シエルさんのレビュー一覧
投稿者:シエル
哲学はなぜ役に立つのか?
2016/01/18 18:26
非常に分り易い哲学の本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
これは先ず、今年のベストに数えられる本だろうと思う。
一昨年辺りから哲学・経済・政治に社会情勢・教育・社会保障と読み出すと各方面に手をつけて自分なりに限られた時間と予算とスペースで赦される範囲の本を選んでいるつもりだが本書はアタリである。
そもそも各専門書はその道の専門家が書くから専門的すぎて、語彙なども日常使いもしないどころか聞きもしない、見たことさえ無いような言葉の羅列である。
その言葉の選び方は筆者の好みなどもあるようだが概して、ワケの分らない言葉で誤魔化して煙に巻こうとしているのではないかと思えるほど、無学な者には判じ難い。
その点で本書は非常に分り易く、時事を哲学的に考察してると思う。
ここで「哲学的に「などと書くとこれまた「自分には読んでも分らないんだろう」と言う気になるが読むには中学生程度の国語レベルで充分だと思う。
日本人は「哲学する」などとヒト前で言い出すと変人度を上げるだけで世間的にはマイナスイメージが多いが本来、哲学すると言うのは本書のようなレベルでの話である。
だから死刑制度についての問題や外交、それになぜ近親相姦はイケないのかと言う凡そ日常考えもしないことに筆者が解を与えてくれていると思う。
そして、その解の与え方が決して専門的でも無く正に中学生が倫理か小学生が道徳の授業辺りで(今ではそんな授業があるのか知らないが旧い人間なもので)学ぶような、クラスで話し合うと言う程度に考えて読める。
決して、分り難い話にはなって行かない。
これは筆力の問題もあろうとは思うけれど、それを以ってしても先ずお勧めの一冊である。
そして、一講(章のような感じ)に一冊づつ副読本を紹介しているので合計で20冊の本が紹介される。
それがまた本文の内容と相俟ってそちらの副読本(古典が多いが最近のものもある)にも手を出したくなると言う、好循環で組み立てられている。
その分、読みたい読まねばならぬ本が増えると言うことは嬉しいような、財布が悲鳴のような気もするが20冊の内、幾つかは既に手元にあるから再読しようかなと思わせてくれる。
現代思想史入門
2016/05/08 18:43
今年のお勧めベストに入れたい本
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本を読む際に気になる個所などは自分は書き込みをしない、本に書き込んだりするのは邪道だと思っているので(尤も書き込む本と飾る本を分けて買える経済力があれば別だが、そんな経済力は本を本格的に読むようになった中学生以来有り得ないことでもある)付箋を貼って置く。
後から読み返したり、こうやって読後感想を書いたりする際に引用するのにも便利だからそうしていて、本を読むときにはカバーにその付箋を貼って置くのだが毎日足らなくなるほど貼った。
合計にして数十枚は大袈裟だが十数枚では効かない感じで本の上部から付箋が沢山、はみ出ている。
帯にある言葉を引用すれば−現代は、現象学やマルクス主義や精神分析のような、ひとつの思想、ひとりの哲学者の真理でつくされるような状況にはもはやない……ただちにわが国伝統の思想にたち還ればすむというような状況でもない。本書が採用するのは、地層学になぞらえた思想の流れと、それに断層を見いだしていく仕方である。
とあるように、現代思想と言うだけで色々なカテゴリーに分類されるだろうが、およそ150年前からに書かれた『進化論』以来と捉え、その間の思想を生命・精神・歴史・情報・暴力の各章ごとに追っていく形を取っている。
そして、その前に序章があるので計6章からなる膨大なる現代の思想を一冊に凝縮したような本と言える。
この為、本が付箋だらけの「要チェック!」項目が多くなってしまった次第。
読み物としてもボリュームがあるし、百科事典的にも使える感じがする。
そして、その場その場で著者が適切な比喩や引用を出してくれるので理解し易い。
個人的にはお勧め度☆5つと言った感じで今年のお勧めベストに入れたい一冊だった。
読み応えはあるがその分、吸収できるものもあるし、それに何より思想を総括してまとめた本は少ないだけにデスクの傍、辞書の類や何課と一緒に置いて使いたい気がする本だった。
左翼も右翼もウソばかり
2015/11/29 20:46
中立性と言うことを考えさせられる
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
