紙の本コンビニ人間

2016/11/29 22:46

コンビニは現代社会の象徴

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開店以来同じコンビニで働き続けて18年目、主人公の古倉さんは世間的には不適合者である。平穏な日々は起業家を夢見る白羽さんとの出会いで波乱が起きる。コンビニを早々とクビにされた白羽さんが、しかし、「結婚も就職もしていないなんて、社会にとって何の価値もない。そういう人間はムラから排除されますよ」と無遅刻無欠勤の主人公に辛辣な説教をする。「古倉さんも、もう少し自覚したほうがいいですよ。あんたなんて、はっきりいって底辺中の底辺で、もう子宮だって老化しているだろうし、性欲処理に使えるような風貌でもなく、かといって男並みに稼いでいるわけでもなく、それどころか社員でもない、アルバイト。はっきりいって、ムラからしたらお荷物でしかない。人間の屑ですよ」これに対して主人公が「私はコンビ二以外で働けないんです」「コンビニ店員という仮面しかかぶることができなかったんです」なので「それに文句を言われても困るんです」と居直る。白羽さんはさらに激して「生きづらい、どころではない。ムラにとっての役立たずは、生きていることを糾弾されるような世界になってきてるんですよ」と格差社会の本質を衝く発言をする。第三者が見れば「役立たず」の取る道はふたつ、ムラを改造するか、ムラから脱出するか。しかし古倉さんはちょっと違う、アルバイトでコンビニ店員の「仮面」が冠り続けられる限りは。

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津田左右吉の章は圧巻

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「神代史」は「つくり物語」である。この意味は神代の物語が歴史的伝説でない、ということであり、神代史をいくら「史料i批判」したとて「歴史的i事実」を見出すことができないということである。神代史は天武朝の捏造であるから民族の歴史と無関係である。戦前津田が起訴された理由は「<神代>と<いま>との連続性を遮断しようとする意志の表明」であったからである。翻ってみれば皇祖神とされる太陽がいざなぎ・いざなみから生まれるというのは「宇宙開闢神話」としてありえないことである。ひとくちに記紀というが古事記の序が後の世の作であるのは真淵以来疑われていることであり、宣長によって古事記偽書説を否定する著者の立場はいささか苦しい。

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紙の本中国近世史

2015/08/25 13:18

内藤湖南の問題意識が冒頭二章に集約されている。

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これまで内藤湖南全集(第十巻)に就く他なかった名著の誉れ高い書籍初の文庫化である。史実に関する注も豊富な初心者に優しい本が手軽に買えるのは悦ばしい。

著者の問題意識は第一章に明らかである。[近世を形成する]「内容をもった近世は、これを宋以後とすべきである」しこうして「宋になるまでには、中古より近世への過渡期がある」だから「近世史を明らかにするには、この過渡期から考える必要がある」

著者はハ項目に亘って過渡期を考察するが第七「経済上の変化」と第八「文化の性質の変化」を除いて広義の政治的および社会的な現象を扱う。なかでも注目すべきは君主の権力の確立と両税法(内藤は「両税制度」)についての記述である。

君主権力が確立する前は六朝から唐にわたった貴族政治の時代だった。第二章「貴族政治の崩壊」では「貴族政治がいかにして衰頽崩壊するにいたったか」詳述され、唐滅亡の直接の原因が節度使に頼る王朝の軍事力の弱さに求められる。ここでは黄巣の乱に先立つ反乱を特記しているのが注意される。

後続の章は第八章「神宗朝の改革政治」で王安石の改革を詳しく説明する他は概ね事件史である。ここで問題になるのは遼、金の華北支配が近世史に外在的なものとして扱われていることである。第十六章「モンゴル人の統治とシナ社会」は元一代の統治を考えるヒントが詰まっているのだから、遼から元に至る征服王朝としての統一的叙述が欲しいところである。

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sustainability

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sustainability とは何か分からせてくれる好著。理科系の人には自明の熱力学第二法則がわれわれ一般人には自明でない(啓蒙書だから知識がある人には物足りない)。

自然の循環、産業の循環、金融の循環へと時代とともに比重が増すというのも分かりやすい。

著者は金融の循環の問題点を説得的に説いている。割引率の考えを長期に適用してはいけないというのもなるほどと感じた。

現代社会というものを理解させてくれる好著。副読本に使う高校はないか。

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育休の経済学に集中すればよかった

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欧米に比べ日本のデータは、著者のいうとおり、「質量ともに劣っている」。その中で著者はドイツの研究をてがかりに育休3年制について政策提言を試みる。「海外の経験をそのまま当てはめるのはやはり危険」という至極まっとうな前提に立ちつつも同時に「無分別に改革をスタートさせてしまうのも危険」とのたまう。著者が前提とする予見は!)正社員を止めてはいけない、2)一歳児になれば母親の負担が軽減される、3)育休はキャリアの致命傷にならない、という当たり前の散点である。なにをいまさらという予想される指摘に対し著者の用意する回答は「論点をデータできちんと確認することは、間違いのない判断に必要」というものだ。ここからが本番。著者が経済学の理論を織り込んだ予測と称するものから引き出される結果は1)一年間の育休は母親の就業にプラス、2)育休3年制に追加的な効果なし、3)育休は3年もいらない、そして著者の結論は第3章4節の見出し「育休3年制」は無意味。一年がベストという断定である(ただしこれは編集部で付けた可能性もある。そうであっても著者がチェックしたか問われるところ)。1と2の典拠は海外の論文であるが3の育休3年不要論は著者の英文論文が典拠である。である以上典拠となる論文を解きほぐして解説するのが筋。単に「女性の出産や就業行動がどのように変化するかをコンピュータ上でシミュレートし、何が起こるか予測しました」と述べるだけでは読者を愚弄するもの。

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