裏表紙にある著者の写真を見る限り、パンクのロッカーかと思うような風貌だ。
ヒトは見掛けによらないと言うけれど正にそんな感じかも。
そう言えば、どこかテレビ媒体で見掛けたことがあるかもしれないと思い出したが何を言っていたのかは全く覚えていない。
タイトルが軽そうに感じるけれどかなりマジメに世相を捉えていると思う。
日本の大がつくマスコミ連中だけでなく、自分のような街で誰に訴えるともなく書いている文章でも必ずそこには自分の見方と言う歪んだものの見方があるし、これが偏見を生み差別を助長しているのは言うまでもない。
新聞でも雑誌でも、テレビでもネットでも報道に携わる者は「中立性」を常に問われるんだが純然とした中立性を確保された文章は逆に言うと面白くもおかしくもない。
何を言いたいのか分らない文章になってしまうから必ず、そこには書いた人なり、編集部なり、社としての、或いは政党や何らかの立場からの見解=ものの見方が加わる。
こう言う本を読んだ後には非常に書き難いが若いのに充分に下調べが出来ているし、そこに偏見という曲解は無さそうに思える。
実際、読んだ限りでは筆者の立場は右でも左でもないしどこかに与する立場にもないだろうと思うが、読む人によっては非常にケシカラン、或いはウソ八百などと論難するに違いと思うが鋭い指摘だなと思う。
例えば、「最近の若者は」と言う時代を示す言い方・見方・斬り方はお決まりであるけれど何十年経っても「今時の若者は」と言われる。
自分が若者どころからガキの頃からそう聞いていたし、青年になれば自分たちの世代を指すんだろうと意識があったが50歳を過ぎてしまって、自分のことだとは誰も思わない。と言うより、思うようだと相当にズレてる。
これは「若者の草食化」と言われ始めてから一体、何年あるいは何世代の間に亘って続いているのか。
草食化と言う言葉が使われ始めたのは10年前か、20年前か!?
それを未だに使い古さずに使い続けている。
その時に相当するであろう、若者も今や中高年の域だろう。
そうすると未だに、何年か何十年かズット草食化は続いているんだろう。
であるならば、安倍首相が訴える2050年も1億人と言う目標と出生率の目標はナンセンス以前になる。
こう言う、レトリックをマスコミはいつまでも使い続ける。
他にも<戦後世代>とかよく出て来るが今年で戦後70年を迎えたのを念頭に置いているのかと、常に疑問に思っていた。
自分は完全に戦後世代だろうが昭和1ケタの親が子供を作る歳になる頃には戦後15年も20年も経っていたのを踏まえれば戦前・戦中生まれでも充分に戦後世代のような…
ものを書く、言う立場にある人はよくよく日々様々に接する数字の意味をもっとキチンと理解していないとイカンなと思わずにはいられない。
萎縮するつもりはないけれどかなり軽率なもの言いをする方だから自戒を込めてそう思った。
世界史の構造
2015/10/30 01:42
世界史の構造
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
こう言う小難しいことを良くも考え出して大著にするもんだと感心する。
自分などがこうやって日々、時間潰しにダラダラ書いているのと違って一冊の本を仕上げる為に読込んだ参考文献、引用だけでも多分本書の数倍とか10倍になるんじゃないかと思う。
英語版以外にも韓国、中国、台湾での版もあるようだし本書に触れる諸問題について、アメリカ合衆国、カナダ、イギリス、中国、クロアチア、スロベニア、トルコ、メキシコなどで講演したともあとがきにある。
それだけ多くの国に訳されているのだろう。
内容は有史以前からの人類の歴史を「資本=ネーション=国家」が世界を覆い尽くしている。
それらの総合的な世界史を踏まえて、世界史を交換様式の観点から根本的に捉え直し、人類社会の未来を展望する、そんな感じの本だろうか。
従って、内容は四大文明以前から始まってギリシャ・ローマ帝国にアジアでは中国にオスマントルコ、モンゴルなども含めて細かく書かれている。
或いはホッブスのリバイアサンやスピノザからデカルト、ヘーゲルにマルクスに至るまで膨大な著作が引用されている。
多分、問題はこの新しい交換様式を提示したことで次の世界を見通そうと言うことなのだと思うが、そこには本書にある通り各交換様式にそれらをミックスした形の文化が拡がるのではないかと読める。
歴史論とか文化論、思想・価値観などに興味がある人には興味深く読めるのではないかと思う。
言ってはいけない 残酷すぎる真実
2016/05/31 18:37
『言ってはいけない』
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
一気に読み終えたが非常に面白いと言うか、興味深いと言うか、感心させられる内容だった。
かなり偏見に満ちた内容のように受け取られる可能性もあるだろうが、それらを打ち消す為に多くの引用・傍証などで構成されている。
1努力は遺伝に勝てないのか
では遺伝にまつわる偏見に近い、或いは誰しも判断を誤りそうな内容についてじつは科学的なデータが裏付けられているものだと言うことを示す。
1.遺伝に関するタブー 2.知能に関するタブー 3.知識社会で勝ち抜く人、最貧困層に堕ちる人4.進化がもたらす、残酷なレイプは防げるのかにそして 5.反社会的人間がどのように生まれるのか
について個々に論じながら豊富な例を挙げて説明されるので納得し難いものも受け入れざるを得ないと言った所か。
2あまりに残酷な「美貌格差」
6.「見た目」で人生は決まる−容貌のタブー 7.あまりに残酷な「美貌格差」 8.男女平等における残酷な現実 9.結婚相手選びとセックスにおける残酷な現実 10.女性はなぜエクシタシーで叫ぶのか?
3子育てや教育は子どもの成長に関係ない
11.わたしはどのように「わたし」になるのか 12.親子の語られざる真実 13.「遺伝子と環境」が引き起こす残酷な真実
以上の13章にわたって展開される。
我々が如何に誤解と偏見、誤謬に基づいた社会や見方で生きているかがよ〜く分かる。
中々、読んで複雑な思いにさせられた。
チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力
2016/05/14 16:28
いまだに人気の衰えない英国政治家
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
誰しもチャーチルの名前ぐらいは知っているだろう。
終戦時に行われたポツダム宣言の受諾やその前のヤルタ会談にも参加したイギリスの首相である。
筆者は自分と同い年のジャーナリストでその翌年1965年にチャーチル90歳で物故した。
実に長い間、政治家としてその才を揮った政治家で日本でも教科書に出てくるような政治家であり、シェークスピアとディケンズを足しても足らないほどの文章を遺した人でもあるらしい。
絵画もよくし世界を正しく股にかけて辣腕を振るったらしい。
その人物の伝記である。
その生誕から亡くなるまでの彼の歴史、そのものを忠実に辿っている感じの読み応え十分な本だった。
500頁ぐらいの本になると流石に2日や3日では読み切れず、かなり時間を費やした。
著者の方は相当に時間を費やして、あちらこちらを訪ねたり調べたり、聞き取ったりしたようだ。
著名な政治家であるが相当に癖があると言うか、偏屈と言うか、彼なりの哲学がバックボーンにあるようだが父も政治家であり、公爵でもあったらしい。
血筋は好いようだが付き合うには大変そうな人物のようであるし、その風貌から想像できる通り唯の好々爺では済まないものを感じる。
歴史的な場面に何度も立ち合い、世界中を旅したようでもある。
驚いたのは現在の中東情勢の元になるものをチャーチルが作り上げたと言っても良いほどに関係していることや「中東」と言う言葉自体が彼の発明と言うか、造語であったらしい。
現在のイギリスだけでなく、世界の政治のアチコチに彼は首を突っ込んでいる。
やはり、本書中のクライマックスはヤルタ会談前から対ドイツへの宣戦布告など実に興味深い。
当時でもかなり小さいと言われる170cmほどの身長しかないながら決して引けを取ることなく、あらゆる政敵や対外交渉にも我を通すような一面で変節ぶりも面白い。
イギリスが大英帝国だった時代の政治家で世界に足跡を残し、現代でも「世界の経営者が最も尊敬するリーダーランキング」でスティーブ・ジョブスを抑えて堂々の1位に輝く人物である。
小心者にはとても真似さえできぬような人物だが興味のある方にはお勧めな本だと思う。
但し、この分厚さはやはり相当なもんだが訳も悪くないと思うし、チャーチルだけでなく第二次大戦前後の歴史に興味のある方にもお勧めだと思える。
徹底検証「森友・加計事件」 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪
2017/12/22 19:54
『真淵と宣長』
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
副題ー「松坂の一夜」の史実と真実
賀茂真淵と本居宣長の子弟関係を描いた一書。
帯にはー奇跡的な出会いと麗しい師弟関係ー。
戦前の日本人の誰もが知っていた「美談」の真実を、八つの視点から明らかにする。
と、ある。
賀茂真淵と本居宣長の師弟関係ぐらいは日本史では習わなかったか?
更に引用すると、裏表紙には
「松坂の一夜」とは、本居宣長が賀茂真淵に出会い、古代研究の志を受け継いで国学を大成するきっかけとなる、一期一会の一夜を指す。1917年に佐佐木信綱が発表した同名の文章は、二人の出会いを劇的に構成した。以来、麗しい師弟関係は人の記憶に残る物語として、国語教科書などさまざまなメディアを通じて流布することになった。
しかしこの「美談」は、一方の当事者である真淵から見ればどのようなものであったか。あるいは別の第三者の視点で切り抜けば、どのような姿を現すのか。残された資料を読み解き、いくつもの様相を呈する「松坂の一夜」の真実を描き出す野心的な試み。
と、裏表紙の文章にはある。
史実とリアルは違うし、200年近く前の人の師弟関係や“美談の成立”の背景を描く。
個人的には変な推理小説を読むより、ワクワク・ドキドキする感じの1冊だった。
☆☆☆☆☆と、言えるだろう。
安物の推理小説より読み応えがあって、且つ為になる感じ。
お勧め度もマックスかな、と思う、
恐慌論
2016/05/31 18:40
『恐慌論』
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2007年に浮上したアメリカ発のサブプライム金融危機は記憶に新しい所だ。
世界恐慌と呼ばれる最初のものは1857年に起こったものと言われるらしい。
本書は1953年(昭和28年)の発行で戦後まもなくと言われる時期の刊行であるが著者の先見がいかに高かったかを示すし、マルクス自身も『資本論』の中で恐慌について触れている。
資本主義社会においてはこの経済膨張=バブルと破綻=恐慌が繰り返されるようにマルクスも書いているようだがその理論をしっかり読み込んで宇野経済学は発展したのだろう。
同時に『資本論』では資本主義経済のその先を予見するような文章もあるようだがまだ『資本論』自体に手を出していないので分からない。
それにしても、こういった理論・理屈が以前から示されているにも拘らず人類はと言うか、資本主義はバブルとその後の破綻を繰り返す。
そうなるであろうことを予想できるのにヒトは少しでも多く稼いでおきたい動物であるようだ。
本書中、214頁にあるが「いうまでもなく資本主義の発生の過程も、その成長の過程も、さらにまた崩壊の過程も、個々の国々にとってはそれぞれ特殊の過程としてあらわれる。一般的には先に資本主義の発展を見た国々の経験した過程は、後に資本主義化する国々にとって基本的には同一の過程を繰り返すものといえるのであるが、そしてそれは原理が歴史的過程を通して貫徹していることを示すものともいえるのであるが、それもその資本主義化の時期によって種々異なった様相を示すのである。崩壊の過程にしても同様である。」
とある。
結構、文調が独特なのもあるが慣れると読み易いと思う。
更にその内容が殊の外理解し易いので大いに助かる感じがしている。
本書でも具体的な数字を挙げながら恐慌が発生するシステムについて詳述されているのだがそれでもまた繰り返す人類は相当アホなんだろうか?と、思わずにいられない。
こうなると資本主義のその先はどうなるのか大いに気になるけれどそれまで生きている可能性が低い。
それでも生きている間中は色々な本や著作を通じて勉強して行きたいもんだ、と思った次第。
カール・マルクス 「資本主義」と闘った社会思想家
2016/05/08 18:45
経済学とも共産主義とも関係なく、マルクス自身を描いた一冊
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
マルクス」と言うとどうしても「マルクス経済学」とか失敗に終わった社会主義としての「マルクス主義」などと言ったイメージが付き纏う。
本書ではそれらの主義主張に関係なく、カール・マルクスその人の理論であり、社会思想家としての足跡を追う。
色々と誤解や誤謬が多い人物だがそれだけにマルクス本人の人生を追うことで如何にして思想が転向したのかとか、流転の末に逃亡・亡命を重ねて『資本論』を著わすに至る経緯とそこに込めたマルクスの思いのようなものを追っていく。
読んで理解できるのはまるで正反対とも言えるような思考・思想に転じるには彼なりにその経緯があって周囲からは誤解を招き、“転向した”などと思われたようだが本人はかなり真剣に思い、悩み、考え抜いて自分の考えを改めているだけでそこには彼流の筋が通っていることが理解できる。
副題に“「資本主義」と闘った社会思想家”とある通り、彼の生涯は思想家、哲学者に近く晩年にはその守備範囲が広がって、科学から物質代謝概念を自らの経済学に取り入れようとするなど65年の生涯を資本論の完成とそれを揺るぎないものにしていく為に各方面へ手を伸ばしている。
「マルクス主義」自体の良し悪しは別にして、本人の65年間の人生を僅か250頁ほどの中に凝縮しているが分かり易く、社会主義思想家とての思考と『資本論』や『恐慌論』を著わした彼が追い求めてのは多分、経済活動からくる人間の行動条件とか心理に近いようなものだったように読めた。
簡単に読み終えたがまた、読む機会があると思って幾つか付箋を貼っておいた。
要再読と言う感じの著。
社会的共通資本
2015/03/22 19:50
社会的共通資本の紹介
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
昨年2014年9月に亡くなった筆者の「思索の結晶」とカバーにある。
日本で最も著名な経済学者であり、日本人初のノーベル経済学賞の授与が毎年囁かれていた方らしい。
自分として宇沢氏の本は2冊目で結構分り易く説明されていると思う。
亡くなって半年以上経った現在でも書店では筆者の関連本が平積みされていて増刷されたり、新たに編集されて並んでいる。
「社会的共通資本」とは「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力のある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。」とはしがきにある。
そして、その社会的共通資本は「自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つの大きな範疇にわけて考えることが出来る。大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなどの社会的インフラストラクチャー、そして教育、医療、司法、金融制度などの制度資本が社会的共通資本の重要な構成要素である」と言う。
この論に基づいて序章の「ゆたかな社会とは」から書き起こし、「社会的共通資本の考え方」「農業と農村」「都市を考える」「学校教育を考える」「社会的共通資本としての医療」「社会的共通資本としての金融制度」「地球環境」の計7章で構成された一書。
非常に分り易い論で中には経済学を多少知らないと難解な部分もあるが基本的に読み易くなっていると思う。
本書が刊行されたのが2000年、リーマンショックは勿論のことITバブルが日本で起きるよりも前に書かれた本であるが全く古びれない。
政治家とか教職員などにも官吏にと社会的な出来事に関心のある人にはお勧めの本だと思う。
共産主義批判の常識
2017/12/22 19:56
『共産主義批判の常識』
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著者紹介から引くと
ー小泉信三(こいずみ・しんぞう)
1988(明治21)年、東京生まれ。慶應義塾大学卒業。経済学者、教育者、評論家。
1916(大正5)年慶応義塾大学理財科教授。1933~47(昭和8~22)年同塾長を務める。戦後は東宮御所参与として皇太子時代の天皇陛下の教育を担当、ご成婚の仲人役を果たした。また、スポーツと文学に造詣が深く、野球殿堂入りした。
1959(昭和34)年、文化勲章を受章。保守的リベラリズムの立場からマルクス主義を批判。
主な著書に「リカアド研究」「社会思想史研究」「マルクス死後五十年」「価値論と社会主義」など。
「小泉信三全集」がある。1966年没。
と言うことで、70年前に予見された共産主義の終焉を予測したもの。
“民主主義との相反を暴いた終戦後のベストセラーを没後五十年に復刻”
200頁足らずの本だがよく纏められていて分かり易い。
資本主義は成長(膨張)していくからいつか弾けると言うのは我々は既にバブル崩壊で知っているがこれを70年前に予見したその知性には感心する。
この本はお勧め度最高ランク。
☆☆☆☆☆
は確実だろう。万人にお勧めの一書。
大転換 脱成長社会へ
2016/11/04 10:12
『大転換』
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副題は-脱成長社会へ、とある。
新刊で出た時から目についていて“文庫化待ちだな” と、思いながら数年で文庫化されると思ったんだが当てが外れて7年越しで文庫になった。
『大転換』と言えば、経済文明史家カール・ポランニーの『大転換』が本家本元で戦前の本だが同じように1929年に勃発した世界的大不況を転機とした経済社会の「大転換」について論じた本だ。
読んだことはないんだが書名ぐらいは頭の隅にあった。
本書もまた凡そ80年後のアメリカ発の金融崩壊をきっかけにして書かれている。
それは-あとがきにある通りだ。
時代は移ろいだが「文明の破綻としての経済危機」という点で同じであり、歴史は繰り返すの文言通り世界中を巻き込んで大変な危機から脱しようとしている。
我が国では3.11の東日本大震災によって壊滅的な被害を受けた原発の被害さえ収束どころか実態がまだ分からない。
にも拘らず、今度はオリンピック開催が決定してお祭りムードが一変し、昨年からケチがつけ続いてロゴ問題から今度は市場の移転に環状2号線の延伸が危ぶまれている。
リーマンショックから随分と経つのに立ち直るのが余りに遅い。
政権が変わって今の首相は経済政策で効果を強調したいようだが、さてさてどんなもんだか非常に怪しい。
本書が刊行されてから相応の時間は経たが成果はまだまだだと自分は思う。
大企業中心にかなり数字は良くなっているが庶民の苦しさは相変わらずで、別にバブルの再来は希望しないが貧富の差は拡がる一方に感じている。
憲法という希望
2016/11/04 10:10
『憲法という希望』
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
日々、様々な報道に接する中で必ず法律論と言うか法律を扱う情報に接する。
否応なしで報道されるんだがロクに法律を学んだこともなければ大学で法律の授業を選べるまで在籍しなかった。
確か、中学で憲法を学んだような気がするがその授業を講じる先生はどの程度、法律のことを知っていたのかさえかなり怪しいもんがある。
然し、何となく知らないままに既に50歳を過ぎ学ぶより忘れる方が得意になってきている。
“今更、憲法!?”というなら笑えば好いと思う。
でも、余りに無頓着過ぎる。
憲法が話題に上るのは5月3日と決まってる。
そして、8月15日の終戦記念日だが日本だけが、日本人だけが8月15日に戦争が終わったと思っているようだが、国際的にはなんでもない普通の日だ。
本書では日本国憲法と立憲主義、人権条項、「地方自治」に各章を設けて説明している。
有体に言えば、“憲法って何?”という問いから始まって統治機構までに及ぶ一章。
二章では婚外子の問題から家族と憲法論である。
家族の問題で法廷に行きこそしなかったが2回も被告になっているので身近な問題であり、個々人に降り掛かる恐れの最も高い法律だ。
第三章は「辺野古問題」から地方自治を考える。
沖縄の問題は日本の端っこで起きている、自分と関係の遠い問題に思われているが自分の住む町に「基地」があれば他人事ではない。
非常に重要で大事な問題だと思う。
第四章は国谷裕子氏との対談で明らかにする「憲法論」で分かり易く説明してくれていると思う。
話者と対談がウマク噛合っていて、非常に分かり易いと思う。
最後に付録として日本国憲法全文を紹介して、参議院予算委員会のやり取りと憲法について学ぶ文献リストが載っている。
非常に分かり易いんだが読むとその深さが分かる。
それが書名の『憲法という希望』として現れていると思う。
憲法に興味が湧いたら是非一読して損はないと思う。
そんな一冊だったと思う。
こうすれば、透析者は「元気で長生き」できる! 透析者32万人と家族の新・透析バイブル!
2016/07/18 11:44
透析者の新バイブル
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入院時のあの3日間の絶飲食は何と言っても堪えて生まれて初めての経験でもあったし、今まで自分は病人である意識、身体障碍者にまで認定されている身体であることを甘く見ていたのは間違いない。
お陰で以来、随分と自分なりに生活のリズムや体調に関して自分で意識することが増えたと思うし極端に何かが変わった訳ではないが今までの生活態度はどう考えても自分自身の身体を理解せず、食べたいだけ食べ飲みたいだけ飲みと無節操と言えるほどに乱暴だったのを自覚させられた。
お陰で退院以来、随分自分の中で意識が変わったし何より生かされているとは言え自分で自分の身体について理解を深め、何が良くて何がどうしてイケないのか考え意識するようになってきた。
正直、今までの投げやりとも言えるような生活ではあの病状・病変を招いたのも当然とも言えるし医師の言うことさえ理解して実行していなかったのを正に身を以って痛感させられた。
以来、まだそんなに偉そうに言えるほどではないが生活態度を改め自制しつつ無責任にいつ死んでも構わないと言う姿勢で生活していてはまた同じことを招くし、それでは医者にも見放されるだろうし何より自分自身が苦しい思いをしなければならないと分かって、今後の人生設計のようなものから大いに病院のベッドで考えた。
幸い、自分の場合はまだ残腎機能が高いし透析者としてはビギナーに近く今後の生活を律していけばまだまだ人生を諦めるには早いと遅まきながら理解したつもり。
そして、何より本書のような本を手に取ることもそうだし今まで拒絶に近いように情報や知識は医師から与えられるものを100%信じていたくせに実行せず乱暴な生活態度を続けたことがあの絶飲食を招いたと深く反省させられた。
自分の身体、そしてこの病気についてもっと勉強して理解しそれに応じた生活に切り換えて税金で生かされているのだから早く死んだ方が良いではなく、自分自身の身体をまず理解してどうするべきかキチンと考えて実行し、まだまだ社会人としても復活のチャンスもあると思いを新たにしなければ本書のような本を手にする気にさえならなかったと思う。
医師を信用しない訳ではないが医師の知見よりも何よりも日々の生活の中で自分の身体を誰よりも知っているのは自分自身であることを自覚して、改めるべきは改めQOLを高めて納税する側になっていかなければイケないと思っている。
本書は透析者のバイブルとある通り、透析を送りながら生きている国内患者だけでも32万人に達する指針となると思う。
大いに勉強させられたし、これからも何度も手にすることになると思うし医師の専門的な知識ではなく、患者の側から書かれたものであるのも同病者として非常に分かり易い。
様々な事例と同病者の症状に対応が示されていると思うが大いにヤル気になってきた。
生きている限りこの病と共にいなければならないのは避けられない以上、そのことについてよく理解し新たな情報や治療についても学習し自分に取り入れていけばまだまだ自分にもチャンスは多いだろうと思う。
本書ではHD(血液透析)の方の症例が数多く紹介されているが自分と同じようなPD(腹膜透析)者のことにも触れられている。
これだけの患者数がいて日々増加の一途を辿る腎不全・透析の方々のことを取り入れて今後の長くなるだろう透析生活を有意義なものに高めていこうと思う。
本当に読んでよかった本だと思うし、これからもまた何度も読み返すことになると思う。
男の禅語 「生き方の軸」はどこにあるのか
2016/07/18 11:38
男の禅語
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はじめにに、禅の教えに男性も女性もありません。
あえて「男の禅語」としたのは、特に男性として、また父親、夫として、禅語は「生き方の軸」を考えさせられるからです。
とある。
禅語としてよく紹介される「知足」「不識」「無心」「無事」「主人公」「莫妄想」なども含まれるているが初めて目にした言葉も多かった。
解説を写すと長くなるから省くが「体露金風」とか「和敬静寂」「直心是道場」「時時勤払拭」「独座大雄峰」「大連透長安」に「不風流処也風流」からもっと長い「神通並妙用運水也搬柴」「水流元入海月落不離天」「心随万境転転処実能幽」に最後の「坐水月道場」まで全50語を紹介している。
見慣れない言葉も多かったので一度ではとても頭に入らないから再読、再々読とすると思う。
こういう本を読む時は落ち着いて読まないと頭に入らないし、心沁みて来ないので200ぺーじほどの本に3日も掛かった。
